「遺言書を作りたいけど、どのような内容を記載できるか知りたい。」
「法定遺言事項というものがあると聞いた、具体的にはどのようなもの?」
「遺言に沿って手続きを進める遺言執行者とは何をする人?」
遺言書は故人の遺志を示すもので、強い法的効力を持ちますが、記載したこと全てに法的拘束力が生じるわけではありません。
遺言書には、記載内容に法的な拘束力がある「法定遺言事項」というものがあることをご存じでしょうか。法定遺言事項とは、法的な効力を持つ遺言内容を指します。
反対にいうと、「法定遺言事項」以外のことを遺言書に書いても、それは「故人の気持ち」としては有効ですが、法的な拘束力はないということです。
この記事では、法定遺言事項について、遺言執行者が執行できるものを中心に詳しく解説します。法定事項の一覧表も掲載していますので、ぜひご一読ください。
目次
法定遺言事項とは
法定遺言事項とは、遺言書の中に遺す遺言内容の中でも、「法的拘束力」があるものを意味し、以下の3つに分類されています。
法定遺言事項 | |
身分に関すること | 子の認知 未成年後見人・監督人を指定すること 相続人の廃除 |
財産の処分に関すること | 遺贈 寄付 一般財団法人の設立 信託先の決定 生命保険の受取人変更 |
相続に関すること | 相続分の指定や第三者への委託 遺産分割の方法 遺産分割の禁止 担保責任の範囲指定 遺留分割侵害額請求の順序や割合指定 特別受益持ち戻しの免除 |
身分に関すること
たとえば未成年者の親権者は、後見人や後見監督人を遺言書の中で指定できます。
財産の処分に関すること
特定の個人や団体に遺贈したい、寄付をしたい場合には、財産の処分について書き遺すことは、法定遺言事項に該当します。
相続に関すること
自身が遺す相続財産の分配方法や、遺産分割の禁止(※相続開始から5年以内)を定めるなど、相続のやり方についても法定遺言事項として残せます。
遺言執行者だけが執行できる3つの法定遺言事項
法定遺言事項の中には、遺言執行者だけが執行できる3つの法定遺言事項があります。
- 相続人の廃除、廃除の取消
- 遺言による子の認知
- 一般財団法人の設立
なお、遺言執行者とは、遺言書の中で示された内容について、実現を目指して手続きを行う人を意味します。遺言執行人と呼ばれることもあります。
遺言書にはさまざまな内容を記載できますが、内容によっては必ず遺言執行者が必要となる場合があります。
合わせて読みたい:遺言執行者が単独で執行できる手続きとはなにか?行政書士が解説!
相続人の廃除、廃除の取消
相続人の廃除、排除の取消は遺言執行者だけが手続きを行える法定遺言事項です。
- 相続人の廃除とは
相続人の廃除とは、生前に相続人から虐待などの行為を受けていた場合に、被相続人がその行為を理由に相続人としての地位を奪うことを意味します。相続人の廃除は生前に虐待などの行為を受けた本人が、家庭裁判所に廃除について申立てを行うか、遺言書の中で示すことでしか認められていません。
合わせて読みたい:相続廃除とは?特定の相続人に相続させない方法を行政書士が解説
- 廃除の取消とは
生前に認められている相続人の廃除を、被相続人が遺言書の中で取り消すことを求めた場合、遺言執行者が家庭裁判所に請求することで取消が認められます。取消が認められると、排除されていた方には相続権が復活するため、相続人になれます。
遺言による子の認知
生前に認知していない子がいる場合、遺言書の中で認知をすることが可能です。この場合も認知届を行うために遺言執行者が必要です。遺言書に示す場合には子の承諾が必要となりますが、未成年の場合は子の母親の承諾があれば遺言書の中で認知できます。
一般財団法人の設立
遺言書の中で一般財団法人の設立を記載する場合も、遺言執行者が必要です。遺言執行者は死後、速やかな設立に向けて、定款の作成や、300万円以上の拠出の手続きなどを行います。
合わせて読みたい:遺言で一般財団法人を設立するメリットとは?|注意点もあわせて行政書士が紹介
相続人でも執行できる法定遺言事項
遺言執行人ではなく、相続人自身で執行できる法定遺言事項も存在します。
遺言執行者が必ず必要な上記のケース以外は、遺言執行者を指定する必要も、家庭裁判所への選任申立てをする必要もありません。
遺贈、信託に関する決定、生命保険の受取人変更などは相続人が執行者となり、手続きを進めることも可能です。
ただし相続人間で争いが生じるようなケースでは、トラブルを防止するためにも相続人以外の第三者、たとえば行政書士などの士業を遺言執行者とし、執行してもらうことをおすすめします。
たとえば事業継承があるケースや、相続財産の総額が多く、相続人への分配に時間や煩雑な手続きを要するケースでは、遺言執行者が適切に手続きをすることでスピーディーな相続が可能です。
特に法的知識を多く要するような相続が予想される場合は、行政書士など法律の専門家を指定しておくことが望ましいでしょう。
横浜市の長岡行政書士事務所でも遺言書作成のサポートをしており、遺言執行者としてご指定いただくことも可能です。
執行不要の法定遺言事項
遺言書に書き遺す法定遺言事項によっては、そもそも執行の手続きが不要な場合もあります。
【執行不要の法定遺言事項】
- 未成年後見人や監督人の指定
- 特別受益者の持ち戻しの免除
- 相続分の指定や第三者への委託
- 遺産分割の禁止
- 担保責任の範囲指定
これらは執行手続きが要らないため、遺言書の中に遺言執行者を指定する必要はありません。また、相続の開始後に遺言執行者の選任を申立てする必要もありません。
数ある法定遺言事項の中でも、なぜ執行不要のものがあるのでしょうか。
執行不要となる法定遺言事項は、執行手続きを行わなくても遺言書のとおりに効力が発生するためです。
たとえば、遺産分割の禁止についてはわざわざ執行せずとも、遺言書のとおりに遺産分割を禁止すれば良いため、遺言執行者も不要ということです。
法定遺言事項以外の事項も遺言書に書いていい
遺言書に記載できるものは、法定遺言事項だけではありません。法的な効力は持たないものの、法定遺言事項以外の事項も遺言書に書いていいのです。
このような法定遺言事項以外の要素は、「付言事項」と呼ばれます。
付言事項は家族などへ宛てた「お手紙」のようなものです。法定遺言事項のように法的な効力があるものではありませんが、遺言内容への意図を詳しく書き込むことができるため、相続トラブルを回避する効果があります。
たとえば、以下のような使い方がおすすめです。
- 指定した財産分割の理由
- 葬儀内容の願い
指定した財産分割の理由
相続人2名のうち、介護に長年従事してくれた相続人1名に多くの財産を相続させる場合、もう1名は複雑な思いを抱いてしまうかもしれません。
しかし、付言事項で長年の介護を理由に分配したことをしっかりと書いておくことで、遺された相続人同士のトラブルを回避できます。
法定遺言事項として書いたことへの、補足をプラスすることができるのです。
葬儀内容の願い
遺言書を遺す際には、「自分の葬儀はこうあってほしい」という願いを抱いている方もいるでしょう。
付言事項には葬儀の内容なども細かく希望内容を書き遺すことができます。
また、贈与先への気持ちを述べる、事業継承に関する注意点を遺すことも可能です。相続の際に伝えておきたいメッセージを、付言事項の中に示しましょう。
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記載する法定遺言事項によっては遺言執行者が必須
今回の記事では、遺言執行者が必要な法定遺言事項について中心に、付言事項についても触れながら詳しく解説しました。
法定遺言事項の内容によっては、遺言執行者が必ず必要となるため遺言書を作る際には注意が必要です。この記事で要点を紹介しましたが、自分が書こうとしている遺言内容は法定遺言事項が必要なのかどうか、よく分からない方もいるかもしれません。
横浜市の長岡行政書士事務所では、ご相談者様の個別ケースに合わせて、最適な遺言書作成をサポートしています。もちろん遺言執行者が必要かどうかもアドバイスしますし、遺言執行者として指定いただくことも可能です。
初回相談は無料で対応しているため、お気軽に長岡行政書士事務所へご相談ください。