「遺産分割の話し合いが進まない。調停という手続きをするべき?」
「相続が始まったけど、家族に不穏な空気が流れている。今後どうするべきか。」
「遺産分割調停に呼ばれているけど、どのような手続きか不安。」
家族が亡くなり、大切な相続財産を相続人間で分割する場合、話し合いである遺産分割協議が難航したら「遺産分割調停」を検討する必要があります。今回は相続時に知っておきたい「遺産分割協議」について、手続きの注意点も交えながら詳しく解説します。
目次
遺産分割調停の概要とは
遺産分割協議が難航し、話し合いがうまく進まない場合には、相続人同士の話し合いを中断し、家庭裁判所の調停を申し立てることが可能です。では、遺産分割調停とは具体的にどのような手続きでしょうか。この章では、遺産分割調停の概要について詳しく解説します。
遺産分割調停は家庭裁判所で手続きする
遺産分割調停は、家庭裁判所で遺産分割の解決を求める手続きの1つです。家庭裁判所では、相続人の話を裁判官と調停委員が聞き、相続人全員が納得できる解決案を提案します。
調停と呼ばれる手続きは、さまざまなトラブルの仲裁に行われる裁判所内の手続きです。遺産分割調停については「家事調停」に分類されており、離婚など夫婦・親子間の紛争の解決と同じ扱いとなっています。
遺産分割調停にかかる期間の目安
一般的に、遺産分割調停は半年~1年程度で終わると言われていますが、紛争が深刻な場合には1年以上にわたって行われることもあります。
令和元年の「司法統計 第45表 遺産分割事件数 終局区分別審理期間及び実施期日回数別 全家庭裁判所」を参考にすると、遺産分割調停は終結までに1年以内がトップ、次点が2年以内となっており、長期戦の様子がうかがえます。
調停が進行するスピードは各家庭裁判所によって異なっていますが、調停期日(家庭裁判所で話し合う日)は約1か月に1度程度、期日の機会は5~6回程度が1つの目安です。
参考URL 裁判所 司法統計 第49表 遺産分割事件数 終局区分別審理期間及び実施期日回数別 全家庭裁判所
遺産分割調停の申立て方法
遺産分割協議は相続人同士の話し合いに過ぎませんが、調停に移行する場合は家庭裁判所に手続きを依頼する必要があります。この依頼については、「申立て」と呼びます。
調停に申立てをする方法は以下のとおりです。(2023年11月現在)
申立てできる人 | ・共同相続人 ・包括受遺者 ・相続分譲受人 |
申立先 | 紛争の相手方のうちの1人の住所地を管轄する家庭裁判所、もしくは当事者同士が同意した先にある家庭裁判所 |
申立てに必要な費用 | ・被相続人1名につき印紙1,200円 ・家庭裁判所が指定する郵券代 |
申立てに必要な書類 | リンクをご参照ください。 裁判所 遺産分割調停 |
遺産分割調停の注意点とは
遺産分割調停は協議が難航している際の解決方法として、多くの方が利用している制度です。実際に第三者である裁判官や調停委員が参加することで、話し合いがスムーズになることがあります。しかし、遺産分割調停には注意点もあります。
調停は決裂することもある
遺産分割調停は、あくまでも調停委員の下で行われる「話し合い」に過ぎないため、納得できない解決案に対しては受け入れる必要がありません。そのため、調停期日を重ねたとしても「決裂」してしまうことはあるのです。実際に、話し合う気が無い場合は、調停開始後すぐに決裂する方もいます。
遺産分割調停が難航したら、遺産分割審判に移行し、裁判官による判断を待つことになります。
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調停委員に主張をする必要がある
遺産分割調停は、自身の主張を調停委員に対して行う必要があります。調停委員は当事者間の意見を聞き取った上で、解決案を提示します。そのため、自身の主張をうまく伝えられなければ、調停で不利な立場に置かれる可能性があります。
また、証拠を作る必要もあり、自身で調停に対応することに疲れ、弁護士に依頼するケースも多くなっています。弁護士費用は調停費用とは別に捻出する必要があり、重い負担です。
調停解決には期間を要する
先に触れたように、調停は複数回の期日を経る必要があり、1年程度の期間を要することが多くなっています。遺産分割協議自体には期限はありませんが、遺産分割協議が遅れると、相続税申告が遅れる可能性があります。
相続税申告が必要な方の場合、「被相続人が亡くなった日を知った日の翌日から10か月以内」に納税をする必要があります。遺産分割がまとまっていないと、未分割として相続税を申告する必要があり、一般的な相続税申告よりも認められない控除があるなどのデメリットも発生します。
遺産分割調停に発展する前に|トラブルを避ける3つのコツとは
遺産分割調停は協議が難航している場合には、解決策として有効です。しかし、調停へと発展してしまうとすでにご紹介のとおり、解決までに時間を要したり、調停委員への対応に苦戦したりする可能性もあります。では、遺産分割調停への発展を防ぐためには、一体どのようなコツがあるでしょうか。以下3つにて解説します。
遺言書を作る
遺産分割協議は、遺言書が無い場合に行われます。つまり、生前に遺言書を残しておくことは相続で揉めないコツです。特に子ども同士の仲が悪かったり、前妻との間に子が居たりするケースは、相続の紛争化につながりやすいため、遺言書で遺産分割協議そのものを回避することがおすすめです。
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遺産分割協議で話し合いを終える
遺産分割調停を回避し、円満に終えるためにはなるべく「遺産分割協議」の段階でしっかりと話し合いを行い、調停への発展を回避することがおすすめです。先に触れたように遺産分割協議そのものには期限はありませんが、相続税が発生する場合には10か月以内に納付を終える必要があります。
また、遺産分割調停や審判にまで発展すると、ご自身で裁判所への対応をすることが難しくなるため、弁護士に依頼をすることが多くなります。弁護士費用は決して安いものではないため、なるべく協議の段階で終えることは、相続人全員にとってプラスの効果があると言えるでしょう。
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家族で生前から相続について話し合う
遺言書の作成や遺産分割協議をまとめることなど、さまざまな方法で遺産分割協議を回避することが可能ですが、家族間で不平不満が長年蓄積されていると、相続時に衝突してしまうケースがあります。相続の紛争化は、決して財産を巡って対立するだけが理由ではないのです。
親子間、兄弟姉妹間で悪感情が蓄積されていると、相続をきっかけに激しく衝突するリスクがあります。難しいかもしれませんが、生前からしっかりと家族間で相続について話し合っておくことも、円満な相続につながります。
合わせて読みたい:相続の生前対策とは?民法上の対策と相続税法上の対策の概要を行政書士が解説!
遺産分割調停の回避にも、遺言書作りがおすすめ
この記事では、遺産分割調停について詳しく解説を行いました。遺産分割調停は難航する協議を打破したい時に有効な方法ですが、長期化したり調停委員への対応を要したりと、相続人の負担も大きな手続きです。できれば円満に相続を乗り越えるためにも、遺言書の活用もご検討ください。
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