農地や畑の相続はどんな手続きが必要?必要書類や流れを行政書士が解説!

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農地や畑の相続はどんな手続きが必要?

「父が亡くなり、農地の相続人として指定された。どのような手続きが必要となるのか?」

「実家の農地と畑を相続した。遠方に住んでおり、農業を継ぐつもりはないため相続したくない。どうしたら良いの?」

「農地などは通常の不動産とは相続手続きが異なると聞いた。子供を相続人に指定すると負担をかけてしまう?」

 

被相続人が農地や畑を所有していた場合、遺言で指定がある場合にはその指定された相続人が相続をすることになります。

 

しかし、農地や畑は通常の土地の相続手続きの流れとは少々異なります。

 

今回は農地や畑を相続した場合の手続きと、農地を相続したけど手放したい場合の手続きについて解説をしていきたいと思います。

 

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農地や畑が規制される趣旨

農地や畑は国民にとっては大切な食料を生産してくれる場所です。

『野菜が手に入りません・・・』、『全国的にお米が足りません・・・』そんなこわとになったら国民生活は大変なことになります。

 

農地や畑は、国民の生活に直結するものであり、国にとってもとても大切な場所なのです。

 

そういった理由から、農地や畑は通常の土地とは異なり、食料の安定供給といった政策的観点から不動産の中でも特殊性が強く、同じ不動産とはいえ通常の不動産とは別に法規制をかけているのです。

つまり、農地法上でこの国民生活が不安定にならないような要件を満たすことで、ようやく農地や畑について所有権移転等の手続きができるということです。

農地や畑は遺産相続できる

農地や畑の相続は可能です。

 

まず、相続以外の場合、つまり農地や畑を『特定遺贈(※1)』や『売買』をする場合には農地法の制限を受けるため農業従事者に限定されるなどの条件がつきます。

 

ただし、相続の場合においては、相続人は被相続人の地位を引き継ぐという性質があります。

つまり、第三者に対する贈与や売買とは異なり、農業従事者でなくとも農地や畑を問題なく相続することができます。

 

また、包括遺贈(※2)の場合も、被相続人が農業従事者であった場合、相続と同様に被相続人の地位を引き継ぐため『農業従事者のみ可能』というような条件はありません。

したがって、相続人が農業従事者ではなくとも農地や畑を問題なく相続することができます。

 

※1 特定遺贈とは・・・

まず、遺贈とは、遺言者が死亡した場合に、遺産の全部または一部について、特定の者に対して贈与することを、生前の意思表示として遺言に残すことを指します。

この遺贈目的物が特定されていることを『特定遺贈』といいます。

 

※2 包括遺贈とは・・・

相続財産の全部というように包括的に遺贈が行われることを指します。

 

農地や畑を相続するメリット

  • 農作物を育てることができる。
  • 貸すことができれば賃貸収入を得られる。
  • 活用すれば収益化でき、資産になる。

※ただし、農地転用(※3)が可能な土地は限られている。

農地や畑を相続するデメリット

  • 活用できない場合、負動産(※4)になってしまう。
  • 維持管理が大変。
  • 手放したくても手放せない。

※農地や畑を売却するには農業委員会の許可(※5)が必要となるため手放すのが困難。

 

農地や畑を相続するしないは、メリットデメリットをしっかり踏まえた上で、検討することが大切です。

 

※3 農地転用とは・・・

農地を、農地以外の他の目的に変えて活用する方法のこと。

 

※4 負動産とは・・・

所有する不動産が空き家になり、利益も収入も生まず、税金だけがかかる状態になっている場合の造語として使用されています。

 

※5 許可とは・・・

常、私人間で行った契約などの法律行為について、当人同士の合意があれば成立します。

しかし、農地のような国にとっても重要な物の場合には、当人同士の合意だけではなく、行政による許可があってようやく法律効果が発生すると規定されています。

つまり、農地や畑の売却をする場合には農業委員会の許可がない限り、その売買について法的効力は発生せず、その契約は無効となります。

 

農地や畑の相続するために必要な手続き

農地や畑を相続したら『法務局での相続登記』を行った後に、『農業委員会への届出』をする、2つの手続きが必要となります。

step 1

法務局での相続登記

step2

農業委員会への届出

※相続があったことを知った日から10ヶ月以内に農業委員会への届出が必要!

 

では、以下でどのような手続きが必要となるのかを見ていきましょう。

<step 1> 法務局での相続登記

まず、法務局において農地や畑の相続登記を行います。

相続登記とは、不動産の名義人が亡くなった場合に、名義を相続人へ変更する手続きのことです。

 

農地を相続登記する際の管轄法務局

該当の農地の所在地を管轄する法務局へ申請する必要があります。

まずは管轄の法務局を調べておきましょう。

参考:法務局H P 各法務局検索

 

相続登記の申請ができる人

  • 不動産を相続する人
  • 代理人

 

相続登記の申請方法

申請方法は以下の3つの方法があります。

  • 窓口申請
  • 郵送申請
  • オンライン申請

 

※オンライン申請の場合、『申請者情報の登録』と『総合ソフトのインストール』が事前に必要となります。

以下のリンクから手順や操作要領を確認してください。

参考:法務局H P 相続登記のオンライン申請について

 

相続登記に必要な書類

法務局で相続登記するときは以下の書類が必要となります。(詳しくは管轄する法務局でご確認お願い致します。)

 

法務局で取得する書類
  • 相続登記申請書
  • 法務局窓口
  • ホームページ

いずれかの方法で取得可能

  • 登記事項証明書
  • 法務局窓口
  • 郵送
  • オンライン

いずれかの方法で取得可能

 

参考:不動産登記の申請書について 法務局H P

参考:登記事項証明書について 法務局H P

 

市町村役場で取得する書類
  • 相続人全員の印鑑証明
  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
  • 被相続人の戸籍附票
  • 被相続人の住民票除票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 農地の固定資産評価証明書

 

ご自身で用意する書類
  • 遺産分割協議書
  • 遺言書

いずれかが必要となります。

 

相続登記に必要な費用

登録免許税(※5)不動産固定資産評価額の0.4%

このほかに司法書士を代理人とする場合は司法書士の報酬がかかります。

 

※5 登記免許税とは・・・

不動産登記にかかる登記手数料のことを指します。

 

<step 2> 農業委員会への届出

農地は農業委員会によって管理されています。

 

そのため、相続したことを農業委員会に届出が必要となります。

 

届出は相続開始を知った日から10ヶ月以内にする必要があります。

期限を過ぎると10万円以下の過料が課される可能性がありますので注意が必要です。

 

農業委員会への届出は法務局での相続登記の後にする必要があります。

したがって、相続登記もできるだけ早く済ませておくと安心です。

 

農地法の届け出の提出先

  • 農地の住所を管轄する農業委員会

農業委員会は市町村役場内に設置されていることがほとんどです。

まずは役場に問い合わせてみると良いでしょう。

 

農地法の届出ができる人

  • 相続で農地を取得した人

 

農地法のの届出に必要な書類

  • 農業委員会が指定する届出書
  • 各農業委員会の窓口
  • 自治体のホームページ

いずれかの方法で取得可能

  • 相続登記した登記事項証明書
  • 法務局窓口
  • 郵送
  • オンライン

いずれかで取得可能

参考:登記事項証明書について 法務局H P

 

農地法の届け出の費用

無料

 

農地を相続した場合に係る相続税

『法務局での相続登記』と、『農業委員会への届出』この2つの手続きで農地や畑の相続手続き自体は完了です。

しかし、農地や畑も相続財産であることには変わりがないので、相続税を支払う必要があります。

 

農地の納税猶予の特例

農地や畑も相続財産であるため相続税が発生するとご紹介しました。

ただし、農地や畑を相続した人が引き続き農業を行う、又は農地や畑を貸し出すといった場合であれば、『相続税の納税猶予』を適用できる可能性があります。

『相続税の納税猶予』の特例は、農地や畑を相続した人、又は遺贈された後継者に対して農地や畑にかかる相続税又は贈与税の納税を猶予する制度です。

 

猶予された税金は、農地や畑を相続又は遺贈された人がその後亡くなった場合には、免除されます。

この制度は、いくつかの条件が揃った場合に受けられる特例ですが、一度ご確認されることをおすすめします。

農地や畑を相続したくない場合

  • ご両親は農業を営んでいたけれど、ご自身は実家を離れて別の職業に就いているため農地や畑は必要ない
  • 固定資産税もかかり、管理しきれないため農地や畑は手放したい

このように、様々な事情がある場合もあると思います。

 

もしも、農地や畑の相続を回避したいという場合には以下の方法をご検討されてはいかがでしょうか。

相続放棄をする

相続放棄をすれば農地や畑を相続することもなく、また相続税がかかることもなく、面倒な手続き等も不要になります。

 

しかし、この方法は農地や畑だけではなく、その他すべての財産について相続を放棄することになります。

相続放棄をする場合にはよく検討してからご決断することをおすすめします。

 

ただ、相続放棄にも期限がありますので注意が必要です。

基本的には、相続放棄は『相続開始を知った日から3ヶ月以内』に家庭裁判所に申述することが必要となります。

農地転用をする

農地転用は、相続した農地や畑を、他の目的に変えて活用する方法です。

 

ご自身で農業を行わない人は、例えば、駐車場経営や賃貸住宅を建設して運営、あるいは宅地として売り出すというように、別の用途として活用するという選択肢もあります。

 

ただし、農地や畑以外の用途に転用するためには、原則として農業委員会の許可を得る必要があり、許可を得る時点で転用後の用途を確定しておく必要があります。

「とりあえず宅地で申請して、後から考えよう。」という手段は取れませんので注意が必要です。

また、農地や畑の場所や地域によって条件を満たさない場合、転用は困難となります。

 

したがって、農地転用についてもよく検討してから相続するか否かの判断をする必要があります。

農地や畑のまま売却処分をする

農地や畑を利用してくれる方がいらっしゃれば、その方に売却する方法がおすすめです。

 

ただし、農地や畑のまま売却処分をするとしても、上でご説明した『法務局への相続登記』は必要となります。

 

また、原則として農地や畑は一定の要件を満たした農家に対してのみ売却することができます。

そのため、買い手を見つけることも困難な場合もあります。

 

さらに、ご自身で自由に売却することもできません。

第三者に対して売却をする場合、後述する農地法許可が必要となります。

 

確実に売却できるかどうかをしっかりとご検討してから判断することをおすすめします。

 

対策として、ご近所の農家さんに打診をしておくというのも有効であると考えられます。

最低限の管理のもと放置する

ここまでに3つの方法をご紹介しましたが、どれも難しい場合には、農地や畑を相続して最低限の管理のみを行い放置するほかありません。

 

近隣に迷惑をかけないよう雑草などの管理、活用はしなくとも農地や畑を持ち続けている限り固定資産税も発生します。

 

放置するから相続登記をしないという方もいらっしゃるようですが、おすすめはしません。

 

なぜなら、後々相続人の方がお亡くなりになって再度相続が発生した場合、農地や畑の所有者について記録がなく、権利関係が複雑になってしまう可能性があります。

放置するとしてもお子様たちのために相続登記だけはきちんとしておくことをおすすめします。

 

もっとも、現状は相続登記を必ず行う必要はないとされていますが、2024年4月1日以降は相続登記手続きが義務化されますので注意が必要です。

 

農地や畑を売却する場合の農地法の許可について

農地や畑の売買など、相続以外の原因によって農地の名義を移転する場合には、農地法に基づく許可が必要であると法律で規定されています。

 

農地法は、新たな所有者が勝手に農業をやめてしまったり、農地や畑以外として利用するといったケースが増えた場合、国の食料自給率が下がってしまい、食料の安定供給に支障をきたしてしまうといったおそれがあるため規定されています。

 

許可が出される要件には、

  • 農地や畑として売却、賃貸する場合。
  • 農地や畑の権利設定や移転を行うためには農業委員会の許可が必要。
  • 原則、農家ではない者が農地を取得することはできない。

 

農地以外に転用する場合

  • 4ヘクタール以下の市街化調整区域の農地の場合、都道府県知事の許可が必要。
  • 4ヘクタール以上の市街化調整区域の農地の場合、国との協議をした上で都道府県知事の許可が必要。

概ね以上のような要件が必要とされます。

 

農地を手放すとしてもそれなりに大変な手続きが必要となります。

 

農地法の許可不要の例外

農地や畑を転用するためには農地法に基づく許可が必要であることをご説明しました。

しかし、例外的に許可が不要となる場合があります。

 

国、都道府県、指定市町村が農地の転用をする場合、許可は不要とされています。

 

学校や福祉施設、病院、庁舎などのために転用する場合には、許可権者と協議会をおこなう必要があり、その協議が整った場合には許可を受けたものとみなされます。

 

農地の相続の場合は注意が必要

  • 農地や畑を相続したときは『法務局への相続登記』と『農業委員会への届出』が必要。
  • 『農業委員会への届出』は相続開始を知った日から10ヶ月以内にする必要がある。

※届出をしない場合、10万円以下の過料のペナルティも発生する可能性もあります。

 

農地や畑の相続は、国を支える農業の後継問題としても関わっています。

当事者である相続人が農業従事者であれば比較的問題は少なく済むかもしれませんが、農業従事者でない場合、処分するなどいずれの方法であっても負担は重くなるものです。

 

農地や畑に限ったことではありませんが、特に農地や畑に関しては、できるかぎり家族全体の問題として生前から十分な話し合いの場を持つことをおすすめします。

 

 

<参考文献>

・新井誠・岡伸浩編 日本評論社 『民法講義録 改訂版』

・神余博史著 自由国民社 『国家試験受験のためのよくわかる行政法 第7版』

 

行政書士 長岡 真也
この記事の執筆・監修者:長岡 真也(行政書士)
神奈川県行政書士会所属(第12091446号)
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