「祖父が遺言書を書いてから死亡しました」
「父が祖父の遺言書により相続したのだけど、手続きをする前に死亡しました」
「遺言書により相続した人が、手続き前に亡くなった場合どうなるのか教えて」
今回は、「遺言書の手続き開始前に相続者が亡くなった」というシチュエーションをもとに、皆さんがお悩みになりがちな、相続手続きにスポットを当てた座談会を開催していきます。
たとえば祖父(被相続人)が遺言書で父(相続人)に相続させるよう記載していたものの、その相続手続き前に父がなくなってしまったケースでは、その後の相続手続きはどのようになってしまうのでしょうか。
そこで、お亡くなりになったあと、空の上から残された遺族の様子を眺めている、とある祖父と父に登場していただき、一緒に解説していきましょう。
司会「本日はよろしくお願いします」
祖父(故人/遺言者)「まさか我が息子とともに、空の上で相続について話すとは…遺言を書いているときには夢にも思いませんでした」
父(故人/相続者)「まったくだ。俺も自分が何でここにいるのか…」
祖父「お前はいつも暴飲暴食を家族から諫められていたのに、ちっとも耳を貸さなかったから」
父「そう言うなよ、親父。会社のストレスだってあったんだから」
司会「まあまあ、親子げんかは置いておいて。遺言書の手続未了ではありますが、ご遺族は横浜市の行政書士さんにご依頼されているようなので、ひとまず安心してください」
父「家族もびっくりしているだろうな。相続人である私がいきなり亡くなって」
祖父「そこなんだが…遺言書の手続未了ということは、一応、相続自体は始まっているというわけだよな?」
司会「始まっています。相続人が遺言書で相続した状態ですが、具体的な手続きをする前に亡くなってしまった、というところです」
父「ややこしいなあ」
司会「今回のような遺言書により相続すべき人が相続手続き前に死亡した、というケースは、相続の現場では意外とあることなんですよ。
目次
相続前に遺言書により相続すべき人が死亡の場合は遺産分割協議
まずは相続手続きの理解を深めるために、相続が開始していない時点で亡くなった場合、つまり遺言者は生きていて、遺言書で相続を指定された方が先に亡くなったときの手続きを確認することから始めましょう」
祖父「なんだい、それは?」
司会「遺言書を書いただけの状況であり、遺言者は健在ですので相続は発生していないということですね」
父「実際、相続開始「前」に相続すべき人(以下、受益相続人)が亡くなったらどうなるんですか?」
代襲相続は適用されない
祖父「私の相続人、つまり息子の更に相続人である孫が遺言書で書かれていた遺産を代襲相続するってことでしょう?」
司会「…と考えがちですが違います。原則、代襲相続は適用されないんですよ」
祖父「代襲相続?」
司会「代襲相続とは、今回で言えば祖父の子、つまり父の子である孫が代わって相続することをいいます」
父「親父が言っている内容と同じじゃないんですか?」
司会「でもこれは遺言書が残されていない法定相続のケースなんですよ。遺言書による相続では、判例では原則的に代襲相続が認められていないんです」
父「遺言書の効力はなくなっていないとか、そういう理由ですか?」
司会「ご明察です。遺言書のその部分は効力を生じず、亡くなった相続人が相続するはずだった財産は、法定相続人全員の共有となるわけなんですね」
祖父「ということは?」
遺産分割協議が必要となる
司会「無効になった遺言のその部分については、その財産について法定相続人全員で遺産分割協議をしなければいけなくなります」
父「ややこしいもんだなあ」
合わせて読みたい>>遺産分割協議とは?流れとポイントを行政書士が解説
遺言書をせっかく作成したのに、相続させる相手が先に死亡したことで遺産分割協議で揉めてしまうケースも珍しくありません。
遺言書作成の実務としては、このような事態を防ぐために、予備的遺言で対策することになります。
合わせて読みたい>>遺言で相続させる相手が死亡したらどうなる?対策となる予備的遺言について解説!
相続後に遺言書により相続した人が死亡した
祖父「遺言書の相続人が亡くなった場合、その相続人に対しての遺産分割の指定部分が、無効になるのはわかったけど、今回の私たちのように相続開始後に相続人が亡くなったら実際どうなるんですか?」
司会「相続の手続きを始めていないからといって、相続が開始されていないことにはなりません。相続は、被相続人が亡くなったときに開始されますからね」
今回ご相談いただいているケースでは、遺言者が死亡した後、相続人が死亡していますから、遺言書は有効です。
父「それがさっき言っていた、遺言書の執行手続きだけが完了していない状態というわけですか」
司会「はい。例えばこんな家族構成を想像してみてください」
【具体例】
- 被相続人:A(父親/母親はすでに他界)
- 相続人 :B(長男/配偶者E、子Fがいる)、C(次男)、D(長女)
祖父「うちの家族構成に近いな」
まずは遺言書の内容を実現する
司会「主だった相続の流れは次の通りです」
遺言書により相続した受益相続人が手続き前に死亡した場合の流れ①
- 2022年5月1日 :Aが遺言を作成「不動産をBに相続させ、預貯金その他一切の財産をC、Dに1/2ずつ相続させる」
- 2022年10月1日 :Aが他界
- 2022年10月15日:Bが死亡(遺言書なし)
司会「2022年5月1日に作成してあった遺言書については、手続き未完の状態となっているわけです」
父「なるほど」
司会「この場合、Aさんが他界され、遺言に基づき不動産はBが相続していますが、Bさんには遺言書がありません。とうことはAさんから相続した不動産も含めたBの財産を、法定相続人であるEさんとFさんが相続していることになります」
祖父「うん、ここまではわかります。ここから法定相続の流れになるわけですね」
司会「はい。そのため、まずはAさん→Bさんへの相続、つまり遺言書の内容を実現していきます。
死亡した相続人からの相続手続きを行う
司会「では続けて、今後の流れを見てみましょう」
遺言書により相続した受益相続人が手続き前に死亡した場合の流れ②
- まず不動産について、AからBへの相続手続きをする
- 不動産も含めたBの財産について、EとF(法定相続人)で遺産分割協議をする
- 遺産分割協議書を作成し、協議書に基づいて相続手続をする
つまり今回のケースで言うと、まずは祖父→父への相続を遺言に従って手続きし、その後、父→子への相続を遺産分割協議によって行う、ということです。
父「なるほどな。こういう流れがわかると、安心するな。私の妻や子も行政書士さんにお願いもしているみたいだし」
遺言書の執行手続き・相続手続きも行政書士に相談できる
司会「ええ、正しい選択だと思います。相続手続きは、煩雑なこともありますし、そもそも馴染みがないものですから、日常生活を送りながら対応することは簡単ではありませんから」
祖父「今回みたいに相続がいくつか重なると、手続きはさらに面倒なものになりそうだしな…」
司会「はい、相続手続で分からないことや困ったことがある場合には、ぜひ専門家に相談したほうがいいんです」
祖父「わかった。ちゃんと相談している義娘と孫を褒めてやらないとな。今度の盆のときにでも仏壇から顔を出して」
父「親父、ドリフのコントじゃないんだから」
遺言書の執行手続き・相続手続きも行政書士に相談できます。
横浜市の長岡行政書士事務所では、遺言書の作成サポートはもちろん、相続手続きまで一貫して対応していることが特徴です。
今回の事例のように、複雑で手続き方法がよく分からないというケースに困っている方は、ぜひ一度長岡行政書士事務所へご相談ください。
印鑑1本で丸投げできる相続手続きを実現いたします。初回相談は無料です。