遺言執行者の復任権とは?行政書士など第三者を代理人とする方法について解説

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遺言執行者の復任権とは何か?

「遺言を書いたけれど、誰が相続の手続きをするのか。」
「相続人は子ども達だけれど、誰か一人の負担になるのは避けたい。」
「遺言で『遺言執行者』に指定されているけど、きちんとできるか不安。」

 

遺言は、遺言者が自分自身の財産の処分について、何を誰にどうするのかという最終的な意思を書き記しますが、書いただけではその内容は実現されません。

 

遺言者が亡くなった後、実際にその遺言内容を実現するための手続をする人が必要となるのです。

 

例えば「不動産を長男に相続させる」と書いてあれば、遺言者が亡くなった後、不動産の所有権を遺言者から長男に移転する登記の手続きが必要となります。
預貯金を相続した場合には、金融機関で相続による払い戻し等の手続きが必要となります。

 

相続に関係する手続きは実にさまざまで、その内容は手間がかかるものや複雑なものも多く、それを実行するのはなかなか大変です。

そこで、遺言では「遺言執行者」を指定して、遺言者が亡くなった後に遺言の手続きをする者を定めておくことがよくあります。

 

では、この「遺言執行者」に指定された場合、何がなんでも指定された本人が執行を行わなければならないのか、今回はその点について解説していきます。

横浜市の長岡行政書士事務所は、遺言執行や相続手続きの実務にも精通しているため、ぜひ参考にしてください。個別的な相談にも初回無料で対応しています。

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遺言執行手続きは代理人(第三者)に依頼できる

ご相談者様:50代男性

私には、80代の母親と弟と妹がおり、父親はすでに他界しております。
先日、母親が遺言を書いたとのことで内容を聞いたところ、不動産や預貯金の財産分与について記載したほか、遺言執行者を長男である私に指定した、と言われました。
正直、仕事や家族のことで忙しく、母にもしものことがあったときに、遺言の内容に関するさまざまな手続きをやり遂げる自身がありません。
しかし母もせっかく私を指定してくれたので断ることも申し訳ないと感じており、何とかならないかと相談させていただきました。

 

回答:長岡行政書士事務所 長岡
今回のご相談者様の場合、遺言で遺言執行者に指定されたとのことですが、今回ご相談いただいた事例のように、相続人のうちの一人を遺言執行人に指定することは法律で認められています。しかしいざ実際に執行の場面になると、手続は煩雑で、専門家でない方がスムーズに行うのは難しく、大変な労力を使うのもまた事実です。結論から申し上げますと、遺言執行者は必ず指定された本人のみが任務を行わなければならないわけではなく、第三者に委ねることが可能です。実際には、弁護士や行政書士などの専門家に委ねることが多いといえます。遺言執行者が遺言執行の任務を他の者にお願いできる権利を「復任権」といいますが、これから遺言執行者と復任権について解説していきますので、参考にしてください。

 

そもそも遺言執行者とは

前述したように、遺言執行者とは遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人のことをいいますが、
ポイントをまとめると、次のようになります。

 

  • 遺言執行者は通常遺言によって指定されますが、そのほか、家庭裁判所に申立てをし、選任してもらうこともできます。
  • 遺言執行者は弁護士などの専門家である必要はなく、未成年や破産者以外の誰でもなることが可能です。
  • 遺言執行者は独立した中立・公正な立場であり、相続人と利益相反が発生しても、遺言内容を執行するために職務を遂行します。

 

まずは遺言執行者の義務と権限について解説します。

遺言執行者の義務

遺言執行者は遺言者にかわって遺言を実現することが求められているわけですから、様々な義務が課せられています。

任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。(民法1007条2項)

 

遅滞なく、財産目録を作成して、相続人に交付しなければならない。(民法1011条1項)

 

遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。(民法1012条1項)

 

上記のほか、下記民法644条から647条、及び650条の委任の規定を準用

  • 受任者の注意義務
  • 受任者による報告
  • 受任者による受取物の引渡し等
  • 受任者の金銭の消費についての責任
  • 受任者による費用等の償還請求等

 

なかなかたくさんの義務があると言えます。

そしてこれらの義務を順守しながら、遺言を実行するための手続きを行うのです。

遺言執行者の権限の具体例

遺言書で与えられる遺言執行者の代表的な権限には、例えば以下のようなものがあります。

  • 相続人調査・相続財産調査
  • 財産目録の作成
  • 不動産の登記申請手続き
  • 保険金の受取人の変更
  • 預貯金の払い出し、分配
  • 株式の名義変更
  • 自動車の名義変更
  • 貸金庫の解錠、解約、取り出し

これらの例をみても、日常生活ではなかなか触れることのない手続きがたくさんあることが分かります。
遺言執行者として相続手続きを進めるためには、専門的な知識や経験が必要な場合が多々あることを知っておくことが必要です。

そのため、実務的には行政書士など法律の専門家に依頼することになります。

横浜市の長岡行政書士事務所でも、遺言執行手続きについて相談に載っていますから、お気軽にご相談ください。

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遺言執行者の復任権とは

前述したように、遺言執行者が職務を遂行することは、なかなか大変なことです。

今回のご相談者様の場合のように、自分の生活を維持しながら取り組むのは難しいと感じるのも無理はありません。

 

遺言執行者は指定されたからと言って必ず引き受けなければならないものではありませんので、引き受けないことも考えられます。

しかしご相談者様のように、親から指定されたので、できる限りは引き受けたいという気持ちがある場合、遺言執行者の復任権によって、行政書士など専門家に遺言執行(相続手続き)お願いすることで対応ができます。

遺言執行者の復任権については、2019年の民法改正で内容が変わりましたので、改正前と改正後の内容について、もう少しくわしく説明していきたいと思います。

法改正前の復任権

改正前の民法では、以下のように定められていました。

 

(旧民法1016条)
遺言執行者は、やむを得ない事由がなければ、第三者にその任務を行わせることができない。
ただし、遺言者がその遺言に反対の意思を表示したときは、この限りではない。

 

旧民法のもとでは、遺言執行者の復任権は原則として認められず、行政書士など第三者に任務を行わせるには、「やむを得ない事情」が必要でした。

「やむを得ない事情」とは、遺言執行者が病気で入院している場合や転勤で海外に住んでいる場合とされており、第三者に委ねるためには、遺言書で復任権について記載しておくことが必要とされていました(旧民法1016条但書)。

 

旧法の趣旨は、遺言執行者は「この人にお願いしたい」という遺言者の意思のもと指定したか裁判所が選ぶものであるため、第三者に任務を委ねることは望ましくない、ということにあり、そのため原則として、遺言書に記載がなければ復任権は認められていませんでした。

法改正後の復任権

相続財産が多種多様である場合や、相続人がたくさんいるため手続きが煩雑な場合など、遺言執行を専門家に任せたいケースも多く、そのような現状を鑑みて、法改正により復任権の内容が大きく変わることとなりました。

改正後の民法では、以下のように定められました。

 

(民法1016条)
遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
2  前項本文の場合において、第三者に任務を行わせることについてやむを得ない事由があるときは、遺言執行者は、相続人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。

 

この条文を読み解くと、法改正後の復任権は以下の内容であることがわかります。

 

  • 遺言執行者は第三者に任務を行わせることができる。
  • ただし、遺言者が遺言で復任権を制限している場合は、遺言者の意思が優先される。
  • 第三者に任せた場合、遺言執行者の自己責任となる。

 

遺言で制限されている場合を除き、行政書士など第三者に任務を行ってもらうことは自由にできますが、その第三者が起こした問題については、遺言執行者が責任を負うことになります。

遺言執行者自身が起こした問題でなくても、第三者を選んで任務をお願いした以上、責任は負うということです。

 

ただし、2項の規定により、第三者に任務をお願いしたことに「やむを得ない事情」がある場合は、遺言執行者が負う責任の範囲は「選任と監督についてのみ」と小さくなります。

遺言執行を第三者に依頼する時は遺言書の日付に注意

以上でみてきたように、法改正の前後で遺言執行者の復任権は真逆になっています。

 

改正後の新民法は2019年7月1日に施行されました。
したがって、復任権が認められているのかどうかを確認するには、遺言について新旧どちらの法律があてはまるのか日付を確認することになりますが、このとき、何の日付を確認するのか、という点に注意が必要です。

 

気を付けたいのが、確認するのは相続が開始された日(=遺言者が亡くなった日)ではないことです。
2019年7月1日以降に亡くなったからといって、改正後の法律が適用されるわけではありません。

 

改正後の法律が適用されるのは、「2019年7月1日以降に作成された」遺言書です。

 

2019年7月1日以降に作成された遺言であれば、遺言執行者の復任権は当然に認められます。

 

遺言執行者に指定されている人が復任権により第三者に任務を遂行させたい場合は、遺言書の作成日付を確認するようにしてください。

遺言執行は意外と大変!行政書士など専門家に相談も

遺言執行者はさまざまな義務を負い、遺言執行に関しての手続きは年々多様化・複雑化していますので、専門家でない方が遺言執行をスムーズ・的確に行うことは大変なことといえます。

 

遺言執行者に指定されたけれども執行が難しいと感じる方は、悩まずに行政書士など専門家に任せることをおすすめいたします。

横浜市の長岡行政書士事務所は、遺言や相続人関して親切・丁寧な対応を心がけ、様々な手続きに迅速に対応しております。

遺言執行についてお悩みやお困りごとがありましたら、お気軽に弊所までご相談ください。

 
行政書士 長岡 真也
この記事の執筆・監修者:長岡 真也(行政書士)
神奈川県行政書士会所属(第12091446号)
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