「未分割の不動産と言われてもピンとこないのですが・・・」
「どんな財産でも遺言の通りに分ければいいんじゃないの」
「未分割の不動産だとどのような問題が起きるのでしょうか」
・・・
相続が始まると、相続人を確定させたり遺産のリストを作成したりと諸々の手続きを通して遺産を分割することになります。
遺言がある場合は遺言の内容に沿って、遺言がない場合は法に則った法定相続か相続人全員による遺産分割協議を行い相続を進めていきます。
ところが、遺産の中には預貯金の様に分割をしやすいものばかりではありません。
特に家や土地といった不動産は物理的に分割できないためどうしてよいかわからず、ついそのままにしているうちに次の相続が始まってしまう場合があります。
このように相続発生時にきちんと分割されないままになっている不動産を未分割の不動産といいます。
本日は未分割の不動産と遺言書のかかわりについて学んでいきましょう。
目次
未分割の不動産とは?
理解を深めるため、例を用いて説明させてください。
夫A、妻B、長男C、次男Dの4人家族がいて、財産は実家である家だけ、長男Cはまだ実家に住んでいるが次男Dは家を出ているとします。
夫Aが亡くなりましたが、相続人が家族のみであり財産が家しかなかったこと、また次男Dが遠方に住んでいたため「なんとなく」そのままにしてしまいました。
実際に家には妻Bが住み続けており長男Cも同居を続けていたので表面上はなにも変わりませんが、実際は家は夫Aが亡くなった時にきちんと分割されておくべきでした。
どのように分けるかは遺産分割協議にて相続人同士の合意で決めることができますし、法律に則って分割する法定分割という方法もあります。
この例で法定分割をすると家の持分は妻Bが4分の2,長男Cが4分の1、次男Dが4分の1となりますが、遺産分割協議も法定分割も行われませんでした。
つまり、家は既に未分割の不動産という状態にあります。
未分割の不動産は遺言書に書くことができる
そんな中、妻Bは自身の体調に不安を感じ、遺言書を書くことを思いつきます。
具体的には、同居して自分の面倒を見てくれている長男Cに家をそのまま譲り、遠方で独立している次男Dには申し訳ないが何も残せない・・・と考えているのですが、そもそも完全に自分のものではない未分割の不動産を遺言書に書いても問題はないのでしょうか?
結論から言うと、遺言書に書いて相続させることは可能です。
相続は未分割の相続人たる地位も承継する
相続ではお金や不動産といった目に見える財産以外にも、遺言を遺した人(=被相続人)の権利義務も相続人に受け継ぐことになります。
本来であれば夫Aが亡くなった時に家の持分分割を妻B、長男C、次男Dで行っておくべきでしたが、遺産分割をしていない状態の相続人である妻Bの地位も遺言によって長男Cに受け継がせることができるとできます。
よって、遺言書には単に「家を長男Cに譲る」、と書くよりも、
「遺言者である妻Bは死亡時に有する家の相続人としての地位を長男Cに相続させる」と書くべきです。
未分割の遺言を書くときは遺留分に注意する
実際は遺留分といって次男Dにも最低限の遺産を相続する権利があるので、家を譲り受けた長男Cは現金で次男Dにも遺留分を払う必要が生じてくる可能性があります。
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もしくは、長男Cも家を受け継ぐことにこだわらないのであれば清算型遺贈といって家を売却しその代金を長男Cと次男Dの間で分割する方法もあります。
この場合妻Bが遺言で家を長男Cに譲ると書いてあっても、実際の相続人である長男Cと次男Dが合意すれば清算型遺贈に変えることが可能です。
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不動産を共有状態にしないことが大切
この例では簡素化するため夫A、妻B、長男C、次男Dの4人家族しかおらず財産も家だけ、と設定しましたが、実際は相続人も遺産も多岐にわたる可能性があります。
また、夫Aから妻Bまでの2回の相続を考えましたが、相続自体が何回も重なると数代前の不動産は相続人だけでも何十人にも上り、また各地に相続人が散らばって存在してしまうこともありもはや収拾がつかなくなってしまいます。
近年問題になっている所有者不明の土地は、このようにきちんと不動産を分割しないまま放置して時が過ぎてしまったために発生しています。国も対策としてまずは当該土地や建物の相続人が誰かをはっきりさせるために2024年からの相続登記の義務化を発表しました。
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遺言は書こうと思ったときに作成するのがベスト
遺言があることで相続人同士が集まってお金の話をしないといけない遺産分割協議を避けることができ、残された相続人にとって大幅な負担の軽減になります。
分割が難しい家や土地といった不動産も、遺言の中で分割の仕方を述べておくことでスムーズに相続がすすみますし、残された相続人達も遺言者の意思ならば、と納得してくれることも多くなります。
相続が発生した際に専門家に相談をすることも大切ですが、相続が始まる前から専門家に相談して、元気なうちに遺言を書いておくべきです。
長岡行政書士事務所は相続の経験が豊富にあり、御相談者様に寄り添った相続を目指しています。
ご不明な点や不安がございましたら、当事務所に是非ご相談ください。