「遺言執行をお願いできる専門家をさがしているのだけど、費用はどれくらいかかるのでしょうか」
「行政書士さんに頼むメリットってなんだろう」
「いろいろな事務所のホームページを見たのだけどいまいち費用がわからない・・・」
・・・
遺言執行業務と聞いて、パッと内容が思い浮かぶ方はあまり多くないのではないでしょうか。
また専門家に頼むにしても、どれくらいの費用が発生するのかの見当もつきませんよね。
遺言執行を行う人の事を遺言執行者と言います。
このコラムは以下の3点を解説します。
- 遺言で遺言執行者を選任するメリット
- 行政書士に遺言執行者になってもらう理由
- 行政書士に依頼した場合の費用の相場を解説
目次
遺言で遺言執行者を選任するメリット
人が死亡した時、その人の財産や権利義務(=遺産)を特定の人が引き継ぐことを相続と言います。
相続には大きく3つの方法があります。
- 法定相続
- 遺産分割協議
- 遺言
法定相続は民法に書かれている相続割合に則って遺産を分ける方法、遺産分割協議は遺産を受け継ぐ権利のある人(=相続人)が全員集まって協議の上遺産を分ける方法です。
それに対し、遺言は亡くなった方(=被相続人)が生前に自分の財産を相続人間で遺産をどうやって分けるべきかを決めたものなので、被相続人の遺志が一番反映されている方法です。
あわせて読みたい>>>遺産分割協議とは?流れとポイントを行政書士が解説
遺言執行者とは
そして、遺言がある場合にその遺言内容を実現すべく選任されるのが遺言執行者です。
遺言執行者は必ず選任される必要があるわけではないのですが、被相続人からしてみると自分の死後に遺言の内容を遺された相続人が忠実に実現してくれるとは限りません。
特に遺言の内容によっては特定の相続人が納得しそうもない時はなおさらです。
遺言執行者は遺言をスムーズに執行するために、相続財産の管理や遺言の執行に必要なすべての行為をする権利と義務があります。また、相続人は遺言執行者が遺言を執行することを妨げることができません。
あわせて読みたい>>>民法改正!遺言執行者の権利義務とは?明確になった立場を行政書士が解説!
相続人の立場から見ても、全員の署名が必要な手続きや日中昼間に役所に行かなければいけない手続きを自分たちで進めていくのは非常に大きな負担になります。
仮に相続手続きが遅れてしまうと相続税の納付が期限に間に合わくなり、ペナルティの延滞税等が発生してしまうリスクもあります。
遺言執行者がまとめて手続きを進めてくれるのは、相続人にとっても大きなメリットだと言えるでしょう。
遺言執行者の職務内容
遺言執行者の代表的な仕事内容は以下の通りです。
- 戸籍等の証明書の収集
- 相続人の調査
- 遺言執行者に就任したことを相続人と受遺者全員に通知
- 相続財産の調査
- 財産目録の作成
- 預貯金の解約手続き
- 売却して分配する財産に関しては換価手続き
- 有価証券等の財産の名義変更
- 不動産の所有権移転登記
- 相続人と受遺者全員に対する完了報告
他のコラムでも遺言執行者の手続きを解説していますので、参考にしてみてください。
あわせて読みたい>>>遺言執行者が単独で執行できる手続きとはなにか?行政書士が解説!
行政書士が遺言執行者になってもらう理由を解説
実は遺言執行者には未成年や破産者でない限り誰でも就任することができます。
相続人の中から遺言執行者を選んでもかまいません。
ただ、前述の通り遺言執行者の仕事は多岐にわたり専門性も求められることから、遺言執行者には弁護士、司法書士、行政書士や税理士といった法律や税金の専門家が選ばれることが多いようです。
本日はその中でも行政書士に遺言執行者になってもらう理由を説明します。
依頼者目線に立つことが得意
各法律系士業の登録者数を比較すると、多い順に行政書士、弁護士、司法書士となり、行政書士が一番多くなります。
人数が多いことから、行政書士は民間企業出身者が相対的に多く、比較的に依頼者の目線に近い立場だと感じます。
(こちらは確証ありませんが、私長岡の感覚となりますことをご了承ください)
私長岡自身ももともとは水道工事でエンドユーザーの方のお手伝いを多くしております。法律関係の出身ではないことから、業界の慣習にとらわれず依頼者目線でお手伝いをしております。
費用が抑えられる傾向にある
行政書士は行政手続きが専門なので相続書類の作成や役所への申請に関しては経験豊富ですが、弁護士の様に相続トラブルの解決には直接は係れませんし、税理士のように相続税申告を行う事はできません。
弁護士・税理士の費用が比較的高めになる傾向にあるのはこの理由もあります。
ただ、実際の仕事は士業同士が横のつながりを活かして必要に応じて依頼しあうことになるので、その都度費用を清算すれば事は足ります。
相続トラブルの芽がない相続もあるでしょうし、また遺産が相続税の基礎控除を超えなければ申告義務も発生しません。
身近な行政書士にワンストップショップ(そこになんでも相談すれば済むという窓口)としての遺言執行者になってもらえば、後は行政書士が場合により弁護士・税理士等と連携して相続手続きを進めてくれますし、結果として費用が抑えられる可能性も高くなります。
各地の行政書士事務所の遺言執行報酬を調査
さて、ここでは実際の費用の目安を知るため、無作為に日本各地の行政書士事務所のホームページをチェックして遺言執行業務の報酬が載っていた分のみを取りまとめてみました。
報酬は相続財産の総額によっても変わってくるので、相続財産が300万、600万、1000万、3000万、1億、3億の5パターンで計算してあります。
また、当長岡行政書士事務所が横浜にあるので、横浜だけは多めに3事務所(当事務所をのぞく)をサンプリングしてあります。
あわせて読みたい>>>遺言執行者の報酬が定められていない場合はどうなるのかを行政書士が解説!
各行政書士事務所ごとの遺言執行報酬相場
単位は万円になります。
例えば横浜1の行政書士事務所に遺産総額1000万の方が遺言執行業務を依頼すると27万円が必要となる、ということです。
なお、事務所ごとに費用に含まれる項目が違ってきたりしていますので、あくまでも目安としての資料と考えてください。
赤は他事務所と比べても割安であること、黄色は逆に割高であることを示しています。
また、同じデータを棒グラフにまとめると以下の様になります。
遺言執行報酬相場は1000万円まではあまり差が無い
- 遺産総額1000万まではどこの行政書士事務所を費用に大差はない
- 遺産総額3000万からはバラつきが生じ始めていて、費用の差が顕著になる
- 含まれているサービス内容に違いがある
上の3つに関する例として、遺産総額が高くなっても遺言執行費用が低い事務所は、但し書きで「不動産の売却を要するときは売却代金の3%を申し受ける」・・・と書いてありました。
他事務所では売却代金の1%のところもありますので、仮に家が5000万で売れた場合はこの項目により100万円の違いが生じてくることになります。
また、ホームページに遺言執行報酬を載せてない事務所も多く、報酬だけでは単純な比較ができない結果となりました。
遺言執行者への依頼は「安物買い」でなく付加価値で決める
では、何を基準にして遺言執行者を選べばいいのでしょうか。
遺言執行者がなすべき業務は多岐にわたります。
そして注意すべきは、遺言執行者を選ぶのは故人でも、その遺言執行者のサービスを受けるのは残された相続人達であることです。
報酬が安いという理由だけで選んで実際は追加費用が多く発生したり、相続人達が自分でやらなければいけない事が多かったりしたら自分の死後に相続人達に迷惑がかかってしまいます。
できればいくつかの事務所を回って、周囲の人の評判や口コミをチェックすべきだと言えるでしょう。
また、報酬とは別にご相談者様と選ぶ事務所との相性や納得感がある事務所を選べばそれはより大きな「安心」を買ったこと同じだと言えるのではないでしょうか。
ちなみに、相性や納得感は聞いたことに丁寧に答えてくれるかどうか、返信のスピードが速いと納得感は高まると思います。
ぜひそんな事務所を選んでみてください。
遺言は残された人たちへの最後のプレゼント。
遺言執行者にベストなサポートを得て、円滑な相続を実現させましょう。