遺言執行者の選任方法・遺言執行事務の流れについて行政書士が分かりやすく解説!

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「異説・花咲かじいさんに学ぶ!」(後編)遺言執行者が行う遺言執行手続きとは?

遺言の内容を実現するために、法律では「遺言執行者」の存在が定められています。

誰しもが遺言執行者になる可能性はありますが、実際どのような手続きを行うのか知らない方が多いのではないでしょうか。

この記事では、遺言執行者が行う遺言執行手続きについて、花咲かじいさんに例えながら分かりやすく解説します。

 

花を咲かせる機会はなかったものの、一応、花咲かじいさんのもとで、人間として暮らすようになった犬、シロ。畑の隅で小判が山ほど出てきたと同時にシロが人間にもどってから、十年後。おじいさんとおばあさんは天寿をまっとうしました。あるとき、シロが、かつて小判がうまっていた場所で、おじいさんの遺言書を見つけました。遺言書が何なのかわからなかったシロは、村長のもとへ行き、遺言書についていろいろ教えてもらったのでした。

 

シロ「村長! 村長いらっしゃいますか?」

 

村長「おや、なんだいシロじゃないか。今日はいったいどうしたんだい?」

 

シロ「いえね、こないだ遺言執行者について聞きそびれてたから、教えてもらいたいなと思いましてね。やっぱりかっこいい響きだからあこがれてるんです」

 

村長「遺言執行者にかい?」

 

シロ「はい。今、僕の中でなりたいものの3位がビルオーナー、2位がトップYouTuber、1位が遺言執行者なんです」

 

村長「…どこからツッコむべきか」

 

シロ「お願いです。遺言執行者についていろいろと教えてください。村長しかいないんです」

 

村長「わかった、わかったから、そんなウルウルしたチワワみたいな目で見るんじゃない」

 

シロ「ぼくは柴犬出身ですよ。知らんけど」

 

村長「…そりゃ失礼。ええっと、遺言執行の目的のために選任されるのが遺言執行者だというところまで話したんじゃったな」

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遺言執行者の選任方法

シロ「そもそも遺言執行者には誰でもなれるものなんですか?」

村長「そうではない。遺言執行者になるには遺言書により指定されるか、家庭裁判所から選任されねばならんのじゃ」

 

シロ「遺言書により指定というのは?」

 

村長「お前の場合じゃと、遺言者はおじいさんじゃ。おじいさんから「シロを遺言執行者にする」と指名を受けねばならん」

 

シロ「でもおじいさんはもう亡くなってますよ。遺言書にもそんなことは書いてないし」

 

村長「そもそもお前は相続人じゃが遺言執行者にもなれるんだ。あと、遺言執行者は第三者から指定が委任されることもできるのじゃ」

 

シロ「じゃ、ぼくが他の人から指名されれば、その人の遺言執行者にはなれるわけですか?」

 

村長「未成年者と破産者は遺言執行者になることができないから、成人してからじゃの」

 

シロ「なんだ、つまんない」

 

村長「まあそう言うでない。話を続けると、たとえば、おじいさんが「第三者である村長さんから誰かを指名してください」と書いておけば、わしが遺言執行者を指名することだってできたわけじゃの」

 

シロ「なるほど、村長はどの子を本指名するんだろう?」

 

村長「…そういう店みたいに言うな。で、家庭裁判所から遺言執行者として選任されるときは、相続人等の利害関係者が遺言執行者の選任申し立てをする。つまり、お前が指名するわけじゃの」

 

シロ「うーん、ぼくだったら、クラブ『月の光』のかぐやちゃんかな」

 

村長「…頼むから世界観を戻してくれ。そしてお前は散財と破産に気をつけなさい…」

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遺言執行者を選任しなければならない3つのケース

 

村長「ちなみに、遺言執行手続きには、必ず遺言執行者が必要な場合もあれば、相続人でもいい場合がある」

 

シロ「時と場合によるのですね。遺言執行者が必要なのはどんなときなんですか?」

 

村長「認知の場合、相続人の廃除と取消しの場合、一般財団法人設立の場合と3つある。これらは遺言執行が必要で、遺言執行者のみが執行できる事項なんじゃ」

認知

遺言執行者が戸籍上の届出を行う。遺言による認知の場合には、遺言執行者は、その就職の日から10日以内に、認知に関する謄本を添付して、戸籍法60条または61条の規定に従って、その届出をしなければならない。

相続人の廃除・その取消し

遺言執行者が家庭裁判所に審判を請求する。

一般財団法人の設立

一般財団法人の設立も、遺言執行者のみが執り行える。

遺言執行者の報酬

村長「認知、相続人の廃除と取消し、一般財団法人設立の場合は遺言執行者が必ず選任されなければならないが、これら以外の事項に関しても、遺言書に記載をすれば執行ができるとされているんじゃ」

 

シロ「気になるのが、遺言執行者はお金をもらえるのかどうかですね。一応、ビジネスとして考えていますから」

 

村長「…ビジネス? まあ、遺言執行者にも報酬は出る。遺言に規定があるときはその規定に従い、遺言に規定がないときは、財産状況、その他の事情により家庭裁判所において報酬が決められるとあるから、一概には言えないんじゃ」

 

シロ「じゃ、セレブに近づけば近づくほど、報酬が高くなるかもしれないってことですね」

 

村長「…わしは、もしかしてとんでもない怪物を育てようとしてないか…?」

遺言執行者の義務

村長「あとは遺言執行者がやるべきこと、つまりは義務の話じゃな。遺言執行者は、遺言の内容を実現するためにいるわけじゃから、相続財産の管理とか、遺言の執行に必要な行為をする権利と義務がある」

 

シロ「はい。なんでもやります」

遺言執行者の義務は、次の3点です。

  •  善管注意義務
  • 報告義務
  • 受取物受渡し等の義務

シロ「なるほどなあ」

 

村長「いずれにせよ、義務を守りながら、てきぱきと遺言執行をしていくことは変わりないんじゃ」

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善管注意義務

遺言執行者は委任の本旨に従い善良な管理者の注意をもって遺言執行に必要な行為をする義務を負う。注意義務の程度は、遺言執行者の専門知識や職業、地位、能力によって異なる。

報告義務

遺言執行者は、相続人の請求があるときは、いつでも遺言執行の状況を報告し、また遺言執行が終了したときには、遅滞なくその報告をすることが、義務づけられている。

受取物受渡し等の義務

遺言執行者は、遺言執行によって受け取った金銭やその他の物を相続人に引渡す必要がある。また、遺言執行者が相続人のために自己の名をもって取得した権利はこれを相続人に移転する必要がある。

遺言執行事務の流れ

シロ「遺言執行者は、実際にどんな流れで遺言執行をするんですか?」

 

村長「大まかに7つの流れがある。こんなふうにな」

 

1)遺言執行者の任務開始の通知

遺言の内容を相続人に通知する。

 ▼

2)相続財産の目録作成

現金や預貯金などの相続財産目録を作成して、相続人に交付します。相続人の請求があるときは、相続財産の目録の作成に立会うか、公証人に目録を作成してもらう。

 ▼

3)遺贈への対応

故人の遺した遺言に則って、その遺産を譲る遺贈に対応する。遺言の対象が不特定物の場合にはその特定を行い、対象財産が遺産の中に存在しない場合にはその調達やそのための遺産処分を行う。

 ▼

4)債務の弁済とは

遺言で指示がある場合には、債務の弁済を行う。

 ▼

5)名義変更等

遺言による財産の処分や承継に伴う登記・登録の名義変更をし、債権者や債務者に対しての通知などを行う。

 ▼

6)引渡しについて

対象の財産を受益者へ引渡す。

 ▼

6)遺産の管理、保管

必要に応じて、遺産の管理や保管を行う。

 

村長「遺言執行者は義務を守りながら執行していく必要があるから、いい加減な気持ちではできんのじゃぞ」

 

シロ「そうですね。おじいさんのことを思い出したら、きっとぼくのために心を込めて財産を残してくれていたはずですから、いい加減な人だと嫌ですしね」

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遺言執行者は中立公平の観点から第三者を選んだ方がいい

村長「わかってくれて何よりじゃ。おじいさんもおばあさんも、お前がちゃんと大切に財産を使うことを願っておるはずじゃ。スムーズに財産を相続できたお前は、幸せもんじゃぞ」

 

シロ「でも、モメてしまう人もいるんですよね。そういうときのために、遺言の専門家である行政書士さんらがいるんだなあ…。ぼく、だんだん世の中のことがわかってきました。やっぱり行政書士になりたいです!」

 

村長「…それは反対する理由がないが、どうしてなんじゃ?」

 

シロ「だって行政書士さんは、困っている人の味方じゃないですか。財産を扱うわけですから、正直でまっすぐな人じゃないとできませんしね。まるでぼくのおじいさんみたいだな、って」

 

村長「…聞いたかい、おじいさん、おばあさんよ…。いい子を育ててきたんじゃのう。立派じゃぞ、お前さんたち」

 

シロ「あ、ところで、村長」

 

村長「ん?」

 

シロ「行政書士って女の子にモテますよね?」

 

村長「…たぶん、な…」

 

この記事を詳しく知りたい方はこちら:遺言執行制度と遺言執行者の義務について行政書士が解説

 
行政書士 長岡 真也
この記事の執筆・監修者:長岡 真也(行政書士)
神奈川県行政書士会所属(第12091446号)
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