相談者:80代Jさん(女性)
実は先日、体調不良で検査してみたら癌が見つかりました。思っていたよりも進行していて、余命もあまり長くないそうです。私には娘がいて、亡き後のことで迷惑をかけないように今のうちに遺言書を作成したいと思いました。なるべく早く作成したいのと、自筆で作成したいのですが、作成方法を教えていただけないでしょうか?
この度はご相談していただきありがとうございました。そしてご自身の病状がよろしくないとのことですね。あまりにも突然のことですし、辛かったですね。
娘さんへ自筆証書遺言を遺したいとのことですが、保管方法も一緒にさっそく作成方法をご紹介いたします。
目次
自筆証書遺言とは
自筆証書遺言は、自分で遺言の全文・氏名・日付を自書し、押印するタイプの遺言書です。
自筆証書遺言の作成は簡単かつ安価で、遺言内容を秘密にできます。
しかし、検認手続きが必要で、要件不備による紛争が起こりやすいことがデメリットです。
また、紛失の恐れがあり、保管方法についても注意しなければなりません。
合わせて読みたい>>遺言書の書き方・方式・注意点を行政書士事務所の事例と共に解説!
自筆証書遺言の作成方法
自筆証書遺言の作成方法は、次の手順の通りです。
- 自筆証書遺言を作成するために必要となるもの(※紙・ペン・印鑑)を用意します。
- 遺言者が手書きで遺言の内容(※全文)を書きます。
- 作成する際には、「日付」と「氏名」を記載します。
- 遺言の内容を書いた後、「署名」と「押印」を行います。
- 作成した遺言書を確認し、問題がなければ封筒に入れ封をとじます。
- 封筒に入れ、ノリでしっかりとめる(封印する)。
- 封筒の面書きに「遺言書在中 開封厳禁」と書く。
- 封筒の裏書きに名前を書く。
- 最後に封印した箇所に4と同じ印鑑で契印をし完了です。
5~9は必ずしも必須ではありませんが、後々の偽造改ざん防止のために入れておいた方がいいいでしょう。
財産目録を添付する場合は、銀行通帳の写しや不動産登記事項証明書などを代わりに提出できます。また、パソコンで作成した財産目録も認められています。(民法968条|民法改正により平成31年1月から施行)
なお、上記の財産目録を添付する際には、遺言者が1枚ずつの書類に署名と押印をしなければなりません。
自筆証書遺言は要件を満たしていないと、無効になってしまいます。
自筆証書遺言を作成する遺言者は、正しい方式で進めていきましょう。
合わせて読みたい>>自筆証書遺言書の正しい書き方|失敗例から注意点を学ぼう!
自筆証書遺言の保管方法
自筆証書遺言を作成後、遺言者は遺言書自体を保管する必要があります。
自筆証書遺言の保管方法としては、以下の3つの保管方法が望ましいでしょう。
- 自宅で保管する
- 銀行の貸金庫を借りて保管
- 自筆証書遺言保管制度を利用する
ここでは、自筆証書遺言の保管方法を項目ごとにご紹介します。
自宅で保管する
自筆証書遺言を作成後、遺言者は遺言書を自宅で保管することが可能です。
例えば、遺言書を自宅で保管する場合、金庫や机の引き出しなどを利用します。
ただし、遺言者が亡くなった後、相続人等が遺言書を発見できるように対策を取らなければなりません。遺言書の保管場所によっては、見つけてもらえないこともあります。
銀行の貸金庫を借りて保管
銀行の貸金庫を借りて保管する方法もあります。
相続手続きの過程で銀行口座の解約払い戻しをすることが多いので、その際に銀行の貸金庫に遺言書が保管されていること知るケースも多いです。
とはいえ、遺言者は相続人に対し、遺言書の存在と保管場所を伝えておくと相続等の手続きを進めやすくなると思います。
自筆証書遺言保管制度を利用する
3つ目の方法は、自筆証書遺言書保管制度を利用する方法です。
自筆証書遺言書保管制度は、法務局にて自筆証書遺言を保管する制度です。遺言者は制度を利用することで、作成した遺言書を安全に保管してもらえます。
例えば、自筆証書遺言書保管制度を利用した場合、遺言書の原本と画像データを長期間保管(※1)してもらうことが可能です。
(※1)遺言書の原本が50年間、画像データが150年間。ただし、遺言者が亡くなった後からの期間
また、相続人が遺言書を閲覧したり、遺言書情報証明書を交付してもらったりできます。
自筆証書遺言書保管制度については、「自筆証書遺言書保管制度には2種類の証明書が存在する!」という記事をご覧ください。
遺言書の保管場所は相続人に伝えておくと安心
相談者:80代Jさん(女性)
ありがとうございました。内容をどのように書いたら良いかも教えてくださるようで安心しました。何かあったときのために娘には遺言書の存在と保管場所は教えておこうと思います。相談して良かったです。
回答者:長岡行政書士事務所
こちらこそこの度は大切なことをお話ししていただき、誠にありがとうございました。少しでもJ様の不安が解消されたのなら、私も嬉しい気持ちです。
また不安なことがございましたら、いつでもご相談くださいね。
今回の記事では、自筆証書遺言の作成方法や2つの保管方法についてご紹介しました。
まず、自筆証書遺言を作成する大前提としては、法的に有効な遺言書を残す必要があります。
今回お話しした要件を一つ一つ進めていけば問題なくできることでしょう。
また、遺言書の保管に不安を抱えている場合は、金庫や貸金庫等を借りるか、法務局へ申請する自筆証書遺言書保管制度の活用が考えられます。
ぜひ、遺言の保管に関する不安を抱えている方は、一度長岡行政書士事務所に相談してください。