遺言執行者が複数いる場合のは過半数が必要?職務を分担しておくと安心

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【名探偵・明智小五郎の遺言調査1】遺言執行者が複数いる場合、遺言の執行はどうなる?

遺言執行者が複数いる場合、遺言執行はどうなるのでしょうか。

この記事では、遺言執行者が複数人いる場合について、名探偵「明智小五郎」風に分かりやすく解説します。

 

それは、ある蒸し暑い晩のことであった。

 

私は、長岡行政書士事務所という、行きつけの行政書士事務所で、冷しコーヒーを啜っていた。

別段、カフェがわりに使おうという、せせこましい精神ではない。れっきとした用事があって来ているのだから、誰にも四の五の言われる筋合いはない。

近頃知り合いになった妙な男も一緒である。名前は明智小五郎というのだが、どうやら探偵業を営んでいるらしい。助手の小林君という凛々しい少年までついてきている。

 

「どうかね、君の問題は解決しそうかね」と明智は他人事のように言う。そう、今日私はある問題を、行政書士の長岡氏に相談すべくやってきているのだ。

「明智先生、まだ話してもいないのに解決も何もありませんよ」
「おお、そうか。これは失敬、小林君の言うとおりだな」

実は、私の父親が自筆証書遺言を書き、その際に遺言執行者を指名したそうなのだが、なんと遺言執行者が3人も現れた。

 

民法のことなどさっぱりわからない私だけに、もしかしたら父親の財産をうまいこと我が物にせんとする不届きな輩も混じっているのではないかと考え、明智に相談を持ちかけた。

すると明智は遺言執行者を全員呼び出し、「この中に犯人がいる」などと、ミステリ小説のクライマックスよろしく、犯人(?)を暴こうとした。

「犯人は、あなただね。Aくん」
「違います、私はれっきとした遺言執行者ですよ。遺言書に書いてあるでしょう?」
「…もとい。犯人は、あなただね、Bくん」
「何を言うてんねん。遺言書をキッチリ見たらんかい」
「……はは、ユーモアだよ、諸君。本当の犯人はあなただね、Cさん」
「なに、このおっさん、マジうぜーんだけど。つーか、遺言書と空気読めよ。きしょいっつーの?」

ということで、遺言書を見せてもらった明智は、真っ青になりながらかろうじて笑みだけは崩さずに逝った…いや、言った。

 

「この事件はどうやら奥が深いようだ。確かに、遺言書にはこちらの3人の名前が書いてある。まだクライマックスには早かったようだな、小林君」
「先生がスベっているのに、私を巻き込まないでください」

そんなこんなで、結局、私の疑問はいち私立探偵の領分ではないということになり、小林君の知り合いである行政書士に話を聞いてもらおうとなったのだ。

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遺言執行者は複数人でも良い

長岡「お待たせしました! やあ、小林君、久しぶりだね」

小林「長岡さん、ご無沙汰しています。ご紹介しますね、こちら依頼人の方と、私がお世話になっている探偵事務所の明智小五郎先生です」

長岡「あなたがかの有名な! どうぞよろしくお願いします」

明智「よいでしょう。まあ私が話を聞いて差し上げますから、もう大船に乗ったつもりでいてください」

小林「明智先生、逆でしょ」

長岡「それで、今日は確か遺言執行者が複数いてもいいかどうか…というご相談でしたね」

私「ええ。父の遺言書に遺言執行者が3名書かれていましてね。これは有効なものなのかどうかを知りたくて」

明智「どうだい、長岡君。なかなかの謎だろう?」

長岡「…いえ、謎というより、普通に遺言執行者は複数指名できます」

明智「へ?」

長岡「遺言執行者が1人に絞れる場合はそれで問題ないのですが、遺言の内容は様々ですので、一人に負担させるのが憚れる場合や、手続き内容によって執行者を変えたい場合、複数の執行者を指定することはあり得る話なんです」

私「そうなんですか?」

長岡「ええ。例えば、預貯金の続きは長女Aに、不動産の手続きは長男Bにしてもらうとか、専門職の人と子どもを遺言執行者に指定するとか、ケースバイケースではありますが」

小林「ということは、明智先生が犯人だと言っていた3人は、やっぱり正真正銘の遺言執行者だったんですね。おや、先生、顔が真っ赤ですよ?」

明智「…うるさい、私にかまうな」

長岡「どのように書かれていたかで、遺言執行者の職務の行い方も異なってきますので、まずはそこから順を追ってお話しましょうか」

遺言執行者の職務分担に定めがない場合は過半数で決める

長岡「複数の遺言執行者が遺言書で指定されていた場合、誰がどの手続きを行うのか、執行者の職務の分担について具体的に書かれているときと、書かれていないときがあります」

私「父の遺言状には…書かれていませんね。「この遺言の執行者にAとBとCを指定する」とだけあります」

明智「ふん。どうせめんどくさくなって適当に書いたのではないのか?」

小林「明智先生! すみません、なんだかこの人、すねちゃってるみたいで。続けてください」

長岡「その場合は遺言書に関して誰がどの職務をすべきか分かりません。なので民法では、任務の執行は過半数で決めることになっているんです」

小林「つまり、遺言執行者が3人いる場合、2人以上の賛成を得られれば遺言の執行をすることができる?」

長岡「さすがだね、小林君。もし遺言執行者が偶数人いる場合は可否同数となることがあるので、この場合の決定方法については定めがない。その場合は遺言の執行が進まなくなり、スムーズな遺言の執行ができない可能性がありますので、今回の3名というのは、しっかり考えられた結果かもしれないね」

明智「…わ、私もそう思っていたところだよ、長岡君」

長岡「任務の執行が多数決で決まらないような事態を避けるために、遺言書で以下のように記載しておくといいんですよ」

《記載例》
「各遺言執行者は、単独で本遺言の執行業務を行うことができる」

私「父の遺言状にも似たような感じで書いてありますね」

小林「それなら遺言執行者の職務が明確に記載されていなくても、遺言執行者は単独で執行業務を行うことが可能になりますね」

私「なんだかここまでわかっただけでもホッとしますね」

明智「職務の定めがない複数の遺言執行者がいたら過半数で決め、遺言書で認められていたら単独で動くこともでき、職務の定めがあればその通りに実行する。なんともわかりやすいじゃないか。さ、これで謎は解けたな。小林君、帰るぞ」

小林「あ、お帰りですか? お疲れさまでした!」

明智「…普通、助手は一緒に帰るだろ」

小林「だって僕はもっと長岡さんの話を聞いていたいんですもの。職務分担織定めがある場合の注意事項とか分担方法とか。あ、明智先生、方向音痴ですけど、1人で帰れますよね?」

明智「…ん? 長岡君、私にまだいてほしいみたいだな」

長岡「え? いや…特には…」

明智「そうかそうか、私が解決した数々の怪事件について興味があるのか。なら、話が終わった後に、じっくり聞かせてあげよう。続けたまえ」

長岡「…いや、はあ…、ありがとうございます」

小林「(長岡さん、すみません! 天邪鬼なんです、この人)」

長岡「(いやいや、大変だね、君も)では、話を続けますね。小林君のリクエストに応えて、遺言に職務分担の定めがある場合の話もしておきましょうか」

遺言執行者の職務分担に定めがある場合は各職務を単独で行う

長岡「さて、誰がどの手続きを行うのか、執行者の職務の分担について遺言書に具体的に書かれている場合は、その分担に従うのが基本です。例えば次のように書かれている場合ですね」

《記載例》
遺言者は、遺言執行者A及びBの職務の執行方法を次の通り定める。
遺言執行者Aは、不動産に関する一切の執行行為
遺言執行者Bは、預貯金に関する一切の執行行為

私「なるほど。さっき単独でと言われたことと繋がりますね。それぞれが定められた職務の執行は、単独で行うわけですね」

長岡「ただしこの例の場合、遺産が不動産と預貯金だけであれば問題ありませんが、その他に財産があった場合はちょっと困ってしまいます。なぜなら…」

明智「その他の財産があったとき、職務を行う権限のある遺言執行者が明記されていない! つまり、遺言執行者がいないことになるわけだな!」

長岡「明智先生、その通りです」

明智「見たか小林君! どうだ小林君! この冴えわたる推理!」

小林「うるさいです」

長岡「そのような場合に備えて、例えば「預貯金に関する一切の執行行為」の文言を、以下のように記載して対応することも可能です。

遺言執行者Bは、その余の財産に関する一切の執行行為

長岡「Bさんは預貯金だけではなく1で定めた不動産以外、すべての財産について執行することが可能になります」

私「このような記載がなくて、その他の財産があった場合にはどうなるんですか?」

長岡「追加で家庭裁判所に遺言執行者の選任申立てをし、新たな遺言執行者を選任してもらうことになりますね」

遺言執行者が単独で行うことができる保存行為

長岡「余談ですが、職務の定めのない複数の遺言執行者がいる場合、職務の執行にあたっては過半数による賛成を必要としますが、すべての執行について必要となるわけではないんです」

小林「保存行為というのは?」

明智「小林君、君も困ったものだね。犯行現場の保存にきまっているじゃないか。証拠は現場にあるものだからな」

長岡「現状維持という点では合っていますが、犯行現場のことではなく、遺産の価値を維持するんです。例えば以下のような行為ですね」

《保存例》
家屋の修繕(家全体を修繕するような大規模修繕は、保存行為にならない)
第三者が不動産を不法に占拠している場合、その者への明け渡し請求
不動産を権利のない者が勝手に名義にしている場合の抹消登記請求
時効の保全行為(債権の消滅時効の更新など)

小林「そうか、遺言を執行する前後で財産の状態が変わってしまっては、遺言の内容が実現できないことになってしまいますものね」

長岡「保存行為は財産の状態を維持するために必要な行為ですので、過半数の賛成を得なくても単独でできるとされるのです」

小林「そう考えると、やはり1人の遺言執行者にすべての執行を委ねると負担になりますから、複数の遺言執行者を指定しておくことことで遺言の実現がスムーズになりますね」

明智「甘いな、小林君。単に複数人を指定しただけでは、誰がどの職務を行うのかを決めなければならんだろう。話し合いがまとまらなければかえって遺言の執行が妨げられてしまう。それがひいては骨肉の争いとなり…犯行の動機となるやもしれんのだ」

小林「飛躍しているけど、まあ説得力はなくもないですね」

遺言執行者を複数指定する場合は単独で執行できるようにしておく

長岡「明智先生のおっしゃるとおり、そのような事態を防ぐためにも、遺言執行者を複数指定する場合には、誰にどの職務を行ってもらうのかを明記しておくか、それぞれに単独で職務を執行する権限を与えるのかを遺言書に明確に記載しておくべきですね」

私「とても勉強になりました。ありがとうございます」

小林「いずれにせよ、遺言書を書くときはしっかり考えて書かなくてはいけないですね」

長岡「そうだね」

明智「さ、話は終わったか? ではそろそろ私の華麗なる事件簿を話して差し上げようか」

長岡「え?」

小林「…えっと、じゃ、僕はそろそろ。先生、ごゆっくり。長岡さん、あとはよろしくお願いします」

長岡・明智「おーい、小林君!」

 

この記事を詳しく読みたい方はこちら:行政書士が解説!遺言執行者が複数いる場合、遺言の執行はどうなるのか?

 
行政書士 長岡 真也
この記事の執筆・監修者:長岡 真也(行政書士)
神奈川県行政書士会所属(第12091446号)
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