
「相続人は、銀行の貸金庫を開けられるのでしょうか?遺言書に何か書いておいたほうがいいのでしょうか」
との声をお聞きする時があります。
そこで本日のコラムでは、遺言書に記載すべき、貸金庫に関する事項について紹介します。スムーズな相続手続を実現したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
相続発生時の貸金庫の扱い
相続が発生する、つまり貸金庫の契約者がお亡くなりになると、預金口座と同じく、貸金庫も凍結されます。(※相続発生と同時に凍結されるのではなく、相続が発生したことを連絡すると凍結されます)相続手続が完了するまで、貸金庫の開扉が制限されるということです。
相続人が生前、貸金庫の契約の中で「貸金庫を開けるための代理人」を定めている場合もありますが、この代理人の権限は、貸金庫の名義人が生きているときのみ有効です。そのため相続人が死亡したら、この代理人でも貸金庫を開けることができなくなります。
では、どうすれば相続発生後に貸金庫を開扉できるのでしょうか。主な選択肢は下記の2つです。
- 相続人全員の同意に基づき開扉する
- 遺言執行者の権限で開扉する
それぞれ実務上の注意点とあわせて見ていきましょう。
相続人全員の同意に基づき開扉する
まず第一に、相続人全員の同意に基づき開扉する方法が挙げられます。
相続人全員が同じ日に集まって貸金庫の開扉に立ち会う事が難しい場合は、相続人全員の同意書を用意することで、貸金庫を開けてもらうことも可能です。
しかし、この方法では銀行によっては貸金庫の中身を確認するだけで、中身をそのまま持ち帰ることができない場合があります。
遺言執行者の権限で開扉する
もう一つの選択肢は、遺言執行者の権限で開扉する方法です。
遺言書を作成するときには、遺言執行者という、遺言を書いた本人(=遺言者)に代わって遺言を執行してくれる人を指定することができます。
そして、遺言執行者には、遺言執行のための権限が与えられることが民法に定められています。
第1012条
1.遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
遺言執行者の役割に関しては下記リンクでも解説していますので、参考にしてみてください。
あわせて読みたい>>>遺言執行者が単独で執行できる手続きとはなにか?行政書士が解説!
ただし、遺言執行者なら無条件で貸金庫の開扉が認められるとも限りません。
銀行によっては、貸金庫の内容物が分からない以上、遺言で財産分けの対象とされた特定の財産がその貸金庫内にあるのか無いのか不明なので、遺言執行者による貸金庫の開扉に難色を示す場合があるのです。
また、一部の相続人からのリクエストに応じて開扉した結果、内容物の紛失、滅失、損傷などの事態が生じた場合に銀行に損害賠償責任が発生する可能性があります。
仮に相続人の一部が同意をしてくれない、もしくは認知症等で有効な意思表示ができず同意ができない場合は相続を進める上での障害となります。そのため「共同相続人全員の同意がなければ銀行が開扉に応じない」というスタンスの銀行もあります。
そこで、遺言執行者を指定し、さらに遺言書内で明確に貸金庫の開扉権限を与えておけば、スムーズな手続が可能です。
貸金庫の開扉の権利をも遺言執行者に与える文言の書き方
遺言執行者が選任されているだけでは、遺言がない場合と同じ開扉手続きを踏まないといけない可能性があり、限られた期間内に完遂させる必要のある相続手続きが滞ってしまうおそれがあります。
そのため遺言書を作成するときは、遺言執行者に貸金庫の開扉権限も与えておくのがおすすめです。
具体的な文言に関しては、行政書士など専門家のアドバイスを求めることをお勧めしますが、一例としては下記のような文言が挙げられます。
第○○条 遺言者はこの遺言を執行するものとしてXXを指定する。
第△△条 遺言者はこの遺言を執行するため、遺言執行者に対して次の権限を与える。
(1)遺言者名義の預貯金その他の相続財産の名義変更、解約及び払い戻し
(2)遺言者が契約する貸金庫の開扉、解約および内容の取り出し
(3)その他この遺言の執行に必要な一切の行為をすること
このような文言を付け加えることにより、遺言者が明確に開扉の権限を遺言執行者に与えたことが示せるので、遺言執行者は単独で貸金庫を開扉することが可能となります。
相続人が生前に貸金庫の契約をしている場合には、その貸金庫内に相続にとって重要なものが残されている場合が多いです。
よって、貸金庫の開扉は相続手続きをする中で避けては通れませんが、遺言者も遺言作成時に貸金庫の事までは気がまわらず、もしくは遺言執行者を指定しておけば当然に開扉できるものと勘違いして対策が疎かになってしまう可能性があります。
遺言書にたった一文を付け加えるだけで後々大きな違いがでますので、遺言書を書く際にはぜひ注意をしてください。
※遺言書を作成した際に、大切なものだからと貸金庫に保管される方もいらっしゃいます。しかし、これでは遺言者が亡くなった際に遺言書を取り出すことができないため、遺言書を貸金庫へ保管するのは避けましょう。実務的には、公証役場に原本が保管される「公正証書遺言」を作成するのがおすすめです。
関連記事:公正証書遺言の作成は誰に相談する?公証人のみに相談するリスクを行政書士が解説!
遺言を書く時は専門家のアドバイスを受けることが大事
遺言書を作成する際は、本日触れた貸金庫の開扉以外にも、さまざまな注意点が存在します。
横浜市の長岡行政書士事務所は、スムーズな相続手続を実現する遺言書作成をサポートしておりますので、家族に負担をかけないために遺言書を作成しておきたいという方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。








