遺言者に生命保険があるかどうか不明な時、どうすれば良いのでしょうか。調査をする場所はあるのだろうか、調査をするにしても「難しくて理解できない、、」という方も多いかもしれません。この記事では、遺言者に生命保険があるかどうかの調査について、「探偵・明智小五郎」風に推理します。遺言者の生命保険調査方法について分かりやすく知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
やあ、みなさん。今年のあの猛暑がすっかり遠い昔のように思えますね。
ぼくは名探偵として知られる明智小五郎先生の事務所で働く、助手の小林です。
最近ふと思うんです。生命保険って大事だなって。
ぼくは確かにまだ子供ですが、だって生命保険に入ってなかったら、何かあったときに大変だってことは誰にでもわかるじゃないですか。
でも、もっと大変なのが、どの生命保険に入っているかわからないということ。
「おっちょこちょい」ということではなくて、例えば、天寿をまっとうされてお亡くなりになった方の場合、家族にどの生命保険に入っているか伝えておかないと、当然わからなくなりますよね。
実は今回はそういうお話。
ちなみに、うちの探偵事務所の看板であるはずの明智小五郎先生は、いつもスマホをそのへんにおいては、置き場所を忘れてしまい、ぼくが電話をかけて鳴らすハメになるんです。
でも、ほとんどの場合、マナーモードで消音にしているので、出てくりゃしない。
「音に気づいたら、電話に出なければならず、面倒だろう!」
なんて言うんですから、もうどうツッコんでいいかすらわかりません…。
先生の話はさておき、今日は故人の生命保険の居場所がわからない方が「探してほしい」という相談をされる予定なんです。
あ、いらっしゃいましたね。
目次
本人が亡くなったら生命保険は自動的に振り込まれる?
相談者「事前にご相談させていただいた件ですが…」
小林「伺っています。故人(被相続人)が生命保険に入っていたかどうか、そこからお調べするのでしたよね」
相談者「そうなんです。うちのおじいちゃんなんですけどね、生前、入っていたとは言っていたんです。でも遺言にも書かれていないですし、保険証書がどこにもないんですよ。だからなんだか気になって」
明智「ちゃんと家中ひっくり返して探したのか? 箪笥の裏とか天井裏とか、庭の土の中とか」
小林「土の中に埋めるわきゃないでしょう」
相談者「ええ、それはもう家族総出で探しまして。でも出てきたのは、おじいちゃんのへそくりくらいで」
明智「それはそれで収穫だな」
相談者「500円でしたけど」
明智「それは、へそくりとは言わん…」
生命保険は自主的に請求する必要がある
小林「もし生命保険に入っていたとしたら、自主的に請求しないと支払いができませんからね」
相談者「はい、私も保険のセールスをやっていたことがあるので、その点はわかるんです。死亡保険金は、故人(被相続人)が加入していた保険会社に、相続人などが自主的に請求しなければ受け取れませんものね」
小林「期限も気になりますよね」
明智「期限? そんなものがあるのか?」
小林「保険商品によって違いはありますけどね。だいたい被保険者が亡くなった日から3年以内で時効になるんです」
明智「時効だと! この明智が関わる事件で時効など迎えさせてたまるか! 小林くん、これは我が事務所の天王山だぞ」
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生命保険の調査方法
小林「じゃ、先生も一緒に考えて下さいよ。そうそう、手掛かりの一つとして、エンディングノートなどは残されていませんか?」
相談者「何ですか、それは?」
生命保険はエンディングノートから紐解いてみる
小林「簡単に言うと、故人が自分の想いなどを書き残したノートなんです。遺言書とは違って法的効力はありませんが、残された遺族へのメッセージだと考えてください。そこに何かしらヒントがないかな、と」
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相談者「特にはそういったものは…。あ、でもおじいちゃん、俳句が好きだったので、句集というか俳句ノートは残しています。これです」
小林「俳句かあ…なんだか謎解きのようになってきたな」
明智「しかもこのじいさん、かなり句が下手だぞ…。見て見ろ。『赤子見て 渋柿みたいで うまそうだ』…いや、孫、食うなよ!」
小林「そこは、もう表現の自由ということで…」
明智「ん? ふふふ、これを見ろ小林くん」
小林「えっと『世を去るに 照見五蘊 皆空へ』ですか?」
明智「漢字が多くてわけわからん句だな」
相談者「おじいちゃんの作品の中で、この句だけ、なんだか遠回しで意味不明なんですよね」
小林「ちょっと待ってくださいよ。照見というのは、もしかしたら証券…? 五蘊というのは仏語で『色・受・想・行・識』という5つの要素が集まることを指します。つまり、死後も、その集まる場所を見守っている…とも読めなくはない! 5が集まる…ごが集まる…?」
明智「わかった、ゴレンジャーか!」
小林「昭和世代しかわからんこと言わないでください! 『碁が集まる』、つまり碁盤ですよ! 家に碁盤はありますか?」
相談者「はい! おじいちゃん、碁が大好きでしたから! すぐ家族にメールします」
生命保険証券を調査してみる
小林「ではその連絡を待つ間、少し話を進めておきましょう。もし碁盤の底や、くりぬかれた内部などに保険証券があれば、最も手っ取り早いです」
明智「内部をくりぬくとなると、結構なからくりだぞ」
相談者「そういえば、おじいちゃん、金庫には大切なものを隠すなという主義でしたから」
明智「ひねくれ者だな…」
小林「先生! 失礼ばかりですみません…保険証券というのは保険契約が成立したことの証明書でしてね。契約成立後に必ず保険会社から保険契約者宛に交付されているものなんです」
相談者「はい、存じています」
小林「そこには証券番号、契約者名、被保険者名、受取人名、給付金、保険期間といった重要事項がすべて記載されていますよね? だから、何よりの証拠と言えます」
相談者「…確かに…あっ! メール返信きました! すごいですね、小林さん! 碁盤がぱかっと割れて、中から証券が出てきたんですって!」
明智「桃太郎かよ!」
小林「まあまあ…ひとまずはそれで1社確定ですね」
相談者「1社とは?」
小林「個人が加入していた保険が1社だけとは限らないんです。その場合は…」
遺品にも保険証券のありかを探るヒントがある
相談者「遺品?」
小林「そう、遺品を含め、残されたものからもう一度手がかりを得る必要があります。もっとも、これはこの事務所では何とも言えませんので、私と先生がお宅へ伺う必要がありますね」
相談者「それはぜひお願いします…。あの、残されたものとしては、例えばどんな?」
小林「例えば、遺品だけでなく、このようなものも探してみましょう」
・「ご契約内容のお知らせ」誕生月や契約月に届いている可能性がある
・「生命保険料控除証明書」確定申告用に郵送される
・被相続人の通帳にある引き落とし履歴
・パソコンのブックマークにある保険会社
小林「生前、勤務していた会社で団体加入の生命保険があるかもしれませんから、勤務先の保険事務担当者に問い合わせるのも忘れないようにしないと」
生命保険契約照会制度を利用する
相談者「なかなか手間がかかるんですね。すべてできるかしら…?」
小林「もうひとつ、一応お伝えしておいた方がいいことがあります。生命保険契約照会制度です」
相談者「なんでしょう、それ?」
生命保険契約照会制度を利用する
小林「生命保険会社42社へ保険契約の有無をまとめて照会できる制度でしてね」
明智「おいおい小林くん、それは災害などで保険証書を紛失した場合に限ったことだろう?」
小林「以前はそうでしたが、現在は今回のようなケースでも照会できるようになってるんです。オンラインや郵送で照会可能なんですよ。先生、おっくれてるーう♪」
明智「ぐっ…なんか、むかつく」
小林「えへへ、たまには仕返ししないとね」
遺言執行者も生命保険照会を利用できる
相談者「でもそれって、遺言執行者でも照会できるのですか? 本人だけしかできないのでは? 遺言執行者は、親族ではないんですが」
小林「安心してください」
明智「履いてますよ!」
小林「あん?」
明智「…へっ、仕返しだい」
小林「チッ、黙れ…! 失礼しました、被相続人が平時において死亡した、つまり病気などで亡くなった場合は、法定相続人だけでなく遺言執行人も保険加入状況を照会できるんです」
明智「ま、条件はあるがな」
小林「そうですね。遺言執行人が親族でなくても大丈夫ですが、遺言執行人がこの制度を利用できるのは平時において被相続人が死亡したときだけなんです」
相談者「平時以外というと?」
小林「例えば、被相続人が認知症等で認知判断能力が低下したときとか、災害により行方不明や死亡したときなどですね。その場合は、配偶者、親、子、兄弟姉妹といった親族のみの利用に限られるんです」
生命保険契約照会制度の手数料
相談者「うちはその条件にはありませんね。となると、気になるのは費用なんですが…」
小林「照会費用は1件3000円です。支払が確認できてから約2週間で生命保険会社ごとに生命保険契約の有無が開示されるんです」
相談者「では、遺品をひっくり返さなくて、その制度で照会するだけで解決してしまいませんか?」
明智「ところがそうはいかんのだ、黄金仮面よ」
小林「誰が黄金仮面や」
明智「あくまでも契約の有無がわかるだけだ。保険契約の内容確認と保険金の請求まで教えてくれるわけではない。世の中そんなに甘くないのだ」
小林「…この失礼の塊の言うことにも一理ありまして、個別に各保険会社に内容確認をする必要があるのは事実です」
生命保険が不明な時は照会制度を利用する
相談者「なるほど。では早速、うちに来て、遺品をチェックしていただく日取りを決めさせてくださいますか? お忙しいとは思いますが、いつごろでしたら?」
明智「今日、これからでもいいぞ。どうせヒマだからな」
小林「…ちょっと! うちの台所事情が分かるじゃないですか…。でもまあ、なるべく早い方がいいですね。ご心配なく。明智先生は基本留守番です。こんな危なっかしいのを世に放てませんからね」
明智「おい!」
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