相続土地国庫帰属法とは?遺言に関係する法改正の解説!【異説・花咲かじいさんに学ぶ!】

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相続土地国庫帰属法とは?遺言に関係する法改正の解説!【異説・花咲かじいさんに学ぶ!】

 

むかしむかし、おじいさんとおばあさんがかわいがっていた犬、シロ。

なんと「ここ掘れわんわん」とシロがいう場所を掘ったおじいさんとおばあさんは、大金持ちになりました。

たっぷりの愛情を注がれて人間になれたシロは、おじいさんの遺言書を見たことがきっかけとなり、行政書士になりました。

遺言書について詳しい説明はこちら:
「異説・花咲かじいさんに学ぶ!」(前編)遺言書と遺言執行手続ってどんなもの?
「異説・花咲かじいさんに学ぶ!」(後編)遺言執行者が行う遺言執行手続きとは?

おじいさんとおばあさんと暮らした思い出の家は、いま「シロ行政書士事務所」となり、近隣の村人たちが足しげく訪れています。

「シロが、『ここ大事わんわん』と教えてくれたら、見事に問題が解決するのう! ただ、言葉遣いが玉に傷なところもあるけど…」

さてさて、今回は、そんなシロのもとに、隣村から「新しい法律がよくわからん」と相談にきたおじいさんがいました。

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需要のない土地だけを相続放棄できない

ゴンゾウ「シロや、ちょっといいかい?」

シロ「ゴンゾウじいさんじゃありませんか。どうしたんです? 最後の歯でも抜けましたか?」

ゴンゾウ「いや、歯はまだ大丈夫なんじゃが、うちの土地のことでわからんことがあってのう。知っての通り、隣村は交通の便もよくないし、だんだんと人もいなくなっておっての。土地の値段が下がってしまっておるそうじゃ」

シロ「確かにあそこは、この世の果てとも言えそうなほどの土地ですものね」

ゴンゾウ「そこまでいくかい。ただ、わしももう歳じゃし、子どもたちももう村に帰ってきても仕事もないじゃろうから、わしが死んだら、いっそのこと土地を手放したいんじゃ」

シロ「なるほどですね。実際、需要の低下した土地は、土地需要全体が下がってしまっているので、そう簡単には売れませんからね」

相続放棄では部分的放棄が認められない

ゴンゾウ「だからの、子どもたちは『相続の時に相続自体を放棄してしまえばいいじゃないか』と話しているようなんじゃ」

シロ「ほえ~、ほんでほんで?」

ゴンゾウ「なんでいきなり明石家さんまさんみたいなリアクションしとるんじゃ? そういう、相続放棄ってできるもんなのかい?」

シロ「いやあ、それは厳しいかもしれないですね。相続放棄では不要な土地だけを処分するという部分的放棄が認められませんから」

ゴンゾウ「やっぱりそういう落とし穴があったか」

シロ「相続放棄するなら、他に必要な相続遺産があってもすべて放棄しなければいけません。また、3か月以内に放棄するか否かを決めないといけないので十分に考える時間的余裕もないんですよね」

ゴンゾウ「とはいっても、ずっと土地を持ち続けるというのも、あの子らに負担がかかりゃしないかと思うてのう…」

シロ「いいところに気づきましたね。見た目とは違って、まだまだモウロクしてなくて何よりです」

ゴンゾウ「見た目がモウロクって、どういう見た目じゃい」

土地を手放すことができず持ち続けることのデメリット

シロ「土地を手放さなかったことによる代償…じゃなくて、デメリットは、大きく分けて3つです」

固定資産税がかかる

  • 固定資産税とは、毎年1月1日時点で不動産を所有している人に課される税金
  • その場所に住んでいなくても、不動産を所有している限り納め続けなければならない
  • その土地に家があり誰も住まないまま放置しておくと、「特定空き家」に指定されてしまう可能性がある

※特定空き家は2015年5月に全面施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法(通称:空き家対策特別措置法)」による。倒壊等の危険性が高いにも関わらず自治体の指導にもとづいた改善を怠った場合、50万円以下の過料が科され、固定資産税額の軽減措置対象から除外されて大幅な増税が行われる

維持管理費がかかる

  • 放置を避けるため土地を管理するとしても、維持管理費が継続的にかかる(家の修繕費や庭の手入れ、現地を訪れる交通費など
  • 管理会社に管理を委託してもよいが別途費用が発生し経済的負担が増す

近隣とのトラブル発生

  • 老朽化した建物が倒壊して近隣住宅を傷つけてしまったり、通行人にケガをさせてしまう恐れがある
  • 景観や不法投棄など、ゴミの問題、治安の問題など、地域社会に迷惑をかける可能性も指摘されやすい
  • 上記のような場合、損害賠償責任を負う可能性もある

不要な土地を放置すると固定資産税が6倍に

シロ「ちなみにですが、建物を撤去して更地にすると、建物があるときと比べて固定資産税が6倍に跳ね上がりますから大変なことになります」

ゴンゾウ「ひええ…」

シロ「でもゴンゾウさんはまだマシですよ。中には、いらない土地を「どうにもならないからそのうち」と放置してしまう人も多いんです。ゴンゾウさんはまだ危機意識がありますから」

ゴンゾウ「子どもの世代に問題を引き継がせるようなことはしたくないからのう…」

シロ「偉い! その心意気やアッパレですよ。きっといい仏様になれるでしょう」

ゴンゾウ「…嬉しくないんじゃけど」

相続した土地を国庫に帰属させるための新ルール

シロ「ともかく、ゴンゾウさんの悩みはよくわかりました。そこで知っていてほしいのが相続土地国庫帰属法です」

ゴンゾウ「国庫帰属? 国に土地を返すというのかい?」

シロ「ざっくり言うと、そういうことです。相続土地国庫帰属法が制定されたのは、土地の需要がさがったため、相続した土地を手放したいと考える人が増えているためなんですよ」

ゴンゾウ「うちのところだけじゃなかったんじゃな」

シロ「けっこう全国的な問題なんです。特に過疎地域の土地や農地や森林、もしくはかつてブームとなった別荘地やニュータウンなどではその傾向が顕著に見られますね」

ゴンゾウ「ニュータウンなんかは、同じくらいの世代の住人がこぞって入るから、結局何十年後かに老人タウンになってしまうと聞くのう」

所在者不明な土地の発生も予防

シロ「ええ。あと、相続土地国庫帰属法には、所有者が不明な土地の発生を予防する目的もあります

ゴンゾウ「不明になるなんてことがあるのかい?」

シロ「例えば、数回にわたる相続を経て権利関係が複雑化したりとかですね。所有者不明となった土地は、周辺地域を含めた土地の利活用に大きな支障になってしまうんです」

ゴンゾウ「そこで、管理困難な土地を国に引き取ってもらえるようにして、所有者不明となる土地をある程度減らそうというわけか。考えたもんじゃのう」

シロ「ただ、どんな人でもこの制度を利用できるわけではないし、どんな土地にも適用できるとも限らないんです。厳格な要件が決まっていますからね」

ゴンゾウ「どんな要件なんじゃろう」

シロ「では、相続土地国庫帰属法を申請できる人、対象となる土地、申請の具体的方法について、やさしくお話ししますね。耳が遠いからといって聞き漏らしたら、シバきますからね」

ゴンゾウ「言い方のやさしさとセリフの中身が違いすぎるんじゃけど…」

相続土地国庫帰属法の概要

シロ「まずは相続土地国庫帰属法を申請できる人はどんな人か。本法律の第1条、2条1項では以下の要件をいずれも満たす人だと明記しています」

相続土地国庫帰属法を申請できる人

  • 相続人であること
  • 相続または遺贈(遺言による贈与)により、土地または土地の共有持分を取得した人

シロ「もし土地または土地の共有持分について、故人の残した遺言によって遺産を譲られた場合でも、相続人でなければ相続土地の国庫帰属は申請できません

ゴンゾウ「なるほど、遺言が必要なんじゃな」

シロ「ただし例外もあります。相続人が、相続または遺贈によって土地の共有持分を取得した場合です。その相続人と共同であれば、相続人以外であっても土地の国庫帰属を申請できるんです」

ゴンゾウ「ふうむ。なかなか複雑じゃのう」

シロ「まあそういうときのために、ボクらのような行政書士がいますから。では次に、対象となる相続土地の範囲ですね」

ゴンゾウ「土地の広さのことか? うちは、草野球ができるほどの広さはあるかのう」

シロ「そういうことではありませんよ。相続土地国庫帰属法の施行以前に、相続などによって取得された土地についても、さかのぼって国庫帰属の対象にできるという意味の範囲です」

ゴンゾウ「ああ、そうか。法律が新しくできたのだから、どこから適用されるか、そこも重要じゃもんな」

シロ「ただし、却下事由と不承認事由に該当する土地については、国庫への帰属が認められないんです」

却下事由 (申請自体ができない要件)

  • 建物が建っている土地
  • 担保権などが設定されている土地
  • 通路などが含まれる土地
  • 汚染されている土地
  • 境界が明らかでない土地など、所有権について争いがある土地

不承認事由(承認を受けられない要件)

  • 管理が大変な崖がある土地の家
  • 管理・処分を阻害する有体物が地上に存する土地
  • 有体物が地下に埋まっている土地
  • ほかの土地の通行が妨げられている土地
  • 所有権に基づく使用・収益が現在妨害されている土地
  • 管理・処分をするのに過分の費用・労力を要する土地

参考:法務省『相続土地国庫帰属制度の概要』

ゴンゾウ「よかった。うちはどれにも当てはまりそうにないのう」

シロ「そして最後に申請の具体的方法ですね。こういう手続きを踏んで申請していきます」

 

相続土地国庫帰属法の申請の具体的方法

申請先は、土地の所在地を管轄する法務局または地方法務局となります。

承認申請

  • 土地の所在地を管轄する法務局または地方法務局に承認申請書を提出
  • 所定の審査手数料を納付して承認申請を行う

書面審査・実地調査(却下事由や不承認事由について)

  • 法務局担当官が申請書類を審査
  • 必要に応じて対象土地の実地調査も行われる

承認

  • 却下事由にも不承認事由にも該当しない場合は、申請が承認される
  • 承認された場合は、その旨と負担金額が申請者へ通知される

負担金の納付 (注3)

  • 申請者は、負担金額の通知を受けた日から30日以内に所定の負担金を納付しなければならない
  • 期間内に納付を怠った場合、承認決定が失効します。

※具体的な負担金に関しては個々の場合により計算が異なる。原則として20万円程度ですが、宅地や田畑の場合はその面積に応じて計算するためもっと高額になる可能性がある。詳しくは法務省ホームページを参照。

国庫帰属

  • 負担金の納付時をもって、対象土地の所有権が国庫に帰属する

不要な相続土地は早めに処分の検討をすることが大事

ゴンゾウ「なるほど。よくわかったわい。さっそくわしも家族会議をしてみよう」

シロ「そうですね。大事なお話ですから、家族の皆さんも帰省する理由の一つになるでしょう」

ゴンゾウ「そうじゃの。皆からシロへお土産を買ってきてもらうことにしよう」

シロ「あ、お土産はぜひ換金できるものでお願いしますね」

 

この記事を詳しく読みたい方はこちら:遺言に関係する法改正を教えて欲しい!!相続土地国庫帰属法とは

 

 
行政書士 長岡 真也
この記事の執筆・監修者:長岡 真也(行政書士)
神奈川県行政書士会所属(第12091446号)
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