遺言執行者は後から選任できるの?遺言執行者選任申立てについて解説

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遺言執行者は後から選任できるの?遺言執行者選任申立てについて解説

 

相談者様:横浜市在住 60代 女性

先日父が亡くなり、父の遺言書がみつかりました。

せっかく父が最後に残した希望ですから、遺言書の内容に沿った遺産相続をしたいというのがほとんどの相続人の意見です。

しかし、どうも兄がその遺言書の内容に納得がいっていないようで、なかなか遺言書の手続きが進みません。

遺言書が残されている場合、遺言執行者を選任するとスムーズに手続きが進むと聞きました。

遺言書では遺言執行者の指定はありませんでしたが、遺言した本人の死後に相続人が遺言執行者を選任することはできるのでしょうか?

回答:長岡行政書士事務所 長岡

今回の相談者様の事例は、スムーズに手続きを進めるために遺言執行者を選任したいけど遺言書に指定はない。遺言者本人が亡くなった後であっても遺言執行者を選任することはできるのか?といったご相談でした。

結論から申し上げますと、遺言者の方が亡くなった後であっても遺言執行者を選任することは可能です。

今回は後からでも遺言執行者を選任する方法『遺言執行者選任申立て』について解説していきます。

 

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遺言執行者は遺言の内容を実現するために存在する

そもそも『遺言執行者』とは、簡単にいうと遺言の内容を実現する人のことを指します。

遺言執行者の役割は、遺言書の内容に従って、故人の意思を実現することです。

 

遺言は遺言者の最後の希望ですから、できるだけご本人の意思を実現できるように法律でも守られています。

そのため、遺言執行者の権利や義務についても、民法第1012条に規定があります。

 

民法 第1012条1項 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。

 

この規定は、「遺言の内容を実現する」ことが遺言執行者の職務である旨を明示しています。

そして、遺言執行者は相続人の利益のためにのみ行為する責任を負うのではなく、相続人の利益と遺言の執行とが対立するような場合には、遺言執行者は遺言者の意思を実現すべき法的地位にあることが示されています。

 

つまり、遺言執行者は遺言者の意思を実現することを第一に存在するのです。

 

遺言執行者の仕事内容

遺言執行者には大まかに以下のような任務があります。

  • 遺言執行者就任の通知と遺言書の開示
  • 遺産の調査、財産目録の作成・交付、相続・受遺の意思確認
  • 財産の引き渡し
  • 遺言執行終了の報告 等

大まかに例示しましたが、これだけでも大変そうですね。

 

遺言執行者を指定しておくことは、本来相続人がすべき手続きを相続人に代わって行ってくれるというメリットもあります。

 

遺言執行者について詳しくは以下のリンクからご確認ください。

合わせて読みたい:遺言執行制度と遺言執行者の義務について行政書士が解説

 

遺言執行者を選任すべきケース

遺言執行者の選任はかならずしも必要というわけではありません。

 

しかし、以下のような場合には遺言執行者がいると安心、あるいは必要となります。

遺言執行者を選任すると安心なケース
  • 手続きに非協力的・連絡が取れない相続人がいる場合
遺言執行者の選任が必要なケース
  • 遺言によって子の認知をする場合
  • 遺言によって相続人排除をする場合

 

遺言書の手続きに非協力的・連絡が取れない相続人がいる場合

遺言執行者が選任されている場合、財産を分割するための金融機関の手続きや不動産の名義変更等の手続きにおいて、相続人全員の同意がなくとも遺言執行者の権限だけで進めることができます。

 

遺言書によって子の認知をする場合

遺言によって子の認知をする場合は、必ず遺言執行者を選任しなければなりません。

遺言による子の認知は以下の2つの条文に定めがあります。

 

民法 第781条 第2項 認知は、遺言によっても、することができる。

 

戸籍法 第64条 遺言による認知の場合には、遺言執行者は、その就職の日から10日以内に、認知に関する遺言の謄本を添附して、第60条又は第61条の規定に従つて、その届出をしなければならない。

 

以上の規定には、”遺言によって認知することは可能、しかし、遺言によって認知する場合、遺言執行者が認知の届出を行う必要がある”という旨が定められています。

 

遺言によって相続人廃除を行う場合

相続人の廃除とは、特定の相続人から相続権を奪うものです。

遺言書によって相続人廃除をする場合の遺言執行者の選任が必要である旨が民法893条に規定されています。

 

民法 第893条 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。

 

上記の法律には、遺言によって相続人を廃除する意思が示されている場合、遺言執行者が家庭裁判所で相続人廃除の手続きをしなければならない旨が示されています。

したがって、遺言書によって相続人の廃除をする場合にも遺言執行者を選任する必要があります。

 

なお、生前に相続人廃除の手続きが完了しており、その相続人廃除を取り消したい旨が遺言書に記載している場合も同様に遺言執行者の選任が必要です。

 

合わせて読みたい:遺言執行者が単独で執行できる手続きとはなにか?行政書士が解説!

遺言執行者の選任方法は2種類

遺言執行者の選任は、遺言者本人が事前に遺言執行者を選任しておく方法と、遺言者の死後に相続人等が遺言執行者を選任する、2つの方法があります。

  • 遺言者本人が遺言執行者を選任する
  • 遺言者の死後、相続人等が家庭裁判所に遺言執行者の選任申立てをする

 

遺言者本人が遺言書の中で遺言執行者を選任する

遺言を作成する際に、遺言者本人が遺言執行者を選任する方法です。

 

遺言者が遺言執行者を指定する場合、遺言書に遺言執行者になってもらいたい人の『氏名』や『住所』を記載し、『遺言執行者として選任する』と記載することで指定は完了します。

 

遺言書に遺言執行者が選任されている場合には、遺言執行者の選任について、相続人の方は特段の手続きは必要ありません。

 

遺言者死後に相続人等が家庭裁判所に遺言執行者の選任申立てをする

以下のような場合には相続人等が家庭裁判所に申立てをすることで遺言執行者を選任してもらうことができます。

  • 遺言者が遺言執行者を選任しなかった場合
  • 遺言者によって指定されていた遺言執行者が亡くなっていた場合

相続人等が家庭裁判所に申立てをすることで遺言執行者を選任してもらうことができます。

 

合わせて読みたい:遺言執行者に選任されたけど誰かに代わって欲しい!法改正があった執行者の代理人

遺言執行者の選任申立方法

遺言によって遺言執行者を選任していない場合や、指定した遺言執行者が死亡した場合には、家庭裁判へ遺言執行者の選任申立てをすることで遺言執行者を選任することができます。

 

申立をすることができる人
  • 利害関係人

※相続人、遺贈を受けた人、遺言者の債権者など

申立先
  • 遺言者の最後の住所地の家庭裁判所

管轄の裁判所については以下のリンクから確認することができます。

・裁判所の管轄区域 裁判所HP

申立に必要な書類
  • 申立書(家庭裁判所のHPからダウンロードできます)
  • 遺言者の死亡の記載のある戸籍謄本(発行から3ヶ月以内のもの)
  • 遺言執行者候補者の住民票または戸籍の附票(発行から3ヶ月以内のもの)
  • 遺言書の写しまたは遺言書検認調書謄本の写し
  • 利害関係を証する資料(例:相続人であることがわかる戸籍謄本)

※事情によって必要な場合にはその他の書類を求められる可能性もあります。

 

申立書は、以下のリンクから取得することができます。

・申立書の取得 裁判所HP

申立てに必要な費用
  • 執行の対象となる遺言書1通につき収入印紙800円分
  • 連絡用の郵便切手

※連絡用の郵便切手は、管轄の家庭裁判所によって異なります。

 

詳しくは管轄の裁判所へご確認ください。

管轄の裁判所については以下のリンクから確認することができます。

・裁判所の管轄区域 裁判所HP

 

遺言執行者選任の申立手続きの流れ

ご自身が申立可能であるか、申立先の家庭裁判所がどこかを確認し、申立に必要な書類が揃ったら家庭裁判所へ申立を行います。

遺言執行者の選任申立から選任審判までの流れは以下の通りです。

 

<STEP1>  家庭裁判所へ申立

        ⇩

<STEP2>  申立人・候補者への照会書の送付 

        ⇩

<STEP3>  照会書の返送

        ⇩

<STEP4>  遺言執行者選任の審判

        ⇩

<STEP5>  審判書の交付

*必要書類を提出してから審判書が交付されるまでは約1ヶ月ほどかかります。

 

家庭裁判所へ申立て書類を提出<STEP1>  

申立ての方法は2パターンです。

  • 家庭裁判所へ直接持ち込む
  • 郵送で送る

 

家庭裁判所へ直接持ち込む

各地の家庭裁判所によって受付時間が異なります。

それぞれ受付時間をご確認ください。

 

平日の昼間しか空いていない家庭裁判所も多く存在します。

忙しい方は郵送もご検討くだい。

 

なお、申立書の提出は申立人本人である必要はありませんが、事情を把握している人が持ち込むことをおすすめします。

なぜなら、受付担当者から書類の内容で疑問点がある場合は質問される可能性があるからです。

事情を把握している方が提出する方が安心かつスムーズに手続きが完了するでしょう。

 

郵送で送る

郵送方法に指定はありません。

しかし、戸籍謄本など重要な書類を送るため、書留や対面での受け取りが必要なレターパックなどがおすすめです。

 

 申立人・候補者への照会書の送付<STEP2>

家庭裁判所に申立書が受理されると、家庭裁判所から申立人および遺言執行者候補者に照会書が送付されます。

申立人に送付される照会書の内容
  • 申立内容についての確認
遺言執行者候補者に送付される照会書の内容
  • 就任意思の確認
  • 欠格事由(未成年・破産者)に該当しないか 等

 

照会書の返送<STEP3>

申立人と遺言執行者候補者は照会書に記載された事項に回答し、家庭裁判所へ返送します。

 

遺言執行者選任の審判<STEP4>

照会書の返送後、家庭裁判所による審理が開始されます。

概ね、1〜2週間程度で遺言執行者を選任する旨の審判がなされます。

 

審判書の交付<STEP5>

家庭裁判所は、申立人と遺言執行者に審判書を送付します。

 

審判から2週間以内に不服申立て(※1)がなければ審判が確定します。

遺言執行者は確定した選任審判に基づき遺言の執行に関する各種手続きを進めることができるようになります。

 

※1不服申立てとは

決定や処分に対して不服がある者が取消しを求める等の手続きを指します。

 

遺言執行者の選任後に変更や解任も可能

遺言執行者は選任された後でも解任や変更することができますが、遺言執行者の解任変更は家庭裁判所へ申立てが必要となります。

家庭裁判所の許可が得られた場合、変更や解任をすることができます。

 

解任理由としては、以下のようなものが挙げられます。

遺言執行者解任理由 例
  • 遺言執行者に病気が発覚して続行不可能となった
  • 相続人との間でトラブルとなり手続きを進めていくことが困難となった
  • 一部の相続人の利益に加担している
  • 高額な報酬を要求しており、不服である

遺言執行者は故人の大切な財産を管理する地位にあります。

遺言者本人ももちろんですが、相続人も信頼ができる人にお願いしたいですよね。

 

合わせて読みたい:遺言執行者って解任できるの?行政書士が具体的なケースを解説!

遺言の内容が複雑な場合には遺言執行者の選任がおすすめ

特殊な遺言の場合を除いて、遺言執行者は必ず選任が必要というわけではありません。

 

しかし、遺言執行者を選任することで以下のようなメリットがあります。

  • 相続手続きがスムーズに行うことができる
  • 相続人間のトラブルを回避できる
  • 相続人の負担軽減になる

 

遺言内容によっては遺言執行に法的な知識が必要な場面もあります。

遺言の内容が複雑だと感じた場合には、専門家である行政書士を遺言執行者として選任することもおすすめします。

 

遺言執行者の指定・選任をご検討の方はぜひ長岡行政書士事務所へご相談ください。

 

 

<参考文献>

常岡史子著 新世社 『ライブラリ今日の法学=8 家族法』

 
行政書士 長岡 真也
この記事の執筆・監修者:長岡 真也(行政書士)
神奈川県行政書士会所属(第12091446号)
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