「親が遺してくれた自分名義の貯金があるけど、遺産相続に影響する?」
「名義預金とはそもそもどのような貯金のことを指すの?」
「親が名義預金を遺そうとしてくれているけど、問題はある?」
名義預金とは両親や祖父母が、子や孫の名前で預金をしてくれた貯金のことを意味します。多くの両親や祖父母は、良かれと思って子や孫のために預金を遺そうとしてくれますが、実は遺産相続時に争点となるおそれがあります。そこで、本記事では名義預金について、遺産相続時の影響や、注意点に触れていきます。名義預金以外の財産の遺し方についても紹介しますので、ご一読ください。
目次
名義預金とはどのような預金?
名義預金とは、実際にお金を預金していた方と、通帳の名義人となっている方が異なっている預金のことを意味します。この章では名義預金について、問題点やメリットに触れながら詳しく解説します。
両親や祖父母が残してくれる子・孫名義の預金
名義預金は、両親や祖父母が、子や孫にお金を託すために作ることが多いものです。たとえば、両親が将来の子の学費のために、子の名義の通帳を作り、預金している場合は名義預金に該当します。また、専業主婦の方が夫の給与を管理上自身の名義の口座に入れている場合も、名義預金になります。
■ポイント 名義預金は預金の資金源と、名義人が異なる状態を指す。
名義預金は問題が多い
名義預金は相続の機会に問題となることがあります。では、どうして相続時にトラブルが発生するのでしょうか。預金の資金源と、通帳の名義人が異なっているため、子や孫のために預金をしていた亡くなった場合、名義人である子や孫の財産ではなく、預金していた方の「相続財産」とみなすのです。つまり、自分の名義だからこちらの名義預金を入れずに相続税の申告をしないと、税務調査が行われる場合も多く、追徴を受けるリスクがある預金なのです。
名義預金にメリットはある?
リスクが多い名義預金ですが、まだまだ多くの方が良かれと思ってご家族のために名義預金を作っていることがあります。では、名義預金を行うメリットはあるのでしょうか。名義預金は通帳もカードも子や孫自身の名前で作られているため、使いたい時に預金してくれている両親や祖父母の了承を得なくても、自由に引き出せるというメリットがあります。
しかし、先に触れたように相続が発生すると、子や孫の財産ではなく被相続人の相続財産とみなすため相続税が加算されてしまいます。納税の観点から見ると、あまりメリットはないと言えるでしょう。
相続開始後に名義預金が発覚!遺産分割協議への影響とは
名義預金は子や孫の立場にある方が、相続人となってからその存在を知ることがあります。タンスなどを遺品整理している際に、突然通帳を見つけるケースも少なくありません。では、相続の開始後に名義預金が見つかったらどうすれば良いのでしょうか。この章では名義預金について遺産分割協議に与える影響を紹介します。
名義預金は相続財産に含まれる
先に触れたように、名義預金は相続財産に含みます。たとえ相続人自身の名義になっている預金でも、その他の相続財産に加算して相続人と協議し、場合によっては分配する必要があるのです。「親や祖父母が自分のために貯めてくれたのに…」と思っても、その他の相続人の許可なく使い込むことはできません。
名義預金を使い込んでしまったら
名義預金を相続の開始後に使いこんでしまったら、本来は相続財産として遺産分割すべきだったはず、と相続人に使い込みを指摘され、「不当利得返還請求」や「不法行為にもとづく損害賠償請求」として裁判所へ訴えられる可能性があります。ご自身の名義であっても、預貯金をした覚えがない口座が出てきたら、相続財産に加える必要があります。
贈与のつもりが名義預金にみなされることも
名義預金を行う方の多くは、子や孫のためを思って預金しています。そのため、贈与のつもりで口座を開設し、一生懸命預金している場合も多いのです。贈与の場合、暦年贈与なら年間110万円までは贈与税がかからず、次世代にお金を残していく有効な手段です。
しかし、贈与は贈与契約書を交わして行う方が望ましく、年間110万円を超えるなら贈与税の申告も必要です。また、名義人自身の印鑑を使っていない(親や祖父母の印鑑)ことも多く、相続開始後に名義預金にみなされるおそれがあります。しっかりと贈与の手続きを行っておけば相続税対策として有効だったはずが、名義預金にみなされると思い相続税が発生するリスクがあるのです。
遺産分割協議時にトラブルとなる可能性
名義預金が発覚すると遺産分割協議後にトラブルが起きる可能性があります。親や祖父母が一部の相続人に対してのみ名義預金を遺した場合、名義預金をもらえなかった別の相続人が複雑な感情を抱き、遺産分割協議時に相続人間で揉めてしまうおそれがあるのです。
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名義預金以外に安全な財産の遺し方はある?
親や祖父母が子や孫の名義の口座を作ることは、金融教育の推進の視点で見ればメリットがあるものです。銀行のしくみを学び、資金運用を一緒に学ぶと考えると大きな魅力はあります。
しかし、財産の承継の視点で見ると問題点が多い名義預金は避けるべきでしょう。そこで、この章では名義預金以外に考えられる、安全な財産の遺し方について紹介します。
贈与を検討しよう
家族のために財産を安全に承継していきたい場合、きちんと贈与のしくみを活用しましょう。学費などの資金なら一定額まで非課税で贈与できる「教育資金贈与」や毎年110万円まで贈与できる暦年贈与などが考えられます。贈与契約書を結び、必要ならばきちんと税金を納めるようにしましょう。
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生命保険を活用しよう
自身の死後に、大切なお金を家族のために遺したいと考えている場合は生命保険を活用することがおすすめです。生命保険は受取人固有の財産となるため、遺産分割協議とは関係なく受取人指定された方が死亡保険金として受け取れます。
また、相続人が遺した生命保険金については、非課税枠もあります。実際に相続対策に生命保険を活用している方は多いので、検討されてみてはいかがでしょうか。
※生命保険の非課税枠は、「500万円×法定相続人」です。
遺言書を作ろう
将来の相続に備えて子や孫の名義での預貯金を検討している方は、遺言書を使う方法も検討してみましょう。遺言書は大切な家族に、ご自身の預貯金口座なども含めて、どの財産をいくら相続させるのか細かく指定できます。
家族に内緒で名義預金を積み立てていくと、相続開始後も口座を発見できず知らない財産として埋もれてしまう可能性があります。また、相続税がある場合、申告後に名義預金が指摘されると追徴課税となってしまう可能性があります。
名義預金を作るのではなく、贈与や生命保険の活用を行い、ご自身の財産については遺言書を活用することで、不備の無い円満な相続につながります。
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大切な資産は、遺言書で次世代へつなぎませんか
今回の記事では、名義預金について、遺産分割協議時の注意点や名義預金以外の遺し方について詳しく解説しました。名義預金は相続時にトラブルとなりやすいため、できれば避けたい方法です。もちろん、安全に子や孫の口座を開設し、資産運用をしていくことには問題はありません。
ご自身の財産を死後に安全に相続させたい場合には、遺言書の活用がおすすめです。専門家のアドバイスを受けながら、安全な財産の承継を目指しませんか。ぜひこの機会に長岡市行政書士事務所におまかせください。