未成年者がいる場合の相続手続はどうなる?【幸祥仁ときなこちゃん 第2話】

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未成年者がいる場合の相続手続はどうなる?【幸祥仁ときなこちゃん 第2話】

 

神奈川県横浜市で暮らす、ごく平凡な家族・餅田家。家族のアイドルは、来年の小学校入学を心待ちにしている餅田きなこちゃんです。

きなこちゃん、書道の先生でもあるおばあちゃんに字を習ってからは、書くことが楽しくて仕方がありません。

先日は、おじいちゃんが遺言書を書こうとしていたところ、「きなこも、書く~!」と言ってきかず、餅田家は大わらわ。

今日はきなこちゃんの誕生日ということで、昔からよく知るお向かいの幸祥仁くんもお招きに預かっている様子。

幸祥仁くんは、行政書士の資格を持ち、最近は公証役場で公証人としても活躍中なのです(リアル社会とは切り離してお読みください)。

 

家族みんなできなこちゃんのバースデーソングを歌い、お誕生日プレゼントを渡そうとしたところ、きなこちゃんがまさかの一言。

「きなこ、お誕生日プレゼントは、おじいちゃんの遺言と遺産がほしい~! それで世界旅行に行く~!」

家族が絶句する中、おじいちゃんは泡を吹いて倒れそうになりましたが…。

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遺産をもらえる2種類の立場とは

おじい「…危ない危ない、きなこのトンデモ発言で、うっかりあの世にいきかけたわい」

きなこ「あの世ってどこ? きなこもそこ、旅行いく~」

おじい「きなこや…あの世へは片道切符なんじゃぞ」

きなこ「切符じゃないもん、交通系ICカードだからチャージすれば平気だもん」

ママ「…きなこ、そういう問題じゃないのよ」

パパ「とはいえ、俺たちもちゃんと相続のこと知っておかなくちゃいけないとは思ってたんだよな。せっかく仁くんもいることだし」

おばあ「そんな。今日は仕事抜きにしたらどうなの? ねえ、仁くん」

法定相続人と受遺者という2つの立場がある

幸祥「いえいえ、全然大丈夫ですよ。実はね、最近、未成年者がいる場合の相続手続についてはよく質問されるんです」

おじい「わし、知っとるぞ。民法で決められた法定相続人と受遺者で、子か親か兄弟姉妹あたりが該当するんじゃろ?」

おばあ「じゃあ、受遺者というのは?」

おじい「う…仁くん、あれをもらえる人じゃったよな、そう、あれ」

幸祥「遺産を譲り受ける人として遺言の中で指定された人だとおっしゃりたいんですよね?(笑)」

おじい「それな」

パパ「その両者にどんな違いがあるんです?」

 

合わせて読みたい:新人補助者ひまりの事件簿① 法定相続人の範囲~配偶者と子供編~ 

合わせて読みたい:新人補助者ひまりの事件簿② 法定相続人の範囲~配偶者と両親編~ 

合わせて読みたい:新人補助者ひまりの事件簿③ 法定相続人の範囲~配偶者と兄弟編~

遺言は法定相続に優先する

幸祥「遺言があるかどうかが大きな違いになります。個人の遺志を尊重するために、相続においては遺言が法定相続に優先するのが原則です」

ママ「じゃあ受遺者のほうが権限が強いのね」

幸祥「権限ではなく、優先順位ですね。例えば複数人の子がいた場合、法定相続では均等に遺産を分けないといけません。でも、遺言があればそちらが優先されますから、特定の子に多めに遺産を分けるということもできるんです。また、遺言によって法定相続人以外、例えば息子の配偶者等にも遺産を分けることも可能なんです」

パパ「へえ、じゃおじいちゃんが死んだら、ママにももらえるようになるのか」

ママ「やだ、あたし、ブランドバッグなんて欲しくないわよ。欲しいなんて思ってないからね。欲しくなんてないんだから」

おじい「……前フリ」

きなこ「じゃあ、きなこにたくさん遺産ちょうだい、おじいちゃん」

おじい「う、うむ。きなこにはたくさんあげような」

おばあ「でも未成年に遺産をどうこうなんてできるのかしら?」

遺言書がない未成年の相続

幸祥「もし法定相続に移行すると、すべての相続人が遺産分割協議に参加する必要があるんです。この遺産分割協議は法律行為なので、未成年は参加することができないので、法定代理人の同意が必要なんですね」

パパ「法定代理人?」

幸祥「基本的に親です。つまり、パパさん、ママさんです」

おじい「なるほど。相続人の中に、うちのかわいい、かわいい、かわいいきなこのような未成年の子がいたら、親が代わりに遺産分割協議を行えばよく、それで万事うまくいくわけじゃの?」

幸祥「とも限らないんです」

きなこ「おじいちゃん、不正解~!」

遺産分割協議は親が子供の代わりに参加できない

幸祥「親と未成年の子の間で利益が相反する場合は、親が法定代理人になれないんです。例えば父が亡くなって相続人が妻と子の2人になったとしましょう。妻が子の法定代理人になったら、妻一人ですべてを決めてしまうことになりますよね」

ママ「あら。でも子は未成年だから、どうせ妻が養うわけでしょう。何の問題もなさそうに思えるけど?」

幸祥「あくまで一般論ですが、可能性として子の財産が侵害されるケースも否定できないんですよ」

おじい「ほほう、ママときなこの壮絶な合戦か…見たい気もするな」

おばあ「おやめなさいな、まったく」

幸祥「法律上では、相続人が妻と子の場合はそれぞれ財産の1/2ずつもらう権利がありますから、実の母と言えども子の1/2の財産を自分のものにはできないのです」

ママ「そうねえ」

パパ「あれ、なんだか悔しそうな顔してない?」

ママ「してないわよ!」

未成年の相続を守る特別代理人とは

幸祥「未成年がいて親が法定代理人になれない場合は、遺産分割協議を有効に成立させるために家庭裁判所に申立てて特別代理人を選任してもらうことになりますね」

パパ「なんとなくわかってきたぞ。子どもの代理人となって代わりに相続の話し合いに参加する人では?」

幸祥「さすがパパさんですね。そうです、状況によっては有効な遺産分割協議書をつくるために特別代理人が必要なんです」

おじい「さっき申立てと言っていたが、誰が何をすればいいんじゃ?」

特別代理人の選任は家庭裁判所へ申し立てる

幸祥「申立ては親権者および利害関係人が申し立てることができます。通常は、家庭裁判所へ特別代理人の候補として親族や士業専門家を推薦します。そして推薦された候補者が適切かどうかを家庭裁判所が判断します。ただこの家庭裁判所に判断を仰ぐための書類も遺族が準備しないといけないなど、特別代理人選定の申請はなかなか負担が重いのがネックなんですよね」

おばあ「重いのは、おじいさんが出かけるときの腰だけで十分ですよ」

おじい「うるせえやい」

パパ「しかも夫の死の悲しみを乗り越えるまでまだ時間もかかるだろうに…家族の財産を妻と子で引き継ぐという身内の話に、外部の特別代理人を申請しないといけないというのは酷だよな」

ママ「でも、そこがんばらないと遺産もらえないんでしょ?」

パパ「え?」

きなこ「パパ、いつ死ぬの?」

パパ「……え?」

未成年者がいる相続の際は遺言書が有効

おじい「こらこら、そもそもわしの遺言のほうが話が先じゃ」

幸祥「あはは。話を戻しますが、まさしくそこで遺言の出番でしてね。仮に夫が遺言を残していてその中で「妻に全部相続させる」と指定していれば、未成年者である子供と遺産分割協議しなければならないという状況を回避できます」

ママ「遺言は故人のラストメッセージで、法定相続よりも優先されるんですものね」

パパ「飲み込みが早いな」

ママ「なにせ1/2だからね」

パパ「……おい」

きなこ「じゃあ、おじいちゃんもパパも、早く遺言書、書かなくちゃね」

おばあ「そうねえ。残された妻を守るためにもね」

ママ「ほんとそうよね。あ、遺産が入ったら、悲しみを乗り越えるために、熱海で温泉なんてどうかしら?」

おばあ「いいわね! 悲しみを癒すためにね」

きなこ「きなこ、温泉大好き! おじいちゃん、パパ、いっぱい遺産残してね」

おじい・パパ「……はい」

 

この記事を詳しく読みたい方はこちら:未成年者がいる場合の相続手続はどうなるの?遺言書の必要性!

 
行政書士 長岡 真也
この記事の執筆・監修者:長岡 真也(行政書士)
神奈川県行政書士会所属(第12091446号)
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