自筆証書遺言が無効になったときに死因贈与契約で有効になることがある?

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自筆証書遺言が無効になったときに死因贈与契約で有効になることがある?

 

よく映画などで観る「遺言書」。一番代表的な遺言書といえばまさに自分で書く種類の「自筆証書遺言」。手軽に書きやすい遺言書であると同時に、デメリットは形式に不備が起こりやすく無効になることもあること。せっかく遺言書を作成しても「無効」になってしまっては元も子もありません。では、この無効になってしまった遺言書、このまままったく法的な効力が無くなり、どうにもできないのでしょうか。

実は他の書面として有効になる可能性があります。今回はこの遺言書を作成したが無効になった場合に他の書面として有効になることについて「童話風」に解説していきます。これから遺言書を作成しようと思う方は、ぜひ最後までご覧ください。

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遺言書に不備があり無効となることもある

吾輩は猫である。名前はまだない。

吾輩の主は、いわゆるそこにでもいるおばさ…いや、麗しき女性としておこう…なのだが、これまたおっちょこちょいなのである。

封筒に切手を貼り忘れるわ、買い物にいっても何か必ず買い忘れるわ(そのくせ余計なものはちゃっかり買ってくる)、テレビ録画を間違えてちがう番組を録るわ…。

猫の立場から見ても心配満載というわけなのだ。

しかも、そんな我が主が、長岡行政書士事務所の長岡とやらと知り合い、その仕事ぶりに感銘を受け「行政書士に、あたいもなる!」と、海賊漫画のようなセリフを毎日のように言っているのだから、輪をかけて心配が広がっている。

ところがどういうわけか、人のお悩みを見つけ出してくる、ある種の営業力については天才的(というか、おせっかい)であり、我が主、先日また悩める自猫…じゃない、子羊を探し出してきたのである。

その相談者A殿は、どうも遺言書に不備があったため、遺言が認められず、困っている様子。

ということで、吾輩も例によって長岡とやらのもとに同行訪問に付き合わされている始末なのだが…。

一般的な遺言書の種類は2種類

遺言書は一般的に利用される方法として、”自筆証書遺言”と”公正証書遺言”の2種類に分類されます。

長岡「なるほど、遺言書が認められない…ですか。そうですね、遺言書の要式は厳格に定められていますから、不備がある場合、無効と判断される場合もありますからね」

我が主「そうなのよ、Aちゃん。遺言書が無効になったら、遺産分割協議にぶっこんでいく形になるのよ」

我が主よ…言葉を慎みたまえ。法制度に対して「ぶっこむ」とは何事か…。

合わせて読みたい:遺産分割協議とは?流れとポイントを行政書士が解説

公正証書遺言と自筆証書遺言

長岡「しかし、遺言書が無効であると判断されたような場合であっても、別の方式の遺言書として効力を有する場合や、遺言書としては無効であっても別の契約として効力を発する場合もありますから、詳しく調べていきましょう」

我が主「今回の遺言書は自筆証書遺言? 公正証書遺言?」

A「え? なんですか、それ?」

長岡「自筆証書遺言とは、遺言者が遺言書の全文・日付・氏名を自分で書いて、押印して作成する方式の遺言のことです。公正証書遺言は…」

我が主「公正証書遺言は2人以上の証人の立ち会いのもとで遺言者が遺言の内容を公証人に伝えてーの、公証人が筆記してーの、遺言者・証人・公証人が署名してーの、という公正証書による遺言書を作成する方式の遺言なのよ」

なぜ少し古い風味の若者言葉を使うのだ、我が主よ。

自筆証書遺言は無効になるリスクがある

遺言は、遺言者の財産に対する最終意思決定の表示。同時に、遺言は法律行為の一種であって、相手方の同意を必要とせず、遺言者本人の意思のみで決定することのできる行為です。

A「父が自分で書いたものが本棚から出てきましたから、自筆証書遺言になるんだと思います」

長岡「なるほど。確かに専門家に相談せずに書いた自筆証書遺言だと、不備は起きやすいですね」

A「そんなに難しいんですか?」

長岡「難しいというよりは、厳格な方式が要求されると言うほうが正確でしょうか。遺言書は、一方的な意思表示になりますよね。しかも大きな影響をもたらすにもかかわらず、その効力が発生するのはご本人がいなくなってからです」

我が主「要するに死んじゃってるから本人に確認できないでしょ。だから偽物を偽造される可能性もあるわけだし。だからちゃんとした書式で書いてないものはダメってことになるのよ」

だいぶ遠回りな説明だな、我が主よ。まあ遺言者本人が存在しない中でも確実に本人が希望して書いたこと、また本人の意思であることなどを確認しなければならないならば、厳格さは求められてしかるべきだな。それは猫でもわかる。

遺言書の不備になる6種類のパターン

どんなことで不備になるのか、主な6つのパターンがあります。

・遺言の方式に不備があるパターン
遺言書の方式の不備による遺言の無効に。主に自筆証書遺言で起こりやすい。公正証書遺言については法律のプロである公証人が介入することからあまり心配はない。

・遺言書の内容が不明確なパターン
例えば、『預貯金を病院に遺贈する』というように、誰を指名しているのか不明瞭な場合など。ただし、一見すると内容が不明確であっても、遺言者の真意を解釈して内容を確定し、遺言を有効と判断した裁判例も少なくはない。

・遺言の内容が公序良俗に違反しているパターン
公序良俗違反にあたる遺言は無効となる。例えば、不倫関係の維持や継続を目的とした遺贈など(ただし諸般の事情を勘案して判断される場合もある)。

・遺言者に遺言能力がないと認められるパターン
遺言能力とは、遺言をするための能力で、他人から影響を受けるおそれがなく、完全に有効な遺言を行う事ができる能力のこと。遺言をする時に15歳に達しており、心神喪失状態、泥酔状態、認知症が進行している状態などにないときに書かれた遺言書であるかどうかが焦点となる。

・遺言書が共同で書かれているパターン
共同遺言は、自由に遺言を撤回ができなくなるため遺言書として認められていない。

・新しい遺言書があり、内容が矛盾しているパターン
遺言の内容が矛盾する複数枚の遺言書が発見される場合は、日付の古い遺言書の矛盾部分が撤回されたことになり、その部分は無効と判断される。

A「確かにどれも理解できる内容ですね。でもせっかく書いたものが全否定されてしまうようなのは、心情的に寂しくありますね」

我が主「でも、それが法律なのよ。日本は法治国家なんだから」

長岡「まあまあ、もちろんそうではあるんですが、救済の道と言いますか、そういうのもあるんですよ」

合わせて読みたい:遺言書に不備や誤字があったら?効力や修正方法について行政書士が基礎知識を解説!

遺言書が無効になった場合の転換とは?

場合によっては遺言としては無効であっても、別のものとして転換し、法律効果を発することもあります。

我が主「転換? まさか、現世で行政書士だった人が異世界に転換して勇者になった話とか?」

それ転生だな、我が主よ。そしてそういうコラムシリーズもあるから、興味がある読者は当サイトで検索してみてくれたまえ。

公正証書遺言から自筆証書遺言への転換

長岡「例えば、公正証書遺言の方式に従った遺言書ではなかったとしましょう。遺言書が無効とされてしまっても、その遺言書が自筆証書遺言の方式に従っていれば、自筆証書遺言として効力を発するんです」

我が主「メジャーリーグには合わなかったけど、日本のプロ野球だったら合ってた、みたいな?」

たぶん、違う。ほうら、長岡とやらも苦笑いじゃないか…。

遺言書から死因贈与契約への転換

長岡「ほかに、遺言書としては無効であっても、死因贈与として認められることもあるんです」

A「死因贈与って、聞いたことあります。生前に贈与の約束をしていたかどうかでしたっけ?」

長岡「そうです。あげる人(贈与者)ともらう人(受贈者)が生前から贈与について合意(契約)がなされているもので、贈与者の死亡した時に贈与の効力が生じるという条件のついた契約のことです」

我が主「ん? ん? つまりどういうこと?」

長岡「遺言としては無効であっても、生前に遺言者が対象者に財産を残したいという意思を明らかにしていたなら、対象者も遺言者の意思を受け入れたいと思いますよね?」

我が主「思う思う」

長岡「そのことを当事者同士が認識しているなら、死因贈与として有効と取り扱われる可能性があります」

我が主「ははーん、つまり両想いってことね。両想いなら、愛は永遠なのね!」

…これ、たぶん昨日観てたネフリ韓流ドラマの影響。すまぬ、長岡とやら…。

長岡「ははは、まあだいぶ迂回して例えると、遠からずというところのような気もしないでもないですが、厳密ではないところもあるゆえに、さらなる考察が必要であると思われがちな今日この頃、ごにょごにょ…」

…もうフォローが交通渋滞起こしているではないか…。

遺言書から死因贈与への転換が認められる要件

無効な遺言書の死因贈与への転換が認められるかどうかはどこで判断されるのでしょうか? 贈与者側の「死因贈与の意思」と受贈者側の「死因贈与を受け取る意思」、双方の意思が合致していることが前提になります。

長岡「死因贈与は、遺言とは違うものです。ですから、一方的に「あげる」と意思表示をしただけでは成立しないんですよ。以下の要件が揃わないといけないんです」

  • 贈与者と受贈者との間で死因贈与について意思の合致があること
  • 死因贈与について意思の合致があったことについて、証明がある

長岡「これらが確認できて、かつ書面作成の経緯や保管状況、遺言者と受贈者の生前のやり取りや受贈者の認識、受贈者以外の親族の認識など、あらゆる事情を総合的に考慮されて認められるかどうかが決まるんです」

遺言書に不安がある方は行政書士などの専門家に相談する

A「もしかしたらこれでうちの父の遺言も無駄ではなくなるかも…」

我が主「死因贈与に心当たりがあるの?」

A「はい、帰って色々調べてみないとわかりませんが…」

長岡「せっかく作成した遺言書ですから、無効となってしまうことは避けたいですものね。たとえ、無効とならず死因贈与として認められる可能性があったとしても、死因贈与と認められるためには証拠の収集など手間がかかります。必要ならお気軽にご相談くださいね」

我が主「そうよ、どーんと任せなさい」

うむ。我が主だけには…任せたくないのである。

 

この記事を詳しく読みたい方はこちら:遺言書は無効だが死因贈与契約として有効な場合!無効な遺言の転換について行政書士が解説!

 
行政書士 長岡 真也
この記事の執筆・監修者:長岡 真也(行政書士)
神奈川県行政書士会所属(第12091446号)
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