親の土地に自宅を建てた場合の相続対策とは|4つの対策例を行政書士が解説

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親の土地に自宅が建っている!相続対策はどうしたら良い?

「実家の広い土地に自宅を建てたいが、相続の際どうなるの?」
「すでに親の土地に家を建てて住んでいる。生前贈与をしておいた方が良い?」
「親の土地に自宅がある。相続に備えてどうしておくべき?」

 

住宅の購入は多くの人にとって人生の中で大きな出費であり、特に土地の価額は住む場所によっては高額になります。
ご実家の土地が広く、もう一軒家を建てる余裕がある場合、そのご実家の土地にお子さんが自分名義の家を建てて住むことは、土地代の負担がかかりませんから、比較的よく利用される方法かもしれません。

 

しかし親名義の土地に子ども名義の家を建てた場合、土地の名義人である親が亡くなったときにどのような対応が必要になるのでしょうか。あるいは、親が健在なうちに、何か対策をとっておくことが必要なのでしょうか。

 

今回のコラムでは、親名義の土地に子ども名義の家を建てた場合の相続との関係について説明したいと思います

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親名義の土地に自宅を建てた場合の相続例

Aさん:「こんにちは!今日は先生に質問があります!」

 

長岡:「こんにちは。早速ですね。どのようなことでしょうか?」

 

Aさん:「先日、友人がポロッとつぶやいたのですが、『夫の父親名義の土地に、夫名義で自宅を建てて住んでいる。そろそろ父親に何かあった時のことを考えて、土地を生前贈与などした方が良いのかな。』と。悩んでいるようでした。」

 

長岡:「なるほど。確かに、親御さんの土地に子どもが自宅を建てることは比較的良くあるケースですね。」

 

Aさん:「なぜ友人が、生前贈与すべきか悩んでいるのか分からなかったのですが、相続で何か問題になるのですか?」

 

長岡:「住宅が建っている土地は父親名義ですので、父親の財産です。したがって父親が亡くなったとき、その財産である土地は相続の対象となります。そのこともあり、生前贈与と悩まれているのかもしれません。」

 

Aさん:「なんだか面倒なことになりそうですね・・・」

 

長岡:「では今回は、生前贈与も含め、親名義の土地に自宅を建てた場合の相続との関係について説明していきたいと思います。」

 

Aさん:「よろしくお願いします!」

何もしなければ土地全体が相続の対象となる

長岡:「さて、今回のご友人のケースですが、現状維持のまま何もせずお父様が亡くなられた場合、まずは法定相続となります。」

 

Aさん:「法律で相続人と持ち分が決められているのですね。」

 

長岡:「そうです。法定相続では不動産については相続人の共有となりますが、共有すると将来売却の際に手続きが煩雑になったり、意見がまとまらず処分ができない場合などがあるため、通常は遺産分割協議をして決めるケースが多いと言えます。」

 

Aさん:「遺産分割も、家が建っているとなると大変そうですね。」

 

長岡:「そうですね。相続人の納得を得るために何らかの対応が必要と言えるかもしれません。では、法定相続と遺産分割についてそれぞれ説明していきましょう。」

法定相続の場合の相続分

法定相続では、財産を相続することのできる相続人の範囲とその相続人が相続できる財産の割合が法律で定められています。

例を挙げてみましょう。

 

被相続人(亡くなった人):父親

相続財産

  • 土地:父親名義2,000万円
  • 建物:父親名義1,000万円
  • 預貯金1,000万円父名義の土地に、長男名義の建物あり。
    相続人:長男・次男

 

相続人が子だけの場合、法定相続では子の人数で等しく分割することになりますので、法定相続分は長男・次男各々1/2ずつになります。

 

  • 土地・建物→長男・次男で1/2ずつ共有
  • 預貯金→長男・次男は500万円ずつ相続

 

しかし、この共有となる土地には子B名義の家が建っています。

 

父親の生前は、父親の理解や勧めもあって、お互いに問題なく父親の土地上に自宅建物を建てて住むことができたかもしれませんが、相続により土地が共有状態となると、権利関係が複雑になり、トラブルのもとになる可能性があります。

例えば将来長男が亡くなったときの相続で、長男の配偶者や子と、次男の家族間で争いになるようなケースです。
このような争いは長男や次男にとっても望ましくない状態ですので、通常は遺産分割協議によって相続する財産を決めることになります。

遺産分割協議の場合の相続

遺産分割協議では、相続人の誰がどの財産をどれだけ相続するのか、相続人間の話し合いで決めることになります。

 

例えば次のような遺産分割方法が考えられます。
「土地・建物は長男が相続し、預貯金は次男が相続する」

 

この分割方法によれば不動産の名義はすべて長男になりますので、土地上に長男名義の家が建っていても、権利関係が複雑になることを避けることができます。

合わせて読みたい>>遺産分割協議とは?流れとポイントを行政書士が解説

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親名義の土地に自宅を建てた場合の対策例

留意したいのが、不動産の財産的価値は、比較的高額だという点です。不動産を相続しなかった相続人が不公平感を持ち、話し合いがまとまらない可能性も考えられます。

このような事態を避けるためには、次のような対策をとっておくことが有用です。

  1. 被相続人が、財産形成をしておく
  2. 代償分割をする
  3. 遺言書を作成しておく
  4. 生前贈与する

どのような内容なのか、詳しくみてみましょう。

財産形成をしておく

親名義の土地に家を建てて住んでいる兄弟がいる場合、日頃から交流を持ち、関係を良くしておくことで他の兄弟の理解を得られる場合もあります。
しかしいざ相続となったとき、相続できる金額に大きな差があることを目の当たりにして不公平感を持ってしまうことも当然考えられます。

 

このようなことを想定して、可能であれば親が生前、相続人が平等に相続できる財産形成をしておくとトラブルになることを防ぐことができます。

 

例えば、被相続人の財産が以下のような状況であったとします。

  • 土地2,000万円
  • 建物1,000万円
  • 現金1,000万円
  • 土地上に長男の住宅あり、不動産は長男に相続させたい。

財産形成しておく場合、このケースでは、親が1,000万円の預貯金を生前に増やし、3,000万円にしておきます。
こうすれば、次男の相続分(現金)は3,000万円と長男の不動産分と平等になり、次男も納得がいく結果が得られます。

代償分割をする

前述した財産形成は親が相続財産を増やしておく対策でしたが、代償分割とは、一人の相続人が不動産のように簡単に分割できない財産を相続した場合、他の相続人に相応の代償金を支払って不平等を解消する方法です

 

亡くなった親と同居していたり、親の土地に自宅を建てて住んでいる相続人が、不動産をそのまま引き継ぐ場合などに用いられる分割方法です。

 

先の例を再度挙げてみましょう。

  • 長男:不動産3,000万円を相続
  • 次男:預貯金1,000万円を相続
  • 代償分割として、BがCに1,000万円を払う。
  • この代償分割により、結果的にA、Bとも2,000万円の財産を受け取ることになる。

 

なおこの代償分割をする場合、遺産分割協議書に代償分割である旨を記載しないと、代償金の支払いが贈与であるとされ、贈与税が課税されてしまうことがあります。

したがって遺産分割協議書には、「代償として支払うこと」を明記することが必要となります。

遺言書を作成しておく

親名義の土地に自宅を建てた場合は、遺言書を作成しておくことも有効です。

 

Aさん:「法定相続は権利関係が面倒ですし、遺産分割協議は、生前の財産形成にしろ代償分割にしろ、金銭負担が大きいですね。」

 

長岡:「そうですね。いずれにせよ相続人間で話し合って皆が納得しなければ手続きは進みませんので、もめごとが起こる可能性は高くなります。」

 

Aさん:「そういえば、法定相続の説明の前に『何もせず父親が亡くなった場合』とおっしゃっていましたが、事前に対策ができるのですか?」

 

長岡:「はい、事前に遺言書を作成しておくことで対策ができます。今回のようなケースでは、遺言書を作成しておくことでスムーズな相続手続きが期待できます。」

遺言書は、遺言者が自身の財産処分について自由に書くことができますので、親が生前に遺言書を作成しておけば、その遺言書の内容通りに子どもに財産を相続させることができます。

 

先の例では、例えば「長男に不動産を相続させ、次男に預貯金を相続させる」という内容の遺言を作成します。
こうすることで、相続人は遺言書の内容通りの相続手続きをすることになります。

 

なお遺言書では、「付言事項」という、遺言者の気持ちなど伝えるメッセージのような内容を書くことができます。

 

これは必ずしも必要ではありませんが、ある特定の相続人が多く財産を相続したり、遺言の内容が偏ったものである場合などに、遺言書を書くに至った経緯や遺言書に込める思いなどを書き記しておくことで、遺言書に従わなければならない相続人の気持ちに寄り添うことができます。

 

遺言書を書く場合には、財産について書き記すだけではなく、付言事項で思いを伝えていただくことをおすすめいたします。

 

長岡:「このように遺言書で遺産分割方法を指定しておくことは有用ですが、注意点もあります。」

Aさん:「遺言書の内容通りに実現されるのではないのですか?」

長岡:「遺言書があったとしても、『遺留分』を侵害することはできませんので、この点に注意が必要です。」

Aさん:「なるほど。遺留分については、他のコラム記事でもよく出てきますね。」

長岡:「そうですね。相続において、遺留分は忘れてはならない必須の制度ですので説明しましょう。」

 

遺留分は、一定の相続人に保障される、相続財産を最低限受け取ることのできる割合のことです。

相続人が子だけの場合、子の遺留分は1/2です。これを子の人数で按分しますので、子どもが2人の場合は1/2×1/2で、一人当たりの遺留分は1/4になります。

 

先の例で具体的に見てみましょう。

  • 不動産:3,000万円
  • 預貯金:1,000万円
  • 相続人:長男・次男
  • 相続人の遺留分:4,000万円×1/2(遺留分)×1/2(子ども2人)=1,000万円

長男・次男の遺留分は1,000万円になります。遺言書があっても、この額を侵害されている相続人は、遺留分を侵害している相続人に、侵害している額を支払うよう求めることができます。これを遺留分侵害額請求といいます。

 

上記の状況について例を挙げてみましょう。

  • 遺言書の内容:「不動産は長男に相続させる。預貯金は長男・次男で1/2ずつ相続させる。」
  • 次男は500万円相続することになるが、遺留分は1,000万円なので、500万円侵害されている。
  • 長男に侵害されている500万円払うよう請求することができる。

 

長岡:「このように、遺言書を作成する場合には、遺留分を侵害しないかどうかに留意することも大切です。」

合わせて読みたい>>遺留分とは?具体例や侵害された遺留分請求方法を分かりやすく解説!

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生前贈与する

長岡:「今回のAさんのご友人は生前贈与についても考えていたとのことで、最後に生前贈与について説明したいと思います。」

Aさん:「遺言も法定相続・遺産分割協議も、お父様が亡くなってからの相続段階ですね。それらとは異なるということになりますね。」

長岡:「そうですね。相続の際面倒になりそうだから、生前贈与してしまった方が良いのでは、と考える方もいらっしゃいますが、生前贈与にも注意が必要な点がありますので、十分検討することが大切です。」

 

生前贈与を検討する場合にまず知っておいていただきたいことは、税金についてです。

生前贈与も相続も取得した財産について税金が課せられますが、相続税については比較的大きな金額の基礎控除があります。

相続税の基礎控除は以下の通りです。

3,000万円+600万円×相続人の数

 

例えば相続人が2人の場合には、
3,000万円+600万円×2=4,200万円となり、相続財産が4,200万円までは相続税はかかりません。

 

一方、贈与税には1年間の贈与につき110万円の基礎控除がありますので、その範囲で毎年少しずつ贈与する場合は税金をかけずに贈与することができます。
しかし今回の事例のように土地を贈与する場合は一度に大きな金額の贈与となりますので、通常は贈与税が課せられることになります。
また贈与税の税率は、相続税の税率よりも高いのが一般的です。

 

したがって、通常は生前贈与によらず相続によった方が税金は低く抑えられる傾向にあるといえます。

一方、相続時課税制度を使う方法もあります。

相続時課税制度とは、簡単に説明すると、生前贈与については2,500万円までを非課税とし、贈与者が亡くなったときに、相続財産にその生前贈与した価額を合わせて相続税を課税するという制度です。

国税庁参考URL

この制度は、2,500万円の非課税枠があるため税金がかからないように見えますが、実質的には課税の先送りと言えますので、次の点に注意が必要です。

【注意点】

  1. 2,500万円を超える部分については一律20%の贈与税が課税される。
  2. 贈与税の基礎控除110万円は利用できない。
  3. 相続時の財産に加算されるため、相続税の基礎控除額を超える場合がある。
  4. 一度選択した場合、取り消すことはできない。

 

この制度を利用するかどうかにあたっては、不動産の価額や将来見込まれる相続財産の価額などについて十分検討することが大切と言えます。

また、生前贈与する場合は、特別受益に注意に注意しなければなりません。

不動産の生前贈与が特別受益に該当した場合、例え生前贈与していて土地が父親名義ではなく子どもの名義になっていたとしても、各相続人の相続分を計算する際、計算基礎となる相続財産に含まれてしまいます。

特別受益についてのくわしい説明は、こちらの記事をお読みください。

参考記事:生前に受けた贈与、相続の際どうなるの?~特別受益と持ち戻し免除~

 

例えば次のような状況だったとします。

  • 父親名義の土地・建物1,500万円
  • 預貯金3,000万円
  • 相続人は長男・長女・次男の3人

 

土地・建物を長男に生前贈与していた場合、相続財産は預貯金の3,000万円を3人で分けるのではなく、生前贈与した土地建物1,500万円も含めて計算することになります

 

  • 相続財産額:1,500万円(生前贈与分)+3,000万円=4,500万円
  • 4,500万円を3人で分けるので、一人当たりの相続額は1,500万円
  • 長男はすでに土地建物で1,500万円を受け取っているので、相続額は0円
  • 長女・次男は1,500万円ずつ相続する

ということになります。

 

なお、この特別受益の持ち戻しには、贈与した者の意思表示で免除することができます。この場合も遺留分を侵害することはできませんが、くわしくは前述の参考記事をお読みください。

親名義の土地に自宅を建てた場合は遺言書で対策

今回は、親の所有する土地に子どもが自分名義の家を建てた場合と相続について説明しました。

親名義の土地に自宅を建てたケースでは、権利関係や税金の面などで様々な問題が起きやすく、相続の際トラブルになる可能性もあります。

どのような対策をとるべきなのかは、相続人間の付き合いや関係、相続財産の状況などを総合的に判断することが大切となります。

しかしそれらの判断を一人ですることは難しく、悩まれる場合も多いかと思います。分からない点やお悩みがある場合には、ためらわずに弁護士や行政書士などの専門家に相談することをご検討ください。

 

長岡行政書士事務所では依頼者さまへの親切丁寧な対応を心がけておりますので、遺言作成や相続でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談にいらしてお話をお聞かせください。今回もお読みいただきありがとうございました。

 
行政書士 長岡 真也
この記事の執筆・監修者:長岡 真也(行政書士)
神奈川県行政書士会所属(第12091446号)
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