遺言書に署名できない場合はどうする?自署できない人の遺言書作成について行政書士が解説

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病気等で署名ができない場合の遺言書作成

「遺言書って自分で書いて作らなくてはダメなの?」
「高齢でしっかりペンを持つことができず、字をはっきり書けない」
「病気で起き上がって字を書くことがつらい」

遺言書を作ろうと思ったとき、すべての人が健康な状態とは限りません。

今回は遺言書に署名できない場合など、署できない人の遺言書作成についてお話ししたいと思います。

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自筆できない場合は「秘密証書遺言」か「公正証書遺言」で遺言作成

高齢であったり、病気であったり、むしろそのような状況だからこそ遺言を作っておきたい、そう思う方も多くいらっしゃるかと思います。

しかし高齢や病気の場合、「字を書く」ことが困難な状況であることも考えられます。

字を書くことができない場合、あるいは書くことはできるけれども長文は無理だったり、崩れた文字しか書くことができなかったりと、そのような場合、遺言書の作成はどうなるのでしょうか。

ここでおさらいとして遺言書の種類を確認してみましょう。
法律で定められている遺言書は主に次の3種類があります。

  • 自筆証書遺言
  • 秘密証書遺言
  • 公正証書遺言

このうち「自筆証書遺言」は、遺言を作成したい本人自身が内容を書き、署名・押印するもので、有効と認められる要件は厳格に定められています。特に「字を書く」点からみてみると、遺言書に記載するすべての内容を自分自身でハッキリと書かなければなりません。

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したがって、代筆はもちろんのこと、パソコンで作成したりコピーしたものは自筆性がないと判断され認められません。また、高齢や病気などで手が震えている状態で書いたものは、筆跡が変わって自筆性を判断しづらい場合もあります。

このように、「字が書けない」場合、自筆証書遺言で遺言を作成することはできないことになりますが、「秘密証書遺言」と「公正証書遺言」の場合はどうでしょうか。

結論から先に述べますと、「秘密遺言証書」は遺言者本人が内容を書いた後に署名・押印しますが、遺言書本文については自筆以外も認められています。

また、「公正証書遺言」は公証人が作成し、遺言者本人は署名・押印するのみで作成されます。

したがって、遺言書本文を自筆できない場合の遺言書作成は、「秘密証書遺言」か「公正証書遺言」を選ぶことになります。次で、それぞれについて詳しくみていきましょう。

自書できない場合の秘密証書遺言

秘密証書遺言は、前で説明した通り、遺言者本人が内容を書き、署名・押印して作成します。

そしてそれを封に入れ、同じ印鑑で封印したものを公証役場に持って行き、公証人に秘密証書遺言であることを証明してもらう方法です。

秘密証書遺言の署名は自筆

秘密証書遺言では、内容については遺言者本人が自筆することは求められていませんので、遺言書全文を代筆やパソコンで作成することができます。

しかし、署名については自筆で行うことが必要である点に注意が必要です。

したがって、全文を書くことができるほどの状態ではないが、署名・押印程度ならできる、という場合であれば、秘密証書遺言を作成することは可能となります。

秘密証書遺言は遺言内容に公証性がないため注意

秘密証書遺言は代筆やパソコンで作成可能、かつ内容を他人に知られずに作成でき、封をしてしまうため偽造や変造を避けられる点では便利であると言えますが、だからこそ注意が必要でもあります。

なぜなら、公証人が証明するのは秘密証書遺言が「存在する」ことだけであり、遺言の内容について公証人は確認しておらず、そのため遺言内容に公証性はありません。

そのため、遺言書の形式が要件を満たしていなかったり、内容が不明確だったり不備があると無効となってしまう場合があります。

また秘密証書遺言の作成にあたっては、公証役場に支払う手数料がかかり、2名の証人も必要となります。遺言書の保管も自分でするため、紛失してしまう、という事態も起こりかねません。

病気や高齢でもなんとか作成し、署名し、費用を支払い証人という手間をかけたにもかかわらず、結果的に紛失してしまったり、内容に不備があったりして無効となってしまう可能性があったのでは、せっかく安心のために遺言を作成したのに、不安を残すことになってしまいます。

自書できない場合の公正証書遺言

公正証書遺言は、公証人が遺言書を作成し、遺言者本人は証人2名立会いのもと、その内容を確認して署名・押印することで作られます。

作成を公証人にお願いしますので手数料と証人2名が必要となりますが、遺言者本人が形式や要件を心配する必要がなく、公証人が法律の様式に従って作成してくれますので、安心して確実な遺言を残すことができます。

保管についても、原本は公証役場で保管されますので、紛失の心配がありません。

また、「字を書く」点からは、作成は公証人がしますので、遺言者本人は遺言書本文を書く必要はなく、字を書くことができなくても対応が可能です。

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では、「署名」はどうでしょうか。

公正証書遺言の署名は原則自筆

公正証書遺言では、遺言書の末尾に遺言者本人が署名と押印を行うことで、その遺言が本人の意思によって作成されたことが明確にされ、この署名・押印は公正証書遺言を作成するための要件として法律で規定されています。

「署名程度ならば自分で書ける」状態ならば問題ありませんが、「署名程度であっても字が崩れてしまう」あるいは「まったく字は書けず、署名程度もできない」というような場合、公正証書遺言を作成することはできないのでしょうか。

次で、公正証書遺言で必要とされる「署名」についてくわしくみていきましょう。

公正証書遺言は署名に代わる手段がある

前述のように、公正証書遺言は末尾に本人が署名することが原則ですが、絶対に署名が必要というわけではありません。

病気などで署名ができない場合は、この署名の代わりにその旨を記載するとともに、「病気のため」などとその理由を付記し、公証人の職印を押捺することによって、遺言者の署名に代えることができると法律で認められています。

では、そもそもの公正証書遺言における遺言者の署名は、自筆証書遺言のように、明確・正確に記される必要はあるのでしょうか。

遺言者の署名はどの程度かというと

  • きれいに書けなくても判読できる程度であればよい。
  • まったく書けなければ署名せずともよい

とされています。

 

「判読できる程度」とは、例えば戸籍上は複雑な漢字であるときでも、普段から使っている簡単な文字、またはかな字でもよいとされています。

「署名せずともよい」とは、遺言者が字を書くことができないということを、公証人が公正証書に記載することで署名に代えることができる、と法律で定められています。

したがって、多少崩れていても判読できる程度の署名ができる場合は本人が署名し、書けない場合はその旨を記載してもらうことで公正証書遺言は作成が可能となります。

遺言者の「署名ができない」状態の判断基準

では、字が書けずに「署名ができない場合」 とは、どのように判断するのでしょうか。どの程度をもって署名ができないと判断するのか、その点についてみてみましょう。

「署名ができない」かどうかを判断する際、手が不自由で動かせず書くことができない、というように、確実・明確に不可能な状態であれば問題ないのですが、「署名がまったく不可能というわけではない」場合に問題となります。

 

この点、公正証書遺言の署名について、「ある程度は書くことができる状態であるのに本人が署名しなかった」遺言について、その有効性が裁判で争われた事例がありますので、みてみましょう。

【事例】遺言者が胃がんのため入院中で手術に耐えられないほど病状が進んでいたが、署名が不可能とまではいえない状態の場合(最判昭37.6.8)

 

【事例のポイント】
  • 本件遺言は、公証人が病院に出張して作成した。
  • 遺言者は病床から半身を起こして約15分、公証人に口授を行った。
  • 遺言者は、公正証書遺言に署名する旨を申し出たが、公証人は遺言者の疲労・病状の悪化を考慮し
    て署名させることなく、遺言者が病気により署名できない旨を付記した。

 

【事例に対する判例】
遺言者が「署名することができない場合」にあたり、署名がなくとも遺言は有効である。

 

【判断のポイント】
法律で定める「署名ができない場合」とは、病気、障害等の身体的理由により文字の記載が「困難な場合」をいうものとされており、遺言者が病気等により署名が「不可能」であることまでは要求されていない、と考えられ、この事例では署名ができない場合にあたるとして遺言が有効とされました。

 

以上のことから、遺言者が「署名できない」判断については、署名が不可能であることまでは要求されておらず、公証人が自己の知見に基づき、合理的裁量の範囲内で、遺言者が署名可能か否かを判断することができるとされます。

 

しかし、公正証書遺言の原則は遺言者本人が署名することですので、遺言者の状況をしっかりと確認し、要件に問題がないのか公証人と相談して決めていくことが必要となります。

自書できない場合は公正証書遺言がおすすめ

高齢や病気の場合は、健康なとき以上に遺言書の作成が求められるといえるかもしれません。

そのような時、たとえ「字を書くことができない」「署名もできない」からといって、遺言書の作成をあきらめる必要はありません。

 

公正証書遺言であれば公証人が遺言の内容を作成するので、本人の「字を書いて作成する作業」は不要ですし、署名も公証人の判断でできない旨の付記で対応し、署名に代えることが可能です。

 

今の自分自身の状態について公証人と相談し、どうするのか見極めることもできます。

署名の自筆が難しい場合は、ぜひ、公正証書遺言の作成を検討してみてはいかがでしょうか。

長岡行政書士事務所でも、公正証書遺言を作成するにあたって署名ができない方はいらっしゃいます。

手が震えて署名ができない、寝たきりのため署名できないなど、こういった課題に直面し、今まで依頼者の皆様と乗り越えてきました。

様々な事情により遺言書を躊躇する方もおられるとは思いますが、可能性を信じて、まずは一度ご相談いただければ乗り越えられることもございます。

本日もお読みいただきありがとうございました。

 
行政書士 長岡 真也
この記事の執筆・監修者:長岡 真也(行政書士)
神奈川県行政書士会所属(第12091446号)
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