特定財産承継遺言による預貯金の相続対策|遺言執行者の解約権限を行政書士が解説

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特定財産承継遺言における遺言執行者の預貯金解約権限を行政書士が解説

 

「特定財産承継遺言という言葉はあまり聞きなれないので、まずはそこから解説していただけますか」

「遺言執行者は色々な権限を与えられていると聞きましたが、故人の口座を解約することもできるのでしょうか」

「預金を解約するまでと、解約した後の手続きの流れを教えてください」

 

・・・

 

2018年に民法の改正があり、「特定財産承継遺言」という言葉が登場しました。

 

普段生活している分には遺言とあまり係わりがないと思いますので、特定財産承継遺言と言われてもピンとこないかもしれませんね。

 

また、以前からあった遺言執行者という職務に関してもこの法改正において権限の強化がなされました。

 

このコラムで特定財産承継遺言と遺言執行者の権限を理解し、故人の遺産に預貯金がある場合にどのような影響があるのかを学んでいきましょう。

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特定財産承継遺言とは

特定財産承継遺言とは、遺産に属する財産のうち「特定の財産を相続人の1人又は数人に承継させる遺言」のことを指します。

 

実は以前よりこのような遺言自体は存在しており、「相続させる旨の遺言」と呼ばれていましたが、この法改正により改めて特定財産承継遺言と定義されました。

 

具体的には、「XXXの土地を長男の○○○に相続させる」というように個々の財産を特定して相続させる書き方をした遺言が特定財産承継遺言となります。

 

この記事のテーマである預貯金と絡めると、たとえば「特定の金融機関の預貯金を○○に相続させる」と書かれている遺言書は、特定財産承継遺言にあたるということです。

逆に、「全財産の3分の1を長男の○○○に相続させる」のように割合で相続させる書き方では特定財産承継遺言にはなりません。

 

あわせて読みたい>>>今更聞けない!特定財産承継遺言とは何か?旧法と現行法の違いも解説!

特定財産承継遺言と遺言執行者の関係

遺言執行者とは、遺言書の内容を実現するために必要な手続きを行う権限を有する者です。

遺言の内容の効力は遺言者の死亡と同時に発効しますが、誰も手続きを進めてくれなければ遺言の内容が本当に実行されたとは言えません。

 

また、相続の手続きの中には相続人全員の署名が必要であったりするものもあります。

もし、相続人の一人が遠方に住んでいたり、内容に不満があり非協力的であったりすると、遺言内容を実現するための手続きが大いに滞ってしまい、困ってしまうでしょう。

 

相続税の申告・納付期限は10か月であり、手続きが滞ってしまうと無申告加算税や延滞税と言ったペナルティが発生する可能性があります。

そのような事態を避けるためにも、遺言執行者に権限を集めて独立した立場から手続きを進めてもらう事で遺言の円滑な実現が可能となります。

 

つまり、特定財産承継遺言で「特定の金融機関の預貯金を○○に相続させる」とされている場合には、遺言執行者がその手続きを実行してくれるということです。

なお、遺言執行者は「未成年者」や「破産者」などでない限り、誰を指定しても構いません。たとえば長男を遺言執行者に指定することもできますし、知り合いの行政書士などにお願いすることもできます。

あわせて読みたい>>>民法改正による遺言執行者の権利義務の違いは?「こんなとき相続どうするの⁉」

遺言執行者は特定財産承継遺言にもとづき預貯金を解約できる

2018年の法改正では遺言執行者の権限が強化されましたが、その中の一つである預貯金解約権限が正式に認められました。

従来の法律では遺言執行者の立場が曖昧で、特に実務の上で遺言内容の迅速な実現化が妨げられるようなこともありました。

 

そのため2018年の改正では極力そのような事がないよう、条文の整備が行われました。

 

例えば、法改正後の民法1012条では以下の様に遺言執行者を定義しています。

 

改正民法1012条1項 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。

 

実は遺言執行者のこれまでの旧法上の位置付けは「相続人の代理人」でしたが、代理人というと本人である相続人に利益となることをやってくれるというイメージがあります。

 

しかし、遺言によっては逆に相続人にとって不利益となる内容も含まれることもあり、解釈によっては相続人に不利益になるようなことをなぜ遺言執行者は行うのかと言われてしまう場合もありました。

 

たとえば外部の第三者に遺産の大部分を譲る遺言をイメージしてみてください。

親戚である相続人の中にはこの遺言に納得できない人もいるかもしれません。

 

遺言の内容を忠実に実行するのか遺言執行者の役割だとしても、相続人の代理人という位置づけであると、相続人の代理人であるならなぜ相続人の利益に反することをするのかと問われてしまう可能性があり、円滑な相続に支障をきたすかもしれません。

 

改正法では旧民法1015条から「代理人とみなす」という文言を削除し、「遺言の内容を実現するため」という言葉を本条文中に入れることで、遺言執行者は必ずしも相続人にとって利益となる行為ばかりやるわけではないということを明確化しました。

 

また、この法改正により遺言執行者に預貯金解約の権限が正式に認められました。

 

特定財産承継遺言の対象財産が預貯金である場合(例として「X銀行の普通預金1000万円はAに相続させる」という内容)は、遺言執行者は当然に預貯金の故人の預貯金の解約の手続をすることができるということです。

 

ここで言う当然にできるとは、特に遺言書の中で預貯金解約の権限を遺言執行者に与えるものと記載していなかったとしても、遺言執行者は権利を実行できるという意味です。

 

なぜ「正式に」かというと、法改正以前から遺言執行者に故人の預貯金解約権限は認められていましたが、金融機関の中には後に遺言が無効となった時なぜ預貯金を解約させたのかと責任を問われることをおそれて、相続人全員の署名を求めてくるところもありました。

 

結局相続人全員の署名が必要では、遺言執行者を指定した意味がありません。

 

2005年に公証人の団体である日本公証人連合が全国銀行協会に、わざわざ遺言執行者の預貯金解約権限確認の要望書を出していることからも実務上の混乱が伺えます。

 

この要望書の内容としては、公正証書遺言を使った場合は高い信頼性が認められるので無効になるリスクが少ないこと、また仮に銀行が故人の預貯金を解約したあとに遺言が無効となり弁済を求められても銀行は免責を受けられる事を挙げて、日本公証人連合は遺言執行者の預貯金解約権限を確認するよう求めましたが、全国銀行協会はそもそも公正証書遺言の信頼性が担保されてないとして拒否をしています。

 

このような争いがあった背景も、法改正により法律の面から遺言執行者の預貯金解約権限を改めて認めることになった理由の一つだと言えるでしょう。

特定財産承継遺言を根拠に預貯金解約を進めるときのポイント

特定財産承継遺言を根拠に預貯金解約を進めるときのポイントとしては、次のようなことが挙げられます。

  • 遺言執行者は単独で預貯金解約手続きできる
  • 遺言執行業務を代理人へ依頼することもできる
  • 特定財産承継遺言で相続した預貯金に対抗要件を備える

それぞれ詳しくみていきましょう。

遺言執行者は単独で預貯金解約手続きできる

この記事のテーマでもあるように、「X銀行の普通預金1000万円はAに相続させる」という内容の特定財産承継遺言は、遺言執行者が単独で手続きできます。

銀行によっては相続人全員の署名を求めてくるところもあるかもしれませんが、遺言執行者に預貯金解約の権限が正式に認められていることは覚えておきましょう。

遺言執行業務を代理人へ依頼することもできる(復任権)

遺言執行者は条件さえ満たしていれば、誰を指定しても構いません。そのため、ご家族の一人が遺言執行者とされていることもあるでしょう。

しかしたとえば、法律に慣れていないご長男が遺言執行者として銀行に行くのは、不安に感じるかもしれません。

 

遺言執行者は遺言内容を実現するために、各方面での手続きを実行しなければなりませんから、負担も少なくないのです。

遺言執行者の義務をこなすのが大変な時は、「遺言執行者の復任権」を使うことも覚えておきましょう。

復任権とは、遺言執行業務を第三者に任せることができるというものです。

合わせて読みたい>>遺言執行者の復任権、執行者の代理人とは?行政書士が分かりやすく解説

遺言執行者の復任権、執行者の代理人とは?行政書士が分かりやすく解説

ただし、第三者に任せた場合、もしも問題が発生した場合は遺言執行者の責任となります。そのため復任する方は、信頼できる人でなければなりません。

たとえばご長男として遺言執行者に指定されているものの、銀行預貯金の解約などはどうしても荷が重いという場合には、信頼できる行政書士へ復任してもいいでしょう。

なお、2019年7月1日の民法改正前に書かれた遺言書では、復任権が認められないこともあります。横浜市の長岡行政書士事務所では相続手続きにも丁寧に対応していますから、もし不安なことがある方はお気軽にご相談ください。初回相談は無料です。

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特定財産承継遺言で相続した預貯金に対抗要件を備える

預貯金の取得を法律的に厳密に言うと、「当該預貯金を預け入れた金融機関に対する預貯金の払戻請求権の取得」の事を指します。

特定財産承継遺言で預貯金を相続した場合、対抗要件がないと第三者に権利を取得できないため、相続した預貯金に対抗要件を備えることも重要です。

2019年の民法改正以前は対抗要件を取得するために、相続人全員から金融機関に対して通知しなければなりませんでした。

しかし民法改正により、預貯金の相続人が単独で金融機関に通知をすれば対抗要件を備えられるようになったのです。

具体的には、金融機関へ遺言又は遺産分割の内容を通知すれば対抗要件を取得できるということです。

万が一に備えて、法律的な権利を安定させておくことも重要な相続手続きです。特定財産承継遺言で預貯金を相続した場合は、対抗要件を備えることまで忘れないようにしましょう。

特定財産承継遺言による預貯金相続では遺言執行者を活用

特定財産承継遺言による預貯金相続は、民法改正によりこれまで以上にスムーズに手続きできるようになりました。

しかし特定財産承継遺言を遺すのであれば、信頼性の高い公正証書遺言を用いて、またその中で遺言執行者を指定することでより遺言の内容がきちんと実現されるようにしましょう。

 

公正証書遺言を作成するためには証人を2人用意しなければいけなかったり、公証役場に行く前に内容を検討しておく必要があったりしますので、法律の専門家のサポートを利用することをお勧めします。

 

また、実際に遺言執行者を指定するときも、法律に普段係わらない人よりも法律の専門家に遺言執行者に就任してもらった方が後々心強いと言えるでしょう。

 

そのためにも普段からかかりつけの法律家をもち、気兼ねなく相談ができたりアドバイスを受けられる関係を作っておくべきだと言えます。

 

横浜市の長岡行政書士事務所は、相談者様に寄り添った相続をモットーにしています。

ご不明点や不安を感じた場合は是非ご相談ください。

 
行政書士 長岡 真也
この記事の執筆・監修者:長岡 真也(行政書士)
神奈川県行政書士会所属(第12091446号)
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