無効な遺言書でも死因贈与契約は有効?無効な遺言の転換について行政書士が解説!

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遺言書は無効だが死因贈与契約として有効な場合!無効な遺言の転換について行政書士が解説!

ご相談者様:30代女性

先日祖父が亡くなりました。
祖父の相続人は私の母と、私から見れば叔父にあたる母の弟の2人です。

10年前に祖母が亡くなって以降、母が一人で祖父の面倒を見てきました。祖父は、”面倒を見てもらったお礼に祖父の住む土地と建物を母に相続させたい”と生前から言っており、同様の内容の遺言書を残していました。

しかし、その遺言書に不備があり、遺言書として認められないというのです。

祖父の意思で遺言を用意したものであるにもかかわらず認められないとはどういうことでしょうか?認められない場合どうなってしまうのですか?

回答:長岡行政書士事務所 長岡

今回のご相談は、遺言書が見つかったが不備があるため遺言書として認められない、そのような場合どうなってしまうのか?といったご相談です。

遺言書の要式は厳格に定められており、遺言書の要式に不備がある場合、遺言書は認められず無効と判断される場合があります。
そして、遺言書が無効となってしまった場合は、遺言書はないものとして遺産分割協議が必要となります。

しかし、遺言書が無効であると判断されたような場合であっても、別の方式の遺言書として効力を有する場合や、遺言書としては無効であっても別の契約として効力を発する場合がございます。

今回は遺言書が”無効”となる場合と、無効となった遺言書が別の効果を発する場合の”転換”について解説します。

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遺言書は無効となる場合がある

遺言は、遺言者の財産に対する最終意思決定の表示です。
それと同時に、遺言は法律行為の一種であって、相手方の同意を必要とせず、遺言者本人の意思のみで決定することのできる行為です。
つまり、遺言は相手の意思にかかわらず、遺言者の一方的な意思によって相続人やその他の第三者に対しても影響を及ぼすことのできる強い力を持っています。

また、遺言の効力は遺言者の死亡と同時に発生します。

つまり、遺言書は、一方的な意思表示で周囲の人に大きな影響をもたらすにもかかわらず、その効力が発生するかどうかは、ご本人がいなくなってから判明するのです。

遺言者本人が存在しない中でも確実に本人が希望して書いたこと、また本人の意思であることなどを確認しなければなりません。
そのため、遺言書には厳格な方式が要求されます。

なお、遺言書にはいくつか種類があり、それぞれ求められる要件が異なります。

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言者が遺言書の全文・日付・氏名を自分で書き、押印して作成する方式の遺言のことです。

合わせて読みたい:自筆証書遺言とは?5つの要件やメリット・デメリットを行政書士がわかりやすく解説!

公正証書遺言

公正証書遺言とは、2人以上の証人の立ち会いのもとで遺言者が遺言の内容を公証人に伝え、公証人がこれを筆記し、遺言者・証人・公証人が署名して公正証書による遺言書を作成する方式の遺言です。

合わせて読みたい:公正証書遺言とは?要件や注意点・メリット・デメリットを行政書士がわかりやすく解説!

それぞれの遺言のルールから逸脱すれば、遺言自体が無効と判断される可能性もあります。

遺言が無効とされる場合は様々ありますが、以下で具体例をご紹介します。

  • 遺言の方式に不備がある場合
  • 遺言書の内容が不明確な場合
  • 遺言の内容が公序良俗に違反している場合
  • 遺言者に遺言能力がないと認められる場合
  • 遺言書が共同で書かれている場合
  • 新しい遺言書があり、内容が矛盾している場合

遺言の方式に不備がある場合

まずは遺言の方式について定められている条文をご紹介します。

民法 第968条1項 自筆証書遺言
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

民法 第969条 公正証書遺言
公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 証人二人以上の立会いがあること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は 閲覧させること。
四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

民法 第960条 遺言の方式
遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。

968条が自筆証書遺言を作成するためのルールです。
969条が公正証書遺言を作成するためのルールです。
そして960条には、968条に定められた自筆証書遺言のルールと969条に定められた公正証書遺言のルール、それぞれのルールに従っていない遺言書である場合は遺言をする事ができない、つまり、遺言としては認められませんという内容が記載されています。

遺言書の方式の不備による遺言の無効となる事案は、公正証書遺言については法律のプロである公証人が介入することからあまり心配はないでしょう。
しかし、自筆証書遺言ではご自身で遺言書を作成されることが多いことから、方式の不備が原因で無効となってしまう事が少なくありません。

たとえば、日付一つであっても、”2020年1月”や”2020年吉日”というように遺言作成をした日付がいつなのか曖昧な書き方では無効とされてしまうようなケースもあります。

自筆証書遺言を作成する場合には、遺言の方式について不備がないように注意が必要です。

遺言書の内容が不明確な場合

遺言書の内容が確定できない遺言は無効となる可能性があります。

例えば、『預貯金を病院に遺贈する』というように、誰を指名しているのか不明瞭な場合などが挙げられます。

もっとも、そもそも遺言書を法律で守っている理由はご自身の財産については遺言者ご本人の意思をできるだけ守りましょうという考えからです。

そのため、実務上では遺言者の最終的な意思を尊重するために、できる限り有効となるように解釈がなされます。
そのため、一見すると内容が不明確であっても、遺言者の真意を解釈して内容を確定し、遺言を有効と判断した裁判例も少なくありません。

遺言の内容が公序良俗に違反している場合

公序良俗違反に関する法律をご紹介します。

民法 90条 公序良俗
公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

この条文は、道徳に反するような法律はそもそも効力を持たないという内容です。
遺言についても同様に、公序良俗違反にあたる遺言は無効となります。
たとえ遺言者の心からの願いであっても、道徳に反するような行為は許されないのです。

遺言の内容が公序良俗違反であるとして争われる具体例として、”不倫関係の維持や継続を目的とした遺贈(※1)”が挙げられます。

※1 遺贈とは・・・
遺言者が死亡した場合に、遺産の全部または一部について、特定のものに対して贈与することを、生前の意思表示として遺言に残すことを指します。

もっとも、不倫関係にある相手に対する遺言が全て無効となるわけではなく、諸般の事情を勘案して判断されます。

関連記事:愛人に遺産を渡したい!愛人のために書いた遺言は有効なのか・実現されるのか解説

遺言者に遺言能力がないと認められる場合

『遺言能力』とは、遺言をするための能力で、他人から影響を受けるおそれがなく、完全に有効な遺言を行う事ができる能力のことです。

遺言能力については以下のように定めがあります。

民法961条 遺言能力
15歳に達した者は、遺言をする事ができる。

民法3条の2
法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

“意思能力”とは、自分の行為の意味や結果を理解、判断し、予測することのできる精神的能力のことを指します。

意思能力の有無については画一的に判断されるものではありませんが、通常は、幼児や泥酔者、心身喪失者には意思能力がないと判断されています。

つまり、遺言をするためには、遺言をする時に15歳に達していること、また、意思能力が備わっている必要があります。

遺言者に意思能力がないとして争われる具体例は、遺言当時に認知症であった場合などが挙げられます。

もっとも、認知症であるからといって必ずしも遺言能力なしと断言できるわけではありません。
そのため、この場合の諸般の事情を総合的に考慮して判断がされます。

合わせて読みたい:遺言書の作成能力(遺言能力)とは?判断基準や必要資料を行政書士が解説!

遺言書が共同で書かれている場合

遺言は、2人以上の者が同一の遺言書で行う事ができません。

なぜなら、共同遺言が許されると、自由に遺言を撤回ができなくなってしまいます。

遺言を撤回する場合、共同で遺言をした人に対しても影響がでてしまいます。
遺言は遺言者の真意である必要があるにもかかわらず、自由に撤回する事ができなくなってしまう事態を想定し、禁止されています。

また、一方の遺言に無効の原因がある場合、もう一方の遺言の有効性についてどうするかといった問題が生じます。

複雑な法律関係が生じることを避けるため、また遺言の法的安定性のためにも共同の遺言は禁止されています。

合わせて読みたい:夫婦共同遺言は無効|夫婦で遺言書を作成する場合の注意点

新しい遺言書があり、内容が矛盾している場合

遺言書は自由な意思に基づいて撤回や変更をする事ができます。

そのため、遺言の内容が矛盾する複数枚の遺言書が発見される場合も十分想定されます。

そのような場合、日付の古い遺言書の矛盾部分が撤回されたことになります。
つまり、日付の古い遺言書の矛盾部分については遺言が無効となってしまいます。

遺言書が複数枚ある場合の遺言書の取り扱いについて、詳しくは以下のリンクからご確認ください。
合わせて読みたい:遺言書が複数枚ある時はどれが優先される?要件・効力も合わせて解説

遺言書が無効になった場合の対策

さて、遺言書が無効になってしまうケースは多岐にわたりますが、これらに該当したからといって、すぐに諦める必要はありません。

遺言としては無効であっても、以下のように遺言書を「別のもの」として転換し、法律効果を発する場合があるためです。

  • 公正証書遺言の場合、自筆証書遺言として効力を持つ可能性がある
  • 生前のうちに双方で合意があれば死因贈与として効力を持つ可能性がある

必ずしも、常にこれらの転換が認められ、法律効果を発揮できるとは限りませんが、遺言者の願いを叶えるために、可能性は探っていくべきでしょう。

ここからは、 なぜこのような無効となった遺言書の転換が可能なのか、法的な根拠を解説します。

公正証書遺言の場合、自筆証書遺言として効力を持つ可能性がある

公正証書遺言の方式に従った遺言書ではないとして遺言書が無効とされてしまった場合であっても、その遺言書が自筆証書遺言の方式に従った遺言書である場合には、自筆証書遺言として効力を発します。

※ただし公証人が作成に関わる公正証書遺言の場合、無効となるケースはあまり一般的ではありません。

死因贈与として効力を持つ可能性がある

「自筆証書遺言が要件を満たしておらず無効となった」という事例は、決して珍しくありません。

しかし、遺言書としては無効であっても、死因贈与として認められる場合があります。

”死因贈与”とは、あげる人(贈与者)ともらう人(受贈者)が生前から贈与について合意(契約)がなされているもので、贈与者の死亡した時に贈与の効力が生じるという条件のついた契約のことです。

つまり、遺言としては無効であっても、生前に遺言者が対象者に財産を残したいという意思を明らかにしていて、対象者も遺言者の意思を受け入れ、そのことを両当事者が認識しているような場合には、死因贈与として有効と取り扱われる可能性があります。

たとえば記事冒頭で紹介した例のように、亡くなった方が「面倒を見てもらったお礼に、住んでいる土地と建物を娘に相続させたい」と生前言っており、娘の側も「父が亡くなったら、土地と建物を引き継いでほしいといっていた」と認識していたら、遺言書が無効でも死因贈与として認められるかもしれない、ということです。

無効な遺言書が死因贈与への転換が認められるかどうかの判断基準

無効な遺言書の死因贈与への転換が認められるかどうかは、贈与者側の『死因贈与の意思』と受贈者側の『死因贈与を受け取る意思』、双方の意思が合致している事が大前提となります。

そして、「書面作成の経緯や保管状況」「遺言者と受贈者の生前のやり取りや受贈者の認識」「受贈者以外の親族の認識」など、様々な事もを総合的に考慮されます。

ここで重要なのは、死因贈与は、遺言とは違い、一方的に『あげるよ』と意思表示をしただけでは成立せず、以下の要件が揃う事が大前提だということです。

  1. 贈与者と受贈者との間で死因贈与について意思の合致があること
  2. 死因贈与について意思の合致があったことについて、証明がある

絶対的に認められるというわけではありませんが、以上のような要件が揃っているような場合には、無効な遺言が死因贈与として認められる傾向にあるように思われます。

確実に有効な遺言書を作成するためには専門家へ相談がおすすめ

せっかく作成した遺言書ですから、無効となってしまうことは避けたいですね。
たとえ、無効とならず死因贈与として認められる可能性があったとしても、死因贈与と認められるためには証拠の収集など様々な手間がかかります。

生前から対策を講じることによって確実に有効な遺言を作成する事ができます。
また、たとえ無効となっても遺言者の意思を実現するための対策を講じることもできます。

せっかく作成した遺言書が無効と判断されないためにも、公正証書遺言の利用や、行政書士など専門家へ相談することをおすすめします。

横浜市の長岡行政書士事務所でも、遺言書作成についてサポートしておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
また、すでに相続が発生してしまったあとの手続もサポートしておりますので、何かお悩みの場合は、ぜひお問い合わせください。

<参考文献>
潮見佳男/著 有斐閣 『民法(全) 第3版』

 
行政書士 長岡 真也
この記事の執筆・監修者:長岡 真也(行政書士)
神奈川県行政書士会所属(第12091446号)
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