こんにちは、横浜市の長岡行政書士事務所の代表、長岡です。遺言書作成や相続手続きのエキスパートとして活動しています。
さて、身近なモノにもキモチがあると考えると、大切にしようと思えますよね。
もしかしたら、これからあなたが書く遺言書にもキモチが宿っているかもしれません。
大切に考えてあげると、遺言書自身が、よりあなたの役にたつために、あなたにアドバイスをくれることだって、あるかもしれませんよ。
おや、ある方の遺言書が語りかけてきましたね。今回は、どんなお話を聞かせてくれるのでしょう?
この記事では、自筆証書遺言で必要になる「検認」について、必要な場面や流れ、申立権者や注意点を詳しく解説します。
スムーズに相続手続きを進めるためにも、ぜひ参考にしてください。
目次
遺言書の検認とは相続人立会いのもと遺言書の内容を確認する手続き
長岡さん、こんにちは。私は、Bさんの遺言書です。性別…じゃなくて、種別は、自筆証書遺言です。
私は、Bさんが心を込めて書いた遺言書ですから、相続人の皆様にとって幸せをもたらす存在でありたいと思っています。
そのために、検認の大切さをお伝えしていきたいんです。
「検認」と聞いてすぐにわかる方は少ないかもしれませんよね。
遺言書の検認は、遺言書の保管者や発見者が遺言者の死後に家庭裁判所へ遺言書を提出し、相続人立会いのもと遺言書の内容を確認する手続きのことです。
これが案外知られていなくて、せっかく心を込めて書いた遺言書がトラブルのもとになるなんて、こんな悲しいことってありませんよね?
いつも長岡さんが言っているように、後々トラブルの種にならないよう、ぜひ私を検認してほしいと思っているんです。
今日は、検認について、皆さまへ説明していただけませんか?
検認の目的は2つ
長岡「わかりました。お気持ちに応えるべく、しっかりとご説明しますね。そもそも検認は、遺言書の存在と内容を相続人へ知らせ、遺言書の偽造や変造を防止するための手続きです」
そんな検認には、次のような目的があります。
- 遺言書の存在と内容を相続人へ知らせる
- 遺言書の偽造や変造を防止する
遺言書の存在と内容を相続人へ知らせる
自筆証書遺言を検認することには、遺言書の存在と内容を相続人へ知らせる目的があります。
もし一部の相続人の間だけで共有されていたら、正しく遺言を執行できません。
そのようなことを防ぐために、家庭裁判所という公の機関がその遺言書の存在と内容を確認するのが検認です。
検認することで、遺言書が存在するのかしないのか、どのような内容なのかという点を確定できます。
遺言書の偽造や変造を防止する
家庭裁判所が検認を行うことにより遺言内容が確認される、つまり遺言書の偽造や変造を防止することも目的です。
遺言書を放置すると発見者が自分に有利なように内容を書き換えたり、勝手に破棄をしてしまう可能性が出てきます。
このようなトラブルを防ぐためにも、自筆証書遺言と秘密証書遺言では検認が必要になるのです。
検認するのは自筆証書遺言と秘密証書遺言
岡「検認が必要なのは、自筆証書遺言と秘密証書遺言です。公正証書遺言と、遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言の場合は検認の必要はありません。そのため、たとえば自宅の金庫に保管されていた自筆証書遺言が見つかった場合には、検認が必要になります」
公正証書遺言は公証人が遺言を作成しますし、何より公証役場にて保管されているため、遺言書の存在と内容は確かなものだから検認が不要なのですね?
長岡「そうです。同様に、遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言は法務局で保管されています。ですので、偽装・変造のおそれがないため家庭裁判所での検認はいらないのですね」
合わせて読みたい:自筆証書遺言書保管制度の証明書は2種類!遺言書が見つからない場合に活用
検認の申立権者
検認を申し立てられる人(申立権者)は、次の方です。
- 遺言書の保管者
- 遺言書を発見した相続人
相続人でなくても、保管者であれば検認を申し立てられることは覚えておきましょう。
検認で対象外となる事項
検認で対象外となる事項もあります。
まず、遺言の内容の是非や有効かどうかの判断は、検認では行えません。検認=遺言効力の証明ではない、ということです。
検認は遺言内容の形式が整っているかどうかを判断するのみで、検認されたからといって効力が証明されるわけではありません。そのため、検認後に遺言内容について争われることもあります。
このような事態を避けるためには、検認後の相続人の感情も意識して遺言書を作成した方がいいでしょう。
横浜市の長岡行政書士事務所では遺言作成の相談にも対応してますので、ぜひお気軽にご相談ください。
また、遺言書の検認が行われても、相続人全員が同意すれば遺言書と違う遺産分割も可能です。(相続人のうち遺言どおりの相続を主張する人が1人でもいれば遺言が優先される)
合わせて読みたい:遺言書を検認する前に注意するべき4つのポイントを紹介します!
検認によって遺言内容をチェックされても、必ずしもその遺言内容どおりに相続手続きが進むものではないことは覚えておきましょう。
遺言書の検認をしないことで生じるリスク
検認はトラブル防止のために、大きな役割を果たすのですね。
長岡「もし検認をしないと思いがけないリスクもあります」
- 罰金が科せられる
- 検認済証明書が発行されず相続手続きができなくなる
- 他の相続人から偽造を疑われることがある
罰金が科せられる
- 遺言書を検認せず勝手に開封すると罰則として5万円以下の過料が課せられる可能性がある
※過料は金銭の支払いが求められるが、刑事罰ではなく行政罰なので前科が付くことはない
検認済証明書が発行されず相続手続きができなくなる
- 遺言書の検認することで検証済み証明書が発行される
- 検証済み証明書がないと不動産の登記や銀行での預金払い戻しなどが行えない
他の相続人から偽造を疑われることがある
- 遺言書の内容が自分にとって不利だと他の相続人が感じた場合、偽造を疑われることがある
- 偽造を疑われたら、遺言書の無効を訴えられる可能性が出てくる
※検認を受けず遺言書を開封しても、遺言書が無効となることはない
遺言書の検認が完了するまでの期間と流れ
長岡「次に、検認の手続きの流れと、手続きに必要な書類を見てみましょう」
検認の期間は申立てから数週間もしくは2ヵ月程度が目安です。
次に検認手続きの流れを見ていきましょう。
- 検認に必要な書類を集める
- 家庭裁判所へ検認を申し立てる
- 家庭裁判所にて検認に立ち会う
- 検認済証明書を申請する
検認手続きに必要な書類を集める
検認手続きに必要な書類は次のとおりです。
- 申立書(裁判所のホームページからダウンロード可能)
- 遺言者の出生から死亡までの全ての戸籍謄本(除籍、改製原戸籍含む)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺言書が封印されてない場合は遺言書のコピー
家庭裁判所へ検認を申し立てる
- 遺言書の保管者または遺言書を発見した相続人が、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所裁判所へ申し立てる
- 遺言者の最後の住所地は、遺言者の除住民票か戸籍の附票の除票などに記載されている
- 必要書類の提出は家庭裁判所への持ち込みもしくは郵送で行うことができる
この時、検認の申立人を決める必要があります。申立人は検認当日に立ち会わなければならないため、スケジュールに注意してください。
家庭裁判所にて検認に立ち会う
- 家庭裁判所に申し立てを行うと、検認実施日調整の連絡が入る
- 日程調整後、検認期日通知書という正式な検認期日の案内が家庭裁判所より届く
- 検認期日に家庭裁判所へ行き、相続人と裁判所の職員が立会い遺言書を開封(所要時間10〜15分程度)
※検認の立会は申立人の出席が必須だが、相続人全員が参加する必要はない
※欠席することによって相続に関して不利益となることはない
合わせて読みたい:遺言書を検認する際には、相続人全員が出席する必要があるのか?
検認済証明書を申請する
- 検認が完了すると検認済証明書の申請を行えるようになる
- 検認済証明書は金融機関や不動産等の名義変更手続きで必要となる
- 検認済証明書の申請が終われば、遺言書の検認手続きが完了となる
遺言書の検認は時間がかかるので早めに申立てる
数週間もしくは2ヵ月程度の時間がかかるとなると、テキパキと行動しないといけませんね。
長岡「相続人によっては本籍が遠方である場合もありますよね。その場合は、戸籍謄本を集めるのに時間がかかる可能性も否めません。相続人が分かり次第なるべく早急に連絡をとり準備するように依頼するのが大切です」
そうですね。スピード感が大事ということですね。
長岡「ええ。相続手続きには期限が定められているものもあり、手続きを滞りなく行うためにも遺言書を見つけ次第なるべく早急に動きたいものです」
ご説明ありがとうございました、長岡さん。
すでに天国で見守っているBさんにも、きっとこの思いは伝わるのではないでしょうか。
おわりに
最後までお読みいただいてありがとうございました。改めまして、長岡です。
遺言書のキモチ、私が責任をもって代弁させていただきました。
人の思いは十人十色。それだけ遺言書のキモチも数あります。
また別の遺言書が語りかけてきたときには…あなたも一緒に寄り添ってくださるとうれしいです。
また、遺言書の作成日付が古い場合、遺言書の内容と現状が異なっていることもあるため注意してください。
たとえば相続させると書かれている財産がすでに存在していなかったり、相続させると書かれている人が先になくなっている可能性もあります。
さらには、より新しい日付の遺言書が書かれている可能性にも留意しなければなりません。最新の日付の遺言書が優先されるためです。
横浜市の長岡行政書士事務所では、遺言作成から相続手続きまでサポートしておりますので、不安なことがある方はお気軽にお問い合わせください。初回相談は無料です。