遺留分を侵害した遺言も有効!兄弟姉妹が相続で揉めやすい遺留分請求事例を解説

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【吾輩家族の遺言事情3】遺留分を侵害していたら遺言は無効になる?

遺産相続にまつわる法律では、遺留分という制度が設けられています。この遺留分という制度は複雑なので、いまいち理解しきれていない方も多いのではないでしょうか。また、遺留分を侵害している遺言書は無効だと思っている方もいるかもしれません。

この記事では、そんな分かりづらい遺留分について、横浜市の長岡行政書士事務所を舞台にした物語形式で解説します。

 

吾輩は猫である。

名前はまだな…最近はお向かいの素敵なご婦人に、タマにゃんなどと「にゃん付け」で呼ばれ始めたのだが、一介の男児に「にゃん」とはいかがなものか…などと思うことは特にない。

悪い気は…しないのだ。にゃんにゃん。

 

ところで、最近、わが主が横浜市の行政書士と仲良くなり、ことあるごとに行政書士事務所に行っている。

吾輩も付き合わされることしきりであるが、事務所の主である長岡とやらの話を聞くのは、案外面白い。

 

わが主などはすっかり感化されて、行政書士試験を受けるなどと言い出している。学生時代に毎年赤点ギリギリで生きながらえたと聞いたことがあるだけに、どれだけできることやら。

というわけで、今日も長岡とやらのところにやってきたのだが、なんとお向かいの素敵なご婦人も同伴である。

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一方の相続人(兄弟姉妹)に不利な遺言書も法的には有効

聞けば、遺言でちと悩んでおるそうな。さきほどから三人雁首そろえて眉間にしわを寄せている。

長岡「なるほど…ご相談の状況を整理すると、こういうことですね」

遺産相続の概要

  • ご婦人は結婚後、京都の実家を出て、神奈川県で夫と暮らす
  • ご婦人の母親はすでに他界しており、実家にはご婦人の兄夫婦と高齢の父親が同居していた
  • 兄弟姉妹は兄と自分の2人
  • 父親の世話は兄夫婦がしていた
  • 先日父親が亡くなり、生前作成していた公正証書遺言があることが分かった
  • 公正証書遺言では、自宅不動産を含め、残りの預貯金もすべて兄に相続させるとあった

 

ご婦人「兄夫婦は確かに両親の世話をしてくれはりましたが…母も他界していましたから、私自身も、経済的援助を親から受けることなく頑張ってきたんです」

わが主「せやから言うて、実の娘に何も残さへんやなんて! どないやねん、怒るでしかし!」

いや、わが主は神奈川出身のはずだが? しかも京都のなまりならともかく、ツッコミが横山やすしっぽいのはなぜだ?

ご婦人「夫もそれは納得できないと不審に思っていますし、何よりショックが強くって…」

ふむ。吾輩は気がついたら、薄暗い縁側の下でひとりいたから、親の顔も何も知らぬが、親とともに過ごした思い出があるならば、気がふさがるものかもしれぬ。

わが主「長岡先生! 一方の相続人に不利な遺言書は無効ですよね! 私、勉強したからわかるんです」

長岡「いや…一方の相続人に不利な遺言書だとしても、法的に有効ではあります」

自信満々から玉砕とは目も当てられぬ。いったい何を勉強してきたのだ、わが主は?

長岡「遺言の内容は遺言者の意思で決定できますから、遺言の形式や要件を満たしているならば、お兄様に全財産を譲るとした遺言も有効になるんです」

わが主「要件を満たしていない可能性はあるの? 公正証書遺言でも、ほら、公証人の方が老眼で間違えちゃったとか」

 

さすがにそれはないだろう。法律の知識を学んできた公証人をなんだと思っているのだ。ほらみろ、長岡とやらがドン引きしているではないか。

一部の相続人に不利な遺言書では遺留分が問題となる

長岡「…もっとも、今回ポイントになるのは遺留分ですね。この遺言は遺留分を無視していると言えます」

ご婦人「その遺留分というのは、どんなものなんでしょうか?」

わが主「それはね…」

長岡「…あ、そこは私から(汗) 遺留分というのは、一定の相続人が最低限の財産を譲り受ける権利だとお考え下さい」

ご婦人「一定の相続人?」

長岡「配偶者、子、直系尊属(父母・祖父母等)になります。兄弟姉妹は含みません。今回は、子の関係になりますので、遺留分の範囲内です。相続分は、こちらをご覧ください」

《遺留分の割合》

  • 配偶者・子は法定相続分の1/2
  • 直系尊属は1/3

《法定相続分》

  • 相続人が配偶者と子の場合:財産の1/2ずつ
  • 相続人が配偶者と直系尊属の場合:配偶者は財産の2/3、直系尊属は1/3
  • 相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合:配偶者は財産の3/4、兄弟姉妹は1/4

遺言書と遺留分侵害請求権との関係

ここからは、遺言書と遺留分侵害請求権との関係について解説します。ポイントは次の3点です。

  • 遺留分を侵害する遺言書も無効ではない
  • 遺留分の請求判断は遺留分権利者に任される
  • 遺留分請求ではお金を取り戻す権利を持っていることになる

遺留分を侵害する遺言書も無効ではない

わが主「よかったわねえ! 私の言ったとおりでしょ! こんな遺留分を侵害する遺言、無効よ無効!」

長岡「実はそうではないんです。遺留分を侵害するからといって、遺言が無効になるわけではないんですよ」

長岡とやら、もうわが主に引導を渡してくれたまえ。はりきってテキストを買っても、「はじめに」を読んで「あ~、疲れた」などと言ってドラマを見始めるわが主に、つける薬はない。

遺留分の請求判断は遺留分権利者に任される

ご婦人「何やらようわかりませんが、財産を受け取る権利があるのに、私を指名していない遺言が有効になるやなんて、矛盾しているように思えるんです」

長岡「お気持ちはわかります。法律では、「遺留分が侵害される遺言書が作られること」を想定したうえで、「遺留分侵害請求権」について規定しているので、矛盾しているように見えるんですが、そうではないんです」

 

ふむ。つまり、遺留分を侵害したからといって、遺言書自体が無効とはならない。ならば、遺言書ありきで、遺留分を侵害された相続人が遺留分を請求できるという権利が外部から加わるというわけだな。わかったか、わが主よ?

 

わが主「……はへ?」

だめだこりゃ。

長岡「自分の遺留分を、実際に請求するかしないかの判断は、その遺留分権利者に任されています。遺留分は必ずしも請求されるとは限りませんから、請求されなければ遺言書通りの内容で実現されるんです」

遺留分請求ではお金を取り戻す権利を持っていることになる

長岡「話を続けますが、遺留分侵害額請求をするとき、その遺言書との関係はどのようになるのでしょうか」

わが主「…泥沼の関係?」

 

馬鹿者。わが主に六法全書は、猫に小判だな。吾輩のほうがよほど活用できそうだ。

 

長岡「遺言に対して、お金を取り戻す権利を持っているという関係性です。ですから、例えば今回の場合、もし遺留分100万円が侵害されていたら、お兄様に対して100万円の支払いを請求できるわけなんですね」

ご婦人「それが法律で決まっているということなんですの?」

長岡「はい。今回のケースでは、法定相続はお兄様とご相談者様とでそれぞれ1/2ずつですね?」

ご婦人「ええ、そうです」

 

長岡「であれば、遺留分は1/2×1/2となることが法律で決まっていますので、遺留分として相続財産の1/4が請求できるんです」

ご婦人「なるほど。兄の相続財産は400万円ですから、私が100万円を兄に請求することになるのね」

長岡「その通りです。遺言それ自体は有効ですので、財産は一度お兄様が相続し、お兄様が相続した分に対して請求をするわけです」

 

なかなかよくできた仕組みではないか。もっとも猫の世界であれば、引っかき合って勝利したほうが総取りというのがはよくある話なのだが。

 

わが主「これで一件落着ね!」

遺留分侵害請求権の時効

長岡「安心しきる前に、きちんと請求を出すことが大事ですよ。遺留分侵害請求権には時効があり、それを超えたら請求できなくなるんです」

相続開始と遺留分侵害を知ってから1年

被相続人が死亡した事実と遺留分を侵害する遺言書を知ったら、そのときから1年以内に遺留分侵害請求をしなければならない。

相続開始から10年

相続が開始されたことや、遺留分を侵害する遺言の存在を知らなかったとしても、相続開始から10年が経過すると、遺留分侵害請求権は消滅する。

遺言作成時は遺留分も配慮すべき

長岡「もっとも、一番いいのは、争いの種を作らないことなんです。相続人が遺言内容に納得がいかず、遺留分侵害請求権を行使するということは、財産を譲り受けた相続人との間でトラブルになる可能性もありますよね。これこそが」

わが主「泥沼の関係!」

 

何故そんなにしてやったりの顔なのだ? ドラマの見過ぎではないか。平和が一番だと、誰かわが主に教えてやってくれ。

 

長岡「ですから遺言を書くときに、トラブルにならないよう遺留分についても配慮していくのが一番ですね。遺言書の付言事項で理由を説明したり、あらかじめ遺留分相当の割合を遺言に入れておくなどできることはありますからね」

 

さよう。財産を受け取る権利のある相続人に配慮をすることこそが、家族を守るということにつながる。それにしても心配なのはわが主だ。長岡とやら、すまぬが、しっかり教えてやってくれたまえ。吾輩の猫缶を少し分けてやるから、な?

横浜市の長岡行政書士事務所では、遺留分に配慮した遺言作成の相談にも対応しています。

特に相続人に兄弟・姉妹がいる場合(被相続人に子どもが複数人いる場合) は、この記事で紹介したような兄弟間の遺留分請求が発生する可能性もあります。

遺言内容に不安のある方は、ぜひ一度長岡行政書士事務所へご相談ください。

 
行政書士 長岡 真也
この記事の執筆・監修者:長岡 真也(行政書士)
神奈川県行政書士会所属(第12091446号)
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