「公正遺言証書を作りたい。でもそもそも公証人って誰?」
「公証役場ってどこにあるの?どう関わるの?」
「公正証書がどんなものかも知りたい」
公正証書遺言を作成する方は、「公証人」と「公証役場」を知っておいた方がいいでしょう。
通常利用される遺言書には、『自筆証書遺言』と『公正証書遺言』の2種類の遺言書があります。
自筆証書遺言は自分一人で作成できるため、簡便なものです。その代わり、要件を満たしていないがために無効になってしまうケースもあります。
一方、公正証書遺言は専門家である公証人が関わるものです。費用も時間もかかるため簡便な方法とは言えませんが、無効となる心配が激減されます。(ん?公証人?・・・だれ?)
また、公証役場において保管してもらえるので公証役場で探すことができます。(ん?公証役場?・・・どこ?)
公正証書遺言のメリットは、なんといっても公証人という専門家が関わるため、無効となる心配が激減されることです。
・・・少し聞いただけでも聞きなれない単語がいくつか出てきましたね。
今回は公正証書遺言に関わる『公証人』や『公証役場』について解説し、スムーズに公正証書遺言を作る方法を見ていきましょう!
目次
公正証書とは公証人がその権限に基づいて作成する文書
公正証書とは、公証人がその権限に基づいて作成する文書のことです。
公文書は、文書の成立について法的に証明されます。
公証人の作成する公正証書には法的に公正な効力が生じます。
つまり、確実にその内容が違うという証明がされない限り、公正証書の内容が有効であるという証明として扱われ、強い証明力を持ちます。
公正証書には、法律行為に関する公正証書や、私権に関する公正証書があります。
公正証書には「公正証書遺言」以外にも、次のような例が挙げられます。
法律行為に関する公正証書
- 契約に関する公正証書(土地や建物の売買における契約、リース契約等)
- 単独行為に関する公正証書(遺言書等)
私権に関する公正証書
- 事実実験公正証書(特許権の侵害に対して状況を記録すること、意思表示等)
公証人とは公証事務を行う法律実務のスペシャリスト
さて、公正証書遺言を作成する要件に、何度も『公証人』が現れましたね。
公証人とは、公証事務という公務を行う人のことです。
裁判官や検察官などを長く勤めた法律実務のスペシャリストで、法務大臣が任命した準国家公務員です。
法律行為や私人間の権利について公正証書を作成したり、定款などに認証を与える役割をしたりすることを担っています。
公証人は法律に関する文書に公的な認証を与える職務と考えるとよいでしょう。
公証人は、公証事務を担当します。
つまり、法律に関する文書に公的な認証を与えるなどの職務を行います。
公正証書遺言は、公正証書として公証人が遺言者の代わりに遺言書を作成したり、公証人が署名押印したりします。
事前に遺言者とどのような内容の遺言にするか打ち合わせを行うなど、遺言書の作成から遺言書の保管に至るまで公証人が深く関わります。
公正証書遺言の作成には公証人は不可欠なのです。
公証役場は公証人が職務を行う場所
公証役場とは、公証人が職務を行う場所です。
国家公務員の公証人が働くところ・・・市役所のようなところをイメージしませんか?
しかし、公証役場は市役所などとは別に独立して全国各地に存在します。
公正証書遺言は基本的にこの公証役場で作成されることが多いです。
しかし、依頼者が病気などによって公証役場に赴くことができない場合には、公証人が依頼者の自宅などに出向いて手続きを行うこともできます。
公正証書遺言の要件
さて、公証人や公正役場が深く関わってくる公正遺言証書について、さらに詳しく解説します。
公正証書遺言は、基本的に公証役場で作成します。
遺言書は遺言者が亡くなった後に効力を生ずるものです。
したがって、遺言者の真意は、遺言書に書いてある内容からしか受け取ることはできません。
公正証書は確実にその内容が違うという証明がされない限り、内容が有効であるという証明として扱われ、強い証明力を持つと紹介しました。
すなわち、公正証書遺言は、その内容が有効であると証明されている遺言とも言えます。
有効な遺言書と認められるために、公正証書遺言の作成には厳格な要件が求められます。
公正証書遺言の要件
- 証人2人以上の立ち会いがあること
- 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口頭で伝えること
- 公証人が、遺言者から伝えきいたことを筆記すること
- 公証人が筆記した内容を遺言者と証人に読み聞かせ又は閲覧させること
- 遺言者と証人が、筆記の内容が正確なことを承認した後、各自これに署名押印すること
- 公証人が、その証書は以上の方式に従って作ったものである旨を付記、署名押印すること
この公正証書遺言は、公証役場において保管されますので、紛失する恐れも偽造される恐れもなく、遺言書があるかどうかを全国どこの公証役場からでも遺言書が保管してあるかどうか探すことができるため安心です。
日本公証人連合会は昭和64年1月1日以降に公正証書遺言をした人の遺言書作成年月日等をデータベース化しています。
遺言者の死後に相続人等正当な利害関係人から全国のどの公証人に対しても照会があった場合、遺言の有無や公正証書遺言を保管している公証役場を回答するシステムをとっています。
利用したい場合には、近くの公証役場に問い合わせてみるとよいでしょう。
参考:日本公証人連合会HP
公証人と公正証書遺言書を作成する2つの方法
公正証書遺言は公証人と作成するものでしたね。
しかし、『公証役場に直接依頼する場合』や、『行政書士などの専門家に遺言書の作成の支援を依頼する場合』があり、作成方法は多少異なります。
公証役場で公証人に直接依頼して作る公正証書遺言
公証役場で公証人に直接依頼し公正証書遺言を作る方法を紹介します。大まかな流れは次のとおりです。
- 財産の相続方法などをピックアップ
- 相談日時を予約
- 公証人と相談
- 公正証書遺言の作成に必要な書類準備
- 証人2名の立ち会いのもと公正証書遺言を作成
財産の相続方法などをピックアップ
まずは、相続人の名前や主な相続財産、具体的な財産の相続方法などをピックアップします。
相談日時を予約
その後、公証役場に連絡をして相談日時を予約します。
公証人と相談
予約当日は、公証人と相談ができます。
メモをもとにご希望の内容を相談してみましょう。
また、公証人から必要な書類などが伝えられますので、必要書類を用意する必要があります。
相談は1回で終わる場合もあれば、複数回必要となる場合もあります。
この相談の際には立会人は不要です。
なお、公証人は職務の性質上、一方当事者に偏ることなく、中立・公正である必要があります。
その点で、依頼者様の代理人等として依頼者様の公正な利益のために活動する弁護士や我々行政書士とは異なります。
この意味は、例えば遺言書の作成にあたって、『税金対策を踏まえた提案をすること』、『当事者間の事情を鑑み、依頼者様(遺言者)やその推定相続人に有利な提案をすること』これらのことは公証人にはできません。
公正証書遺言の作成に必要な書類準備
公正証書遺言の作成にあたり、必要な書類を準備します。主に必要となる書類は、次の通りです。
遺言者の情報 | 遺言者自身の印鑑証明書 |
相続人の資料 | 遺言者との続柄が分かる戸籍謄本 |
相続人以外に遺贈する場合 | その者の本籍地記載の住民票 |
財産に不動産がある場合 | 登記事項証明書、固定資産評価証明書 |
財産に預貯金がある場合 | 通帳(コピーでも可) |
参考:公正証書遺言は自分で作れる!実際の作成方法や流れを行政書士事務所が解説
公証人は、依頼者にとってはなれない書類取得の代行はしてくれません。
これらの書類取得代行まで依頼したい場合は、行政書士などの専門家に依頼する必要があります。なお、長岡行政書士事務所でも、依頼者様のご負担が無いようにお手伝いしておりますので、ぜひご相談ください。
証人2名の立ち会いのもと公正証書遺言を作成
相談内容が確定すると、後は遺言書の作成になります。
公正証書遺言には証人の立ち会いが必要でしたね。
公正証書遺言を作成する際には、事前に証人を決めておきましょう。
知人にお願いすることも可能、もしくは、公証役場で依頼することも可能です。
ただし、公証役場で証人を紹介してもらう場合には、謝礼が必要となります。
公正証書遺言を作成する場合、「遺言者の真意を確保するため」、「遺言に関する後日の紛争を未然に防止するため」そのため証人2人の立ち会いが必要となります。
つまり、証人は遺言の正しさを証明するために証人の立ち会いが必要なのです。
証人は、
- 遺言者が遺言の内容を公証人に伝える場面
- 公証人による筆記した遺言書の内容の読み聞かせ
- 筆記の正確性の承認
- 遺言者による遺言書への署名押印
これら全ての場面に立ち会うことが必要とされています。
なお、証人となれない人(欠格者)は法律によって決められています(民法974条)。
- 未成年
- 推定相続人(※1)、受遺者(※2)、これらの人たちの配偶者や直系血族
- 公証人の配偶者
- 公証人の四等身以内の親族
- 公証人の書記
- 公証人の使用人
以上の人たちは証人になることはできません。
※1 推定相続人とは・・・現在相続が開始したならば相続人となるはずの人を指します。
※2受遺者とは・・・遺贈を受けとる人のことです。
欠格者が定められている理由は、実際に遺言書を作る公証人や、公証人に近い人、利害関係人が証人になってしまうと、不備や不正を見逃してしまう可能性や、公平性に欠ける可能性があり、チェック機能が働きづらくなるという配慮からです。
上記の欠格者が関わっている遺言書は無効となります。気をつけましょう。
行政書士などに支援してもらって作る公正証書遺言
行政書士など専門家に依頼して公正証書遺言を作る場合も、大きな流れは、公証人に直接依頼する場合と変わりません。
ただし、さまざまな業務を代行してもらえるため、スムーズに公正証書遺言を作成できます。
- 行政書士などと相談
- 公正証書遺言の作成に必要な書類準備
- 証人2名の立ち会いのもと公正証書遺言を作成
行政書士などと相談
相続人の名前や相続財産についてメモをして相談したい専門家へ予約をとりましょう。
行政書士などの専門家へ相談する場合は、相談しながら作成しても構いません。
遺産分割に際してトラブルになるリスクを軽減するためにも、分からないことがあれば気軽に聞いてみましょう。
公正証書遺言の作成に必要な準備を依頼
行政書士など専門家に依頼すれば、 公正証書遺言の作成に必要な準備を代行してもらえます。
遺言の内容が決まったら専門家が戸籍謄本など必要書類をそろえて公証人と打ち合わせをします。
この時の必要書類の確保も、代行してもらえることが特徴です。
また、通常は依頼を受けた専門家が証人になってくれます。したがって、証人は1人探せばよいです。
証人2名の立ち会いのもと公正証書遺言を作成
証人はすでに紹介した欠格者以外であれば特段の資格などは不要です。
推定相続人や公証人の近しい人以外であればおじやおば、友人でも構いません。
ただし、遺言書の作成時に立ち会ってもらうため、遺言の内容を知られることになります。
そのため、私たち長岡行政書士事務所に依頼された場合は証人の手配も致します。
証人は守秘義務を課せられた各専門家または当事務所の事務員が担当いたします。
専門家に依頼する場合は、必要書類の用意や公証人との相談日時の予約などの依頼、証人を依頼することも可能ですので手間が少なくなることがメリットです。
公正証書遺言の作成費用
公証証書遺言について、相談については無料ですが、作成費用については公証人手数料令という政令で決められています。
相続財産の価格に応じて手数料は異なります。
目的の価格 | 手数料 |
100万円以下 | 5,000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7,000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11,000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 17,000円 |
1000万円を超え3000万円以下 | 23,000円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 29,000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 43,000円 |
1億円を超え3億円以下 | 43,000円に超過額5,000万円までごとに13,000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下 | 95,000円に超過額5,000万円までごとに11,000円加算した額 |
10億円を超える場合 | 249,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円加算した額 |
財産の相続又は遺贈を受ける人ごとにその財産の価額を算出する必要があります。
それを上記基準表に当てはめて、その価額に対応する手数料額を求め、これらの手数料額を合算して、当該遺言公正証書全体の手数料を算出します。
また、全体の財産が1億円以下のときは、上記の表によって算出された手数料額に、1万1000円が加算されます。
遺言公正証書は、通常、原本、正本及び謄本を各1部作成し、原本は、法律に基づいて公証役場で保管し、正本及び謄本は、遺言者に交付するため、その手数料が必要となります。
原本については、横書きの公正証書は3枚と法務省令で定められています。
原本を4枚目以降が必要となる場合には1枚250円の手数料が加算されます。
正本及び謄本の交付も、1枚につき250円の手数料が必要となります。
公証人が、ご自宅などに赴いて、遺言公正証書を作成する場合には、上の表の手数料が50%加算されること、公証人の日当と、現地までの交通費が掛かります。
具体的に手数料の算定をする際には、上記以外の点が問題となる場合もあります。
それぞれの公証役場に問い合わせてみるとよいでしょう。
参考:公証人連合会HP 公正証書遺言を作成する場合の手数料について
公正証書遺言の作成が難しいと感じたら行政書士など専門家へ依頼
遺言は、最後の意思表示であり、ご本人にとってもご家族にとっても、大切ものです。
確かに公正証書遺言の作成には費用や時間、手間がかかるというデメリットもあります。
しかし、公証人が関わることによって有効性の高い遺言書を作成することができるため、無効にならないなど、安心感が持てると思います。
せっかく遺言書を作っても無効となるようなことがあっては、ご家族にとってもご本人にとっても不本意だと思います。
ご心配であれば長岡行政書士事務所へご相談にいらしてみませんか?
ご依頼者様のご不安を取り除けるよう、精一杯ご協力させいただきます。
<参考文献>
常岡史子著 新世社 『家族法』