
遺言執行者はその名のとおり、遺言の内容を執行する人ですが、具体的にどのような役割を担っているのか、どのような義務があるのか分からず、悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、民法改正によって明確になった、遺言執行者の立場・義務について、横浜市で遺言書作成・遺言執行をサポートしている行政書士が解説します。
目次
遺言執行制度とは
まず前提として、「遺言執行制度」がどのようなものなのか解説します。
遺言者の死亡後、遺言の内容を実現するために必要な行為を行うことを遺言執行といいます。
本来、遺言の内容の実現は、遺言者の権利義務を受け継ぐ人である相続人が行うべきです。
しかし遺言の内容によっては、相続人間で利害が対立する場合があります。
このような場合、相続人自身による手続では、公正な執行が期待できないといえるでしょう。
そこで、このような場合に遺言執行者に遺言の執行を委ねることにより、遺言の適正かつ迅速な執行の実現を可能とするのが遺言執行者制度です。
なお、遺言執行者を指定する方法には、次の2パターンの方法があります。
- 遺言により指定される場合
- 家庭裁判所が選任し、遺言執行者として就任する場合
そして、遺言により指定される場合は、次の2通りの指定方法があります。
- 遺言者から直接遺言執行者が指定される
- 遺言で第三者に遺言執行者の指定が委任され、その受託者によって指定される
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遺言執行者の義務
遺言執行者については法律で様々なことが定められていますが、2019年に法改正があり、遺言執行者の立場や権限が明確になりました。
民法改正前の遺言執行者
(民法1015条)
「遺言執行者は、相続人の代理人とみなす」
遺言執行者は、「相続人」(=財産を受け取る人)の「代理人」という立場であり、遺言の執行は、相続人のために代わって行うものとされていました。
しかし、遺言の内容は、必ずしもすべての相続人の希望に沿った内容であるとは限りません。そのため相続人に代わって手続しようとしても、遺言執行者と相続人の利害が対立し、トラブルになってしまう場合もあったのです。
民法改正後の遺言執行者
(民法1012条1項)
「遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する(民法1015条)
「遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる」
改正では「代理人とみなす」という文言がなくなり、「遺言の内容を実現するため」という一文が明記されました。
この一文が何を意味するのかというと、遺言執行者は被相続人(=遺言者)の書いた遺言内容を実現するために職務を行うのであり、必ずしも相続人にとって利益となる行為ばかりするわけではない、ということが明確になったのです。
これにより、遺言執行者は相続人から独立した遺言を執行するための立場となり、より公正な遺言執行を行うことができるようになりました。
そして遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利と「義務」を有するとされています。
とくに知っておくべき遺言執行者の代表的な義務としては、次のようなものが挙げられます。
- 遺言執行者の善管注意義務
- 遺言執行開始の通知義務
- 相続財産の目録作成義務
- 遺言執行者の報告義務
- 遺言執行者の受取物受渡し等の義務
それぞれどのような義務なのか、詳しく見ていきましょう。
遺言執行者の善管注意義務
遺言執行者は委任の本旨に従い善良な管理者の注意をもって遺言執行に必要な行為をする義務をおっています。善管注意義務とは、職業や社会・経済的地位に応じて一般的・客観的に要求される注意義務です。
ちなみに注意義務の程度は、遺言執行者の専門知識や職業、地位、能力によってことなります。
遺言執行開始の通知義務
法改正により遺言執行者の権限はより強いものになりましたが、それに合わせて「誰が遺言執行者なのか」を相続人が知る必要もより強まった、ともいえます。
そこで法改正時には、遺言執行者の「任務開始の通知義務」についても明記されました。
まず、改正前の条文を見てみましょう。
(民法1007条)
「遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。」
このように改正前の民法では、遺言執行者は、任務を開始してもそのことを相続人に通知する法的義務は明記されていませんでした。
それが改正後は、次のように定められます。
(民法1007条1項)
「遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。」(民法1007条2項)
「遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。」
実は改正前も、遺言執行者は、相続人への通知が必要と解されていました。しかし条文上の明確な定めがなかったため、通知されないケースがあったことも事実です。(とくに受贈者=遺言執行者であるケースで、あえて他の相続人に通知しないようなこともありました)
改正民法はこの点を明文化し、遺言執行者が負う義務の内容をはっきりさせたものであるといえます。
関連記事:遺言執行者の相続人への通知義務とは?遺留分がない者にも必要なのかを解説!
相続財産の目録作成義務
遺言執行者は、なるべく早く、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければなりません。また、相続人の請求があるときは、相続財産の目録の作成に立会い、又は公証人に目録を作成させなければならないともされています。
(民法1011条)
言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。
2 遺言執行者は、相続人の請求があるときは、その立会いをもって相続財産の目録を作成し、又は公証人にこれを作成させなければならない。
遺言執行者の報告義務
遺言執行者は、相続人の請求があるときは、いつでも遺言執行の状況を報告し、また遺言執行が終了したときには、遅滞なくその報告をすることが、義務づけられています。
遺言執行者の受取物受渡し等の義務
遺言執行者は、遺言執行によって受け取った金銭やその他の物を相続人に引渡す必要があります。
また、遺言執行者が相続人のために自己の名をもって取得した権利はこれを相続人に移転する必要があります。
遺言執行事務の流れについて
ここからは、遺言執行事務の流れについてみていきましょう。
大まかに7つの流れがあります。
- 遺言執行者の任務開始の通知義務
- 相続財産の目録作成義務
- 遺贈
- 債務の弁済
- 名義変更
- 引渡し
- 遺産の管理、保管
遺言執行者は義務を守りながら、このような執行していく必要があります。
遺言執行者の任務開始の通知
先述したとおり、遺言執行者は、自分の任務を開始した時は、なるべく早く、遺言の内容を相続人に通知しなければならない義務を負っています。
そのため、まずは任務開始の通知をしなければなりません。
相続財産の目録作成
次に、やはり義務とされている、相続財産の目録を作成していきます。
相続人の請求があるときは、相続財産の目録の作成に立会いのもと作成したり、公証人に作成してもらったりする必要があります。
遺贈
遺贈とは故人の遺した遺言に則って、その遺産の一部あるいは、全てを譲ることを指します。
例えば、遺言により、生前世話になった人に自分の遺産の全部や一部を与えることなどがあげられます。これも、遺言執行者が責任をもって実現していかなければなりません。
なお、遺言の対象が不特定物の場合にはその特定から、対象財産が遺産の中に存在しない場合にはその調達やそのための遺産処分を行う必要があります。
債務の弁済
遺言で指示がある場合には、債務の弁済(例えば;借金の返済など)を行います。
名義変更
遺言による財産の処分や承継に伴う登記・登録の名義変更をし、債権者や債務者に対しての通知などを行います。
承継とは、先代の人物からの地位・事業・精神を受け継ぐことです。
また、債権者は相手方に特定の行為をさせる権利(例えば、お金を受け取る権利)を持つ人で、債務者は相手方に特定の行動をする義務を負う人をいいます。(例えば借金返済の義務)
引渡し
対象の財産を受益者へ引渡します。
受益者とは、あることから利益を受ける人の事です。
遺産の管理、保管
必要に応じて、遺産の管理や保管を行います。
遺言執行制度は複雑なため行政書士へ相談を
今回の記事は、遺言書と遺言執行制度、遺言執行手続きとその流れに関して解説してまいりましたが、遺言執行者は、様々な義務を負っており、義務を果たしながら、様々な事を執行していかなければなりません。
そのため、いきなり遺言執行者を任されて困ってしまった、という声もよく聞かれます。
そのような場合は、ぜひ一度、横浜市の長岡行政書士事務所へご相談ください。実は2019年の改正後の民法では、2019年7月1日以降に作成された遺言書の執行については、遺言で制限されている場合を除き、行政書士などの第三者に任務を代行してもらいやすくもなったのです。
また日付などの条件が出てきて複雑だと感じた方もいるかもしれませんが、お問い合わせいただければ、こちらで条件を満たしているかなども確認いたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。初回相談は無料です。









