「子供を連れての再婚に漠然と不安があり、法的なことを勉強しています」
「血のつながりのない父の遺産を相続することはできるのでしょうか」
「実子と等しく相続させてあげたいのだけど、なにか準備すべきことはありますか」
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連れ子とは既に子がいる人が再婚した場合に、再婚相手から見た血のつながりのない子の事を言います。
2019年の厚生労働省の調査によりますと日本の離婚率は35%前後になっており、約3組に1組の夫婦が離婚をしているという事になります。
もちろんすべての夫婦の離婚時に子がいるわけではなく、またその後の再婚するかも人それぞれですが、確かなことは現代社会において今後も価値観が多種多様に変化し、様々な「家族」が存在するようになったという事です
このコラムでは再婚相手の連れ子に遺産を譲りたい時に、法律の面から気を付けるポイントと解決策の説明を行います。
目次
連れ子は法定相続人として遺産を相続できない
民法における遺産相続の考え方は血の繋がり、つまり血縁関係が基本となっています。
再婚した配偶者の連れ子は本人との間に血縁関係がないので法律上も親子関係がなく、何もしないままでは遺産を相続することができません。
遺言がない場合は法定相続か遺産分割協議になる
遺言は故人の最後の遺志として相続に大きな影響を及ぼしますが、遺言がない場合は民法に則った遺産の分け方をする法定相続か、相続人全員の合意により遺言とは異なる遺産の分け方をする遺産分割協議のどちらかの手続きになります。
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法定相続人とは
法定相続の分け方は下記の通りです。
※配偶者は常に相続人となる
- 第1順位:直系卑属(子や孫、ひ孫など)
- 第2順位:直系尊属(父母や祖父母、曾祖父母など)
- 第3順位:兄弟姉妹(亡くなっている場合には甥姪)
例えば父が亡くなって残された家族が母と子2人に加えて父の母(祖母)の場合は、母は配偶者として2分の1遺産を相続し、第1順位である子が2人なので各4分の1ずつ遺産を相続します。祖母は第2順位なのでこの場合は相続を受けられません。
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そしてここで気をつけなければいけないのは、連れ子はこの法定相続人の範囲の中のどこにも入らないという事です。少々きつい言い方になりますが、法律上は他人扱いとなります。
よって遺言がなく法定相続に則って遺産を分ける場合は、連れ子は相続ができません。
法定相続を選択しない場合は相続人全員が遺産の分割を協議する遺産分割協議にになりますが、この場合も連れ子は相続人として認められていないので遺産分割協議に参加することができません。
連れ子に相続させる2つの方法を解説
それでは、再婚相手の連れ子に遺産を譲るためにはどのような方法があるのでしょうか。
連れ子と養子縁組をして遺産を譲る
養子縁組をすると法律上の親子関係が成立し、連れ子にも相続権が認められます。
養子と実子で相続できる割合(相続分)に違いはありません。
なお、養子縁組で連れ子に相続権を与えられる養子縁組には普通養子縁組と特別養子縁組の2種類があり、特別養子縁組を選択すると実親との親子関係は終了します。
普通養子縁組の場合は連れ子は両親が離婚した者の血の繋がりのある実親と再婚相手の養親の2つの相続をすることができ、特別養子縁組では実親からの相続はできなくなり養親からの相続のみとなるという事です。
遺言を作成して連れ子に遺産を譲る
遺言書を作成することで、相続権がない人に対しても遺産を取得させることができます。
遺言書によって自分の財産を相続人以外の人に無償で与えることを「遺贈」(いぞう)と呼びますが、遺贈には「特定遺贈」と「包括遺贈」の二種類があり、包括遺贈の場合は負債といったマイナスの遺産も承継してしまうので注意が必要です。
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現在使われている遺言の主な方式としては、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。
自筆証書遺言の特徴
自筆証書遺言とは、その名の通り遺言者が自分で自書する方式の遺言を指します。
2019年の民法改正により要件が緩和され、添付する財産目録に関しては自書でなくパソコン等で作成したり、預貯金通帳のコピーをそのまま添付することも可能になりましたが、各ページごとに遺言者の署名押印が必要です。
自分で書くことができるので敷居が低く、また費用も低く抑えられますが、形式を満たしてなかった場合は無効になったり、検認という手続きを経ないとのちのトラブルに発展する可能性があります。
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公正証書遺言の特徴
これに対し、公正証書遺言とは、公正証書によって遺言書を作成する方式の遺言を指します。
公正証書遺言の作成には公証人と呼ばれる専門家が関与しますので、不備が生じる危険性が低いと言えます。
公正証書遺言は自筆証書遺言に比べて費用が高くなりますが、後にトラブルが生じる危険性をできる限り排除したい場合には、公正証書遺言を利用すべきです。
税金やのちのトラブルの事も考えたら、養子縁組と遺言の両方を併用することがベスト!
相続の事を考えた時、連れ子に相続そのものを受けられるようにする事はもちろん大切ですが、それ以外にも相続に係わる税金をなるべく圧縮したり、相続時に他の相続人とトラブルに陥らないように注意することも必要です。
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連れ子を養子にすることで相続税の圧縮にもつながる
先述の通り遺言を使えば連れ子にも遺産を遺せますが、養子縁組しないまま連れ子に遺贈をすると相続税額の2割加算の対象となってしまいます。
また、法定相続人の数が多いほど相続税の基礎控除額が多くなり相続税が軽減されます。
連れ子と養子縁組をすることにより法定相続人の数が増え、相続全体の相続税が軽減される可能性があります。
ただし、養子は原則として実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合には2人までしか法定相続人の数にカウントすることができないので注意が必要です。
連れ子のままで遺贈した場合は遺留分侵害に注意
遺言による遺贈として連れ子に財産を取得させた結果、ほかの相続人の遺留分を侵害してしまう可能性があります。
遺留分とは、遺贈などがあった場合でも、相続人が亡くなった人の財産の一定割合を確保することができる権利のことです。遺贈が相続人の遺留分を侵害している場合、当該相続人は、遺贈によって財産を贈られる者に対して、遺留分侵害額請求権を行使して金銭の支払いを求めることができます。
遺留分を侵害するような遺贈は無効とはならないものの、遺留分を侵害された相続人によって遺留分侵害額請求権が行使され深刻なトラブルに発展する可能性があります。特に遺留分の支払いは金銭で行う必要があるため、相続が不動産中心のような場合は現金の準備のため遺贈を受けた連れ子にとって負担になってしまう可能性があります。
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連れ子には遺言と養子縁組を効果的に用いて円滑な相続を
再婚しただけでは、再婚相手の連れ子との間に法律上の親子関係が生じることはありません。
連れ子が相続できるようにするためには、養子縁組と遺言を用いて実子と同じ権利を創出してあげる必要があります。
税金や他の相続人との遺留分の事まで考えてあげるのであれば、養子縁組により相続税の圧縮も達成できますし、養子にして実子と同じ法的な立場になったあと遺言により遺産を遺してあげれば第三者に遺産を譲る遺贈ではなくなるので、より連れ子の権利を守ってあげることができます。
実子のや親せきの中には「よそ者」になぜ遺産を、と感じる人がいるかもしれません。
遺言の中に付言事項という、法的な効力はないものの遺言者の想いを表した条項を入れるこができます。
相続人に遺言者の想いを知ってもらう事で、連れ子に対する理解を深めてもらう事も必要となります。
あわせて読みたい>>>遺言作成時に入れておくべき条項とは? 付言事項、予備的条項、遺言執行者の指定
このように、連れ子に遺産を譲りたい場合には様々な考慮や法的な手配が必要となります。
より効果的に相続を達成する目にも、専門家のサポートを積極的に利用しましょう。
長岡行政書士事務所は相談者様に寄り添った相続をモットーにしております。
不安や不明点がある場合は、是非ご相談ください。