遺言書が複数枚ある時はどれが優先される?要件・効力も合わせて解説

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【もしも遺言書が大岡裁きを受けたら?】複数出てきた遺言書はどれが優先される?

遺言書が複数枚でてきたら、どうすれば良いのでしょうか。

遺言書にはいくつか種類があり、それぞれ要件も異なりますから「難しくて理解できない、、」という方も多いかもしれません。

 

この記事では、遺言書が何枚も出てきた場合の対応について、「大岡裁き」風に解説します。

遺言書について分かりやすく知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

 

役人「大岡越前守さま、一大事にござりまする!」

 

大岡「いかがした?」

 

役人「実は、巷で遺言書同士が争っておりまして…大岡裁きを受けたいとのこと」

 

大岡「…話が見えぬ。2人の母親が我こそはこの子の実の母親であるという、そういうのか?」

 

役人「そういうのではあるのですが…人ではなく紙…遺言書自体が、我こそは遺言者の息子である吉五郎と祥之助にとって正当な遺言書であると言っているのです」

 

大岡「…人ではない? 何やらよくわからぬが、とにかく連れてまいれ」

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日付が最新の遺言書が優先される

公正証書遺言(以下、公正)「お奉行様、わっちは公正証書遺言でごぜえやす。お話を聞いてくださり、ありがとうごぜえますだ」

 

自筆証書遺言(以下、自筆)「てめえは引っ込んでいやがれ、公正! お奉行様、おいらが相続人である吉五郎の親父さん自身が書いて封をしたものでやして」

 

大岡「…誠に遺言書がしゃべっておる。で、とにかく、訴えはどちらが相続人によって有効な遺言書かということだな?」

 

役人「御意」

 

大岡「ふむふむ、公正証書遺言のほうは、財産は吉五郎にすべて相続させるとあるな。自筆証書遺言は長男吉五郎と、次男祥之助にそれぞれ1/2ずつとある」

 

自筆「お奉行さま、なにせおいらは吉五郎の親父さんが自ら書いたものなんですぜ。しかも兄弟平等だ。こんな正しい遺言書はねえでしょう」

 

公正「自筆の野郎め、ばかなこと言っちゃいけねえや! お奉行様、わっちはきちんと親父さんが言ったことをお役人さんがまとめているんですぜ。見てくださいよ、自筆のを。こんなみみずが這ったような字、わかりゃしねえ」

 

自筆「なんだと、べらぼうめ!」

 

公正「やるってのか、おう?」

遺言書には、大きく分けると「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。

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大岡「…わかったわかった、静まれい。ううむ、困ったのう。よし、ではこういうのはどうだ? 双方が吉五郎と祥之助の手を引っ張りあうのだ。そして2人が痛がったとき、手を離したほうが真の遺言書であろう」

 

役人「子供が痛がる姿を見て、それでも無理やり引っ張ることは出来ぬ親心…あのときと同じでございますな!」

 

大岡「さよう。これならわかりやすいであろう?」

 

役人「しかしお奉行様、今回は人ではなく紙にござりまする。引っ張ったら、遺言書自体が破れてしまいませぬか?」

 

大岡「…それな。ではいったいどうせよというのじゃ…ん?」

 

長岡「お奉行さま、何かお困りでおられますかな?」

 

大岡「おお、これは横浜市の長岡行政書士守ではないか! よきところに来た。知恵を貸してくれぬか」

 

長岡「なほかならぬ大岡越前守さまのご相談とあれば断るわけにもいきますまい。なにせ、一文字違いの『岡』つながりでございますからな」

 

大岡「うむ、頼んだぞ」

 

長岡「さて、公正証書遺言および自筆証書遺言よ。そなたらの訴えはよくわかった。効力のある遺言書は、最後に書かれたものとなる。日付を見ると公正証書遺言が令和元年4月、自筆証書遺言が令和2年4月とあるな」

 

大岡「ということは、自筆証書遺言のほうが新しいから、そちらが有効になるということか」

 

自筆「あたりきしゃりきのこんこんちきよ! そうだと思いやしたぜ!」

 

公正「…ちょっと待っておくんなせえ、横浜市の行政書士守さま、そりゃどういう次第でそうなるんですかい?

 

役人「ええい、お上のお定めが気に入らぬと申すか!」

 

公正「とんでもねえ…でも、わっちはそのお上のお役人さんからお墨付きをもらっているものなんですぜ? 言うなれば家柄が違いまさぁ!」

 

長岡「公正証書遺言よ、確かにお主は公証人の認証を受けた公的な書類に間違いない。しかし、法的には最新の日付の遺言に従うことになっておるのだ」

 

自筆「ひゃひゃひゃ、見やがれってんだ、公正め。これでせいせいしたぜ。お奉行様方、ありがとうごぜえやす。さて、ちょっくら一杯」

遺言書は要件を満たしていなければ無効

長岡「話はまだ終わっておらぬぞ」

 

自筆「へ?」

 

長岡「日付では確かに自筆証書遺言のほうが法的効力は認められるが、肝心なのは中身でな。つまり、自筆証書遺言が要件等を満たしていなければ、無効になる。そうなれば、日付は古くても公正のほうが遺言書として認められるのだ」

 

自筆「そ、そんなご無体な…」

 

公正「お奉行さま、ぜひ改めてくだせえ! この字、読めますかい?」

 

大岡「…ううむ、なかなかにひどい字だ。かろうじて読めなくもないがな」

 

長岡「大岡越前守さま、改めて日付をよくご覧くださいますか」

 

大岡「ええっと、公正証書遺言が令和元年4月1日、自筆証書遺言が令和2年4月吉日…ん、吉日?」

 

自筆「吉五郎だけに、吉日ってか。親父さんも洒落てらあ」

 

長岡「吉日というのは、具体的な日付としていつを示しているのかわかりません。遺言書は遺言者の最終意思の効果として実現するため、最終意思の確定のために具体的な日付の記載が必要になるのですな」

 

大岡「なるほどのう」

 

長岡「年号(和暦でも西暦でも可)の記載がない、または日付の記載がない場合等は、暦上の特定の日の表示がないものとして無効とされる…ということは、今回の自筆証書遺言は、要件を満たしていないと言えるわけなのです」

 

自筆「ま、まさか…!」

 

公正「ざまあかんかん、かっぱの屁たあ、このことよ! けけっ、やっぱりわっちの勝ちだ! おう、自筆め、引っこんでやがれい!」

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長岡「控えい! お奉行さまの御前なるぞ。そもそも、お主らはもともと親父さんが子である吉五郎と祥之助を思う気持ちから生まれたものであろう。遺言書とは、もめごとなく相続をしてほしいという気持ちが形になったものじゃ。ゆえに喧嘩ばかりするなどは考えられぬ。どうせろくでもない狐狸妖怪の類が取り付いておるのだろう? 姿を現せ!」

 

自筆「こん、こーん! バレちまったい!」

 

公正「ぽんぽこ、ぽんぽこ! こりゃ退散だぜ!」

 

大岡「なんと! 遺言書から狐と狸の物の怪が出てどこかへ行ったぞ」

 

長岡「そもそも遺言書は心根優しきもの。今のは、人の世の愚かな欲が形となって取り付いていたのでございましょう。さ、2人とも、大丈夫か?」

 

公正「…お奉行さま、長岡さま、本当にありがとうございました。あやうく親父さまの気持ちを踏みにじるところでした」

 

自筆「まったくです。今回、おいらは無効とされますが、そのぶん公正兄さんがしっかりと務めてくださるから安心ですよ」

 

大岡「うむ、素直で何よりだ」

遺言書は遺言調査(検索)をしてから執行する

長岡「念のために聞くが、もう親父どのはほかに遺言書は残されておらぬな?」

 

公正・自筆「はい」

 

大岡「遺言書が複数出てくる場合は、こういうこともあるのだのう」

 

遺言書は遺言調査(検索)をしてから執行することが重要です。

長岡「仮に遺言執行した後に、新しい遺言書が見つかれば、銀行等の金融機関の手続きは、有効な遺言の内容通りに分割し直しなおさなければなりません。

また、法務局の手続きの場合には、移転した所有権を錯誤抹消した上で、正しい権利者へ所有権を移転しなければなりません。

相続税申告を済ませていた場合には、修正申告も必要になってきます。

複数の遺言があることを知らずに遺言を執行してしまうと、手続き上のやり直しが必要となり、かなりの手間がかかってしまうのですよ」

 

大岡「そうならぬよう、何か良い知恵はないのか?」

 

長岡「ございます。遺言は遺言調査をしてから執行することが大切となります」

 

大岡「ほう、遺言調査とな」

 

長岡「遺言の調査方法は公正証書遺言と自筆証書遺言の場合で変わってまいります」

 

公正証書遺言:公証役場に問い合わせる。公証役場が遺言検索システムで調査する。

自筆証書遺言:自宅等で遺品の中から探索する。

自筆証書遺言(法務局保管):法務局に証明書の交付請求をする。

なお、自筆証書遺言が見つかり封等に入っていた場合は、勝手に開封をしてはいけません。家庭裁判書において検認の手続きが必要となりますので注意が必要です。

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遺言書が複数枚ある場合は日付と要件に注意

大岡「遺言書を複数書くことは認められていないわけではない。複数の遺言でもすべてが無効となるわけでもない、か」

 

役人「複数の遺言書が出てきた場合に備え、こういうことを知っておくのも大事でございますな」

 

大岡「横浜市の長岡行政書士守よ、これからもぜひ相談に乗ってくれ」

 

長岡「御意にございます。では越前守さま、そろそろ締めてまいりましょう。さあ、いつものやつを!」

 

公正・自筆「いよっ、待ってました!」

 

大岡「うむ。これにて、あ、一件落着ぅ~~~!」

この記事を詳しく読みたい方はこちら:遺言書が2枚以上出てきたらどうする?複数枚の遺言の優先順位について行政書士が解説!

 
行政書士 長岡 真也
この記事の執筆・監修者:長岡 真也(行政書士)
神奈川県行政書士会所属(第12091446号)
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