遺言執行者の権限を遺言書に明記する書き方|行政書士が分かりやすく解説!

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遺言執行者の権限を遺言書に明記するポイントについて解説!

「子ども達を相続で困らせたくない。遺言には財産分与のことだけ書けば大丈夫か。」
「遺言で遺言執行者を指定したい。どのように書いたら良いか知りたい。」
「遺言執行者の権限を遺言に書く必要があるのか。」

 

ご自身亡き後の財産の処分について、遺言で思いを伝えようと考えている方も多いと思います。

遺言があれば、通常は遺言の内容に沿った相続が行われますので、相続人が改めて遺産の分割方法について協議する必要はなく、残されたご家族の負担は、遺言がない場合に比べると少なくなることが多いと言えます。

 

しかし、遺言があれば相続人の負担が少なくなるといっても、遺言の内容を実現するための手続きは、誰かがしなくてはなりません。

 

この「遺言を実現してくれる人」がきちんと手続きをしてくれなければ、せっかく遺言を書いたとしても、なかなか手続きが進まなかったり、もめてしまったりする場合も出てきてしまいます。

 

遺言を書いてその内容を確実に実現させるためには、この「遺言を実現してくれる人」をはっきりさせておき、その人が「遺言の内容を執行できる」ことを遺言で明らかにしておくことが大切になります。

この「遺言を実現してくれる人」のことを「遺言執行者」と言いますが、今回は、この遺言執行者を遺言で指定する際のポイントについて、解説したいと思います。

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遺言執行者とは遺言を執行する権限を有している人

長岡:「こんにちは!長岡行政書士事務所の長岡です。」

Aさん:「こんにちは。今回もよろしくお願いします!」

長岡:「今回は、遺言執行者を遺言で指定する際のポイントについて解説したいと思います。」

Aさん:「遺言執行者は、遺言を執行する権限を有している人のことですね。」

長岡:「その通りです。遺言執行者が遺言で指定されている場合、通常はその遺言執行者が遺言の内容を実現するための手続きを行うことになります。」

 合わせて読みたい>>遺言執行者としての手続きとは?遺言者が死亡したらやるべきこと 

遺言執行者としての手続きとは?遺言者が死亡したらやるべきこと

遺言執行者の権限は、民法で明確に定められています。

 

(民法第1012条)
遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。

 

 

Aさん:「遺言執行者が指定されていない場合はどうなるのですか?」

長岡:「その場合は、相続人や受遺者全員が協力して手続きを進めることになります。」

Aさん:「全員が協力しなければならいとなると、なかなか大変そうですね。」

 

長岡:「そうですね。遺言の内容に納得しない相続人がいたり、遠方に住んでいる相続人がいる場合などは、なかなか手続きが進まないことがあります。そのようなことにならないよう、遺言を書くときには確実に手続きを進められそうな遺言執行者を指定しておくことが大切になります。遺言執行者を指定した場合、遺言書の書き方にポイントがありますが、ますは遺言執行者を指定することについて説明しましょう。」

遺言で遺言執行者の権限を明記する書き方

長岡:「遺言執行者は遺言を執行するための一切の権限を有し、これは法律に基づいた行為ということになります。自信をもって取り組んで大丈夫です。」

Aさん:「そうなのですね。でも、相続人とは関係のない第三者でもある遺言執行者の場合、いくら法律で定められていると言っても、相手方が本当にその事実を信じてくれるのか、やはり不安になってしまいます。」

長岡:「そうですね。遺言の手続きをする場合、遺言書を手続き先で呈示し、内容の確認をすることになりますが、このとき、遺言執行者の権限の記載方法にもポイントがありますので解説します。」

Aさん:「よろしくお願いします!」

 

遺言執行者は、遺言の実現に必要な一切の行為をすることができると法律で定められています。本質的には、遺言書では誰を遺言執行者に指定するのかを書けばそれで足り、その遺言に関してどのような権限を有するのか個別に記載しておく必要はないと言えるかもしれません。

つまりその場合、遺言書で遺言執行者を指定する方法としては、次の文言だけ記載しておいても構いません。

(例)
「遺言執行者として〇〇〇(氏名)を指定する。」

 

しかし遺言書では、様々な財産分与の内容が書かれています。例えば、次のような内容の遺言が書かれていたとします。

 

「A銀行の預貯金は長男に、B銀行の預貯金は次男に、有価証券については長女に相続させる。」

 

このような遺言の内容を実現する場合、遺言執行者は各銀行や証券会社に相続に関する書類を請求したり、それらの書類を作成・提出したり、払戻金を一旦受け取ったりすることになります。

その手続きの際、銀行や証券会社は遺言の内容を確認するわけですが、このとき、遺言執行者の名前だけが記載されていた場合、「本当にその人にこの手続きをさせて良いのか」ということは、遺言書からは見えてきません。

したがって実務的には、遺言に遺言執行者へ与える権限を個別具体的に記載しておいた方が良いです。

遺言に遺言執行者の権限について書いておけば、相続手続きの際、誰が遺言執行者であるのかと同時に、その者がその遺言に関して何をすることが出来るのかを遺言書で確認できます。

遺言執行者の権限は、遺言書へ明記しておきましょう。

具体的には、以下のような文言を記載します。

  1. 「執行者は、他の相続人及び受遺者の同意を必要とせず単独で、遺言者の貸金庫(※2)の開扉・点検・在中品の受領、貸金庫契約の解約をすることができる。」
  2. 「遺言者は、遺言者の有する預貯金等の名義変更・解約・払い戻しなど、この遺言に必要な一切の権限を行使することができる。」
  3. 「執行者は、代理人を選任してこの遺言を執行させることができる。」(※1)

 

(※1)遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができることが、法律で認められています(民法1016条)。代理人に手続きの一部をお願いしたい場合などに備えて、この点についても明記しておくと良いと言えます。
(※2)貸金庫とは、銀行などに備え付けられている金庫(保管箱)を貸し出すサービスのことです。主に盗難・火災・改ざんなどの危険から守るため、宝石・貴金属・有価証券・重量書類など、利用者にとって大切なものが預けられています。利用者は鍵や符号の並べ替えにより開錠します。

 

上記のように遺言書に遺言執行者の権限をはっきりと示すことで、手続きを依頼された側は、遺言執行者がその手続きを行って良いことを遺言で確実に確認ができます。

相続人も、本当にその手続きをさせてよいのか、疑問や不安を持つことなく遺言執行者に委ねられ、全体としてよりスムーズな執行が図られることになるでしょう。

前述したように、遺言執行者の権限は本来的には法律で認められている権利ですので、必ず書かなければならない内容ではありません。

しかし、その遺言書を見た誰もが、遺言執行者がその手続きを行って良いことを確認できるようにしておくことが実務上のポイントです。

この他、費用の支払いについて、例えば葬祭費や生前の債務も執行の一環として遺産から支弁できる(支払いできる)こと、遺言執行者が専門職であれば、執行報酬や執行費用の支払いについても遺言に記しておくと良いと言えます。

具体的な記載例は以下の通りです。

「生前の未払い債務、葬祭費、遺言執行費用及び遺言執行者への報酬などの遺言者に係る債務を、遺産の中から支払うものとする。」(※3)

これらの記載がない場合、その支払いはどうするのか相続人間で話し合わなくてはならなくなります。
遺言者の意思の表れである遺言書に明示的に記載することで、これらも執行の一環として行えると考えられ、遺言に係る様々な手続きが円滑に実行できることとなります。

関連記事はこちら(過去記事:行政書士が解説!!遺言書に書いた方が良い「葬祭費」について

(※3)遺言執行費用や報酬は、主に遺言執行者が専門職の場合の記載例となります。

遺言執行者は行政書士など専門家に依頼すると安心

長岡:「遺言執行者は、中立・公平な立場で遺言を実行する権利と義務を有します。」

Aさん:「どのような人を遺言執行者に指定すればよいのですか?」

長岡:「はい、誰を遺言執行者にするかは、遺言をスムーズに執行するうえでとても大切です。ポイントは次の通りです。」

 

遺言執行者は、次の欠格者以外であれば誰でもなることができます(民法第1009条)。

 

≪遺言執行者になれない者(欠格者)≫

  • 未成年
  • 破産者

したがって、弁護士や私たち行政書士のような専門職である必要はないため、相続人のうちの一人を遺言執行者に指定する場合も見られます。

しかし、遺言執行の手続きは多岐にわたり、それぞれが複雑でもあります。

そのような手続きを、相続人の一人が行うことは、その相続人にとって比較的大きな負担となります。また、遺言の内容に納得していない相続人がいるときは、同じ相続人という立場でもあるため、なかなか手続きを進めることが難しい場合もあります。

このように、遺言執行は相続人の利害に関わることでもあり、手続きも手間暇かかるものでもあります。せっかく遺言を作成し、遺言執行者まで指定するならば、遺言執行者は専門家にした方がよりスムーズに遺言内容を実現できます。

遺言書で遺言執行者を指定する場合は、ぜひ行政書士などの専門家も検討してください。長岡行政書士事務所でも、遺言執行者のご相談を承っております。

遺言執行者ができる5つの手続き例

Aさん:「なるほど、遺言執行者を誰にするのかも、大切なポイントなのですね。」長岡:「そうですね。専門家でない方が、日常生活を送りながら相続手続きを進めるのは大変なことです。」

Aさん:「ところで、専門家にしろ相続人の一人にしろ、遺言執行者になった場合、何を根拠に遺言執行をすることができるのですか?自分が遺言執行者であることに自信をもって、堂々と手続きを進めるために、どのようなことが出来るのか知っておきたいです。」

長岡:「わかりました。では次に、遺言執行者ができること、つまり遺言執行者の権限について説明しましょう。

先述した通り、遺言執行者の権限は、民法で明確に定められています。

 

(民法第1012条)
遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。

 

例えばどのようなことが出来るのか、遺言執行に必要な行為を具体的に挙げると次のようなことがあります。

  1. 相続にともなう各種名義変更
  2. 預貯金の払い戻しと相続人や受遺者への交付
  3. 財産管理
  4. 子どもの認知
  5. 相続人の廃除やその取消し

(※特に4.5は、遺言執行者でなければ行うことができません。)

 

また、遺言執行者がした遺言実行のための行為は、相続人に直接効力を生じます。

(民法1015条)
遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる。

 

このように、遺言執行者は遺言の内容の実現という目的に従い、そのために必要な一切の行為をすることができ、そしてその行為の結果は直接相続人に帰属することになります。

なお、遺言執行者の権限については2018年の法改正で強化され、明確に規定されました。

従来、「相続人の代理人」と規定されていたものが、改正により「遺言の内容を実現するための一切の権利義務を有する」という文言になり、遺言の内容を実現するための強い権限が法律で認められたのです。

遺言関連法の関連記事はこちら(過去記事:遺言の法改正による施行日前後の各制度ごとの取り扱いについて

よりスムーズな執行のために遺言執行者の権限は具体的に明記する

遺言執行の手続きは、煩雑で多岐に渡っています。一つ一つの手続きの際に確認作業や問い合わせなどが発生した場合、執行の手続き全体が滞り、遺言執行者の手間もどんどん増えていきます。

 

遺言執行の手続きをスムーズに進めるためには、遺言執行者の行為に関する確認作業を少なくすることがポイントとなります。そのためには、遺言執行者がその遺言について何が出来るのか、権限を個別具体的に遺言書に記載しておくことが大切といえます。

 

残される方を思って作成した遺言が、なかなか実現されなくては残念なことです。遺言の手続きに関わる人たちが分かりやすく実現しやすい遺言の内容となるよう、遺言執行者の権限については明確に記載することをお勧めいたします。

 

長岡行政書士事務所では、遺言の作成について親切・丁寧な対応を心がけております。今回の遺言執行者の指定や権限の明記などを含め、遺言作成について分からない点や不安なことがある方は、ぜひ一度相談にいらして下さい。

 
行政書士 長岡 真也
この記事の執筆・監修者:長岡 真也(行政書士)
神奈川県行政書士会所属(第12091446号)
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