先日父が亡くなりました。生前から父は自分が亡くなった後に周りに迷惑をかけたくないという気持ちが強かったので、遺言を残してくれたり自分の葬式に呼んでほしい人の名簿を作ってくれたりと、実際に相続や葬儀の手配を進めていく時にだいぶ助かりました。
もちろん父が亡くなったのは悲しいことですが、最後まで父に助けてもらったなと感謝しています。
ただ、一つだけ株式の事を聞き忘れてしまいました。
私の記憶では父は結構手広く株式売買をしていたと思うのですが、遺言の中にある株式の種類や総額がどうも少なすぎるような気がします。
実は私、父の遺言により遺言執行者になりました。
古い考えかもしれませんが、私は長男なので父の期待に応えてきっちり相続を取り仕切りたいと考えてます。
株式がちゃんと遺言で網羅されているかとかを調べるにはどうしたらいいのでしょうか?
ご相談いただき、ありがとうございます。
しっかりとしたお考えをお持ちのお父様だったのですね。
実は故人が株式や投資信託等の有価証券を持っていたと思われるものの本当に持っていたか定かでないというケースや、株式を持っていたのは知っているのだけどどこの証券会社の口座にあるのかわからないというケースは稀ではありません。
生前に株式について聞くのを忘れてしまったり、ご本人ですら長いこと株式を保有し続けていたため記憶が定かでないという場合もあるからです。
後から把握していない財産が出てくると、遺産分割協議をやり直すことになったり、相続税の追徴課税を受けたりするおそれがあります。
目次
故人の株式の調査方法
株式等の有価証券の相続を進めるためには、本人が亡くなった旨を本人名義の口座がある証券会社(上場株式等の場合)や株式発行会社(非上場株式の場合)に連絡する必要があります。
まずは上場株式等の調査方法(証券会社がわかっている場合・証券会社がわからない場合)を解説し、その有効な手段としての「ほふり」の使い方、最後に非上場株式の調査方法について解説します。
尚、当サイトの別コラムでも、証券会社や信託銀行に対しほふりを利用して株式を探す方法の解説をしております。
あわせて読みたい>>>遺言執行をすることになった!証券会社と信託銀行等の手続き方法と2社の役割とは
上場株式等の調べ方
上場株式や投資信託等は通常証券会社が管理しています。
少なくとも年に1回は年間取引報告書を郵送してくるはずなので(ネット取引等で電子交付にしている場合を除く)、その年間取引報告書により証券会社名と口座番号が判明します。
証券会社からの書類や預金通帳に注目する方法
仮に年間取引報告書が見つからなくても、証券会社から送られてくる他の書類(運用報告書、目論見書、新商品の案内など)も有効な手掛かりになります。
その他の方法として、預金通帳の入出金記録を精査すると証券会社の名前が見つかることもあり、取引関係を推測することが可能です。
どの証券会社かが判明したら証券会社のホームページや書類に記載のある問い合わせ先に連絡をすれば、相続の手続きや残高証明書の発行に必要な書類を送ってもらうことができます。
ほふり(証券保管振替機構)を利用する方法
上記の方法で証券会社の見当つかない場合は、上場株式等の振替を一括管理しているほふり(証券保管振替機構)に登録済加入者情報の開示請求を行うことで、どの証券会社に口座をもっているかを調べることができます、
ほふり調査の流れ
ほふりに調査を依頼する際は下記の流れに従ってください。
1.戸籍等の必要書類を準備する
- 開示請求書(ホームページからダウンロードできます)
- 請求者の本人確認書類(身分証明書のコピー)
- 被相続人(故人)と相続人(請求者)の関係を証明する書類(法定相続情報一覧図又は戸籍謄本等のコピー)
- 被相続人の住所の確認書類(住民票の除票、株主宛の株式関係書類など)
遺言執行者による請求の場合は遺言書を提示し、遺言執行者に指名されて就任した旨を証明する必要があります。
2,書類をほふりに郵送する
上記1で準備した書類を下記の宛先に郵送します。
〒103-0025
日本橋茅場町郵便局留
東京都中央区日本橋茅場町2-1-1
株式会社証券保管振替機構 開示請求事務センター
郵送方法の指定はありませんが、戸籍等の重要書類を送付するので書留郵便やレターパックなどの配達記録が残る方法をとってください。
また、ほふりへの提出書類は開示請求書を除いてすべてコピーで提出します。
原本での提出は不可であり、間違って原本を提出しても返却されません。
3.開示結果が代金引換郵便で届くので代金を支払い結果を受け取る
書類に不備が無ければ郵送した日より2~3週間ほどで開示結果が代金引換、簡易書留で郵送されてきます。郵便局職員に所定の費用を支払い、開示結果を受け取ってください。
ほふり調査にかかる手数料は請求1件につき税込みで6,050円となります。
費用に関し気を付けるべき点は、氏名及び住所の組合せごとに1件と数えるので旧姓や旧住所を加えると、追加で一件とカウントされ、追加一件あたり1,100円(税込)が加算される点です。
例えば、現姓現住所に加えて旧姓現住所で請求すると2件となり、6,050+1,100=7,150円(税込)が必要となります。現姓現住所に加えて旧住所2件を追加すると住所3つで3件となり 6,050+(1,100×3)=8,250円(税込)です。
また、ほふりの開示結果はどの証券会社に口座があるかしかわかりまません。
相続人や遺言執行者が自分たちで各証券会社の相続問い合わせ窓口等に連絡をして、相続手続きや残高証明書の請求に必要な書類を送ってもらう必要があります。
非上場株式等の調べ方
これまでは上場株式等の調べ方について解説してきましたが、非上場株式に関してはほふり調査によっては判明しません。
基本的に故人がのこしてくれた資料が手掛かりになりますので、株券や株主総会の招集通知、配当金の支払通知書等が存在しないかどうかを確認してください。
また、通帳の入出金記録や、確定申告書の控えから判明することもあります。
遺言者の株式調査にほふりは有効
遺産相続時に株式を含めたすべての有価証券がきちんと遺産の中にカバーされているかは、注意すべきポイントです。
遺言者本人も長いこと保有するうちに忘れてしまったり、単元未満株で気づきにくい可能性があるからです。
郵便物や通帳を注意深くチェックして本人と付き合いのあった証券会社を見つけたりする方法も有効ですが、念のためにもほふりを利用して本当に相続し忘れの有価証券がないかをチェックしましょう。
また、非上場株式はほふりが使えないので注意してください。
以上の様に株式のチェックは手間と専門性を必要とします。もちろん自分でもできますが、より確実に相続を遂行するためにも専門家の利用をお勧めします。
長岡行政書士事務所は相続の経験が豊富にあり、皆様の声に注意深く耳を傾けともに寄り添っていく経営方針をとっています。
よい相続のお手伝いのためにも、是非ご相談ください。