「なんで公正証書遺言がおすすめなの」
「どんな準備をすればいいのでしょう」
「公正証書だなんて、なんか堅苦しくて気おくれしちゃうよ」
今日も忙しい長岡行政書士事務所、すでに夜になり皆残業中だが・・・
ひとり窓際にたたずみ月をみてため息をつくヨーコ、どうも皆に気づいてほしい模様。
ヨーコ:「はあ・・・こら、ちょっとひまりさん、先輩がため息ついてるのよ、フォローしなさい」
ひまり:「はい、気づいてたけどそっとしておきました。月見てため息つくのはかぐや姫くらいなものですし、私忙しいので」
ヨーコ:「・・・相変わらずかわいくないわね。まあいいわ、かぐや姫というのは当たらずとも遠からずね。私、この前プロポーズされてお受けしましたの。寿退社するので残された皆さんの事が心配で心配で」
何事かとこっそり聞き耳を立てていたユウとマリが歓声をあげて駆け寄ってくる。
ヨーコ:「いやー、隠しとくつもりだったんだけどね、うん、ありがとうみんな。ホホホ」
ひまり:「おめでとうございます! 聞いてほしそうなオーラ満開でしたが」
ヨーコ:「(スルーして)ま、今日はこれから私式場の下見なんだけど、ひまりさん、まだ少し時間あるから仕事教えてあげるわよ。えーと、今やってる案件は公正証書を作成のお手伝いね」
ひまり:「もう私一人でもできるんですが・・・」
目次
公正証書遺言を実際に作成
遺言書には自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類ありますが(実際は秘密証書遺言もありますが、あまり使われないのでここでは一旦おいといて)、今日は公正証書遺言について、特に実際の作成の流れについて学びましょう。
公正証書遺言がおすすめの理由
ヨーコ「わからないことはきちんと聞くのは後輩のつとめよ。遠慮するなんてあなたらしくないわね。では、なぜ公正証書遺言がおすすめなのか言ってごらんなさい」
ひまり:「はい、自分で書くことのできる自筆証書遺言は極端な話紙とペンがあればいいのでコストが低く、遺言を書くハードルが低いのがメリットですが、その分必要とされる形式が不備であったり保管がおろそかになってしまったりと実際に遺言書としての効力が問われる段階になり問題がおきることがあります。その点公正証書遺言では費用はかかりますが、公に認められた法律のプロである公証人が作成してくれるのでその効力に問題はなく、より安心であると言えます」
ヨーコ:「・・・ほう。下記の一覧表も参照になるわよ」
普通方式遺言の種類と特長 | |||
---|---|---|---|
種類 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 |
作成方法 | 自分で遺言の全文・氏名・日付を自書し、押印する | 本人と証人2名で公証役場へ行き、本人が遺言内容を口述し、それを公証人が記述する | 本人が証書に署名・押印した後、封筒に入れ封印して公証役場で証明してもらう |
証人 | 不要 | 証人2名以上 | 証人2名以上 |
家庭裁判所の検認 | 必要 | 不要 | 必要 |
遺言書の開封 | 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人等の立会いを以って開封しなければならない | 開封手続きは不要 | 必ず家庭裁判所において相続人等の立会いを以って開封しなければならない |
メリット | 作成が簡単かつ安価 遺言内容を秘密にできる | 保管の心配不要 遺言の存在と内容を明確にできる 検認手続き不要 | 遺言の存在を明確にできる 遺言内容を秘密にできる |
デメリット | 検認手続きが必要 紛失の恐れがある 要件不備による紛争が起こりやすい | 遺言内容が漏れる可能性がある 遺産が多い場合は費用が掛かる | 検認手続きが必要 要件不備による紛争が起こりやすい |
遺言書作成する際は事前相談が大切
ひまり:「先日は相談者様と打ち合わせを行い、財産の総額や種類、推定相続人を把握した上で、遺言書を作成したい理由やどのような遺産分割を希望するのかご意向をお聞きしました。やはり相談者様のご意向をきちんと把握することが良い遺言の内容に結びつくと思います」
ヨーコ:「いいじゃない。現時点のものでいいから、財産がわかる資料と推定相続人がわかる資料を見せていただいた? あと、相続にかかる費用のお見積りと今後の流れについても説明してさしあげるといいわよ。よりご相談者様にとって相続のイメージがつかみやすくなるわ」
ひまり:「はい、資料の御開示と費用、今後の流れの説明をさせていただきました。 やはりあとになってこんなの聞いてない、という事態は避けたいですから」
公正証書遺言のひな型を作る
ヨーコ:「なるほどね。では、遺言書のひな型の作成は終わりました? 相談者様のご意向をきちんとカバーできてないといけないから、すり合わせは大切よ」
ひまり:「はい、何度か作成したひな型を基に打ち合わせを行わせていただきました。実は相談者様はご先祖から受け継いできた工芸品に思い入れが強く、客観的な財産的価値はともかく遺言で帰属先を決めたいとおっしゃってました。お話うかがっておいてよかったです」
ヨーコ;「しばらく見ないうちに・・・」
ひまり:「明日は出来上がったひな型を長岡先生と公証人様にチェックいただくつもりです。公正証書遺言は本来は相談者が話して公証人が筆記する口述が基本ですが、今はあらかじめ作った文章を公証人が読み上げていく方法が主流ですからね」
公正証書遺言作成の準備する書類
ヨーコ:「よく理解してるわね。で、書類の準備は進んでる?」
ひまり:「はい、案件によって異なるのですが、長岡先生や公証人様と相談しながら書類の準備を進めております。必要書類として下記を準備いたしました」
- 遺言者の実印と印鑑証明書
- 証人の認印
- 住民票等
- 戸籍謄本
- 受遺者(相続人以外)が居る場合にはその資料(受遺者の住民票等)
- 相続財産の資料(不動産登記簿謄本、有価証券証明書、通帳等)
公正証書遺言の証人の準備と日程調整
ヨーコ「わかったわ、証人の準備は終わったかしら?」
ひまり:「抜かりはございません。欠格事由にあたらない方を2名準備させていただきました。公証人様との日程調整も済んでます」
公正証書遺言の証人になることができない人
- 未成年者
- 推定相続人、受遺者、その配偶者や直系血族
- 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記、使用人
- 文字の読み書きができず、遺言の内容が確認できない人
公正証書遺言作成当日の流れ
ヨーコ:「いいわね。最後に、立ち合い当日の段取りは頭に入っているかしら」
ひまり:「もちろんですよ。準備した証人2人と共に公証人役場に行き、その2人の立会いの下で公証人から内容の読み聞かせを相談者様にしてもらいます。もしくは閲覧をしてもらい内容に誤りがないことを確認したら、遺言者と証人がそれぞれ署名押印を行う、と。遺言する相談者様は実印での押印が必須ですよね。最後に印鑑証明書と遺言書の印影が一致するかの確認をして、公証人様に公証文言を付記していただき署名押印を行えば、公正証書は完成です」
ヨーコ:「完璧よ・・・ひまりちゃん・・・立派になって(あふれる涙)」
ひまり:「ヨーコさん! そして公正証書が完成すると、その原本は公証人役場に保管されるんです! データベースで管理されてるので全国の公証人役場から公正証書遺言の有無を照会することができますよ!」
ひまりの成長に感激を隠せず、これで私も心おきなく事務所を卒業できるわと思うヨーコと、よくわからないけど自分も感動したひまり、そして空気を読んで涙ぐむユウとマリ、途中からタイミング悪く事務所に帰ってきてしまい何となく居づらい長岡であった。
公正証書遺言作成は行政書士にご相談ください
公正証書遺言を用いることでより安全な相続を迎えることができます。
事前に公正証書遺言の文面のすり合わせや書類の準備、証人の手配等をしなければいけませんが、専門家のサポートを利用し一つ一つ進められてはいかがでしょうか。
長岡行政書士事務所では、相続の経験豊富なスタッフが皆様のご相談をお待ちしています。