遺言で生命保険受取人は変更できる?遺言記載例や注意点を行政書士が解説!

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遺言による生命保険受取人の変更について解説!

 

「遺言は財産の処分について記すけれど、生命保険は財産に含まれるの?」
「遺言や相続と生命保険の関係がわからない。」
「生命保険について、遺言で何かできることはないのか。」

 

遺言は、自分自身の財産の分け方について記すものですが、人生で最後に残す意思表示であり、とても大切なものです。

一方、生命保険はどうでしょうか。
生命保険も、自分にもしものことがあった場合に備えて加入するものです。

遺言も生命保険も、自分の亡き後に遺される人のことを慮ってするという意味では似ていますが、両者の関係はどのようなものなのでしょうか。

 

遺言の内容が法的に意味のあるものとされるのは、「財産」について書かれている場合です。
この遺言における「財産」には、実は生命保険は含まれません。
生命保険は、生命保険契約によって誰が受け取るか決まっており、その契約で指定される受取人の固有財産であるとされるからです。

 

では、財産としての生命保険の処分方法を記載するのではなく、「生命保険の受取人」を変更する遺言を書くことは可能なのでしょうか。

今回はこの「遺言と生命保険の受取人の変更」について解説したいと思います。

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遺言書で生命保険金受取人を変更できる

遺言で生命保険の受取人の変更をすることは可能なのでしょうか。

結論から申し上げますと、保険法44条1項により、遺言による生命保険金受取人の変更も認められています。

 

長岡:「こんにちは!長岡行政書士事務所・代表の長岡です。」

 

Aさん:「こんにちは!今回もよろしくお願いします。今回は、遺言と生命保険のことでお聞きしたいことがあります。」

 

長岡:「以前、生命保険は遺言者の固有財産ではなく、遺言書に記載する財産には含まれないことを学びましたね。」

 

Aさん:「はい。ですから、例えば遺言が残されておらず遺産分割協議となった場合も、協議の対象となる相続財産には含まれず、指定された受取人が受け取ることも知りました。」

 

長岡:「そうですね。では、今回はどのようなことでしょうか。」

 

Aさん:「今回お聞きしたいのは、生命保険の『受取人を変える』ことについて、遺言に記載することはできるのか、ということです。」

 

長岡:「なるほど。なぜそのような疑問をもったのですか?」

 

Aさん:「先日友人が、遺言で生命保険の受取人を変更すると言っていたのです。なんでも、その友人の知り合いが生命保険に勤めており、その知人を通して加入したようで、誰に変更するのか、あまり知られたくないようです。それで遺言で変更することにしたそうなのですが、そのようなことができるのか、疑問に思ったのです。」

 

長岡:「わかりました。では今回は、遺言で生命保険の受取人変更ができるのか、解説していきましょう。」

 

Aさん:「はい!よろしくお願いします。」

 

遺言によって生命保険の受取人を変更することができるかどうかについては、かつては法律の明文の規定がなく、争いがありました。
しかし平成22年4月1日施行の改正保険法44条1項により、遺言で変更可能であることが明文において認められることになりました。

(保険法44条1項)
「保険金受取人の変更は、遺言によっても、することができる。」

 

これにより、生命保険受取人の変更は、保険契約者と保険会社の合意によって変更できるほか、遺言によって変更することができることとなったのです。

 

Aさん:「なるほど。保険法で遺言による変更も認められたのですね。

遺言で保険金受取人を第三者へ変更する場合は保険会社へ確認が必要

Aさん:「では、受取人を誰にでも変更して良いのでしょうか。」

長岡:「では、その点について説明しましょう。」

生命保険で受取人にできる範囲は、保険会社の保険約款等で定められています。

遺言による変更の場合も、新たに指定する受取人は保険約款等で定められる者の範囲内にする必要があります。

保険約款等では、一般的には配偶者や一定の血族に限定されている場合が多いといえますが、保険商品によっては親族関係にない第三者を受取人に指定できる場合があります。

 

いずれにせよ、生命保険の受取人の範囲については、事前に保険会社に問い合わせて明らかにしておく必要があります。

遺言による生命保険受取人変更の記載例

長岡:「では次に、遺言で生命保険の受取人を変更する場合の書き方をみてみましょう。」

 

Aさん:「特に注意する点が思い当たらないのですが・・・。」

 

長岡:「大事なのは、『受取人を変更する』ことをはっきりと明記することです。『保険金を受け取らせる』などの記載だと、受取人を変更するのかどうか曖昧で、変更できない可能性もあります。」

 

Aさん:「たしかにそうですね。では具体的にはどのように書くのでしょうか。」

 

長岡:「受取人を変更したい保険の証券番号・保険会社名・現在の受取人なども書きますね。では、以下で具体的な記載例を載せておきましょう。」

 

【生命保険受取人変更の記載例】

第〇条
遺言者は、下記の生命保険契約に基づく死亡保険金の受取人を、長男B(生年月日)に変更する。


保険証券番号:12345678
契約締結日:平成〇年〇月〇日
種類:一時払終身保険
保険金額:1,000万円
保険会社名:〇〇生命保険相互会社
保険契約者:遺言者
被保険者:遺言者
死亡保険受取人:遺言者の妻・A(生年月日)

 

遺言による保険金受取人変更の注意点

ここまでで解説してきた通り、遺言による生命保険受取人の変更は可能です。

 

保険会社との受取人変更は、契約者と保険会社間の契約のため、二者間での合意が必要です。

これに対し遺言による変更は、遺言書は遺言者単独で作成するものですので、思い立ったときにいつでもひとりで自由に書き直すことができます。

 

その点、保険会社との変更よりも気軽にできると言えますが、遺言で受取人を変更した場合、トラブルとなる事例がありますのでその点について解説したいと思います。

注意点は、次の3つです。

  • 変更前の受取人が保険金を受け取ってしまう場合がある
  • 相続人が保険会社への通知を拒否する場合がある
  • 遺言無効の主張をされる可能性がある

それぞれの注意点は次の通りです。

変更前の受取人が保険金を受け取ってしまう場合がある

まず注意したいのが、遺言で保険金受取人を変更したとしても、変更前のもとの受取人が受け取ってしまう場合がある、ということです。

遺言で受取人変更をした場合、保険会社はその変更事実を知らないため、変更前のもとの受取人が受け取ってしまうことも起こりえます。

保険会社としては、保険金の受取人変更の遺言があることを知らせてもらわなければ、変更があったことを知る方法がありません。

 

そこで、保険法44条2項では、以下のように規定がされています。

(保険法44条2項)
「遺言による保険金受取人の変更は、その遺言が効力を生じた後、保険契約者の相続人がその旨を保険者に通知しなければ、これをもって保険者に対抗することができない。」

 

この条文の意味としては、保険契約者の相続人が受取人に変更があったことを保険会社に通知しなければ、新受取人は保険会社に対して、変更により自分が受取人であることを主張できない、ということになります。

 

したがって、受取人を変更したという相続人からの通知が保険会社に届く前の段階では、保険会社が変更前の受取人の請求に応じて保険金を支払ってしまう可能性があるのです。

 

新受取人は、後で旧受取人に対して受け取った保険金を引き渡すよう請求することができますが、訴訟などを通じたトラブルになってしまう可能性もありますので、注意が必要です。

 

遺言に生命保険の受取人を変更する旨記載があった場合は、速やかに保険会社に受取人変更の通知を行うことが大切です。

相続人が保険会社への通知を拒否する場合がある

遺言によって相続人以外の第三者に生命保険の受取人が変更された場合、相続人としては納得がいかない場合があります。

 

例えば相続人が配偶者と子の場合で、保険金の受取人が「配偶者から遺言者の弟」に変更されていた場合、配偶者としては認めたくないことが考えられます。

 

このような場合、前述した「相続人による保険会社への受取人変更の通知」を相続人が拒否することも想定されます。
そうすると、保険会社は旧受取人たる相続人に生命保険を支払ってしまい、新旧受取人間で紛争が起こり、事態が複雑化するおそれもあるのです。

 

この点、遺言書で遺言を執行する「遺言執行者」を指定しておくと、生命保険受取人変更の通知は指定された遺言執行者が行いますので、相続人が拒否をして通知をしない、という事態を防ぐことができます。

 

遺言執行者は遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をする権限を有しますので、生命保険の受取人変更を遺言でする場合は、遺言執行者の指定をしておくと良いでしょう。

 

なお、遺言執行者については、横浜市の長岡行政書士事務所でもご相談を承っています。遺言執行者について少しでも気になる方はお気軽にお問い合わせください。

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    遺言無効の主張をされる可能性がある

    前述のように、受取人変更に納得がいかない場合、旧受取人から遺言書自体の無効を主張してくる場合も想定されます。

     

    無効を主張する理由としては、以下のような例が考えられます。

    • 遺言作成時には遺言者の認知症がすすんでいた
    • その遺言は誰かが無理やり書かせた
    • 文言が不明確

    遺言は、法律で定められた要件を満たさないと無効となります。

    上記はその要件を満たさないものとされており、遺言が無効であると主張する根拠となります。
    これらの無効になる要素を遺言書から見つけ出して、受取人変更が書かれた遺言全体を無効とする主張をするわけです。

     

    遺言を自分自身で作成する自筆証書遺言の場合、これらの無効を主張される可能性は高くなりますので、
    保険金の受取人を変更したい場合には、法律の専門家が作成する公正証書遺言を検討するのがよいでしょう。

     

    遺言で生命保険受取人を変更する際は行政書士など専門家へ相談を

    生命保険の受取人は、遺言で変更することは可能です。しかし、遺言書に記載しただけでは完了となりません。

     

    最終的には必ず保険会社に通知をする必要がありますし、受取人の範囲について事前に保険会社に確認をすることも必要となります。

     

    また、遺言によって受取人を変更した場合は、保険金の受け取りの入れ違い、新旧受取人間でのトラブルなど紛争の原因となることもあり、保険金を支払うという段階においては、変更手続きを保険会社との間で行った場合よりも、多くの面倒を残しかねないともいえます。

    遺言で生命保険の受取人を変更する場合は、本当に遺言ですべきか熟考する必要があります。

     

    悩んでいて答えがみつからない、あるいはやはり遺言で受取人の変更をしたい、という場合は、行政書士などの専門家に相談や作成の依頼をして、トラブルを招かないような遺言の作成をすることをおすすめいたします。

    横浜市の長岡行政書士事務所では、遺言作成全般に関わる相談を承っています。生命保険金受け取りを遺言で実現することに不安がある方は、ぜひ一度ご相談ください。

     
    行政書士 長岡 真也
    この記事の執筆・監修者:長岡 真也(行政書士)
    神奈川県行政書士会所属(第12091446号)
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