遺言書で不動産を売却できる?相続人で売却金を分配する流れについて行政書士が解説!

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遺言により不動産を売却して相続人間で分配する流れと税金関係を解説

「遺言書で不動産を売却できるの?」

相続財産に不動産が含まれる場合、どのように分割するのがいいのでしょうか。

例えば相続財産が土地だけで相続人が2人いるとします。

まさか家を2つに割って相続させるわけにはいきませんが、かといって1人にだけ家を相続させると不公平になってしまいます。

こんなときは遺言書で、「不動産を売却し、その売却金を相続人で分ける」と指定しておくのがおすすめです。これを清算型遺贈といいます。
今回は清算型遺贈の流れを、横浜市で相続・遺言書作成をサポートしている行政書士として解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

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清算型遺贈とは

清算型遺贈とは、遺言により選定された遺言執行者が、不動産などの遺産を売却し、得られた売却益を相続人間に分配する方法のことです。

なお、遺言が存在しなかったり、遺言で遺言執行者が選定されておらず、相続人自らが遺産を売却することも可能です。

このように遺産を換価して分配する場合は、換価分割と言う呼び方をします。

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清算型遺贈の文面がどのようなものかというイメージを、まずは下記遺言の例により把握していただければと思います。

遺言書

遺言者である遺言太郎は、次のとおり遺言をする。

第1条 遺言者は、遺言者の所有する下記不動産を換価し、その換価金から遺言者の一切の債務を弁済し、かつ、遺言の執行に関する費用を控除した残金を、次のとおり相続させる。

  •  妻  遺言花子(昭和〇年〇月○日生) 2分の1
  •  長男 遺言一郎(昭和〇年〇月○日生) 4分の1
  •  次男 遺言二郎(昭和〇年〇月○日生) 4分の1

所  在   神奈川県横浜市○町○丁目

地  番   ○番○

地  目   宅  地

地  積   ○○・○○㎡

所  在   神奈川県横浜市○町○丁目 ○番地○

家屋番号   ○番○

種  類   居  宅

構  造   木造スレート葺2階建

床 面 積   1階 ○○・○○㎡

2階 ○○・○○㎡

第2条  遺言者は、この遺言の執行者として次の者を指定する。

神奈川県横浜市港南区港南5-1-32 港南山仲ビル202

行政書士 長岡真也

昭和〇年〇月○日生

2. 遺言者は、遺言執行者に次の権限を授与する。

  • 換価のための不動産の処分及び登記手続
  • 預貯金等の金融資産の名義変更、解約及び払戻し
  • 債務の調査及び弁済
  • 貸金庫の開扉、解約及び内容物の取出し
  • その他本遺言を執行するために必要な一切の行為をする権限

令和○○年○○月○○日

神奈川県横浜市○町○丁目○番地○

遺言者 遺言太郎 印

清算型遺贈のメリット

それでは清算型遺贈のメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

  • 公平な遺産分割ができる
  • 納税資金を用意できる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

公平な遺産分割ができる

清算型遺贈で相続財産を現金化すれば、1円単位にまできちんと分配できるので、公平に遺産分割をすることができます。

なお、不動産を相続する他の方法としては、他にも現物分割、代償分割そして不動産の共有という方法があります。

現物分割とは、相続財産に手を加えずそのままの状態で分割する方法を指します例えば、相続財産が不動産、預貯金、株式の3つだった場合、長男が不動産を、次男が預貯金を、長女が株式をそれぞれ相続するという方法です。手間がかからず手続きが簡単であり、財産をそのままの形で残しておけることがメリットといえます。

一方、代償分割とは、相続人のうち1人がもらうべき以上の価値の不動産などを相続した場合に、他の相続人に対して超過分の代償金を支払いバランスを調節する方法です。たとえば、相続人が長男と長女の2人で法定相続分は各1,000万円のところ、長男が2,000万円分の不動産を相続した場合、長男は長女に対して超過分1,000万円を現金などで渡します。こちらも相続した財産を現金化する必要がないため、そのままの形で残しておけます。

また、不動産を一人の相続人の所有にせず、複数人で共同所有することも可能です。例えば配偶者と子供2人が不動産を相続した場合は、配偶者が2分の1、子供たちがそれぞれ4分の1ずつの共有持分を取得して不動産を共有します。ただし各相続人は、共有不動産を「使用」と「保存」しかできないので、積極的に不動産を投資に回したりすることができず放置されたりしてしまうリスクがあります。また、自分の共有持分は売却することができますが、他の持分権者にとってみると赤の他人と共有することになる可能性があり、将来のトラブルの種になりかねません。そのため不動産の共有は避けるべきです。

そして、現物分割、代償分割、不動産の共有では、受け取る遺産評価額の偏りが生じ、相続人の間で不公平となってしまう可能性が排除できません。

それに比べ、現金化して分配する清算型遺贈は、最も公平で納得してもらいやすい方法だと言えます。

納税資金を用意できる

現金化するということは、相続税の納税資金を用意できるというメリットにもつながります。

相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。

そして、相続税は現金で納める必要があります。

遺産に現金が多かったり、相続人に充分な資金があったりすれば問題ないですが、遺産に土地が多い場合は相続税が高額なケースも多く、現金を準備して納税を行うことが難しい場合があります。

清算型遺贈は不動産などを売却するため、得られた現金を納税資金に充てることができます。

清算型遺贈のデメリット

清算型遺贈には多くのメリットがありますが、次のようなデメリットが存在することも事実です。

  • 財産を売却しなければならない
  • 売却に関し色々な費用が発生する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

財産を売却しなければならない

清算型遺贈では、必ず不動産を売却する必要があります。

しかし、仮にその家が思い出が詰まった大切な不動産であったとしたら、売却しなければならないこと自体がデメリットといえます。

また、売却時に「足元を見られて」買いたたかれる可能性もあります。

相続税は相続発生から10か月以内に納める必要があり、早く現金化したい意図を見透かされてしまうと、通常よりも安い値段で妥協せざるを得なくなるリスクがあるのです。

売却に関し色々な費用が発生する

不動産の売却には不動産仲介業者への手数料や契約時の印紙代、境界画定費、測量費用などの諸費用が必要です。また、売却時に利益がでれば譲渡所得税が発生することがあります。

譲渡所得税が発生すると現金を受け取った相続人全員が確定申告をする必要があり、同時に住民税も増額されます。受け取った現金は翌年の所得税や住民税の納税分を手元に残しておく必要があります。

このように不動産を売却すると費用や税金が発生するため、不動産を売却せずそのまま相続する場合と比べて相続額が小さくなってしまいます。

清算型遺贈の流れ

それでは実際に、清算型遺贈がどのように行われるのか、流れを見ていきましょう。

  • 相続登記を行う
  • 相続税を申告する
  • 不動産を売却する
  • 確定申告を行う

相続登記を行う

清算型遺贈をする場合、亡くなった方の名義のまま不動産を売却することはできないので、いったん相続人全員の共有名義で登記します。

そして、後に買主が見つかって売却が終了したら買主名義に不動産の移転登記をすることになります。

ここで注意すべきなのは、不動産売却したお金をもらえない相続人も、相続登記時の共有名義の中に登録する必要があるという事です。

登記には署名捺印が必要なため、お金をもらえない相続人から協力を得られない可能性があります。

また、お金をもらえる相続人にとっても、署名捺印を求められることは煩わしいことかもしれません。

ただし遺言の中で遺言執行者が指定されていれば、不動産の名義変更(名義自体は相続人全員の名義)も買主への移転登記もすべて遺言執行者の責任で進めることができ、非常にスムーズです。

相続税を申告する

もし相続税の申告義務があるとき、清算型遺贈をする場合も、期限内に申告をしなければなりません。

相続税の申告は、相続が発生したことを知った日の翌日から10ヵ月以内に行う必要があります。納税通知書が届くわけではなく、自分で期限日を管理し、相続税の計算や申告書の作成をする必要があります。

また、並行して葬儀や埋葬、役所への各種届出を行う必要もあるため、不動産の売却だけに集中できない点は留意しておきましょう。

不動産を売却する

た清算型遺贈によって不動産を売却する場合は、不動産会社と媒介契約を結んで買い手を探してもらわなければいけません。

媒介契約というのは簡潔に言うと、売り手に代わって不動産会社に買い手を探してきてもらう代理人契約です。

すぐには見つからない場合もあり、また売却額で相続税を支払う予定であることが知れると納期限が迫っていることを理由に足元を見られる可能性があるため注意してください。

確定申告を行う

不動産を売却して利益が出た場合は、所得税や住民税が課税される可能性があるため、確定申告をしなければいけません。相続税と所得税や住民税は別物なので、売却した年の翌年2-3月にかけて行われる確定申告は忘れないようにしましょう。

上記の流れはあくまで大まかなものですが、登記、不動産会社に売却を依頼、相続税申告、確定申告といった手続きを経て手元に残った金額を相続人の間で分けることになるイメージをつかんでいただければと思います。

清算型遺贈で課税される税金

先ほど少し相続税と所得税に触れましたが、清算型遺贈の際にどのような税金を払わないといけないのかの説明と、うまく使えば税金の支払い額を減らすことのできる特例を紹介します。

相続税

相続税とは、相続により財産を取得した場合に、その相続財産の総額にかかる税金です。

不動産だけでなく、現金や有価証券など幅広い財産の評価額の合計に対して課せられますが、葬式や仏壇といった葬儀関連でかかった費用や、亡くなった方が抱えていた債務額などは控除することができます。

相続税には基礎控除といって、相続財産がこの金額以下であれば相続税が発生しないという制度が定められています。

計算式は、

3,000万円+600万円×法定相続人の数

になります。

たとえば、ある人が亡くなって配偶者と子ども1人がいた場合、法定相続人は2人です。

3,000万円+600万円×2=4,200万円

よって、相続財産が4,200万円以内であれば相続税はかかりません

登録免許税

登録免許税は、不動産の所有権の移転登記を行う際に発生するな税金です。

税額は固定資産税評価額の0.4%になります。

ただし、不動産評価額が100万円以下であれば、令和7年3月31日までは登録免許税が免税されます。

※令和8年1月追記:令和7年度の税制改正により、免税措置の適用期限が令和9年(2027年)3月31日までに延長されました。参考:法務局

印紙税

不動産物件の売買の際には不動産売買契約書を作成しますが、契約金額に応じた印紙税を不動産売買契約書に貼付しなければいけません。

なお、令和6年3月31日までに作成される不動産売買契約書については、印紙税の軽減措置が設けられています。詳しくは国税庁のホームページで確認するか、売却を依頼した不動産会社に確認をしましょう。

譲渡所得税

不動産を売却した際にかかる所得税と住民税をまとめて譲渡所得税といいます。

あくまでも総称なので、正式な税金の名称ではありません。

税率は、所有期間が5年以下の短期譲渡所得か、5年超の長期譲渡所得かで変わります。

短期譲渡所得……所得税30%、住民税9%

長期譲渡所得……所得税15%、住民税5%

相続で取得した不動産については亡くなった方が取得した時期を基準に短期譲渡所得か長期譲渡所得かを判断します。相続した日から数えるわけではないことに気を付けてください。

相続した不動産の売却に活用できる2つの特例

次に、相続した不動産を売却するときに使用すると相続税を圧縮することのできる2つの制度を紹介します。

取得費加算の特例

取得費加算の特例とは、相続が開始された日から3年10か月以内に相続財産を売却した場合に相続税額の一部を取得費に加算することで、譲渡所得税の負担を軽減することができる特例です。

譲渡所得税は、収入金額から取得費と譲渡費用の合計を引いた金額で算出します。

この取得費に相続税の一部を加算することで譲渡所得税額を減らすことができる制度です。

国税庁のホームページも参考にしてみてください。

相続した空き家の3,000万円特別控除

マイホームを売った際に要件を満たしていれば譲渡所得から3,000万円を控除できる「居住用不動産の3,000万円特別控除」が有名ですが、相続後に空き家となった自宅を売却しても3,000万円の特別控除を使うことができます。

適用されるための主な要件は以下の通りです。

  • 昭和56年(1981年)5月31日よりも前に建築された戸建てマイホーム
  • 相続の直前まで亡くなった方がひとりで住んでいた
  • 相続から売却までの間空き家になっていて利用されていない
  • 耐震基準を満たす家である、または家を壊して更地にして売却する
  • 相続開始から3年後の年の12月31日までに売却する
  • 売却代金が1億円以下

この制度からは昭和56年以前の旧耐震基準の建物を新耐震基準にしてもらいたいという事と、相続で発生した空き家をそのままにしてほしくないという国の方針が見て取れます。

清算型遺贈する遺言書の作成は専門家に相談!

相続財産に不動産がある場合は分割方法がいくつかありますが、清算型遺贈がもっと公平に遺産を分割する方法です。

ただし不動産を売却する必要があるので財産をそのまま保つことができなかったり、売却に伴う税金が発生したりとデメリットも存在します。

また、相続時には相続登記、売却時には移転登記を行う必要があるため遺言で遺言執行者が指定されていないと相続人全員の署名捺印が必要になったりと、手続きを進める上での難しさも存在します。

どのような方法で不動産の相続を行うのが良いかというアドバイスも含め、遺言作成時から専門家のサポートを有効活用するようにしましょう。

長岡行政書士事務所は相続の経験が豊富にあり、とことん相談者様によりそった相続を心がけています。

不安な点や疑問がございましたら、なんなりとお尋ねください。

 
行政書士 長岡 真也
この記事の執筆・監修者:長岡 真也(行政書士)
神奈川県行政書士会所属(第12091446号)
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