「既に二人で住んで長いので、わざわざ遺言を遺す必要なんてあるんですか」
「普通の遺言と相互遺言って何が違うんでしょうか」
「自分に何かあった時、パートナーになるべくたくさん残してあげる方法を教えてください」
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同性のパートナーはどんなに長く一緒にいても、日本の法律上では婚姻関係になれません。
不平等を改正すべく法改正の議論が続いていますし、東京都渋谷区の様にパートナシップの証明を発行する自治体も増えてきました。
今後の推移を見守る必要がありますが、目先の問題として同性パートナーは異性パートナーの場合に比べて、より法律に親しみ、異性パートナーに準ずるような法律関係を作り上げていくことで「自衛」する必要があります。
それでは、同性パートナーがいる場合で全く遺言の準備をしなかったらどのような事態になるのでしょうか。
目次
遺言書が無いとパートナーに財産は遺せない
もし亡くなったパートナーに、以前に異性との間に設けた子や両親、兄弟姉妹がいた場合は、そちらの親族に相続権が発生し、パートナーと一緒にいた本人は何も相続することができません。
今の日本の法律では同性のパートナーとの婚姻が認められておらず、他人扱いとなってしまうからです。
遺言がない場合は民法の規定に沿った形で相続を進めることになりますが(法定相続といいます)、遺産をもらえる順位は下記の様に定められています。
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法定相続人の範囲
- 配偶者は常に相続人
- 第1順位:直系卑属(子や孫、ひ孫など)
- 第2順位:直系尊属(父母や祖父母、曾祖父母など)
- 第3順位:兄弟姉妹(亡くなっている場合には甥姪)
配偶者がいる場合は常に配偶者は相続を受けることができます。
上位の順位がいる場合は下位の順位の者は相続を受けることができません。例えば、故人に配偶者、子、父母がいた場合は相続できるのは配偶者と子のみになります。
同性のパートナーは上記法定相続人のどこにも入ることができませんので、最悪の場合パートナーが亡くなって悲しみに暮れてる間にパートナーの親族が家を相続してしまい、家から出て言ってくれと言われてしまうかもしれません。
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大切なパートナーの将来を守るための相互遺言
残されたパートナーがつらい思いをすることを避けるために有効な法律の手段はいくつかありますが、そのうちの一つが「相互遺言」です。
相互遺言とは、お互いが「私が先に死んだら、全てあなたに相続させます」という内容を含んだ遺言のことです。
遺言は法定相続に優先しますので、このように相互遺言を書いておけば財産をパートナーに遺すことが可能になります。
この相互遺言の注意点としては下記2点が挙げられます
共同で遺言を書くことはできない
一枚の紙に二人で書いた遺言書は共同遺言と言われ、民法975条の規定により禁止されています。遺言書全体が無効となってしまいます。
第975条(共同遺言の禁止)遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることができない。
お互いを思いやる気持ちは大切ですが、遺言が無効になってしまっては元も子もありません。
法の趣旨として、遺言は他人の意思に関係することなく自由に作成されるべきであり、かつ遺言者が自由に撤回できるべきものというのがあります。
二人以上の者が同一の証書に遺言をした場合には,遺言の自由が制約され、遺言書の撤回も自由にできなくなるおそれがあるので共同遺言は禁止されているのです。
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パートナーが先に死亡した場合の事も考えておく
あまり考えたくはないことではありますが、パートナーが共に死亡した場合の財産の行く先を決めておくことも大切です。
共に死んでしまった場合は遺産を贈る相手がいなくなるため相互遺言が無効になってしまい、法定相続に則った形で相続がすすめられる形になります。
自分たち二人が死んだ後の財産は誰が相続してもかまわない、という事であれば問題はないのですが、パートナーと2人で築いた財産を特定の人や団体に引き継いでもらいたいのであれば、その内容を予備的遺言としてそれぞれの遺言の中に書いておく必要があります。
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相互遺言書の書き方を紹介
それでは、相互遺言のサンプルを見てみましょう。
実際は公正証書として作成してもらうので公証人に作成してもらいますが、ここではどのような仕上がりになるのかのイメージをつかんでください。
令和4年 第○○○号 遺 言 公 正 証 書
本職は、令和〇年○月○日、遺言者 山田太郎 の嘱託により証人 ○○○○ 証人 △△△△ の立会のもとに次のとおり遺言者の口授を筆記して、この証書を作成する。
遺 言 の 本 旨 第1条 遺言者は、遺言者の所有する下記の財産を、 田中次郎(昭和○○年〇月○○日生)に相続させる。
記 1. 不動産
地番 123番45 地目 宅地 地積 70㎡60
家屋番号 123番45 種類 居宅 構造 木造ストレート2階建 床面積 1階 30㎡00 2階 25㎡00
2.預貯金
総合口座 普通貯金 口座番号 1234567
総合口座 普通預金 口座番号 2345678
3.その他 上記以外の遺言者の有する一切の財産
第2条 遺言者は、この遺言の執行者として、田中次郎 を指定する。
2 遺言者は、遺言執行者に対し、本遺言を執行のため、他の相続人の同意を要することなく、単独で、不動産の登記名義の変更、遺言者の有する株式、預貯金等の金融資産について名義変更、解約及び払戻し等をする権限並びに遺言者の権利に属する金融機関の貸金庫についての開扉、内容物の引取り及び貸金庫契約の解約等をする権限、その他この遺言を執行するに必要な一切の権限を付与する。また、遺言執行者は、代理人をして遺言執行をさせることができ、その選任については同遺言執行者に一任する。
第3条 万一、田中次郎が遺言者より前に死亡した場合は、前条記載の財産を、遺言者の姪〇〇〇〇(昭和〇〇年〇〇月〇〇日生)に包括して遺贈する。姪〇〇〇〇は、この遺贈を受けることの負担として、遺言者の葬儀及び埋葬をしてください。 |
相互に遺言書を作成することで厚い保障を実現する
同性パートナーがいる場合、なにも行動をおこさないと法律による恩恵は受けられません。
積極的に法律を学び、味方につけて異性パートナーの場合と同じ保障を作り上げていく必要があります。
本日紹介した相互遺言以外にも、やっておくべき法律上の準備はいくつかあります。
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