遺言書の修正・訂正ルールとは?部分的な変更と全部撤回について行政書士が解説!

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遺言の部分的な変更と全部撤回について解説!

 

「遺言は、一度書いたらそれきり内容を変えることはできないのか。」
「遺言の内容で、一部変えたい箇所がある。」
「遺言全体を書きなおしたい。」

 

遺言はご自身の最後の意思表示となりますから、遺言を作成する際には、ご家族の状況やご自身との関係、そのほか様々なことを熟考して、最善な内容は何かと思い悩みながら書くことが多いと思われます。

 

しかし、遺言の内容が実際に実現されるのは自分の亡くなったときですので、5年後、10年後と先の場合も多く、その間に状況や考えが変わり、最善と思われた内容でも変える必要が出てくる可能性があります。

 

また、一度書いた遺言の内容を変えたり、なかったことにしたりしたくなっても、それがもしできないとしたら、遺言を書くのをためらってしまう方もいらっしゃるかもしれません。

 

今回は、一度書いた遺言の内容を変えたくなった場合について、遺言を修正・訂正するルールや注意点について解説していきたいと思います。修正・訂正方法を間違えないためにも、ぜひ参考にしてください。

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遺言の内容変更・撤回は自由

まず前提として、遺言の内容変更・撤回は自由に行えます。

 

長岡:「こんにちは。横浜市の長岡行政書士事務所の長岡です。」

 

Aさん:「こんにちは。今回もよろしくお願いします!」

 

長岡:「今回は、遺言の内容を一部変えたり、全部を撤回したりすることについて解説したいと思います。」

 

Aさん:「遺言の内容を変えるのですか?そのようなことが可能なのですか?」

 

長岡:「はい。遺言は自由に書くことができますので、もちろん内容を変えることも自由にできます。」

 

Aさん:「全部を撤回、ということは、なかったことにすることもできるのですか?」

 

長岡:「もちろんできます。」

 

Aさん:「でも、遺言を修正・訂正・撤回できるのか、手続きのイメージがまったく思い浮かびません。」

 

長岡:「そうですね。ではこれから、遺言の内容を部分的に変えたり、全部を撤回する場合についてくわしく説明してきましょう。」

 

Aさん:「はい!よろしくお願いします。」

遺言の撤回は遺言で行う

長岡:「遺言の変更や撤回については、民法で明確な規定があります。」

 

Aさん:「調べてみました!民法1022条ですね。」

長岡:「その通りです。民法1022条では次のように規定されています。」

 

(民法1022条)
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部または一部を撤回することができる。

この条文によると、遺言の撤回は「遺言の方式」に従って行うことができるとされており、
つまりそれは、「遺言の撤回」は「遺言で」行うことができる、ということです。

このとき、遺言の方式までは具体的に示されていませんので、例えば公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回することも可能で、その逆もまた可能です。

 

Aさん:「遺言の一部撤回や全部撤回は遺言ですることができるのですね。」

長岡:「そうですね。この規定のほかに、撤回したとみなされる行為について定められた条文もありますので、そちらも見てみましょう。」

 

(民法1023条)
1項:前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2項:前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

 

1項について

後から作成した遺言が前に作成した遺言の内容と抵触する(=矛盾する)場合、前に作成した遺言はその部分について撤回されたこととなり、新しい遺言が有効になると定められています。

2項について

生前に遺言と抵触する法律行為がなされた場合には、その部分についての遺言が撤回され、法律行為が有効となることが定められています。

 

Aさん:「あえて遺言で変更することを書かなくても、内容が触れる内容の遺言を新しく作れば、そちらが優先されることになるのですね。」

長岡:「そうです。内容が触れる法律行為をした場合もその部分の遺言は撤回されたことになります。」

前遺言書と新遺言書の内容が抵触する具体例としては、次のようなケースが考えられます。

 

・例:遺言書に「自宅不動産を長男に相続させる」と書いてあったが、遺言者が生前第三者に売却した場合

「自宅不動産を長男に相続させる」という遺言の内容と、「自宅不動産を第三者に売却した」という行為が抵触します。

この場合、自宅不動産に関する遺言は、『売却』という行為によって撤回されたものとみなされます。

遺言の変更・訂正・加筆(加除)にはルールがある

遺言の一部分だけを変更・訂正・加筆(加除)することについても、厳格にルールが定められています。

遺言書の変更・訂正・加筆(加除)ルールに従わずに修正した場合、その修正内容の効力は発生しません。

遺言書自体が無効になることはありませんが、変更内容は実現できないということです。そのため、自分の遺志を反映させるためには、遺言書の修正ルールをよく知っておく必要があります。

実務的には自筆証書遺言を自宅で保管している場合、その遺言書そのものに変更を加える方法で部分変更可能です。

変更前の遺言

修正前の遺言書

遺言書のの変更・訂正・加筆(加除)ルール

  • 変更したい場所を消して、その横に訂正後の文書を記載し、印鑑を押す
  • 加筆する場合は、該当箇所に吹き出しで追記し、印鑑を押す
  • さらに欄外に、「~行目、~字削除、~字加入」と記載し、署名する

この時使用する印鑑は、遺言書の署名押印に使用した印鑑である必要があります。

変更後の遺言

修正後の遺言書

 

この方法では、訂正方法を少しでも間違えると遺言全体が無効となるので注意が必要です。自信がない場合は、新しい遺言に書きなおした方が良いと言えます。

なお、修正テープや修正液での訂正は認められていませんから注意してください。

自筆証書遺言を部分的的に変更する方法は3種類

前述のように、遺言は一度作成しても、部分的に内容をを変更したり全部を撤回することができます。

遺言には自分自身で作成する自筆証書遺言と、公証人に作成を依頼する公正証書遺言がありますが、それぞれで変更の仕方が少し異なりますので、まずは自筆証書遺言を部分的に変更する場合について説明をします。

自筆証書遺言は自分自身で全文・日付・氏名を書いて押印し、保管している遺言です。

合わせて読みたい>>自筆証書遺言書の正しい書き方|失敗例から注意点を学ぼう! 

自筆証書遺言書の正しい書き方|失敗例から注意点を学ぼう!

なお、自筆証書遺言について、2020年7月10より法務局での「遺言書保管制度」が始まり、自身で保管するほか、法務局で保管をすることも可能となっています。

自筆証書遺言保管制度についてはこちら(参照URL:自筆証書遺言書保管制度 (moj.go.jp)

自筆証書遺言については、保管制度を使っていないのであれば手元に遺言書原本がありますから、次の3通りの方法で部分変更することが可能です。

  1. 変更したい部分を、直接訂正する。(民法968条3項)
  2. 以前作成した遺言書の一部を取り消す旨を記載した遺言書を作成する。
  3. 新たに遺言書を作成する。

それぞれの変更方法について詳しく解説します。

変更したい部分を直接訂正する(民法968条3項)

民法968条3項では、前述した自筆証書遺言の直接的な修正方法が定められています。

記事前半で紹介したとおり、遺言者が訂正する場所を指示し、さらに訂正したことを記載・署名し、さらに訂正箇所に押印するとされています。

  • 変更したい場所を消して、その横に訂正後の文書を記載し、印鑑を押す
  • 加筆する場合は、該当箇所に吹き出しで追記し、印鑑を押す
  • さらに欄外に、「~行目、~字削除、~字加入」と記載し、署名する

修正後の遺言書

変更したい部分を直接訂正する方法は決まりが多く、抜け漏れが発生しやすいため、実務上はおすすめされません。

以前作成した遺言書の一部を取り消す旨を記載した遺言書を作成する

「以前作成した遺言書の一部」を取り消す旨を記載した遺言書を作成することでも、遺言内容を意図通りに修正できます。

たとえば

「令和△年△月△日作成の遺言の□行〇〇〇〇の文章は取り消す」

という内容の遺言書を新たに作成すれば、その部分は取り消されます。

この方法は、変更したい部分を直接訂正する方法よりはミスが発生しないでしょう。

新たに遺言書を作成する

一部を書き換えた内容の遺言書を新たに作成することによって、結果として依然作った遺言書の一部を取消す方法です。

遺言は新しい日付のものが優先されますから、前の遺言と抵触する遺言を作成することで、その部分について新しい遺言が優先され、部分的な変更となります。

(例)
前の遺言:「自宅不動産を長男に相続させる」
新しい遺言:「自宅不動産を次男に相続させる」

 

自宅不動産の処分について抵触しています。

このような場合、抵触する自宅不動産の相続については、新しい遺言によって前の遺言が撤回されたとみなされ、次男に相続させるという遺言が有効になります。(撤回とみなされるのは抵触する部分のみです。前の遺言全体が撤回されたとはみなされません。)

実務的には古い遺言書に直接的に撤回や変更を記載するよりも、この新たに遺言書を作成する方法が推奨されています。

 

なお、直接訂正を加えずに新たに遺言書を作成する場合は、自筆証書遺言ではなく、公正証書遺言で行うことも可能です。

つまり、一度自筆証書遺言を作ったものの、新たに公正証書遺言を作成することで、その公正証書遺言の内容が有効とされます。

この場合、公正証書遺言作成の手続きや証人2人と公証役場に支払う手数料が必要となりますので、この点も含めて検討すると良いでしょう。

合わせて読みたい>>公正証書遺言の作成費用はどのくらい?行政書士が具体例を解説!

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横浜市の長岡行政書士事務所では、公正証書遺言の作成についても相談にのっています。

公正証書遺言の部分的変更

では、公正証書遺言の内容を部分的に変更する場合はどうでしょうか。

公正証書遺言は、自筆証書遺言と違い、原本は公証役場で保管されています。

遺言者自身が持つのは公正証書遺言の「正本」と「謄本」であり「原本」ではありませんので、遺言書自体に直接訂正を加え、変更をすることはできません。

 

したがって公正証書遺言を部分的に変更する場合には、新たに遺言を作成することになります。

この場合の記載は、以下のようにします。

【文面例】
「令〇年〇月〇日作成令和〇年第〇〇号公正証書遺言中、第〇条の「財産〇〇を△△に相続させる」とする部分を撤回し、「財産〇〇を□□に相続させる」と改める。その余の部分は、すべて上記公正証書遺言記載の通りとする。」

 

部分的に変更する場合の記載例ですが、変更する箇所が多い場合は、一度前の遺言を全部撤回し、新たに遺言を作成しなおす方が、分かりやすく遺言執行の際に混乱を招きません。

この部分的な変更を前と同じく公正証書遺言で行う場合、新規作成の手続きと同じく証人2名の立会いも必要となります。この証人は、前回と同じ人である必要はありません。
また公証役場に支払う手数料もかかりますので、この点も念頭に作成する必要があります。

 

なお、この公正証書遺言の部分的変更については、自筆証書遺言で行うことも可能です。

つまり、一度公正証書遺言を作ったものの、後から自筆証書遺言を作成するということです。

しかし、自筆証書遺言は紛失・改ざん・隠ぺい、発見されないリスクなどがあり、要件も厳しく無効になる可能性もあるため、もしも遺言内容を一部変更したい場合には前回と同様、公正証書遺言で作成することをおすすめいたします。

自筆証書遺言の全部撤回

ここからは、自筆証書遺言を全部撤回する場合について見ていきましょう。

遺言の一部及び全部の撤回は、「遺言の方式」に従っていればよいので、部分的な変更の場合と同じく、全部撤回も自筆証書遺言と公正証書遺言どちらで行うことが可能です

自筆証書遺言の全部撤回を行いたい場合は、以下のような内容の遺言を作成します。

自筆証書遺言の全部撤回の文例(自筆証書遺言によるの場合)
「令和×年×月×日付自筆証書遺言を撤回する」ことを明記した全文と、日付・署名を自書して押印します。

また、自筆証書遺言を自宅で保管している場合は、遺言書を破棄して消滅させることで撤回することもできます。

公正証書遺言によって全部撤回する場合は、部分的な変更の場合と同様、証人及び手数料が必要になり、公証役場と所定の手続きを経て作成することになります。

公正証書遺言の全部撤回

公正証書遺言を全部撤回する場合について見てみましょう。

公正証書遺言の原本は公証人役場に保管されており、遺言者の手元にある遺言は「正本」及び「謄本」で原本ではありませんので、自筆証書遺言のように手元にある遺言を破棄したからといって撤回したことにはなりません。

公正証書遺言の全部撤回は、新しい遺言を作成して行います。

このとき、部分的な変更の場合と同様、自筆証書遺言及び公正証書遺言どちらでも行うことが可能ですが、自筆証書遺言での撤回は前述したような様々なリスクを伴いますので、もとの遺言と同様に、公正証書遺言によることをお勧めいたします。

 

また自筆証書遺言で撤回する場合は、以下のような文面の遺言を作成します。

 

公正証書遺言の全部撤回の文例(自筆証書遺言による場合)
「令和〇年〇月〇日作成 令和〇年第〇〇号公正証書遺言を撤回する。」ことを明記した全文と、日付・署名を自書して押印します。

公正証書遺言で撤回する場合には、前に作成した公正証書遺言と同様、証人2人(前回と異なる人で良い)と手数料が必要となります。

遺言書を変更・撤回する場合は行政書士など専門家へご相談ください

自筆証書遺言も公正証書遺言も、部分的に変更することや全部を撤回することは可能です。

 

自筆証書遺言は原本を直接訂正することもできますし、自筆証書遺言・公正証書遺言ともに、自筆証書遺言によって自分でその場で部分的な変更や全部の撤回をすることもできます。
しかし自筆証書遺言の場合は、形式不備による無効や、紛失・改ざんなどのリスクがあります。

 

遺言の内容を変更したり撤回したりしたい場合は、公正証書遺言によることをお勧めしますが、
どちらにしようか悩んだり、どのような手続きをしてよいかわからない、などの疑問や不安がある方は、まずは専門家に相談してみるとよいでしょう。

 

横浜市の長岡行政書士事務所は遺言作成について親切・丁寧な対応を心がけておりますので、悩みや不安がある方はぜひ一度お気軽にご相談ください。

 
行政書士 長岡 真也
この記事の執筆・監修者:長岡 真也(行政書士)
神奈川県行政書士会所属(第12091446号)
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