「自筆遺言証書」で自筆と言えるかの判断について解説|添え手・財産目録・ワープロなど

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自筆遺言証書 自筆と言えるかの判断について

 

「遺言書には種類があるみたいだけれど、自分で書きたい。」
「現代では書類はパソコンで作成することが多いけれど、遺言はどうなのか。」
「遺言書を書くにあたって、何か決まりはあるのだろうか。」

 

将来自分の亡き後のことを考えて、遺言を作成したほうが良いのではないだろうか、と思っている方がいらっしゃると思います。

 

では遺言いざ書こう、と思ったとき、具体的にどのように作成するのでしょうか。

 

身近にある紙に書き記したり、パソコンで作ってみたり、専門家に頼んでみたり・・・、色々な方法を思い浮かべるかもしれません。

今回は、自分自身で遺言を書いたときに、その遺言が「その人自身が書いたもの」と認められるのかどうかについて説明したいと思います。

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添え手による自筆証書遺言の効力

ご相談者様:50代女性

私には80代の母がおり、父はすでに他界しております。最近、母が遺言の作成を考えているようです。
専門家に作成を依頼することもできるのでしょうが、母は、「そのような大げさな内容ではないから、
自分で書きたい。」と言っております。

 

しかし母は高齢で持病もあり、手がひどく震える状態です。
母一人ではっきりした文字を書くことは難しいので、私が後ろから添え手をして補助して作成しようと思うのですが、このような方法で遺言の作成をして良いのでしょうか。

 

回答:長岡行政書士事務所 長岡

今回のご相談者様の場合、お母さまご自身で遺言書を作成するということで、その遺言は「自筆証書遺言」とよばれる種類の遺言になります。

 

この自筆証書遺言は「遺言者自身が作成する」ことがまず必要とされますが、ご相談者様が「添え手」をして書くことが、「お母さまご自身で作成したのか」と言えるかどうかが問題となります。

結論から申し上げると、添え手による遺言が有効と認められるかどうかは個別具体的に判断されるものとなります。

今回は、この添え手による遺言の作成も含め、自筆証書遺言において「自分で作った」と言えるのかどうかという問題について解説していきたいと思います。

遺言の種類|自筆証書遺言と公正証書遺言

まず初めに、遺言の種類についておさらいをしておきましょう。

 

遺言は、大きくわけて「自分自身で書くもの」と、「公証人が書くもの」の2種類があります。

「自分自身で書くもの」を自筆証書遺言といい(※1)、

「公証人が書くもの」を公正証書遺言といいます。

 

(※1)このほかに「秘密証書遺言」がありますが、「遺言を書く」という場面までは自筆証書遺言と同じ手続きになりますので、ここでは内容を割愛いたします。

 

公正証書遺言は、遺言者が記したい遺言の内容を、法律の専門家である公証人に伝え、公証人が遺言を作成します。
専門家が作成する遺言ですから確実性が高く、無効となることはほとんどありません。

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これに対して自筆証書遺言は、遺言者自身が作成する遺言です。

遺言は自由に書くことができますが、その内容を実現できるのは法的に有効なものでなければなりません。

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自筆証書遺言の要件

自筆証書遺言が法的に有効とされるには、複数の要件が課せられています。

  1. 遺言者自身が自筆で全文を書いたものであること
  2. 作成した日付が正確に書かれていること
  3. 氏名が自筆で書かれていること
  4. 印鑑が押されていること

今回のご相談者様の自筆証書遺言の事例で問題になっていることは、上記1の「遺言者自身が自筆で全文を書いたものであること」という要件に関するものです。

自筆証書遺言の自筆性について事例の紹介

自筆証書遺言では遺言者自身が「自筆で」全文を書くことが必要とされていますが、「自筆で書いたかどうか」について、ご相談者様の事例も含めていくつか問題となるケースがありますので、以下の例について順番に解説していきたいと思います。

 

  • 例①タイプライターやワープロ、点字器など
  • 例②不動産目録のみ印字している場合
  • 例③カーボン複写の場合
  • 例④添え手による作成の場合
  • 例⑤文字の判読可能性の判断

タイプライターやワープロ、点字器などは自筆証書遺言として「無効」

現代では様々な書類が手書きではなく、パソコンで入力し、プリンターで印字して作成されたものです。
パソコンやタイプライターなどで文章を作成するのは、操作が慣れている人にとっては手書きよりも楽に作業でき、遺言書の作成もそれらの機器でできたら便利かもしれません。

 

しかし、遺言の作成をそれらの機器ですると、たとえ遺言者が入力したとしても、自筆証書遺言としては「無効」とされ、認められることはありません。

 

なぜなら、遺言者本人の筆跡が明らかではなく、自筆性がない=本人が作成したとは言えないからです。
他にも、点字器やコピーを用いて作成された場合も自筆性がないとされます。
これら機器を用いて作成した遺言は、自筆性がない典型例と言えます。

 

自筆証書遺言を作成する場合は、あくまでも遺言者自身の手で書くこと(=自書)が必要になるのです。

 

不動産目録のみ印字している場合は自筆証書遺言として「有効」

遺言とは、遺言者が自分自身の財産の処分方法などについて、最終的な意思を書き記したものになります。

 

このとき、財産を判別できるようにまとめた一覧表である「財産目録」を作成する場合があります。
財産目録の作成は義務ではありませんが、実務上は、相続の目的となる財産が多数ある場合には、財産目録が作成されています。

 

財産目録がある場合、遺言の本文では次のように記されます。

(例)「別紙財産目録1記載の財産を長男に相続させる」

 

上記の遺言本文については、遺言者自身が手で書き記すことが必要とされますが、この財産目録についてはどうでしょうか。

 

この点について、以前は財産目録も含めて全文を自分自身で書くことが必要とされていました。

しかし2019年の法改正で、財産目録についてはその必要がなくなり、パソコン等で作成したり、預貯金の通帳や登記簿謄本のコピーを添付することも認められるようになりました。

カーボン複写の場合は自筆証書遺言として「有効」

今ではあまり目にしなくなった方も多いかもしれませんが、文字を写す方法に、印刷よりも古い、カーボン紙を使用して複写する「カーボン複写」があります。

 

遺言作成時にカーボン複写を用いた場合、前述したコピー等と同様に、自筆性がないと判断されるのでしょうか。

 

判例では、「遺言の全文、日付及び氏名をカーボン紙を用いた複写の方法で記載することも、自書の方法として許されないものではない」としています。(最判平5.10.19判事1477-52)
つまり、カーボン複写を用いた遺言でも自筆性は認められ、有効となります。

 

カーボン紙を使って「なぞり書き」をしたとしても、自分で書いたことは事実であり、本人の筆跡が残ることから筆跡で判定することは可能とされるのです。

 

しかし東京地裁平成9年6月24日判決では、カーボン複写により作成された遺言が偽造かどうか争われ、偽造と判断されました。

 

カーボン複写による遺言自体は有効ですが、上記のように偽造との争いが生じる可能性もありますので、積極的に利用すべき作成方法ではないと言えます。

添え手による作成の場合は要件によって自筆証書遺言として「有効」

添え手による遺言書の作成とは、遺言者の手に、遺言者以外の者の手を添えたようなサポートを受けて記載された遺言のことを言いますが、これは今回のご相談者様の事例でもあります。

 

遺言者の手が不自由であるケースは多く、家族の方が添え手をして初めて筆記が可能となることもあります。

 

では、この添え手による遺言作成の自筆性の判断は、どのようになるのでしょうか。

 

この場合、一律に「無効」「有効」とされるものではなく、いくつかの要件を満たす場合に有効とされます。
添え手があっても自筆性が認められる要件は以下の3つで、このすべてを満たす必要があります。

 

添え手による遺言の自筆性が認められる要件

添え手による遺言の自筆性が認められる要件は、次の3点です。

  • 遺言者が遺言書作成時に自書能力を有していること
  • 添え手の程度が、筆記を容易にするための支えにとどまること
  • 遺言者以外の意思が介入していないこと

①遺言者が遺言書作成時に自書能力を有していること
遺言者が文字を知っている、文字を筆記する能力を有しているということです。

 

②添え手の程度が、筆記を容易にするための支えにとどまること
添え手をしている人が遺言者の手の動きを決めると、遺言者の自書とは言えなくなるからです。
下記の2点で判断します。
・遺言者の手を用紙の正しい位置に導くだけ
・遺言者の手の動きが遺言者の望みにまかされる

 

③遺言者以外の意思が介入していないこと
自筆証書遺言の要件に自書能力が必要とされるのは、筆跡で本人の意思確認をするからです。
第三者が添え手をすることで遺言者の筆跡が変わると、遺言者の意思確認になりません。
したがって、遺言者の筆跡を変える程度には至っていないことが必要とされます。

 

添え手による遺言の自筆性が認められるためには上記のような厳しい条件がありますので、今回のご相談者様の事例では、添え手による遺言の作成も可能ですが、それが有効となるかどうかは難しいところですので、できれば公正証書遺言で作成し、公証人に遺言の作成を任せた方が安心であると言えます。

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公正証書遺言は自分で作れる!実際の作成方法や流れを行政書士事務所が解説

文字が判読できない場合は自筆証書遺言の内容を精査

遺言書の文字が判読できなければ、自書として認められません。

しかし実務では、筆記状況が判読できるかどうかぎりぎりの境界であるケースもよくありますし、遺言書の破損や摩耗が激しく、文字が読めない場合もあります。

 

ではこのような時、字が読めない・判読できないから自筆性はないとされ、無効となるのでしょうか。

 

この点、読めなかったり判読できない部分があるからといって、その遺言すべてが無効になるわけではありません。

その読めない部分や判読できない部分については無効となりますが、遺言自体は有効です。

 

また、読めない・判読できない部分については、専門家に筆跡鑑定を依頼する方法がありますし、相続人全員で協議し、書かれている内容を推察して、その判読できない部分の結論を出す、という方法もあります。

摩滅・汚損している文字については、科学的鑑定方法があります。

 

いずれにせよ判読が難しい遺言は、鑑定や協議など、遺言全体を読み解くのに多くの手間がかかりますので、自筆証書遺言を作成する場合は、誰が見ても読める・分かる文字で書くことが大切であり、保管方法にも十分気を付けることが必要であると言えます。

自筆証書遺言は要件を満たさなければならない

自筆証書遺言は作成に費用がかからず、自分自身だけで作成できるため、一見すると簡単に気軽に作成できそうに思われます。

しかし、自筆証書遺言が有効とされる大前提として、遺言者自身が自分で書いて作成することが必要です。

 

誰でも読める・分かる文字で遺言書全体(財産目録を除く)を書き記すことが難しい場合は、公正証書遺言の作成を検討してみてください。

せっかく遺言を書いたのに無効となっては、遺言者の最後の意思が実現されずに残念です。

 

そのようなことがないよう、確実性の高い公正証書遺言を作成し、遺言者の意思を確かに実現できるようにすることをおすすめいたします。

長岡行政書士事務所では、公正証書遺言の作成のお手伝いも承っております。ぜひ1度ご相談ください。

 
行政書士 長岡 真也
この記事の執筆・監修者:長岡 真也(行政書士)
神奈川県行政書士会所属(第12091446号)
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