生前贈与も遺留分の対象!「特別受益の持ち戻しの条件」を行政書士が解説!

記事更新日:

【遺言書川柳】多額の生前贈与があるとき相続人が受け取る財産と遺留分はどうなる?

相続人が生前に受けた贈与等の利益を「特別受益」といいます。
そして、相続人の権利である「遺留分」は、実は遺産だけではなく、生前贈与された財産(特別受益)も対象になることをご存知でしょうか。
つまり多額の生前贈与があると、思った以上に遺留分の対象となる財産額が多くなることもあります。
今回は、どのような生前贈与なら遺留分の対象となり、どのような贈与なら遺留分の対象とならないのか、詳しく解説します。

遺言のご相談
LINE導線
お問い合わせフォーム
受付時間:平日9時-21時(土日祝予約制)メール・LINEは24時間受付
対応エリア:横浜市・神奈川県全域・東京23区

遺言書を作るべき?お悩みの方へ
遺言書作成診断
無料診断コンテンツをご活用ください
11個の質問で、専門家に相談すべきか診断できます

遺留分とは

まずは前提知識として、遺留分について解説します。

一定範囲の法定相続人には、最低限の相続分が保障されています。この法律で保障されている相続分が「遺留分」です。

たとえば「全財産を愛人に相続させる」のような遺言書が残されていたとしても、配偶者や子どもは遺留分で保障された額を請求できます。

合わせて読みたい>>遺留分とは何か?遺留分の割合と遺留分侵害請求について解説!

遺留分とは?遺言書作成時に知っておくべきポイントを行政書士が解説!

遺留分請求は生前贈与も計算対象(特別受益の持ち戻し)

さて、記事冒頭で紹介したとおり、生前贈与された財産(特別受益)も、遺留分の対象となります。

たとえばAさんは、兄と弟の3人兄妹で、先日お父様を亡くされ、ご両親ともに鬼籍に入られたそうです。遺言は次のような内容だそうです。

・兄に不動産(1500万円相当)を相続させる。
・兄弟3人に預貯金1500万円を500万円ずつ相続させる。

ですが、お父様の遺言に従って相続手続きを始めたはいいものの、どうにも内容に納得できないそうで…。

というのも、お兄様は、5年前に600万円の事業資金の贈与をお父様から受けており、相続分が不公平だと感じているとか。

この場合、遺留分の請求はできるのでしょうか?

まず遺留分がいくらなのかを算出するためには、相続財産がいくらなのか決定して計算の基礎とする必要があります。

そして遺留分計算のポイントとなっているのは、お兄様の生前贈与分。

この事例ように生前に財産を贈与されていた場合、その相続人の受けた贈与等の利益を「特別受益」といいます。

この特別受益については、相続財産への「持ち戻し」という仕組みがあり、生前贈与された金額を相続財産に加算して計算することができます。遺留分の算定は生前贈与(特別受益)を持ち戻す、ということです。

ただ、遺留分の計算にあたっては、この持ち戻しは必ずしも遺留分計算の基礎額に含まれると断定はできないのです。

ということは、お兄様の特別受益が持ち戻しされるかどうかが、不公平感解消の分かれ目になるのです。

そもそも特別受益は、遺産の前渡しのような性質を持ちます。

たとえば住宅購入代金の贈与、営業資金の贈与、婚姻費用の贈与などが、生前贈与による特別受益として代表的なところでしょう。

合わせて読みたい>>特別受益とは?生前に親から多額の援助を受けた場合は相続に影響するため注意

特別受益とは?生前に親から多額の援助を受けた場合は相続に影響するため注意

今回のAさんのケースでは、お兄様が多額の贈与等を受けているので、この贈与を考慮せずに財産を分けると確かに差が出てしまい、不公平になります。

では、特別受益をどのように計算すれば公平な贈与になるのでしょうか?実は特別受益の持ち戻しの計算は、「法定相続」と「遺言書がある場合の相続」で異なります。

法定相続の場合の計算

今回のケースが法定相続だった場合は、生前贈与も合わせた相続方法は以下のような計算式になります。

相続分を算出する際の財産額:1500万円(不動産)+1500万円(預貯金)+600万円(兄への生前贈与)=3600万円
 ↓
一人当たりの法定相続分:3600万円×1/3=1200万円
 ↓
Aさん・弟の相続分:各1200万円
兄の相続分1200万円-600万円(生前贈与分)=600万円

遺言書がある場合の特別受益の計算

一方、遺言による遺産相続が遺留分を侵害しているとき、つまり不公平な状態になってしまっている場合、侵害されている側は、遺留分として妥当な金額を請求することができます(遺留分侵害額請求)。

Aさん兄弟一人当たりの遺留分は、相続財産の1/2を、相続する子供の人数(3人)で割った、1/6です。

つまり、Aさんのお弟さんは、お兄様に、遺留分として財産総額の1/6の金額の請求ができるわけなのです。
さらに特別受益も加味した遺留分の具体的な計算方法は次の通りです。

相続分を算出する際の財産額:1500万円(不動産)+1500万円(預貯金)+600万円(兄への生前贈与)=3600万円
 ↓
相続人一人あたりの遺留分:3600万円×1/6=600万円
 ↓
今回、遺言書の中で「不動産は兄が相続、預貯金は500万円ずつ相続」とあるため、遺留分600万円のうち100万円が侵害されていることになる
 ↓
結論:Aさん、弟は兄に対して各々100万円の遺留分侵害額請求をすることができる

特別受益の持ち戻しの計算期間は相続開始前10年間

先ほど、特別受益の持ち戻しを加味した遺留分計算について紹介しました。

しかし、特別受益が遺留分計算に影響を与えるのは、あくまで生前贈与が、相続開始前10年以内だった場合です。

特別受益には時効はありませんが、2019年7月1日施行の法改正により、遺留分を計算する際の特別受益の持ち戻しについては、相続開始前10年以内の贈与に限られるという規定が新設されました。

つまり、相続から10年以上経過した状態だと、この記事で紹介している相続事例の生前贈与の600万円は持ち戻されず、相続人一人あたりの遺留分は「3000万円×1/6=500万円」となります。

Aさん、兄、弟に残された遺言書には次のように書かれていたことを思い出してください。

・兄に不動産(1500万円相当)を相続させる。
・兄弟3人に預貯金1500万円を500万円ずつ相続させる。

つまり、贈与から相続まで10年以上経過しているのであれば特別受益の持ち戻しは発生せず、弟は遺産3,000万円に対する遺留分である500万円はきっちりもらえるため、原則として遺留分を侵害しているとは主張できないのです。

※例外も存在するため、記事後半の「よくある質問」にて解説します。

「特別受益の持ち戻し免除」の意思表示は遺留分計算では原則として無効

もっとも、特別受益の持ち戻しについては、免除の申請もできます。

生前贈与をした場合、その贈与をした人(つまり遺言者)が、将来の相続の際、その贈与した財産を相続時の財産に入れずに計算してほしいと望む場合などです。

遺言書などによって被相続人が持ち戻し免除の意思表示をすると、相続分の算定にあたって生前贈与はなかったことになります。

不公平と言えば不公平に見えなくもないですが、本来、相続財産は被相続人の財産です。その財産をどうするのかは、被相続人が自由に決められるという視点で見ると、相続する側がどうのこうのいえる問題ではないようにも見えます。

でも一方で、遺留分制度の趣旨は、被相続人の財産処分の自由に一定の制限をすることで、遺される相続人の生活保障を図る点にあります。ここ、大事なポイントです。

持ち戻し免除の意思表示を優先し、遺留分算定の基礎財産に含めないとすると、相続人が確保できる財産割合が少なくなってしまいます。

これは遺留分制度の趣旨を害してしまうことから、持ち戻し免除の意思表示については、遺留分算定の基礎財産には含まないものとされるのです。

つまり、特別受益の持ち戻し免除の意思表示は、遺産分割(法定相続)の計算では有効ですが、遺留分計算では原則として無効(考慮されない)なのです。

なお、ここまでの説明を読んだものの、自分の置かれた状況では「特別受益の持ち戻し免除」が有効なのか?それとも向こうで遺留分請求ができるのか?よく分からないという方もいるかもしれません。

そのような場合は、当事務所のような相続手続の専門家へ問い合わせて、各種手続を代行してもらったほうが安心でしょう。

「生前贈与などの特別受益」と「遺留分」の関係でよくある質問

それでは、「生前贈与などの特別受益」と「遺留分」の関係について、よく寄せられる質問について解説します。

10年より前の生前贈与でも遺留分の対象になるケースはある?

記事内で紹介したとおり、原則として10年より前の生前贈与は遺留分の対象となりません。

しかし例外として、贈与者(亡くなった方)と受贈者(生前贈与をもらった方)の双方が、他の相続人の遺留分を侵害することを知っていて執り行われた生前贈与については、たとえ10年を経過しても、遺留分侵害額請求の対象となるとされています。

しかし、10年より前の贈与について、「損害を加えることを知っていたかどうか」を立証するのは、簡単ではないでしょう。

遺留分を請求する側も生前贈与を受けていた場合はどうなる?

遺留分を請求する側が、過去に被相続人から生前贈与を受けていた場合、その贈与も「特別受益」として扱われます。

そして、この「請求する側」の特別受益は、最終的に請求できる金額から差し引かなければなりません。つまり請求できる金額は、その分だけ少なくなります。

ここは仕組みが複雑なので、順を追って見ていきましょう。

まず、遺留分を計算するときは、計算のもとになる財産の総額を確定させます。これが記事内にも出てきた「基礎財産」です。

基礎財産 = 亡くなった時点の遺産 + 生前贈与(特別受益) - 債務

遺留分請求をする場面において、上記の基礎財産にプラスされる特別受益は、この記事の主題でもあるとおり「10年以内に贈与された特別受益」とされています。これは、「遺留分を請求される側」が受けた贈与でも、「請求する側」が受けた贈与でも変わりません。

10年より前の古い贈与は、誰が受け取ったものであっても、基礎財産にはプラスされないということです。

次に、実際に請求する遺留分の計算について解説します。

繰り返しとなりますが、「遺留分を請求する人」が、すでに生前贈与(特別受益)を受け取っていた場合、請求額から特別受益分を差し引かなければなりません。

この差し引く場面には、10年以内といった期間制限がないのです。

言葉だけでは分かりづらいところもあるため、下記の例で計算してみましょう。

  • 亡くなった時点の遺産:3,000万円(すべて長男が相続する遺言あり)
  • 相続人:長男・次男の2人
  • 長男:5年前に父から1,000万円の生前贈与を受けていた
  • 次男:20年前に父から500万円の生前贈与を受けていた
  • 次男が、長男に対して遺留分を請求したい

まず、遺留分計算の元となる基礎財産を求めます。これは「10年以内」の生前贈与を持ち戻しますので、基礎財産 = 3,000万円 + 1,000万円(長男の5年前の贈与)= 4,000万円です。

次に遺留分を計算します。子2人が相続人の場合、一人あたりの遺留分は基礎財産の4分の1です(全体の遺留分2分の1 × 法定相続分2分の1)。

つまり、次男の遺留分額 = 4,000万円 × 4分の1 = 1,000万円となります。

ただし、次男自身が受けた生前贈与を、請求できる金額から差し引かなければなりません。この差し引きには期間制限がないため、20年前にもらった500万円も対象になります。

次男の20年前の贈与は、基礎財産には足されないのに、自分の請求額からは差し引かれるということです。

つまり次男が請求できる額は、1,000万円 - 500万円 = 500万円となります。

このように、実際に遺留分を計算するのは、かなり複雑です。遺留分について気になることがある場合は、専門家へ相談したほうが安心でしょう。

なお、遺留分を計算しない場面=遺産分割協議において基礎財産を計算するときも、プラスする特別受益について、遡る期間に制限はありません。

ただし2023年4月に施行された改正民法により、「相続開始から10年が経過した後の遺産分割」においては、具体的相続分(特別受益や寄与分を反映した割合)による分割ができなくなりました。

逆にいえば、相続開始から10年が経つ前であれば、たとえ何十年も前の特別受益であっても、持ち戻して計算できます。

これはこれで複雑な話のため、詳しくは下記記事もご参照ください。

参考:具体的相続分による遺産分割の期間制限はどうなる?2023年4月の民法改正を行政書士が解説!

どんな生前贈与が「特別受益」になる?

生前贈与は特別受益になる、といっても、すべての贈与が特別受益になるわけではありません。

たとえば下記は、特別受益となる贈与の代表例です。

  • 婚姻や養子縁組のために受けた贈与(結婚時の持参金・支度金など)
  • 生計の資本として受けた贈与(住宅の購入資金、家の建築資金、事業資金など)
  • 通常の範囲を超えるような生活費や学費(留学費用など)

一方、通常の範囲の学費(たとえば高校までの学費)や、扶養義務の範囲内といえる生活費の援助などは、特別受益とはされません。

遺言書作成の際は生前贈与と遺留分を考慮に作成する

最後に、改めて「生前贈与などの特別受益」と「遺留分」の関係性を、生前贈与の時期ごとに整理してみましょう。

【相続発生時の状況】

相続財産:不動産(1,500万円)、預貯金1,500万円

相続人:姉・兄・弟の三人

遺言書:不動産は兄が相続、預貯金は500万円ずつ相続

生前贈与:兄に600万円

姉と弟に不公平感がある

生前贈与が20年前だった場合の遺留分計算

生前贈与600万円:持ち戻されない

相続人一人あたりの遺留分:現在の財産3,000万円×1/6=500万円

結論:遺言で預貯金を一人あたり500万円相続するので、遺留分(500万円)は侵害されず、遺留分侵害額請求をすることはできない。

生前贈与が5年前だった場合の遺留分計算

生前贈与600万円:持ち戻される

相続人一人あたりの遺留分:3,000万円+600万円=3,600万円

3,600×1/6=600万円

遺言での相続分は500万円のため、遺留分600万円のうち100万円が侵害されている。

結論:姉・弟は、兄に対して各々100万円の遺留分侵害額請求をすることができる。

このように、生前贈与がいつ行われたかによって、遺留分侵害額請求ができるかできないかが異なってきます。

そのため生前贈与や遺言書の作成を行う場合には、「遺留分」も含め将来の相続の際に問題になるような点をよく考慮することが大切です。
しかし遺留分は制度が複雑で分かりづらく、さらに生前贈与した金額も加味するとなると、どのような計算となるのか分からないという方もいるでしょう。

そのような場合には、弁護士や行政書士など、専門家にぜひ相談してみてくださいね。
横浜市の長岡行政書士事務所では、生前贈与と遺留分を考慮した遺言書の作成相談にも対応しています。初回相談は無料なので、お気軽にお問い合わせください。

 
行政書士 長岡 真也
この記事の執筆・監修者:長岡 真也(行政書士)
神奈川県行政書士会所属(第12091446号)
遺言に関するお問い合わせ

初回相談は無料です。お気軽にお問い合わせください。

ご相談はご来所のほか、Zoom等のオンラインでの相談も承っております。

お電話でのお問い合わせ

「遺言のホームページを見た」とお伝えください。

受付時間:平日9:00-21:00(土日祝予約制)
メールでのお問い合わせ

    初回相談は無料です。お気軽にご相談ください。ホームページからのご相談は24時間受け付けております。

    お問い合わせ種別必須

    プライバシーポリシー

    長岡行政書士事務所(以下「当事務所」といいます)が運営する「横浜で遺言の遺言を専門家が支援」(以下「当サイト」といいます)は、以下のとおり個人情報保護方針を定め、個人情報保護の仕組みを構築し、全従業員に個人情報保護の重要性の認識と取組みを徹底させることにより、個人情報の保護を推進致します。なお、本プライバシーポリシーにご同意いただける場合にのみ当サイトをご利用くださるようお願いいたします。ご利用された方は、本プライバシーポリシーの条件にご同意いただいたものとして取り扱いさせていただきます。

    個人情報の管理

    当事務所は、お客さまの個人情報を正確かつ最新の状態に保ち、個人情報への不正アクセス・紛失・破損・改ざん・漏洩などを防止するため、セキュリティシステムの維持・管理体制の整備・従業員教育の徹底等の必要な措置を講じ、安全対策を実施し個人情報の厳重な管理を行ないます。

    個人情報の利用目的

    お客さまからお預かりした個人情報は、当事務所からのご連絡や業務のご案内やご質問に対する回答として電子メールや資料のご送付に利用いたします。利用目的は主に以下に定めるものに限ります。

    • 行政書士法に定められた業務及びそれに付帯する業務を行うため

    • 当サイトを通じたサービスの提供

    • 当サイトの品質向上とそれに基づくお客様の声の実施

    • その他、当事務所の業務の適切かつ円滑な遂行

    個人情報の第三者への開示・提供の禁止

    当事務所は、お客さまよりお預かりした個人情報を適切に管理し、次のいずれかに該当する場合を除き、個人情報を第三者に開示いたしません。

    1. お客さまの同意がある場合

    2. お客さまが希望されるサービスを行なうために当事務所業務を委託する業者に対して開示する場合

    3. 法令に基づき開示することが必要である場合

    個人情報の安全対策

    当事務所は、個人情報の正確性及び安全性確保のために、セキュリティに万全の対策を講じています。また、当事務所は個人情報の取扱いに関し、従業員全員に対し適切な監督をします。

    ご本人の照会

    お客さまがご本人の個人情報の照会・修正・削除などをご希望される場合には、ご本人であることを確認の上、対応させていただきます。

    法令、規範の遵守と見直し

    当事務所は、保有する個人情報に関して適用される日本の法令、その他規範を遵守するとともに、本ポリシーの内容を適宜見直し、その改善に努めます。

    個人情報保護に関するお問い合わせ

    当事務所の本プライバシーポリシー(個人情報保護指針)に関するお問い合わせ、連絡、意見などは下記までご連絡ください。

    長岡行政書士事務所 代表 長岡真也
    233-0003
    横浜市港南区港南5-1-32港南山仲ビル202
    電話 045-844-5616



    ページトップへ戻る