「この前ニュースでデジタル遺言が可能になるって見たけどどんな内容?」
「気軽に遺言書を作ってみたいんだけど、いい方法はないか知りたい」
2026年4月3日、これまでも多くの声が寄せられていたパソコンやスマホで作成できる「デジタル遺言」について、今後可能とするための閣議決定が出ました。
名称は「保管証書遺言」となる予定です。
そこで、本記事では現在判明している「保管証書遺言」について閣議決定された内容や、従来の遺言書との違いを解説します。
目次
保管証書遺言(デジタル遺言)とは
報道で話題となっている「保管証書遺言」は、一体どのような形式の遺言書となる予定でしょうか。本章では現在判明している保管証書遺言(デジタル遺言)の概要について、わかりやすく解説します。
現在判明している保管証書遺言の概要
保管証書遺言とは、民法第967条の改正によって新たに設けられる「第4の遺言方式」です。一般的には「デジタル遺言」と呼ばれることも多いですが、これは通称であり正式名称は「保管証書遺言」となる予定です。
2026年4月3日に閣議決定・国会提出が行われており、政府は「2026年内の法改正成立」を目指すと表明しています。現時点では法案審議中のため、具体的な施行時期や詳細な要件は今後の国会審議によって確定していきます。
遺言のデジタル化の背景
従来の遺言書には、さまざまな課題がありました。
自筆証書遺言には「財産目録以外の全文を自書(手書き)しなければならない」というルールがあります。高齢者やご病気などを理由に自筆で書くことが難しい方にとって、長文を手書きするのは大きな負担です。
また、形式の誤りや日付の漏れなどによって遺言書が無効になってしまうリスクも少なくありません。さらに、自宅で保管する場合は紛失・改ざんのおそれもあります。
費用と確実性の面で優れている公正証書遺言ですが、こちらは公証人への手数料や証人2名の手配、公証役場への出向といった手続きの煩雑さが利用のハードルとなっています。費用も遺産の規模によって数万円から十万円以上かかるケースがあり、気軽には作りにくいという実態があります。
こうした背景から、より多くの方が遺言書を作成しやすい環境を整える目的で、デジタル化の議論が進んできました。
公正証書遺言のデジタル化との違い
今回の保管証書遺言の新設は「公正証書遺言のデジタル化」とは別です。公証役場においてもオンライン手続きの拡充が進められていますが、保管証書遺言はあくまで新しい遺言方式として民法上に追加される予定です。
公証人は介在せずに、遺言者本人がデジタル機器で作成して法務局に保管申請を行うという仕組みが想定されています。
合わせて読みたい:公正証書遺言とは?要件や注意点・メリット・デメリットを行政書士が分かりやすく解説!
保管証書遺言のメリット(予定)
今後の遺言書のあり方を大きく変える可能性がある保管証書遺言には、具体的にどのようなメリットがあると考えられるでしょうか。本章では気になるメリットや保管証書遺言が持つ特徴を解説します。
パソコンやスマホで作成可能
保管証書遺言の最大の特徴は、全文の自書(手書き)が不要になる点です。パソコンやスマートフォンで遺言書を作成できるようになるため、手書きが苦手な方や身体的な理由で筆記が困難な方にとっても、大幅に作成のハードルが下がります。
ただし、作成後にそのままデバイス上へ保存して完了するのではなく、法務局への保管手続きが予定されています。
押印が不要となる見込み
従来の自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言はいずれも押印が要件とされていましたが、保管証書遺言では押印が不要となる見込みです。
代わりに電子署名が導入されます。印鑑や印鑑証明書を準備する手間が省けることも、遺言書作成を後押しする可能性が高いでしょう。
検認が不要となる見込み
遺言書の相続手続きにおいて、家庭裁判所での「検認」手続きが必要となる場合があります(自筆証書遺言で法務局保管制度を利用しない場合など)。
検認には時間と費用がかかり、相続人の負担になることも少なくありません。保管証書遺言では検認が不要となる見込みであり、相続手続きをスムーズに進められると期待されています。
遺言書形式の選択肢が増える
保管証書遺言が導入されることで、遺言者は自分の状況や希望に合わせて遺言書の方式を選べる選択肢が広がります。
手軽に自分で作りたい方は従来の自筆証書遺言を選び、費用をかけてでも確実性を高めたい方は公正証書遺言を、そしてデジタルで手軽に作りたい方は保管証書遺言を選ぶ、といった使い分けが可能になります。
保管証書遺言は法務局で保管される予定
保管証書遺言は法務局に保管される予定です。自宅保管に比べて紛失・改ざんのリスクが大幅に低減され、相続が発生した際に遺言書の存在を確認しやすくなります。
現行の自筆証書遺言保管制度(法務局での保管申請制度)と同様の仕組みが想定されています。
保管証書遺言の注意点
メリットが多い保管証書遺言ですが、作成には注意も必要となる見込みです。そこで、本章では現在の段階で明らかとなっている、保管証書遺言の注意点を紹介します。
本人確認が従来よりも厳格化される
保管証書遺言はデジタルで作成・提出できる利便性の反面、なりすましや改ざんを防ぐため、本人確認が従来の遺言方式よりも厳格化される見込みです。
電子署名やマイナンバーカードを用いた厳格な本人確認など、電子的な本人確認手段の利用が要件となる見通しとなっています。詳細は今後の法令整備によって明確になりますが、自筆証書遺言とは異なり本人確認の要件が明確に増えるため、注意が必要です。
パソコンなどデジタル機器が必要
保管証書遺言の作成にはパソコンやスマートフォンなどのデジタル機器が必須です。機器の操作に不慣れな方や、インターネット環境が整っていない方には、自筆証書遺言や公正証書遺言よりもハードルが高くなる場面も考えられます。
今後明らかとなる要件によっては、作成支援制度や窓口サポートの整備が今後の課題となるでしょう。
現在の導入時期は未定
2026年4月3日に閣議決定・国会提出が行われましたが、法案の成立・施行時期は現時点では未定です。法案審議の進捗によっては、制度の詳細が変更となったり、導入が遅れる可能性もあります。最新情報は法務省や報道機関の発表をご確認ください。
特別方式遺言もデジタル化される予定
自筆証書遺言や公正証書遺言のような形式は「普通方式」と呼ばれるものです。緊急時に遺言書を作成する方法には、普通方式とは異なり「特別方式」と呼ばれるものもあります。今回の法改正では、特別方式についてもデジタル化が予定されています。詳しくは以下です。
死亡危急時遺言・船舶遭難者遺言が作成しやすくなる
今回の法改正では、通常方式の遺言書だけでなく「特別方式遺言」のデジタル化も検討されています。詳しくは以下の2つです。
特別方式遺言とは、急な事故など通常の遺言書を作成する余裕がない特殊な状況において認められる遺言方式です。
・死亡危急時遺言
死亡の危急が迫っているときに認められる遺言
・船舶遭難者遺言
船が遭難した際などに認められる遺言
・伝染病隔離者遺言
伝染病のため隔離された際に認められる遺言
・財船者遺言
在船中の人に認められている遺言
これらはいずれも証人の立ち会いのもとで遺言者が口述し、証人が筆記するという方式が原則でしたが、実際には状況が切迫しているなかで手続きを行う困難さが課題でした。今後はデジタル化され、迅速な作成が可能となる予定です。
デジタル機器で録画が可能になる予定
特別方式遺言についてもデジタル機器による動画録画で遺言の意思を記録・保存できるようにする方向が示されています。緊急時であっても意思表示を残しやすくなることで、遺言書を作れないまま亡くなってしまうケースを減らすことが期待されています。
遺言書の作成は保管証書遺言を待つべき?従来の遺言書との違い
新しい遺言書の形式が導入される予定ですが、今後遺言書の作成をしたい場合は、新制度の開始を待つべきでしょうか。本章では今後の遺言書作成のヒントに役立つ、従来の遺言書との違いや作成時期について解説します。
従来の遺言書との違い
従来の遺言書と保管証書遺言の主な違いは、以下のとおりです。
| 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 | 保管証書遺言(予定) | |
| 作成方法 | 財産目録除き、 全文自書(手書き) | 公証人が筆記 | 自書またはPC | PC・スマホ可 |
| 押印 | 必要 | 必要 | 必要 | 不要(予定) |
| 証人 | 不要 | 2名必要 | 2名必要 | 不要(予定) |
| 検認 | 必要(※) | 不要 | 必要 | 不要(予定) |
| 保管 | 法務局保管可能 (申請制) | 公証役場 | 自己保管 | 法務局(予定) |
| 無効リスク | 高め | 低い | 高め | 中~高め(予定) |
(※)自筆証書遺言書保管制度の利用の場合は検認不要
効果を早めたい場合は現時点での作成がおすすめ
「遺言書を今すぐ作っておきたい」「早めに家族への意思表示をしておきたい」という方には、現行の遺言方式での作成をおすすめします。
特に、相続財産が複雑な場合やすでに年齢を重ねている方、法定相続分と異なる配分を希望する場合は早めの作成が重要です。公正証書遺言でも、十分に有効・確実な遺言書を作成することができます。
将来作成に関心がある場合は待機も検討できる
「いつかは作りたいが、手書きが苦手で踏み出せない」
「費用や手間をできるだけ抑えたい」
このような方は保管証書遺言の導入を待つことも1つの選択肢です。2026年内の法改正成立が目標とされているため、制度の詳細が固まる段階でのご検討もよいでしょう。ただし、健康状態やご年齢によっては早期作成を優先すべき場合もありますので、専門家へ相談した上で検討することがおすすめです。
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行政書士は遺言書の作成支援に関する専門家です。デジタル化で「書き方」は今後簡単になる予定ですが、家族が揉めないための「中身の書き方」には知見が欠かせません。
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