行政書士が解説!法改正で新設された配偶者居住権とはなにか

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法改正で新設された配偶者居住権について解説!

 

「両親が二人で暮らしている実家、どちらか一方が亡くなった自宅はどうなるの?」
「夫と二人暮らしの老後。夫にもしものことがあっても、自宅にこのまま住み続けたい。」
「遺言で妻に自宅に住み続けられるようにしたい。」

 

長年暮らして住み慣れた自宅、特段の事情がなければ、そこに住み続けることを考えている方も多いと思います。

 

持ち家の場合、自宅不動産の名義が夫婦のどちらか、あるいは共有名義になっていることが多いかと思いますが、名義人である配偶者が亡くなったとき、遺された配偶者はその不動産に住み続けることができるのでしょうか。

 

今まで長年「住んでいた家」がどうなるのかは、遺された家族が将来日常生活を送っていくうえでとても大きな問題です。

 

今回は、この「名義人が亡くなった後の自宅不動産に配偶者が住むこと」について解説していきたいと思います。

 

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配偶者の死亡と自宅に住み続けるということ

長岡:「こんにちは。長岡行政書士事務所の長岡です。」

 

Aさん:「こんにちは!今日もよろしくお願いいたします。」

 

長岡:「今回は、相続と“配偶者居住権”についてお話したいと思っています。」

 

Aさん:「配偶者居住権ですか?初めて聞きました。」

 

長岡:「後でくわしく説明しますが、簡単に言うと、例えば夫が亡くなった後、夫名義の自宅に妻が住み続けることができる権利のことです。」

 

Aさん:「え、すみません、夫が亡くなった後は、妻は当たり前のように自宅に住み続けることができるものだと思っていました。おそらく、私の両親もそう思っています。」

 

長岡:「普段当たり前のように夫婦で生活していますから、そう感じてしまうかもしれませんね。」

 

長岡:「けれども夫名義の自宅ということは、その自宅は夫に所有権がありますから、何もしなければその人が亡くなったときに相続財産となり、他の財産と同様、相続人の間で遺産分割の対象となります。」

 

Aさん:「では、遺産分割によって自宅には住み続けることができなくなってしまう、ということですか?」

 

長岡:「話し合いでまとまらなければ、そうなります。しかしそれでは、遺された妻が生活に困る場合があります。そのために、配偶者居住権とよばれる権利が一定の条件のもと、認められているのです。」

 

Aさん:「そうなのですね。住み続けることができると聞いて安心しました。」

 

長岡:「では、今回はこの“配偶者居住権”についてくわしく説明していきたいと思います。」

 

Aさん:「はい!よろしくお願いします。」

法改正と配偶者居住権

長岡:「実は配偶者居住権は、2020年4月1日から施行された新しい制度なのです。」

 

Aさん:「最近ですね。それではそれまではどうなっていたのですか?」

 

長岡:「ではまず、配偶者居住権が新設されるより前、どうだったかを説明しましょう。具体例を出してみると分かりやすいかと思いますので、具体的な数字などを挙げてお話しますね。」

 

制度創設の背景~法改正前の考え方~

具体例

  • 夫名義の自宅3000万円
  • 預貯金1000万円
  • 夫が亡くなり、相続人は妻と娘一人

この場合、相続財産は「自宅3000万円+預貯金1000万円=4000万円」になります。

 

配偶者居住権が新設される前は、妻と娘の2人で、4000万円を分けることになります。
妻と子どもの法定相続分は2分の1ずつです。

 

したがって、

  • 妻=2000万円
  • 娘=2000万円

の遺産を受け取ることになります。

 

このとき、妻が自宅に住み続けるにはどうするのかというと、自宅は3000万円で、相続分は2000万円です。
つまり、相続の持ち分を超えている1000万円を娘に支払う必要があるのです。

 

この1000万円の支払いについて、妻名義の預貯金が足りない場合は、結局自宅を売却しなければならないことが考えられます。
高齢の妻が住み慣れた自宅を売却し、新しい住まいを見つけることは大変なことです。
また預貯金から支払った場合には、それだけ老後の生活費が減少してしまいます。

 

このとき例えば夫の預貯金が3000万円あった場合、妻は自宅3000万円を相続し、娘は預貯金3000万円を相続すれば2分の1ずつの相続となり、妻は娘に金銭を支払う必要はありません。

 

しかしどちらの場合も、自宅は確保できたとしても金銭の相続はありませんから、老後の生活費に充てられる資金がなく、生活に困ってしまうことが考えられます。

 

このように、夫婦の一方が亡くなった後、残された配偶者が住み慣れた住居で生活を続けると共に、老後の生活資金として預貯金等の資産も確保する必要があることから、遺言や遺産分割の選択肢として、配偶者が、無償で住み慣れた住居に居住する権利を取得できるようになったのです。

 

配偶者居住権とは

配偶者居住権は、前述のように、配偶者が無償で自宅に居住する権利を言いますが、もう少しくわしくみてみましょう。

 

通常、不動産には「所有権」という権利があります。
所有権は、その不動産を「使う(=住む))」「売却などの処分をする」権限を有しますが、
配偶者居住権は、このうち「使う(住む)」権利のみを配偶者に相続させたものです。

 

したがって、配偶者以外のその他の相続人は、住む権利以外の所有権を相続することになります。

 

配偶者居住権の内容

前述した例をあてはめてみましょう。

 

自宅不動産3000万円を、配偶者居住権と所有権の2つに分離させます。
このとき、配偶者居住権が1500万円で所有権が1500万円であったとします。

 

■自宅不動産3000万円について

  • 妻は配偶者居住権1500万円を相続
  • 娘は所有権1500万円を相続

■預貯金1000万円について

  • 妻は500万円を相続
  • 娘は500万円を相続

 

■配偶者居住権の存続期間は終身のため妻が死亡するまで存続し、妻が亡くなった時に消滅(※1)します。
配偶者居住権の消滅により、娘は配偶者所有権のついていない、もともとの不動産の所有権を無税で取得することができます(※2)。

したがって、妻は自宅に住み続けることができると同時に、預貯金500万円を相続し、老後の生活資金も手にすることができることになります。

 

(※1)配偶者居住権の存続期間は、相続人間の合意や遺言で自由に定められます。
    特に存続期間を定めていない場合、自動的に「残された配偶者の終身の間」となります。
    (民法1030条)

 

(※2)存続期間が満了した場合・存続期間中に配偶者が死亡した場合、配偶者居住権は消滅します。
配偶者居住権は「配偶者が使う(=住む)権利」であり、期間満了や配偶者が死亡した場合、配偶者が使う必要はなくなるため権利は消滅し、配偶者居住権に財産的価値はなくなります。

消滅した権利に相続税はかかりませんので、不動産の所有権は、配偶者居住権のないもともとの所有権に戻ることになります。

 

配偶者居住権の成立要件と登記

Aさん:「法律の新設前と随分違ってきますね。」

 

長岡:「そうですね。数字で見ると、新設前よりも配偶者の生活が守られていることがよくわかりますね。」

 

Aさん:「では、この配偶者居住権が認められるのはどのような場合なのですか?」

 

長岡:「では、その点について説明しましょう。」

 

配偶者居住権の要件(民法1028条)

配偶者居住権が認められるには、以下の条件を満たしていることが必要です。

 

①相続開始時に配偶者が自宅に住んでいたこと
自宅の所有者であった一方の配偶者が亡くなったときに、その自宅に住んでいたことが必要です。
別居をしていた夫婦の間では認められません。

 

②相続開始時に被相続人が配偶者以外の者と建物を共有していないこと
配偶者間での共有の場合は認められますが、配偶者以外の者と共有していた場合は認められません。

 

③以下のいずれかで設定されたこと(自動的に付与されるわけではありません。)

  • 遺産分割により配偶者居住権を取得するものとされた。
  • 配偶者居住権が遺言により遺贈の目的とされた。
  • 生前、配偶者居住権について死因贈与契約を結んだ。

→相続人同士で話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所による調停・審判でも設定される場合がある。
(民法1029条)

 

配偶者居住権と登記(民法1031条)

遺産分割協議などで配偶者居住権の相続が決まったとしても、登記をしなければ効力を発揮しません。
「効力を発揮しない」とは、登記しないままでいた場合、新しい所有者である子どもが勝手に売却してしまう可能性があるということです。
配偶者居住権の登記は、建物所有者と共同で申請手続きをする必要があります。

 

配偶者居住権の注意点

Aさん:「ここまで見ると、配偶者居住権はいいことずくめなのですが・・・。」

 

長岡:「そう見えるかもしれませんが、メリットばかりではないことに注意が必要です。」

 

Aさん:「どのような点に気を付ける必要があるのですか?」

 

長岡:「では、最後に配偶者居住権の注意点について説明したいと思います。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。」

 

配偶者居住権5つの注意ポイント

注意点①:配偶者は注意をはらって居住建物の使用をする。(民法1038条)
配偶者は、居住建物について、従来通りの使用方法を守る必要があります。また、しっかりと注意を払って建物を使用しなければなりません。

 

注意点②:建物の修繕はできるが増改築は勝手にしてはいけない。(民法1032条、1033条、1034条)
居住建物の修繕は、配偶者が自分の負担で行うこととされています。また、配偶者が相当の期間内に必要な修繕をしない場合は、建物の所有者が自ら修繕することができます。

 

しかし、建物の改築や増築については、建物の所有者の承諾がなければできません。

バリヤフリーのために必要な改築等であっても、所有者に承諾をとる必要がありますので、所有者との関係が良好な場合は良いですが、関係が悪くなっている場合は、思うように進められない場合がありますので、注意が必要です。

 

注意点③:配偶者所有権の譲渡はできない。(民法1032条、1036条)
配偶者居住権は、「住む権利」ですから、自宅を売却することはできません。また、第三者に配偶者居住権を譲渡することも認められていません。

 

例えば、自宅を売って老人ホーム等の施設に入所したくなっても、それは認められません。
これは、配偶者居住権は配偶者が自宅に住むことを予定して作られた制度であり、自宅を売ることは予定されていないためです。

ただし、所有者の承諾を得て第三者に自宅を賃貸することは可能ですので、賃料収入を得て介護施設の資金を確保することはできます。

この場合も所有者の承諾は必要となりますので、所有者との良好な関係が前提となります。

 

注意点④:固定資産税の支払い
デメリットのような内容ではありませんが、固定資産税の問題もあります。
固定資産税は建物の所有者に課されるため、納税通知書は所有者に届きます。

しかし所有者から実際に住んでいる配偶者に請求することが認められていますので、請求された配偶者は固定資産税を払う必要があります。

 

注意点⑤:配偶者居住権の生前放棄と税金
配偶者が生前に配偶者居住権を「いらない」と放棄した場合、税金が発生することに注意が必要です。

配偶者が配偶者居住権を放棄し、所有者がその対価を支払って完全な所有権を手に入れた場合、

所有者に贈与税はかかりませんが、配偶者が受け取った金額が譲渡所得の収入として課税対処となります。

また、所有者が対価を支払わなかった場合、所有者に贈与税が課税される点にも注意が必要です。

 

配偶者居住権は自身のライフプランと合わせて検討する

配偶者居住権は、長年住み慣れた自宅に居住し続けられるという点では、残された配偶者にとってメリットが大きいですが、老後、どのように生活スタイルが変化するかがわからない時点で安易に設定してしまうと、売却などの自由がない点でかえって不便になってしまうことも考えられます。

 

配偶者居住権を遺産分割で利用しようと考えている場合や、遺言で配偶者に遺贈しようと考えている場合には、ぜひ一度専門家に相談することをおすすめいたします。

 
行政書士 長岡 真也
この記事の執筆・監修者:長岡 真也(行政書士)
神奈川県行政書士会所属(第12091446号)
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