自分亡き後のペット問題は負担付遺贈の遺言書で対策!注意点や書き方を行政書士が解説

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自分亡き後のペットの問題、遺言書でカバーできる?

「老後を愛犬と暮らしている。自分にもしものことがあったとき、愛犬のことが心配。」
「飼っている猫はまだ若く、自分の方が先に亡くなると思う。世話をお願いする手段は何かある?」
「残されるペットのこと、明確なかたちで誰かにお願いしたい。どうしたら良い?」

 

お子さまが独立された後、ペットと共に老後の生活を送られている方もいらっしゃることと思います。
ペットを飼われている方にとって、ペットは家族同様、とても大切な存在です。

しかし高齢の方でペットを飼われている場合、ご自身亡き後、大切なペットがどうなってしまうのか心配のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

あるいは、子どもなど近しい身内の者に世話をお願いしたいものの、どのようなかたちでお願いするのが良いのか悩まれている方もいらっしゃるかもしれません。

今回の記事では、ご自身亡き後のペットの問題について、遺言書で何か手段はないのか説明したいと思います。

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ペットの世話は遺言書で対応できる

長岡:「こんにちは!長岡行政書士事務所の長岡です。」

Aさん:「こんにちは。今日もよろしくお願いします。」

長岡:「はい、よろしくお願いします。今回は、飼い主が亡くなったときに残されるペットの問題についてお話したいと思います。」

Aさん:「ペットのことが、行政書士である先生の分野と何か関係があるのですか?」

長岡:「そうですね。残されるペットの世話を誰かにお願いしておきたい場合、実は遺言書である程度の対策をとることができるのです。」

Aさん:「遺言書ですか?遺言書は財産の処分について記載するものと思っていましたので、ペットと遺言書は結びつきませんでした。」

長岡:「そうかもしれませんね。けれども、ペットの世話などをについて遺言書に書き記しておくことができるのです。」

Aさん:「確かに、ペットを飼われている高齢の方にとっては、将来ペットが残されてしまったときのことを考えると、不安になりそうです。遺言書で何か対策ができるのならぜひ知っておきたいですね。」

長岡:「では、ペットの問題について遺言書で何ができるのか、説明していきましょう。」

付言事項|ペットの世話を遺言で対策する方法①

長岡:「遺言書でペットの世話をお願いする方法の一つとして、「付言事項」への記載があります。」

Aさん:「付言事項とは何ですか?」

長岡:「普段あまり耳にしない言葉ですが、遺言書では比較的良く使われる言葉ですので、次で説明しましょう。」

付言事項とは

遺言書の付言事項とは、遺産の処分などの「法律行為以外」のことで、遺言者が言い残したいことなどを書いた事柄のことを言います。言わば残される家族へのメッセージのようなものです。

遺言書には通常、自分自身の財産を誰にどう相続させるのか(遺贈させるのか)、という財産処分について記載します。これを法定遺言事項といい、遺言として法的な効力を持つ(※1)内容になります。

(※1)法的な効力を持つとは、その遺言の内容を実現させる力がある、という意味です。ただし、遺言の内容に納得がいかない場合は、相続人全員で遺産分割について話し合い(遺産分割協議)、遺言と異なる内容の遺産分割をすることも可能です。

これに対して付言事項はメッセージのようなものですので、法的効力がありません。しかし遺言者にとっては、遺言書を書くに至った経緯や、なぜそのような内容にしたのかという思いを伝え、相続人の納得を得るためのとても大切なものです。

合わせて読みたい>>遺言書の「付言事項」について行政書士が解説!遺言者の想いを込める

遺言書の「付言事項」について行政書士が解説!遺言者の想いを込める

遺言書のこの付言事項において、ペットの世話などについて書き記しておくことができます。

付言事項に記載する場合の文例を挙げておきましょう。

 

【付言事項 記載方法の一例】
長女の〇〇に、私が生前飼っていた愛犬□□の世話をお願いします。愛犬□□を家族同様大切に扱ってほしいと願っています。

付言事項でペットの世話をお願いする際の注意点

付言事項でペットの世話について記載しておく場合の注意点としては、付言事項には法的な効力がないということです。

遺言者の希望やメッセージという位置づけですので、お願いされた人が確実に実行してくれるとは限りません。
したがって付言事項で記載しておく場合には、事前にお願いしたい人と話し合い、ご自身の気持ちを伝え了承を得ておくことが大切となります。

 

負担付遺贈|ペットの世話を遺言で対策する方法②

長岡:「さて、以上が遺言の付言事項による方法ですが、このほかに、負担付遺贈とよばれる方法があります。」

Aさん:「負担付遺贈ですか。これも初めて聞きました。ペットのことについてどのように対応することができるのですか?」

長岡:「それでは次に、負担付遺贈について説明していきましょう。」

負担付遺贈とは

負担付贈与とは、遺言によって財産を受ける人(受遺者)に義務の負担などの条件をつけて財産を譲ることをいいます。

例えば、介護が必要な妻の世話を条件に預貯金を遺贈する、という場合です。

これを今回のペットの問題にあてはめると、ペットの世話をお願いする代わりに財産を遺贈するという内容の遺言を作成することになります。

この負担付遺贈では負担と遺贈がセットになっていますので、遺贈を受ける場合は負担を引き受けることになります。また負担付遺贈は前述した付言事項と異なり、書かれている内容である財産の遺贈は法定遺言事項です。

遺言者の思いや希望を書き記しただけの付言事項とは異なり法的効力を持ちますので、付言事項に比べ実現してもらえる可能性が高い方法と言えます。

負担付遺贈についてのコラムはこちら:特殊な遺言 義務の負担を付けた遺言「負担付遺贈」について解説!

負担付遺贈でペットの世話をお願いする際の注意点

負担付遺贈でペットの世話をお願いしたい場合、以下のような気を付けたい点があります。

  1. 世話をお願いする相手の了承を得ておく
  2. 遺言執行者の指定をしておく

それぞれどのようなことなのか、くわしく見ていきましょう。

ペットの世話を条件とした負担付遺贈について相手の了承を得る

負担付遺贈は法的な効力をもつことを説明しましたが、法的な効力をもつからといって、受遺者が必ずその遺言の内容を実現しなければいけないわけではありません。

遺産を受け取らない代わりに負担を引き受けない、という選択をすることもできます。

しかしそれでは、残されるペットを心配し、遺言まで作成した遺言者の思いが実現されません。

そのようなことにならないためにも、付言事項でお願いするときと同様に、事前にお世話をお願いしたい人に思いを伝え、了承を得ておくことが大切となります。

いくら財産を遺贈するからと言って、事前に何の話もせずにいきなり負担を強いたのでは、世話を頼まれた受遺者も受け入れ難いこともあります。

ペットの世話を条件とした負担付遺贈について事前に伝えておくことで受遺者の心構えもできますので、ぜひ話し合いは大切にして頂きたいと思います。

遺言執行者を指定しておく

もう一つのポイントは、遺言で遺言執行者の指定をしておくことです。

遺言執行者とは、遺言の内容を実現する手続きを行う者のことをいいます。

合わせて読みたい>>遺言執行者としての手続きとは?遺言者が死亡したらやるべきこと

遺言執行者としての手続きとは?遺言者が死亡したらやるべきこと

この遺言執行者を指定していない場合、財産は受け取ったのにペットをなかなか引き取らない・面倒をみないなど、遺産の引き渡しとペットの受け入れが同時にスムーズにいかない場合や、なかなか思うような世話をしてもらえない事態も想定されます。

受遺者が負担を履行しない場合は、相続人が家庭裁判所に遺贈の取消しをすることができますが、これには相続人の協力が必要です。

その点、遺言執行者が指定されている場合には、遺言書通りにペットを引き取ってもらったり、世話をしてもらえているのか確認してもらうことができます。

世話がなされていない場合には、きちんと負担を履行するよう注意を与えることもでき、それでも改善されない場合には、前述した遺贈の取り消しを家庭裁判所に請求もすることができます。

自分の亡き後、自分が思い描いたような世話がなされているのかどうか確かめることはできません。財産だけ受け取ってペットの世話を怠るようなことがないよう、心配な方は遺言執行者の指定をしておくと良いでしょう。

なお、遺言執行者は家族や友人など、未成年者と破産者以外であれば誰でも指定することが可能です。より確実な執行を望む場合には、弁護士や行政書士など、専門家に依頼すると安心です。

ペットの世話を依頼する遺言書の書き方

長岡:「ペットの世話を遺言書で対策するには、『付言事項」『負担付遺贈』と2つの解決方法があります。」

Aさん:「そのうち『負担付遺贈』では、財産と引き換えにペットの世話という負担をお願いするのですね。遺言でそのようなことができるとは知りませんでした。」

長岡:「ペットを飼われている方にとっては家族のような大切な存在ですから、そこまでしても確実に世話をしてほしいと願う場合も多いと言えます。」

Aさん:「では遺言で負担付遺贈をするとして、遺言書はどのように作成するのですか?」

長岡:「それでは最後に、ペットの世話に関する負担付遺贈をする場合の遺言書の作成方法について説明しましょう。」

公正証書遺言で作成する

ペットの世話に関する負担付遺贈を記載した遺言書を作成する場合は、公正証書遺言がオススメです。

一般的に遺言書を作成する場合、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」の2種類のどちらかで作成することになります。

遺言書については、法律で形式的な要件が定められていますので、自筆証書遺言を作成する場合にはご自身がそれらの定められた要件をきちんと理解し、要件を満たした遺言書を作成することが必要となります。要件を満たしていない遺言は無効となりますので、注意が必要です。

 合わせて読みたい>>自筆証書遺言書の正しい書き方|失敗例から注意点を学ぼう!

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また遺言書の保管については、自分自身でするか、または法務省の遺言書保管制度(※法務省遺言書保管制度参考)を利用することになります。

保管を自分自身でする場合、紛失や改ざんなどの恐れや、そもそも遺言書の存在が気づかれない場合もあります。

なお、長岡行政書士事務所で関与した自筆証書遺言については保管もできますので、作成をご検討の方は一度お気軽にご相談にいらして下さい。)

つまり、自筆証書遺言で作成した場合は、形式不備による無効や紛失、改ざんなどのリスクが伴うということです。

そのため、より確実に有効な遺言を作成したい場合には、公正証書遺言の作成を検討すること良いでしょう。

公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が遺言書を作成し、公証役場で遺言書原本の保管を行います。

作成には多少の費用と公証人とのやり取りという手間がかかりますが、形式不備による無効や改ざん・紛失の恐れはありません。また相続人や受遺者にも、間違いのない有効な遺言であることを理解してもらいやすいと言えます。

さらに、公正証書遺言の場合は、自宅等で保管の場合の自筆証書遺言に必要な「検認」の手続きも不要で、遺言者亡き後、すぐに手続きすることが可能です。

ペットの世話という負担をお願いする遺言書になりますので、内容について争いの起きる可能性の低い公正証書遺言による作成をお勧めいたします。

合わせて読みたい>>公正証書遺言は自分で作れる!実際の作成方法や流れを行政書士事務所が解説

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負担付遺贈でペットの世話を依頼する遺言書の記載例

ペットの世話について、負担付遺贈の遺言書を作成する場合には、以下のような記載をします。

 

【記載の一例】

第1条 遺言者は、次の財産を姪の〇〇〇(住所、生年月日)に遺贈する。
1.愛犬△△(犬種、性別)
2.遺言者名義のA銀行B支店普通預金 口座番号XXXXのうち金200万円

第2条 受遺者は、第1条の遺贈に対する負担として、遺言者が長年飼育してきた愛犬△△を引き取り、大切に飼育するものとする。

第3条 △△が遺言者より先に死亡した場合、第1条の財産は遺贈しない。

第4条 遺言者は、本遺言書の執行者として次の者を指定する。
住所記載
行政書士 □□□

 

上記は一例ですが、例えばペットの死後、埋葬する霊園が決まっている場合などはその旨を記載しておくこともあります。

Aさん:「なるほど、ペットの世話のお願いと遺贈は、遺言書でこのように記載されるのですね。」

長岡:「そうですね。記載の方法は様々ですが、ペットの名前、遺贈する財産、負担する内容、遺贈と負担の関係を明確に記しておくことになります。」

ペットの世話を依頼する負担付遺贈の遺言書作成時は遺留分に注意

では最後に、負担付遺贈の遺言書を作成する場合の注意点に触れて終わりたいと思います。

ペットの世話を依頼する負担付遺贈で気を付けて頂きたいのが、遺贈の額が多く、遺留分を侵害してしまう可能性がある場合です。

遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に認められた、最低限相続できる財産の取り分のことを言います。遺言書でどのような財産の分け方が書かれていたとしても、この取り分を侵害されている場合は、その侵害額を請求することができるのです。これを「遺留分侵害額請求」と言います。

負担付遺贈でこの遺留分侵害額請求がなされ、請求が認められた際には、受遺者が負担付遺贈により取得する財産は少なくなりますが、それと同時に、その減少した分の義務の負担も少なることになります。

したがってペットの世話という負担のついた負担付遺贈でこの遺留分侵害額請求が認められると、減らされた財産に見合っただけのペットの世話しかなされない可能性が出てきます。

またせっかく世話を引き受けてくれた受遺者を相続トラブルに巻き込むことになりますので、負担付遺贈でペットの世話をお願いする場合の遺贈の額については、遺留分に留意して決定することが大切と言えます。

遺留分についての詳しい記事はこちら:遺留分とは何か?遺留分の割合と遺留分侵害請求について解説!

合わせて読みたい>>遺留分を侵害する遺言は無効ではない!相続トラブルを防ぐポイントを行政書士が解説

付言事項で感謝の気持ちも記載しておく

最後に、負担付遺贈でペットの世話をお願いする受遺者に対して、先に説明した「付言事項」で感謝の気持ちを書き記しておくことも大切と言えます。

事前に了承を得ていたとしても、実際に世話をお願いするときには自分は亡くなっていますから、直接気持ちを伝えることはできません。遺贈と引き換えと言っても、今まで世話をしたことのなかったペットを引き受けてくれるわけですから、負担はそれなりに大きいでしょう。

遺言書の中で一言、感謝の気持ちを伝えておくことをオススメします。

自分が死んだ後のペットの世話は負担付遺贈の遺言を作成して対策

今回は、ペットの世話の問題を遺言書で対応する場合について解説しました。

ペットの世話は他人にお願いするものですから、「絶対に自分の思うような世話をしてもらう」ことを実現するのは難しいかもしれません。
しかし、負担付遺贈について事前に了承を得たうえで遺言書というかたちに残すことで、より希望に近い内容を実現することができると言えます。

ペットの世話について将来の不安がある方は、負担付遺贈の遺言も検討してみてください。
遺言について分からない点や不安なことがある場合は、ぜひ一度長岡行政書士事務所へ相談にいらして下さい。一緒に解決策を見つけていきましょう。

 
行政書士 長岡 真也
この記事の執筆・監修者:長岡 真也(行政書士)
神奈川県行政書士会所属(第12091446号)
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