遺言執行者を指定する遺言書の書き方を行政書士が分かりやすく解説!

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遺言書の実際の書き方を学ぼう!~遺言執行者の指定がある場合編~

「遺言書を書いたら、確実にその内容は実現されるの?」」
「遺言書では遺言執行者を指定した方が良いと聞いたけれど、どう指定するの?」
「遺言執行者について、遺言書で記載するポイントを知りたい。」

 

遺言書の作成をお考えの方は、まずはご自身の財産を誰にどう相続させるのか、その内容で悩むことと思います。しかし、財産の分け方が決まり、間違いなくその内容を書いたとしても、そこで安心してしまうのはまだ早いかもしれません。

 

遺言書は、その内容を実現するために、その手続きを確実に行ってくれる人が必要だからです。

この「遺言書の内容を実現する人」のことを、「遺言執行者」といいます。

 

遺言書ではこの遺言執行者を指定しておくことが大切ですが、今回のコラムでは、遺言執行者は遺言書でどのように書いて指定するのか、書き方やポイントについて解説したいと思います。

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遺言執行者とは

相談者:横浜市西区在住 60代男性

私は、現在妻と自宅で二人暮らしをしております。子どもは息子が二人おりますが、すでに家を出て、それぞれ独立した家庭を築いております。
最近、自分に将来何かあったときのことを考え遺言書の作成を検討しておりますが、遺言執行者をどうするのか悩んでおります。遺言書の手続きは妻か長男にしてもらうことになるかと思いますが、正直、何をどう書けば良いのかわかりません。
遺言執行者を遺言書で指定する際の書き方などを教えていただけますか。

回答:長岡行政書士事務所 長岡

今回のご相談者様の事例は、遺言執行者の指定について、遺言書でどのように記載したらよいかのご相談でした。ただ、遺言の手続きを奥様か長男にしてもらうことについてもいまだ悩まれているようでしたので、
遺言執行者に誰を指定するとよいのか、という点についてもご説明させて頂きました。
結論としましては、遺言執行者は行政書士の私が引き受けることになり、遺言の作成は公正証書遺言にて作成することとなりました。
遺言で遺言執行者を指定し、その権限を記載しておくことは遺言の内容を確実に実行するうえでとても大切なことですので、この点について具体例を挙げてくわしく説明していきたいと思います。

遺言で遺言執行者を指定する場合の具体的な書き方について説明する前に、まずは遺言執行者について簡単なおさらいをしておきたいと思います。

遺言執行者は、「遺言の内容を実現」するための手続をする人のことをいいます。

遺言書があるからといって、遺言者が亡くなったら自動的に遺言の内容が実現されるわけではありません。その内容を実現するための手続をすることが必要です。

 

この手続きは遺言執行者が指定されていなくてもできますが、遺言執行者が手続きする場合に比べると、手続きに必要とされる書類が多く、受遺者の協力がなければ書類等がそろわず手続きが思うように進まない、という場合もあります。

 

また遺言執行者が指定されていなかった遺言でも、家庭裁判所に選任の申立てをして指定してもらうこともできます。
けれども申し立ては時間や労力を使いますので、できるだけ遺言書を作成するときに、遺言者自身がこの人にお願いしたい、と思う遺言執行者を指定しておくことが望ましいと言えます。

 ※遺言執行者についてのくわしい説明はこちらのコラムをご参照ください

民法改正!遺言執行者の権利義務とは?明確になった立場を行政書士が解説!

 

今回のご相談者様の事例では、遺言執行者を奥様かご長男様にしようかと悩まれていましたが、遺言執行者の指定を誰にするかも、よく検討して頂きたいポイントの一つです。

 

遺言に基づく相続手続きは、預貯金や株式、不動産の手続など多岐に渡っており、その手続き方法は煩雑なものがほとんどです。
これを妻や子どもにさせるとなると、日常生活を送りながらそれらの馴染みのない煩雑な手続きをすることになり、かなりの負担を強いることになってしまうと言えます。

 

したがって、遺言執行者を指定する場合は、我々行政書士などの専門家にしておくと、身内の方へ負担をかけずに遺言の実現を図ることができます

 

遺言執行者を指定する遺言書の書き方

それでは、ここからは遺言で遺言執行者を指定する場合の具体的な書き方を説明していきたいと思います。
書き方のくわしいポイントについては後述しますので、まずは遺言の例を見てみましょう。

 遺言書

 

第1条 遺言者は、所有する下記不動産を含め一切の不動産を妻A(生年月日)に相続させる。

土地〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

所在、地番、地目、地積、持ち分を記載(ここでは省略)

建物〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

      所在、家屋番号、種類 構造、床面積、持ち分を記載(ここでは省略)

 

 

第2条 遺言者は、所有する下記の預貯金及び株式等を含め一切の金融資産を第3条記載の遺言執行者において換価換金処分した上(←ポイント②)、所要の手数料及び公租公課等の必要費を支弁した後の残額金につき、長女Bに相続させる。

①甲銀行松支店に有する一切の債権〇〇〇〇〇〇

②乙銀行竹支店に有する一切の債権〇〇〇〇〇〇

 

第3条 本遺言の執行者として、下記の者を指定する。(←ポイント①

職業 行政書士〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

氏名 〇〇〇(生年月日)〇〇〇〇〇〇〇〇〇

2 執行者は、他の相続人及び受遺者の同意を必要とせず、遺言者の権利に係る不動産及びその権利に属する預貯金等の名義変更、解約、払戻、貸金庫の開扉、点検、在中品の受領及び貸金庫契約の解約など、この遺言の執行に必要な一切の権限を行使することができ←ポイント②)、葬祭費及び納骨に係る費用等を遺産の中から支払うものとする。

3 執行者は、代理人を選任してこの遺言を執行させることができる。(←ポイント③

4 遺言執行者への報酬を〇〇〇行政書士事務所の報酬規程により、本件遺産の中から支払うものとする。(←ポイント④

遺言執行者を指定する遺言書のポイントは、次の4つです。

  • 遺言執行者の指定をする|ポイント①
  • 遺言執行者の権限を記載する|ポイント②
  • 執行者の代理人選任について記載する|ポイント③
  • 執行者への報酬について記載する|ポイント➃

遺言執行者の指定をする|ポイント①

遺言執行者の指定は、遺言執行者に指定する者の名前を明記します。専門家にお願いする場合は事前に依頼をしてから遺言書の作成になりますが、身内や知り合いを指定する場合も、事前にその旨を伝え、了承をとっておくことが大切です。

 

遺言者が亡くなった後、遺言を見て初めて自分が遺言執行者であることを知った、というのではその者の負担が大きく、引き受けてもらえない場合もありますので(※1)、事前に説明し、納得してもらったうえで指定するようにしましょう。

(※1)遺言執行者に指定されたからと言って、必ず引き受けなければいけないわけではありません。引き受けないことも可能です。

遺言執行者の権限を記載する|ポイント②

遺言執行者の権限は、法律で明確に定められています。

 

(民法第1012条第1項)
遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。

 

法律で認められているのですから、本来的には、遺言書に権限を具体的に記載しなくても手続きは可能であるとも考えらえます。
しかし、各手続きをお願いする先の人は、法律の専門家ではありません。

 

遺言執行者がその遺言内容の実現にあたり、どのような権限を有するのか、遺言書に明記しておくことで、手続き先の担当者も、その手続きを遺言執行が行って良いことについて明確に確認できますので、手続きがよりスムーズに進みます。

 

相続手続きは煩雑で時間のかかるものが多いため、確実かつスムーズに運ぶことを意識しておくことも大切です。

 

例えば上記の具体例では預貯金を相続させる内容になっていますが、預貯金の相続手続きについて、遺言執行者に具体的にどのような権限があるかを明記しておくことで、その銀行の口座解約や振込手続きができることが明確に示されますので、手続き際の銀行側としても確認が容易であり、手続きは問題なくスムーズに運びます。

 

また、具体的な権限を示しつつも、「一切の権利」と記載しておくこともポイントとなります。

 

なぜなら、手続きの過程で、例えば予期しない資産(預貯金だけだと思ったら株式も保有していた、貸金庫に金を保有していた)が発見されたという場合も、遺言執行者がそれらについて手続きをして良いことが示されていることになりますので、より確実に手続きが可能となります。

合わせて読みたい>>遺言執行者の権限を遺言書に明記する書き方|行政書士が分かりやすく解説!

遺言執行者の権限を遺言書に明記する書き方|行政書士が分かりやすく解説!

執行者の代理人選任について記載|ポイント③

遺言執行者は、遺言執行者の責任において、さらに代理人を選任することができます。これを「復任権」といいます。

 

(民法第1016条第1項)
遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

 

遺言執行者が代理人の選任ができることを遺言書に明記しておくことで、例えば身内の方が遺言執行者に指定されていたけれども手続きが難しいため、行政書士に代理人として手続してもらう、ということも問題なくでき、スムーズな手続きを図ることができます。

また代理人の選任権を明記しておけば、指定された遺言執行者が手続きを分担することができますので、迅速・確実な手続きのためには記載しておくことをお勧めいたします。

執行者への報酬について記載|ポイント➃

遺言執行者に報酬を支払う場合、このように報酬についても記載しておきます。
報酬の記載がなくても遺言執行者は手続きを行いますが、どのように支払うのか明記しておくことで、残された人家族の方がこの点についてどうすればよいのか迷うことなく、遺言執行者に手続きを進めてもらうことができます。

遺言執行に必要な行為ができることを明記しておく

今回は、実際の遺言書例をもとに、遺言執行者の指定の方法や権限の記載方法を説明いたしました。

遺言書を書くということは、「自分が亡くなったあとこうなってほしい」という思いがあってのことですから、より確実に実現されるよう、遺言執行者の指定とその権限を遺言書に明記しておくことが大切なポイントとなります。

遺言書作成や遺言執行について、長岡行政書士事務所では多くのご依頼やご相談を頂いております。

遺言執行者の指定を含め、遺言書作成でお悩みや分からないことがある方は、ぜひ一度ご相談にいらして下さい。本日もお読みいただき、ありがとうございました。

 
行政書士 長岡 真也
この記事の執筆・監修者:長岡 真也(行政書士)
神奈川県行政書士会所属(第12091446号)
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