「遺言書ってどのような種類があるの」
「遺言書は自分で書いても問題ないのかな」
「どんな人が遺言書をつくるのだろう」
実際に遺言書を作るとなると、さて、何から始めていいのかと迷いませんか?
書き方が決まってるのかとか、書かなきゃいけない内容は何かとか。
でも大丈夫、横浜市の長岡行政書士事務所の面々とゆっくり学んでいきましょう。
おや、ひまりがはしゃいでいますよ・・・
ひまり:「長岡先生! おはようございます。今日もごきげんうるわしゅう」
長岡:「ひまりちゃん、おはようございます。華族ですね。さて、仕事にもだいぶ慣れてきたと思うから遺言書を作ってみようか」
ひまり:「え! ついに私もデビューですか。やはり才能は隠せない・・・」
長岡:「もちろん一人でじゃないよ、先輩と一緒にお客様に会ってみてください。じゃ」
行ってしまった
ひまり:「もうちょっとかまってくれても、私は褒められて伸びるタイプなのに、ぶつぶつ」
ユウ:「ひまりちゃん、何を一人でつぶやいてるの?」
ひまり:「ユウさん! ちょうどいいところに。遺言書の作り方教えてください!」
ユウ:「?? いいけど・・・」
目次
遺言書作成の相談事例
ユウ:「じゃあ、まずはどんなお客様から遺言作成のご相談を受けるか考えてみましょう」
ひまり:「そっか、今まで遺言書の作り方ばかり考えてましたが、そもそもどんな人が遺言を必要としてるのかには考えがおよびませんでした」
不動産を含む多数の遺産がある方からの遺言書作成相談
ユウ:「まずはやはり遺産を多くお持ちの方からの遺言書作成相談ですね。遺言がなければ相続人は法定相続分に沿って遺産を分けることになりますが、複数の不動産や株式など多数の遺産があると、誰がどの遺産を取得するのかをめぐって争いが生じやすいです。そのため、どの相続人にどの遺産を相続させるかを遺言で決めたいというご相談は多いですよ」
子がいないご夫婦からの遺言書作成相談
ひまり:「子がいないご夫婦からの遺言書作成相談、とはどういうことでしょうか? 」
ユウ:「ご夫婦がともに、配偶者に全財産を相続させるために遺言を作成したい、というケースです。子がいない夫婦の一方が亡くなった場合、第二順位の直系尊属は既に亡くなっていることが多いので、配偶者と第三順位の兄弟姉妹(あるいは代襲相続で甥や姪)が相続人になるのが通常です。この場合、兄弟姉妹に遺留分はないことから、遺言を作成すれば、全財産を配偶者に取得させることができます」
ひまり:「なるほど・・・夫や妻に全財産を遺すためですね。遺言書って便利ですね」
先妻の子がいるご夫婦からの遺言書作成相談
ユウ:「先妻の子と後妻だけが相続人、というケースだと、遺言がないと先妻の子と後妻は遺産を2分の1ずつ取得する形になります。ただし、再婚した時点で先妻の子と疎遠になっていることも多く、そうでなくても、先妻の子と後妻が遺産分割協議をするのは両者にとって相当な負担です。そのため、後妻に全財産を相続させるために、あるいは先妻の子と後妻に負担を掛けないように遺言を作成したいというご相談も比較的多いです」
相続人以外の親族に遺産を相続させたい方からの遺言書作成相談
ひまり:「相続人以外の親族に遺産を相続させたい方からの遺言書作成相談はなんとなくわかります。例えば被相続人の介護にどんなに尽くしたとしても、相続人ではない以上原則としてその方に遺産が遺せないからですよね」
ユウ:「そうですね。長男の嫁や甥・姪など、献身的に介護等に尽くしてくれたけれど相続人以外の方に遺産を相続させたいというご希望には遺言が役に立ちます」
内縁のご夫婦からの遺言書作成相談
ひまり:「内縁のご夫婦からの遺言書作成相談もわかります。内縁は法律上の夫婦でないから相続権がないのですよね」
ユウ:「そうです。内縁のご夫婦の場合、遺言がないと一切相続できないんです。なので、内縁のご夫婦にとっても、遺言書が役立ちます。」
事業承継を息子にさせたい方からの遺言書作成相談
ユウ:「ほかにも、事業をしているので跡継ぎとなる子に事業に関する遺産は集中して相続させたい、といったご相談がありますよ」
ひまり:「なるほど、遺言はきちんと利用すれば本当に便利ですね。では早速書きましょう!」
ユウ:「まあ、落ち着いて(苦笑)遺言書には色々な方式があります。遺言書の方式についても学んでいきましょう」
遺言書には方式やルールがある
ユウ:「そうだ、ひまりちゃんに長岡先生が書いている「相続大全 いつか迎える相続でお悩みの方へ(仮題)」をお渡ししますね。先生が今度出版するために書き溜めてる原稿なんです。今日はこの本を参考書代わりに使いましょう」
ひまり:「ありがとうございます。へえ・・・こんなに分厚いのに相談事例があったり物語風なコラムがあったりと工夫されていてわかりやすいですね。法律の本ってもっと難しいものだと思ってました。あれ、事件簿シリーズってのがある・・・」
ユウ:「あれ、本当ですね、最近追加されたのかな。事件簿なんて、サスペンスドラマみたいでドキドキしますね」
さて、遺言書にはいくつかの方式があります。実際に遺言書を書く際は、次の点に気をつけましょう。
- 遺書(いしょ)と遺言書の違い
- 遺言書は民法により方式が決められている
- 終活で使うエンディングノートは遺言になるのかどうか
- 遺言書に考えや想いを書いていいのかどうか
- 3種類の普通方式遺言と特別方式遺言
それぞれストーリー形式で紹介します。
遺書と遺言書は別物|遺書と遺言書の違いは法的効力の有無
ユウ:「さて、ひまりちゃんは遺書(いしょ)と遺言書の違いはわかりますか?」
ひまり:「いえ・・・そういえば遺書ってよく小説とかドラマで出てきますけど、遺言書と何が違うんだろう」
ユウ:「実は、「遺書」と「遺言書」は別物なんです。遺言書は遺産の分け方を示した法的な書類ですが、遺書は死ぬ間際に自分の気持ちを伝えるための手紙のことです。遺書に自分の財産の分け方について書いても法定効力はありませんが、遺書が遺言書としての要件を満たしている場合は法的効力が発生します」
ひまり:「そうだったんですか! では、遺言書の要件とは何なんでしょうか」
ユウ:「民法に書いてあります。代表的なところで、自筆証書遺言に関する民法968条を見てみましょう」
遺言書は民法により方式が決められている
遺言書は民法により方式が決められています。
民法 第968条
第1項 自筆証書によって遺言をするには,遺言者が,その全文,日付及び氏名を自書し,これに印を押さなければならない。
第2項 前項の規定にかかわらず,自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には,その目録については,自書することを要しない。この場合において,遺言者は,その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては,その両面)に署名し,印を押さなければならない。
第3項 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は,遺言者が,その場所を指示し,これを変更した旨を付記して特にこれに署名し,かつ,その変更の場所に印を押さなければ,その効力を生じない。
ひまり:「ふむふむ、遺言書は、全文と日付、氏名を自分で書かないといけないのですね・・・あとは目録とかもつけていい、と」
遺言書に使わない方が良い言葉もある
ユウ:「ただ、書き方にもコツがあるというか、例えば不動産を特定するときに住所を使ってしまったり、「託す」「管理させる」という言葉を使ってしまうと遺言書として認められず効果が否定されてしまう場合もあります」
ひまり:「え? 今のケースでは何がいけなかったのですか」
ユウ;「法務局の判断にもよりますが、本来は不動産の特定の為には住所でなく登記簿謄本通りの地番と家屋番号を使わなければいけません。また、「託す」や「管理させる」は、物ををあげたり相続させるという意味合いでないので相続登記に使えないのです」
ひまり:「なるほど・・・しかもこういった不備が見つかるのは被相続人が亡くなられてからでしょうから、遺言書を書き直すこともできませんね」
このような遺言書実務については、行政書士事務所へ相談すると不備なく進められます。まずはお気軽にご相談ください。
終活で使うエンディングノートは遺言にならない
ユウ:「ところで、ひまりちゃんはエンディングノートって聞いたことありますか」
ひまり:「はい、確か終活の一環で、もしもの時に備え自分自身や家族のために、自分の情報を一冊にまとめておけるノートのことですよね。うちの父も書いてました。預金通帳は冷蔵庫の奥に隠しておく・・・とか」
ユウ:「通帳がひんやりしちゃうわね(笑) そのとおりで、人生の終わりに向けての準備として、自分が入院した時や他界した時にご家族がこのエンディングノートを参考にして行動することができますので、書いておくととても安心です。ただ、作成の方法にもよりますが、エンディングノートには基本的に法的効力がないということです」
ひまり:「じゃあエンディングノートは遺言書にはならないんですね。やっぱり遺言書を準備しておかないと」
ユウ:「エンディングノートに関してはさっき渡した相続大全にも書いてるので参考にしてみてくださいね」
遺言書に考えや想いを書いても良い
ユウ:「あと、よく聞かれるのが遺言書の中に自分の考えや想いを書いていいの、という事ですが、結論からいうと可能です。これらは付言事項といわれており、むしろなぜ遺産をこのように分けるのかといった理由が残された人たちにも明らかになるのでスムーズな相続にプラスに働きます」
ひまり:「そっか、より深く遺言書の後ろにある想いが理解できますね」
ユウ:「そうですね。相続大全にも付言事項として先生が詳しく書いてます」
3種類の普通方式遺言と特別方式遺言
ユウ:「遺言書には大きく分けて2タイプあります。普通方式遺言と特別方式遺言とよばれるもので、後者の特別方式遺言は遺言者の死亡が迫っている場合や、遺言者が一般社会と隔絶した環境にあるため、普通方式による遺言ができない場合に限って認められる遺言です。この特別方式遺言はちょっと特殊なので日を改めて学びましょう」
ひまり:「わかりました、普通方式遺言の方はどうなんでしょう」
ユウ:「普通方式遺言は、自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言の3種類があります。相続大全の遺言の方式のページを開いてください」
ひまり:「ふむふむ・・・むむむ」
ユウ:「大丈夫かな(汗) では、ちょっと私なりに普通方式遺言の種類と特徴をまとめてみたからホワイトボートを見てください」
普通方式遺言の種類と特徴 | |||
種類 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 |
作成方法 | 自分で遺言の全文・氏名・日付を自書し、押印する | 本人と証人2名で公証役場へ行き、本人が遺言内容を口述し、それを公証人が記述する | 本人が証書に署名・押印した後、封筒に入れ封印して公証役場で証明してもらう |
証人 | 不要 | 証人2名以上 | 公証人1名 証人2名以上 |
家庭裁判所の検認 | 必要 | 不要 | 必要 |
遺言書の開封 | 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人等の立会いを以って開封しなければならない | 開封手続きは不要 | 必ず家庭裁判所において相続人等の立会いを以って開封しなければならない |
メリット | 作成が簡単かつ安価 遺言内容を秘密にできる | 保管の心配不要 遺言の存在と内容を明確にできる 検認手続き不要 | 遺言の存在を明確にできる 遺言内容を秘密にできる |
デメリット | 検認手続きが必要 紛失の恐れがある 要件不備による紛争が起こりやすい | 遺言内容が漏れる可能性がある 遺産が多い場合は費用が掛かる | 検認手続きが必要 要件不備による紛争が起こりやすい |
ひまり:「わかりやすいです! 開封するのにも手続きが必要なのですね。そっか、だれかが勝手に開けると偽造されてしまう可能性が・・・ふむふむ」
ユウ:「よく読み込んでおいてね」
遺言書の具体的な書き方
ユウ:「では、実際に遺言書を書いてみましょう。私が前に書いた遺言書を参考にしてみてくださいね」
遺 言 書 遺言者XXXXは、次のとおり遺言する。 1 遺言者は、遺言者が有する次の財産を、遺言者の妻XXXX(昭和XX年XX月XX日生)に相続させる。 (1) 土地 XX県XX市XX区XX町 XX番X 宅地 XXX・XX平方メートル (2) 建物 XX県XX市XX区XX町XX番地X 家屋番号 XX番X 木造かわらぶき2階建 居宅 1階 XX・XX平方メートル 2階 XX・XX平方メートル (3) 遺言者名義の預貯金 2 遺言者は、遺言者名義の株式会社XXの株式X万株を、遺言者の長女XXXX (昭和XX年XX月XX日生)に相続させる。 3 遺言者は、前記1、2に記載した財産以外に、遺言者の有する財産があった場合、そのすべてを妻XXに相続させる。 令和○年○月○日 (この遺言書を書いた日付) 住所 XX県XX市XX区XX町XX番XX号(あなたの住所) XXXX ㊞(遺言者の氏名 必ず押印) |
ひまり:「ありがとうございます! まずは自分の中で今日教わったことを消化しながら書いてみたいと思います」
ユウ:「頑張ってね、わからないことがあったらいつでも聞いて!」
なお、自筆証書遺言には、いくつか注意しなければならない事項もあります。詳しくは「自筆証書遺言書の正しい書き方|失敗例から注意点を学ぼう!」という記事をご覧ください。
遺言書は書き方・方式・ルールに注意して作成する
遺言書を書く理由はそれぞれ違いますが、遺言書には残された人たちへの相続を円滑に行う効果があります。書き方に決まりがあり、また気をつけなければいけないポイントなどもありますが、もしご自身が遺言書をつくる必要を感じられた場合は是非長岡行政書士事務所にご相談いただければと存じます。
一緒に検討させていただき、後顧の憂いのない状態にするお手伝いができればと希望しております。