
大切な文書をペンで書く時は、書き損じをしてしまわないか緊張しますよね。
遺言書も遺産相続に係わる大切な文書ですが、遺言書を書く方は高齢であったり、病気で体が不自由であったりすることもあると思います。
その場合、誤字脱字が心配になるのではないでしょうか。遺言書に誤字脱字があると無効になってしまうのではないか、不安に感じている方もいるでしょう。
そこで本日は、相続にお詳しい横浜市の長岡行政書士様に、遺言書についてお聞きしたいと思います。
お忙しい中お時間いただき、誠にありがとうございます。
自分で遺言書を書いた場合、もし書き間違えてしまったらどうなるのでしょうか。
長岡:こちらこそ、お忙しい中お時間いただき誠にありがとうございます。
目次
自筆証書遺言で誤字脱字があったら無効?
長岡:はい、結論から申し上げますと、自筆証書遺言で誤字脱字があっても、その誤字脱字が軽微で、遺言者の意思が明確に伝わるなら、有効と判断されるケースが多いです。
そもそも「遺言有効解釈の原則」というものがあります。それに関わる、最高裁判所の判決を見てみましょう。
「遺言の解釈にあたっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけでなく、遺言者の真意を探求すべきものであり、遺言書が多数の条項からなる場合にそのうちの特定の条項を解釈するにあたっても、単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出し、その文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況なども考慮して遺言者の真意を探求し、当該条項の趣旨を確定すべきものであると解するのが相当である。」
少し難しい言い回しですが、平たく言うと遺言書の特定の文字の形式的な意味に捕らわれずに、遺言者の真意を探求せよという意味です。
また、同じく最高裁判所は、遺言者の真意の探求に当たって「遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況など」も考慮してよいとしています。つまり、遺言書という書面に書かれたことだけではなく、遺言書という書面にかかれていない事情も考慮してよいということです。
つまり、自筆証書遺言に誤字脱字や、内容に不明瞭な部分ががあったからといって、直ちに無効となるわけではないのですよ。
自筆証書遺言に誤字脱字・不明瞭な箇所がある場合の問題点
よく理解できました。しかし、いかに裁判所が事情を考慮せよと言ってくれても、結局は相続人同士お互いに納得できなければ裁判沙汰になってしまうのではないでしょうか。
長岡:仰る通りです。亡くなった後に、遺言書の解釈を巡って争いとなることがあります。
たとえばですが、2人の子供がいる遺言者が「私の持っている動産及び不動産は、全て長男に相続させる」と書いた自筆証書遺言を残して亡くなったとします。
そして遺言者には、自宅土地建物以外に、預貯金や投資信託があったという場合、この預貯金や投資信託はどうなるのでしょうか。
ん、ちょっと待ってください。この文の何が問題なのでしょうか。誤字脱字もなく、内容も明確な気がするのですが、、
長岡:たしかに誤字脱字はありませんが、内容が明確とはいえません。実は、預貯金や投資信託は金融機関に対する権利であって、物ではありません。よって法律的には、「動産及び不動産」という言葉に、預貯金や投資信託は含まれないのです。
この場合、長男は預貯金や投資信託も含めてすべて相続すると主張するでしょうし、もう一人の子は、預貯金や投資信託については遺言書に書かれていないので遺産分割協議して決めるべきだと主張するでしょう。
なるほど・・・ただ、これは法律の専門家ではない普通の人にはわからないですよね。あまりにきびしいと、怖くて自分で遺言書が書けなくなってしまうのではないでしょうか。
長岡:そうですね、先述した「遺言有効解釈の原則」があるとはいえ、やはり遺言書を残す以上、誤字脱字・不明瞭な記載はなるべく避けて、明確な内容にしたほうが安心ですね。
そのため当事務所としては、自筆証書遺言ではなく、もう一つのよく使われる遺言書のタイプである「公正証書遺言」をお勧めしています。
公正証書遺言は、法律の専門家である公証人のチェックが入るので、これまで述べてきたような誤字脱字や不明瞭な表現を排除することができます。
ただし公証人は、遺言書の中立の立場のため、相続人間の公平や有利・不利についての助言は行いません。また、公証人には「財産一覧の作成」や「分け方を考える段階」からサポートしてもらえないため、事前に自分で下書きを用意する必要があります。
そこで公正証書遺言を作る前には、我々行政書士のような専門家に相談するのがおすすめなのです。専門家は依頼者の家族構成、財産状況、特別な思いなどを踏まえた遺言内容を提案できます。
横浜市の長岡行政書士事務所にご依頼いただけば、遺言内容の作成はもちろん、公証役場との調整などもワンストップ対応いたします。
自筆証書遺言の誤字脱字の訂正方法
ところで、すでに自筆証書遺言を作っており、誤字脱字を見つけた場合、訂正はできるのでしょうか?
長岡:はい、結論から申し上げますと、自筆証書遺言で誤字脱字があっても訂正することは可能です。しかし、がいくつか注意点があります。
まず、自筆証書遺言を訂正する方法は民法で定められており、その方法以外で訂正しても無効となってしまいます。民法内に該当する条文がありますので、ちょっと見てみましょう。
民法第968条
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
出典:e-Govウェブサイト(民法968条3項)
本当ですね、訂正の仕方まで条文に書かれています。
長岡:各人が自由なやり方で訂正したのでは、本人が何という文言に訂正したのかがわからなくなってしまうおそれがあります。よってこの訂正の仕方は厳しく規定されています。
なお、自筆証書遺言は遺言者が全文を自書しなければ成立しないので、訂正ができるのも遺言者のみになります。
たとえ明らかなミスを見つけたとしても、遺言者以外が遺言書に手を加えると無効になるので注意してください。また、遺言者の相続人が自筆証書遺言に手を加えると、相続人の欠格事由に該当する可能性もあります。
欠格事由というのは、相続人としての資格を失ってしまうということですね。
長岡:その通りです。それだけ厳しいのです。また、自筆証書遺言には財産のリストである財産目録が添付されてある場合がありますが、この財産目録も法律によって定められた方法で訂正する必要があります。
さて、この自筆証書遺言を訂正するには、4つの作業が必要です。
- 訂正箇所を示す
- 変更した旨を付記する
- 遺言者の署名を加える
- 訂正箇所に押印する
長岡:例えば「預貯金を長男に相続させる」と書きたかったところ、間違えて「不動産を長男に相続させる」と書いてしまった場合、不動産に二重線を引いて印鑑を押し、預貯金と書き直します。そして右側の開いているスペースに、訂正箇所(本行)と訂正した旨(3字削除3文追加)を書き、遺言者の署名をします。

なるほど。でも一見したところ、遺言書だからといって特別難しい訂正のやり方ではないですね。
間違えたところを2本棒で消して押印、どう訂正したかを記して署名を書く、と・・・
長岡:そうともいえますね、ただ、印鑑は遺言書と同じ印鑑を使用してください。
また、この例では右に訂正箇所を書いてますが、訂正箇所の指示、変更した旨、遺言者の署名は遺言書の何処に書いても大丈夫です。別の場所に書いた場合には「上記2行目2字削除2字追加」のように、訂正箇所や変更した旨が分かるように書きましょう。
自筆証書遺言の関連する記事はこちら:自筆証書遺言書の正しい書き方|失敗例から注意点を学ぼう!
ただし、訂正の仕方を失敗して、意図しない形での相続、もしくは無効になることを防ぐためには、公正証書遺言で作り直すことを検討してもいいかもしれませんね。
遺言者自身が作成する自筆証書遺言とは異なり、公正証書遺言では法律の専門家である公証人のチェックが入るので、これまで述べてきたような誤字脱字や不明瞭な表現を排除することができます。
費用はかかってしまいますが、自分の死後に正確に遺産を遺すことのできるという安心こそ最も優先すべきです。
自筆証書遺言を訂正するなら、公正証書遺言での作り直しも選択肢
訂正方法を正しく守れば自筆証書遺言の誤字脱字を訂正することは可能です。
また、内容が不明瞭な場合は、書かれた事情を考慮すべきとの判決が出ていますが、やはり後々のトラブルの可能性を考えると遺言書を作成した時点で明瞭な文面にしておくべきでしょう。
そのため、もし自筆証書遺言を訂正するなら、公正証書遺言での作り直しも選択肢に入れてみてください。横浜市の長岡行政書士事務所も、公正証書遺言の作成をサポートしております。
初回相談は無料なので、まずはお気軽にお問い合わせください。








