愛人に財産を承継させたい!愛人のために書いた遺言はどうなるの?

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愛人に財産を承継させたい! 愛人のために書いた遺言はどうなるの?

 

相談者様 : 70代男性

実は、妻と娘の3人家族なのですが、愛人がおりまして・・・その愛人に遺産を残してやりたいと思っています。

そのために遺言書を作成したいと思い、ご相談に参りました。

 

妻と娘とはもう10年近く別居していて、現在は愛人と同居しています。

娘も結婚して自立していますし、妻も多くの資産を持っています。

一方、愛人はまだ若く、今後の生活に困らないように私の財産の全てを残してあげたいと思っていますが、家族と愛人がトラブルになることも望んでいません。

愛人のために全財産を残すと遺言書に書いた場合どうなるのでしょうか?

回答 : 長岡行政書士事務所 長岡

今回のご相談者様は、奥様とは離婚していないものの、愛人の方に全財産を残してあげたいというご相談です。

 

愛人の方に遺贈や贈与する旨の遺言書を作成することで財産を残して差し上げることは可能です。

しかし、奥様とは離婚なさっていないということですから奥様と娘さんは法定相続人という地位にあります。そのため、遺留分を請求する権利があります。

今回は、愛人のために書いた遺言書の有効性についてご説明します。

※本記事は読む方にとってわかりやすいようにあえて『愛人』という言葉を使います。予めご了承ください。

 

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愛人に相続権はない

まず、愛人には、当然には遺産を受け取る権利はありません。

日本は法律婚制度を採っているため、現状は法律で守られるのは原則として婚姻関係にある者や子どもなど、一定の血縁関係にある者である法定相続人にのみです。

 

法定相続人に該当する者は以下のとおりです。

法定相続人
第1順位配偶者・子ども(養子・胎児含む)
第2順位直系尊属(親や祖父母)
第3順位兄弟姉妹

 

上記の通り、当然ながら愛人は法定相続人には含まれていません。

つまり、故人が遺言書を作成して愛人に財産を譲るなどの意思が表明されているなど、何らかの手続きがなされていない限り、原則として愛人という立場では相続することはできません。

 

相続で遺産を受け取る趣旨

そもそも、相続という考え方は、故人の配偶者や子どもなど、家族の生活を守るという観点から設けられている制度です。

例えば、父親が亡くなってしまった場合に相続できないとなると子ども達は生活を維持することができなくなってしまいます。

そのため、法律で配偶者や子どもを法定相続人として保護し、故人の遺産を相続できる権利を与えると規定することで残された家族を守っています。

 

”法定相続人”について詳しくは以下のリンクからご確認ください。

合わせて読みたい:新人補助者ひまりの事件簿①法定相続人の範囲〜配偶者と子供編

 

遺言は故人の意思として尊重される

相続は家族を守る制度とご説明しましたが、遺産は本来故人の持ち物です。

 

相続について規定されている民法は、”私的自治の原則”という大原則のもとに考えられています。

”私的自治の原則”とは、『人は私的な生活関係を自らの意思に基づいて形成することができ、国家はその実現を保障しなければならない』と考えるものです。

 

この私的自治の原則からさまざまなものに所有権を認め、”所有権を有する自らの持ち物を、その所有者はどのように処分するかは自由である”と考えられています。

つまり相続であっても、原則として『自らの持ち物をどのように処分するかは個人の自由であり、国家はできる限り介入してはならない』と解されています。

 

以上のことから、ご自身の財産をどのように処分するかは自由であり、その意思を遺言書に記載してある場合には、故人の意思を最大限に尊重されるように法律で守られています。

したがって、愛人に財産を承継させる旨の記載がある場合、法定相続人の規定よりも遺言書の内容が尊重されるのです。

 

しかし、本来相続の趣旨は、家族を守るための制度です。

そのため、一定の割合で配偶者や子どもには遺産を受け取る権利が保障されています。

 

遺産を愛人に渡すことができるケース

遺産の相続権がない愛人に遺産を渡すことができるケースとして次の2つの場合が挙げられます。

  • ケース1:遺言書に愛人に財産を遺贈する旨が記載されていた場合
  • ケース2:愛人と死因贈与契約が結ばれていた場合

 

遺言書に愛人に財産を遺贈する旨が記載されていた場合

まず、遺贈とは、「遺言」よって遺産の一部又は全てについて相続人や、相続人以外の人(会社や団体なども可能)に無償で自己の財産を譲る行為のことをいいます。

 

遺贈は、相続人をも含む人や会社・団体など、誰に対しても財産を譲ることも可能です。

したがって遺贈という方法であれば、愛人に対しても財産を譲り渡すことができます。

 

全財産を愛人に渡したい場合には、『包括遺贈』の方法があります。

一方、特定の財産を愛人に渡したい場合は、『特定遺贈』という方法があります。

 

包括遺贈と特定遺贈について、詳しくは以下のリンクからご確認ください・

合わせて読みたい:

特定遺贈とは?包括遺贈との違いやメリット・デメリットをわかりやすく解説

包括遺贈とは?特定遺贈との違いと包括受遺者の権利義務について解説

 

愛人と死因贈与契約が結ばれていた場合

死因贈与とは、「私が死亡したら〇〇に財産を渡します」といった内容の贈与契約です。

死因贈与は、死亡したことを条件として財産を渡すという遺産を渡す人ともらう人の生前の約束です。

 

死因贈与について、詳しくは以下のリンクからご確認ください。

合わせて読みたい:相談事例:いつ財産を渡すかによって手続が違う!死因贈与と遺言について

 

遺言書で遺贈する旨が記載されていても、死因贈与契約が結ばれていても、いずれにおいても配偶者や子どもにとっては受け入れ難いものです。

しかし、遺贈する旨の遺言書や死因贈与契約が法的に有効である場合には、愛人に遺産を渡さなければなりません。

 

愛人に対する贈与が無効と判断されるケース

遺言書に記載された内容は、故人の意思として最大限に尊重されるものです。

しかし、愛人に遺産を贈与する旨の遺言があったとしても以下の2つの場合には無効であると判断される可能性があります。

  • ケース1:公序良俗に違反する場合
  • ケース2:遺言書の形式に不備がある場合

 

遺言書が無効であると判断された場合、愛人に財産を渡すとする遺言はそもそもなかったものとして扱われることになります。

その場合には、法定相続人等で遺産分割協議をすることになります。

 

愛人にはそもそも相続権がありません。

つまり、遺言書が無効であると判断された場合には愛人に財産を渡すことはできません。

公序良俗に反する場合

公序良俗に反する行為とは、簡単に言うと道徳的に反する行為です。

公序良俗に反する行為については以下のような法律の決まりがあります。

 

民法第90条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

 

つまり、道徳に反するような行為は法律行為であっても無効となります。

ただし、愛人に財産を渡した行為自体がそもそも公序良俗違反であると判断されるわけではありません。

 

それぞれ事案によって判断は異なりますが、例えば、愛人との交際を継続させるための条件として遺産を渡すというような場合、それにより配偶者や子どもの生活が脅かされるのであれば公序良俗に反するとして無効とされる可能性があります。

 

あまりにも道徳的に反するような原因に基づく遺贈は、相続においても無効と判断されます。

もっとも、公序良俗に反するため無効であるという判断はなかなかされづらいと考えられています。

 

また、今回のご相談者様のように、ご本人と愛人の方が同居関係にあり、生活を共にしているような場合であって、愛人関係を継続するための条件としてなされたものではなく、その遺贈が家族の生活を脅かすものではない場合、遺言書は有効であると判断された判例もあります。

 

遺言書の形式に不備がある

遺言書は有効であると判断された場合、故人の意思であるとして法的な効力を持ってさまざまな影響力を持つものです。

そのため、遺言者の死後に遺言の内容は趣旨に疑義が生じないよう、遺言書作成には法律で厳しく守るべき形式が定められています。

したがって、有効な遺言書を作成するためにはその厳しい形式をクリアしなければなりません。

 

遺言の形式について以下のような定めがあります。

 

民法 第960条 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。

 

つまり、この法律の規定から、遺言は法律に定める方式に従っていなければ有効な遺言であるとは言えず、無効と判断される可能性があります。

無効であると判断される例
  • 押印や日付がない場合
  • 意識が朦朧としているような状況で遺言書を作成した場合

以上のような場合には、無効であると判断される場合があります。

 

しかし、これらに該当する場合であっても、軽微なミスである場合は、故人の意思を尊重するために有効であると判断される可能性もあります。

 

愛人に全財産を受け継がせることはできない可能性がある

財産はその人のものですから、自由な処分が許されます。

もちろん、『愛人にすべての財産を』と望むことも可能です。

 

しかし、すでにご説明した通り、相続はそもそも残された家族の生活を守るために設けられた制度であり、愛人を守るためではありません。

 

そのため、いくら本人が遺言書に『すべての財産を愛人に渡す』と記載したとしても、配偶者や子どもたちを最低限であっても守る必要があります。

そこで、”故人の意思”と”故人の死後における家族の生活の保護”、このバランスをとるために、『遺留分』という制度が規定されています。

 

遺留分は遺言でも侵害できない

遺留分とは、一定の範囲の相続人が相続財産から一定の利益を得ることを法律上確保する制度です。

 

遺留分について、詳しくは以下のリンクからご確認ください。

合わせて読みたい:遺留分とは何か?遺留分の割合と遺留分侵害額請求権について解説!

 

一定の相続人は遺留分を請求できる

配偶者や子ども、故人のご両親から遺留分を請求された場合、遺贈や贈与を受けた相手方は拒否することはできません。

愛人とはいえ、同居していたり、夫婦同然の生活をしている相手であっても同様にご家族から遺留分を請求された場合には拒否することはできません。

 

ご家族は『遺留分侵害額請求権』という権利を行使することができます。

本来相続人として受け取るはずの財産から考えれば、遺産としてもらえる額は少なくなってしまいますが、愛人から遺産を取り戻すことができます。

 

もちろん、遺留分を請求するか否かはそれぞれの相続人の決定に従うものです。

遺留分の請求がない場合には、ご希望通り全額を愛人に譲り渡すことは可能です。

 

合わせて読みたい:遺留分とは?具体例や侵害された遺留分請求方法を分かりやすく解説!

愛人に遺産を残す場合は遺言執行者の指定がおススメ

ご家族がありながら、愛人に遺産を残すということはご家族にとって耐え難いものでしょうし、トラブルの元となる可能性があります。

そのため、愛人の方にとってもご家族にとっても精神的な負担は大きくなるものと推察されます。

 

その対策として、あらかじめ遺言執行者を選任しておく方法があります。

 

遺言執行者とは、遺言書の内容に従って相続手続きを行う人のことです。

仮に、愛人と相続人等が揉めたとしても、矢面に立つのは遺言執行者です。

愛人の方にとってもご家族にとっても負担軽減となるでしょう。

 

また、愛人は法定相続人ではありません。

遺言書が発見されなければ、通常の法定相続人間における遺産分割がなされてしまいます。

 

遺言者が亡くなってしまった場合に遺言執行者に通知が届く等、何かしらの手立てを講じておくと安心でしょう。

 

遺言執行者について、詳しくは以下のリンクからご確認ください。

合わせて読みたい:遺言執行者の権限を遺言書に明記する書き方 行政書士がわかりやすく解説

 

愛人に遺言書を残す場合は専門家へ相談することがオススメ

愛人の方へ遺産を残してあげることは可能です。

愛人は相続人ではないからこそ、愛人に遺産を渡したい場合には遺言書は必要です。

 

しかし、安易に遺言書を作成してしまうと、法定相続人の遺留分を侵害してしまうなど、さまざまなトラブルの元が生まれてしまいます。

トラブルとなれば、愛人の方にとってもご家族にとっても精神的な負担は大きなものとなると考えられます。

 

確実に有効な遺言書を作成するために、そして、トラブルに発展しないように、愛人に対する遺言書を作成する際には、専門家である行政書士に相談することをおすすめします。

遺言書の作成など相続についてご心配があれば、ぜひ長岡行政書士事務所へご相談にいらしてください。

 

<参考文献>

・常岡史子/著 新世社 『今日の法学ライブラリ 家族法』

・潮見佳男・道垣内弘人/編 有斐閣 『民法判例百選Ⅰ 総則・物権 第9版』

 
行政書士 長岡 真也
この記事の執筆・監修者:長岡 真也(行政書士)
神奈川県行政書士会所属(第12091446号)
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