夫婦で一緒に遺言を残す方法!いざという時に備えて第2順位の相続人まで指定できる?

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夫婦で一緒に遺言を残す!〜いざという時に備えて第2順位の相続人まで指定できる?〜

ご相談者様:横浜市港南区在住 80代男性

私には妻と二人の子供がいます。
妻も私も高齢になり、お互い介護が心配な年になりました。

二人の子供のうち、長女は妻や私を気遣ってくれ、介護もすると言ってくれています。しかし、長男は定職につかず、何度も私たちにお金の無心に来るのです。

そこで、お互い老後のために遺産は全て、私は妻に、妻は私に残したいと考えています。同じ考えであるため、2枚も遺言書を残すよりも二人の意思であるという遺言書を作成することは可能でしょうか?

また、仮にどちらかが先に亡くなった場合は長女に遺産を相続させたいと思っています。まずは配偶者に、配偶者がいなければ長女に、という遺言書を作成することはできるのでしょうか?

回答:長岡行政書士事務所 長岡

ご相談ありがとうございます。

遺言書を二人一緒に残すことはできるかという事と、仮に指定した相続人が先に亡くなった場合に他の人を指定しておくことはできるのか、というご相談ですね。

まず、ご夫婦でも共同で遺言を残すということは法律で禁止されています。ただ、一緒に遺言書を作成するということが禁止されているわけではありません。

もう一点、指定した相続人が先に亡くなった場合に他の人を指定しておくことができるかという点については、遺言書で指定することができます。いざと言うときに備えることはとっても大切なことです。

今回は『ご夫婦で一緒に遺言を残す方法』と『相続人が遺言者よりも先に亡くなってしまった場合、いざというときに備えた相続人の指定方法』についてお話ししたいと思います。

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夫婦であっても共同で作成する遺言書は無効

まず、たとえ夫婦であっても共同で遺言書を作成するということは法律(民法975条)で禁止されています。

 

民法975条 (共同遺言の禁止) 遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。

 

夫婦が連名で遺言を作成したようなケースがこれに当たります。

ただ、たとえ連名であったとしても『各自作成した遺言部分が容易に切り離すことができる場合は共同遺言とならない』とされた裁判例もあります。

 

しかし、基本的に共同遺言は遺言書として有効か無効か、そもそも効力の有無について裁判になるような事例です。

その時点で相続人にとって大きな負担が生じますので、夫婦共同遺言を作成することは避けた方が良いでしょう。

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遺言は何よりもご本人の意思を大切にするという趣旨から定められたものです。

そのご本人が共同で遺言書を遺したいと言っているのになぜ禁止するのでしょうか?

 

民法975条の趣旨は、個人の最終意思の明確性とその尊重といった観点から共同遺言を禁止しています。

そもそも、遺言制度には『遺言自由の原則』というものがあります。

『遺言自由の原則』とは、被相続人が遺言によって自らの財産を自由に処分できるという原則です。この原則に従って、一定の制約の中であれば自らの財産を自由に処分できるとともに、「やっぱりやーめた!」と自由に撤回することも可能なのです。

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この点、夫婦が共同で作成した遺言書があったとすると、一方が撤回したいときであっても共同で作成した場合には、相手にもう一度作成し直してほしいと言うのは申し訳ないという気持ちがあり、自由に撤回できなくなる可能性もあります。

 

遺言は作成者の自由な意思に基づいて作成され、遺言の撤回も自由なものでなければならないということから後々行動が制約されないように共同遺言も禁止しているのです。

 

また、一方の遺言書が要件を満たさず無効となった場合、もう一方の遺言書は有効なのか無効なのかといった不安定な形にもなりかねません。

 

つまり、この共同遺言を禁止する趣旨も結局は遺言者の意思を尊重しましょうといった考えから規定されたものなのです。

 

夫婦で遺言書を作成する方法

ここまでに遺言書は夫婦共同で作成することは法律において禁止されているということを解説してきました。

全く同じ用紙に作成することは禁止されていますが、一緒に作成すると言うことが全くできない訳ではありません。

 

その方法として、次の2つが挙げられます。

  • 必ず別々の書面で作成すること。
  • 条件をつけることはできる限り控えること。

お互いの遺言に条件などを記載すると、後々矛盾が生じた場合にトラブルの元となりかねません。

特に自筆証書遺言(※1)の要式で遺言書を作成する場合には、条件を付す内容にすることは控えた方が良いでしょう。

※1 自筆証書遺言とは・・・

遺言者が、遺言の全文、日付、氏名を自分自身で手書きし、それに押印することで成立する形式の遺言書のこと

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つまり、夫婦で遺言書を作成する方法として、一緒の書面に作成することはできませんが、夫婦で同時に遺言を作成することは可能なのです。

隣で相談しながら一緒に遺言を書くことまで法律で禁止されていません。

夫婦で作成した遺言書を確実に有効にするためには公正証書遺言がオススメ

夫婦で一緒に遺言書を作成する方法をご紹介しましたが、遺言書を有効なものとして作成するためにはそもそもの要件が厳しいのです。

その上さらに条件が加えられるとなると、ご自身で遺言書を用意するのは少々ハードルが高いのです・・・

 

自筆証書遺言は基本的には遺言者の死後、遺言書を発見次第相続人などが裁判所に提出し、遺言書の効力を確認します。

しかし、亡くなった後に作成した遺言書が成功なのか失敗なのかわかるものというのは不安すぎますよね。

 

そこで確実に有効な遺言書として作成できるようにおすすめ方法を紹介します。

それは、公正証書遺言で遺言書を残すことです。

公正証書遺言は、二人以上の証人の立ち会いの下、遺言者が遺言の内容を公証人に口頭で伝え、公証人がそれを筆記して、遺言者、証人、公証人のそれぞれが署名捺印して作成されます。

 

公証人は元裁判官など、法律のスペシャリストです。

その公証人が作成する公正証書遺言は法的に有効性が高いと考えられています。

 

そのため公正証書遺言を夫婦で話し合って一緒に遺言書を作成した場合にもご安心いただけると思います。

合わせて読みたい>>公正証書遺言は自分で作れる!実際の作成方法や流れを行政書士事務所が解説

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相続させたい人が遺言者より先に亡くなった場合の対策

相続させたいと思っていた人が遺言者よりも先に亡くなってしまった場合、『遺言は効力を失って無効となり、その部分については遺言がなかったと同じ状態になる』という裁判例があります。

 

しかし、そのような事態になっても既に用意している遺言書が無効とならないための方法はあります。

  • 遺言書を書き直す
  • 予備的遺言を作成する

この2パターンです。

遺言書を書き直す

遺言書は『遺言自由の原則』、つまり何度でも撤回して作成し直すことができます。

遺言者よりも先に相続人が亡くなってしまった場合、改めて遺言書を作り直せば解決です。

合わせて読みたい>>遺言書の訂正方法|誤字や遺言内容の不備があった場合の対処法

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しかし、遺言書を書き直す場合、問題が生じる可能性があります。

遺言者が成年被後見人(※2)となっていた場合です。

遺言書を作成するためには遺言能力(※3)がなければ新しい遺言は作成できないのです。

※2 成年被後見人とは

精神上の障害により物事を弁識する能力(事理弁識能力)を欠いているのが通常の状態である者のことを指します。家庭裁判所から後見開始の審判を受けることで成年被後見人となります。

事理弁識能力を欠く状況というのは、加齢や認知症、その他ご病気など、さまざまな事情で十分な判断能力をお持ちでない方のことを含みます。

*平成11年以前の旧民法では禁治産者と呼ばれていました。

 

※3 遺言能力とは

遺言は、未成年であっても15歳になれば誰でも法定代理人の同意なく遺言書を作成することができる(民法961条)と規定されています。

しかし、遺言能力が認められるためには遺言を作成する時に15歳以上であることに加えて、意思能力があることが必要であると解されています。

この意思能力とは、自分の行為の意味や結果を理解し、判断し予測することのできる精神的能力のことを言います。通常、幼児や精神疾患を有する人、泥酔者には意思能力がないと考えられています。

加齢やご病気などの理由から意思能力が認められない場合もあります。

成年被後見人であった場合、有効な遺言書を残すためには以下のような条件が課せられます。

  • 事理弁識能力(物事の道理や行為の結果を理解することのできる能力)を一時的に回復すること
  • 医師二人以上の立ち会いがあること
  • 立ち会った医師が、遺言者が遺言時に事理弁識能力を失っていなかった旨を遺言書に記載、署名、押印が必要

このような要件が加わるので難易度が上がる上に、事理弁識能力が回復しない場合には遺言書を作成しなおすことができないまま亡くなってしまうといった可能性もあるのです。

 

その場合には、遺言は効力を失って無効となります。

その結果、その部分については遺言がなかったと同じ状態になる、つまり、遺産を全て妻に残したいという部分については遺言がなかったものとして扱われ、法定相続人全員で遺産分割をするということになります。

 

ご相談者様のように、まずは奥様に、奥様がいなければご長女にといった希望は叶わなくなってしまうのです。

予備的遺言を作成する

遺言書を新たに作成できない場合に備えて、予備的に遺言者の遺産を相続させたい次の遺言者を指定しておくことが可能です。

 

これを『予備的遺言』といいます。

 

例えば、妻に全財産を相続させる旨の遺言書を作成していたとします。

しかし、妻が先に亡くなってしまうなんてことも可能性はゼロではありません。

 

そのような場合に備えて、『仮に妻が遺言者よりも先に亡くなってしまった場合には長女に残す』という予備的遺言を残すことで、遺言者の意思に沿うように万全を期すことができるのです。

 

また、相続を受けるためには生存している必要があります。

 

例えば、遺言者と配偶者が同じ自動車や同じ飛行機に乗っていて、同一の事故に遭遇し、どちらが先に亡くなってしまったのか確実なことがわからない場合、同時に死亡したと考えられます。

この場合、相続人が遺言者よりも先に亡くなってしまった場合と同様、遺言書のその部分については無効となってしまいます。

合わせて読みたい>>相続人が同時に死亡した場合の相続はどうなる?同時死亡の推定と代襲相続の関係について解説

相続人が同時に死亡した場合の相続はどうなる?同時死亡の推定と代襲相続の関係について解説

相続人が同時に死亡した場合にも備えて、予備的遺言は有効であると考えられています。

 

夫婦で遺言書を遺す際の予備的遺言のポイント

いざというときに備えて予備的遺言が有効であることをご説明いたしました。

この予備的遺言を、夫婦で遺言書を遺す際にはどのように遺言書に記載したら良いのかもあわせてご紹介します。

配偶者が先に亡くなった場合に備えた予備的遺言書の記載例

第1条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、遺言者の配偶者A(昭和○年○月○日生)に相続させる。

 

第2条 上記妻Aが遺言者より以前に死亡(同時に死亡した場合も含む)したときは、遺言者は前条で上記妻Aに相続させるとした財産全部を、遺言者の子、長女B(平成○年○月○日生)に相続させる。

 

令和5年1月1日

氏名  印

このように条項を付け加え、『妻Aが先に亡くなった場合には長女Bに相続させる』と付け加えることで予備的遺言を作成することができます。

この際、誰に相続させたいのか確実に判断できるように、例えば『子』と明記するのではなく、長女(名前)や生年月日まで入れると良いでしょう。

 

予備的遺言の必要書類

公正証書遺言で予備的遺言を記載する場合、予備的遺言に入れる方の名前、生年月日、住所、遺言者との続柄などがわかる書類が追加で必要となる可能性があります。

事前に確認することをお勧めします。

必要書類 例
  • 住民票
  • 戸籍謄本 等

夫婦で一緒に遺言を残す場合は「一緒に公正証書遺言を作成」することがオススメ

  • 夫婦共同遺言は法律で禁止されている。
  • 夫婦で一緒に作成したい場合には公正証書遺言にすると安心。
  • いざという時に備えて予備的遺言の活用を!

この記事でご紹介したのは一般的なケースです。

夫婦で一緒に遺言書を作成することも、予備的遺言を作成することも、ご自身で準備することは少々ハードルが高く、遺言書の効力は死後でなければ判明しないことなどから、ご安心いただくためにも公正証書遺言にする、もしくは専門家にサポートを依頼するということをおすすめいたします。

合わせて読みたい>>妻に全財産を渡す遺言書の書き方!注意点を行政書士が解説

それぞれのご夫婦のケースによっては、より良い方法があるかもしれません。

行政書士など専門家にサポートを依頼することでより確実で、より良い相続の実現ができると考えます。

<参考文献>

・常岡史子 著 新世社 『今日の法学ライブラリ 家族法』

・雨宮則夫・寺尾洋 編著 日本加除出版 『Q &A遺言・信託・任意後見の実務 第3版』

・新井誠・岡伸浩編 日本評論社 『民法講義録 改訂版』

 
行政書士 長岡 真也
この記事の執筆・監修者:長岡 真也(行政書士)
神奈川県行政書士会所属(第12091446号)
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