目次
プロローグ
現代日本から転生し、魔王の手によって人々が苦しめられている異世界で、勇者として立ち上がった、とある横浜市の行政書士。
戦士、魔法使い、僧侶、そして勇者という基本構成に忠実なパーティで、打倒魔王の冒険へと向かうべく、次々とクエストをクリアしていった。
そんな中、魔法使いのおじいさんは、自分の身に万が一のことがあってはいけないと考え、勇者の手助けによって遺言書を残すことに。
ところが、せっかく公正証書遺言を作ったのに、なんと……。
Part.1「公正証書遺言を失くしてしまったら?」
魔法使い「な、な、なんと~~~~!」
戦士「どうしたじいさん、いきなり⁉ モチでものどに詰まったか?」
魔法使い「わ、わ、ワシの大事な遺言書が見当たらんのじゃ…」
僧侶「それ、こないだ作っていたナントカカントカ遺言ってやつ?」
魔法使い「公正証書遺言じゃ。確かに、大事にカバンの中に入れておいたんだがのう…」
僧侶「ねえ、勇者さん。その公正証書遺言って何なの? ふうん、証人2人以上の立ち会いのもとで遺言者から口頭で伝えられた内容を公証人が文章化して作成する遺言書なのね」
戦士「公証人が作成して公証役場に保存される公文書になるから、遺言書の破棄や隠匿、変造の心配もなく、信用性が高いってか、なるほどねえ」
魔法使い「もしかしたら、この前に行ったゾンビ系ダンジョンで落としたんじゃろうか…」
戦士「じゃ、とっとと探しに行ってくればいいじゃないか」
魔法使い「簡単に言うでない! 魔法がきかないダンジョンだったから、杖で肉弾戦じゃぞ。わしはあれで、またぎっくり腰になっちまって…」
僧侶「ねえ勇者さん、その公正証書遺言って無くしたらどうなるの? え? 原本は公証役場に保管されていて、手元の写しがなくなっても、役場に行けば再発行できるって。だったら、もう再発行してもらったら、おじいちゃん?」
魔法使い「…そうなのかい? あいた、いたたた」
戦士「ダメだこりゃ。仕方ねえ、じゃ俺が代わりに公証役場に行ってきてやるよ」
僧侶「ちょっと待って。勇者さんが言うには、それは難しいみたいよ」
Part.2「公正証書遺言の再発行は誰でもできる?」
僧侶「ふむふむ、なるほどね、勇者さん。あのね、おじいちゃん。公正証書遺言の再発行はできるんだけど、遺言者本人とか相続人などの利害関係人でないといけないんだって。戦士さんは、当てはまらないわね」
戦士「そうなのか? へえ、遺言書は本人の意思表示であると同時に、大切な個人情報だから、例え夫婦や子供であっても簡単に遺言書を再発行することはできないってか。まあ、そう簡単にホイホイ再発行されたら、危ないもんな」
僧侶「だったら、結局、おじいちゃんが行かなくちゃいけないわけよね。だって、遺言者の生存中は遺言者本人のみが再発行できるわけだから」
戦士「ちょっと待て。勇者さん、なんだって? へえ、遺言者が亡くなった後だったら、相続人などの利害関係人も遺言書の再発行を請求できるんだってさ」
魔法使い「亡くなった後?」
戦士「おうよ。じゃ、もうじいさんひとりでラスボスに挑んで、やられちまったらいいじゃねえか。そしたら、利害関係人の出番だぜ」
魔法使い「…お前、アホじゃろ」
僧侶「困ったわねえ。元いた大陸からだいぶ冒険して離れちゃってるから、おじいちゃんの利害関係人をここまで呼ぶわけにもいかないし…。えっ、代理人も立てられるって、勇者さん?」
戦士「ふうん。遺言者や利害関係人が入院中で公証役場に行くことができないときとかは、代理人に委任して再発行を請求できるのか。なんだ、それなら俺でも行けるじゃないか」
魔法使い「…代理人を任せるなら、絶対に勇者か僧侶ちゃんに任せるがの」
戦士「つれねえなあ」
僧侶「ねえ、勇者さん。代理人の再発行って、具体的にどうするの?」
Part.3「代理人による公正証書遺言再発行の方法は?」
僧侶「あら、勇者さんの宝の地図が光り始めたわ! これが再発行に必要な書類ね」
《遺言者本人が再発行の手続きをする場合》
「印鑑証明(発行3ヶ月以内のもの)と実印」または「公官署が発行した写真入りの証明書(例:自動車運転免許証・パスポート等)」
《遺言者の代理人が再発行の手続きをする場合》
・相続人の印鑑登録証明書(3ヶ月以内に発行されたもの)
・本人の実印を押した委任状
・「印鑑証明(発行3ヶ月以内のもの)と実印」または「公官署が発行した写真入りの証明書(例:自動車運転免許証・パスポート等)」
《遺言者の死後、相続人などの利害関係人が再発行の手続きをする場合》
・遺言者が亡くなったことが記載された戸籍(除籍)謄本
・遺言者と相続人との続柄のわかる戸籍謄本
・「印鑑証明(発行3ヶ月以内のもの)と実印」または「公官署が発行した写真入りの証明書(例:自動車運転免許証・パスポート等)」
《遺言者の死後、相続人などの利害関係人の代理人が再発行の手続きをする場合》
・相続人の印鑑登録証明書(3ヶ月以内に発行されたもの)
・相続人の実印を押捺した委任状
・遺言者が亡くなったことが記載された戸籍(除籍)謄本
・遺言者と相続人との続柄のわかる戸籍謄本
・「印鑑証明(発行3ヶ月以内のもの)と実印」または「公官署が発行した写真入りの証明書(例:自動車運転免許証・パスポート等)」
僧侶「なるほどね。で、再発行手数料が1枚につき250円か」
魔法使い「ご丁寧にわしが死んだあとの方法まで載せてくれるとは…」
戦士「勇者さんは仕事が細かいんだよ。だからそんなジトーッと湿った目で勇者さんを見るなよ」
僧侶「でもさ、おじいちゃんの遺言書が保管してあるのは、元いた大陸の公証役場でしょ? 保管されている公証役場でなければ再発行できないんじゃないの?」
戦士「それもそうだな。え? 郵送でもできるって? なんだ、早く言ってくれよな、勇者さん!」
Part.4「郵送で公正証書遺言を再発行を請求する方法とは?」
僧侶「とはいえ、郵送の場合であっても1度お近くの公証役場に足を運ぶ必要はあるのね? それで、郵送で請求する手順は…と?」
《郵送で請求する手順》
手順1:公正証書謄本交付申請書に署名認証を受ける
近くの公証役場において、公正証書謄本交付申請書の署名押印が申請者本人のものだと公証人に証明してもらう手続き。署名認証は1件につき、2,500円。
手順2:請求先の公証役場に郵送で申請する
公正証書謄本交付申請書に署名認証を受け、必要書類と共に請求先の公証役場に郵送で申請。郵送書類は以下の3点。
・公正証書謄本交付申請書
・戸籍謄本
・本人確認書類
手順3:謄本交付手数料を指定口座に振り込む
申請書類等が公証役場に到着後、公証役場から連絡が入る。そこで振り込み口座の指示通り、謄本交付手数料を振り込む。謄本交付手数料は1枚につき250円。
戦士「そもそも論だけどさ、作成した公証役場を忘れちまった場合はどうするんだ?」
魔法使い「なんでそんな心配をするんじゃ?」
戦士「だってじいさん、ボケ…いや、なんでもない」
魔法使い「ボケてない証拠に…最大火力の火炎魔法を見舞ってやろうか?」
僧侶「勇者さんが言うには、遺言検索システムってのがあるみたいよ」
魔法使い「なんじゃ、そのハイカラな仕組みは?」
僧侶「全国どこの公証役場からであっても遺言書がどこに保管されているかを調べることができるんだって。ただし、このシステムを利用できるのは遺言者の生存中はご本人だけみたいね」
魔法使い「まあ、わしは覚えておるから大丈夫じゃがのう? のう、戦士よ?」
戦士「わかったわかった(あんまりイジると末代まで祟られそうだ…)」
エピローグ「もし公正証書遺言を無くしたら行政書士へ相談を」
僧侶「とりあえず、一件落着ね」
戦士「これが自筆証書遺言だったら、また書かなきゃいけないハメになってたな、じいさん」
魔法使い「まったくじゃ。検索システムなんて便利なものもあるしのう」
僧侶「勇者さんが言ってるわ。遺言書はご自身の納得いく形で作成されることが大切だけど、公正証書であれば公証人が関わるから、遺言書の書式を間違えて遺言が無効となる心配も少なくなって、いろんな安心感が持てる…その通りよね」
戦士「よし! じゃあ早速再発行しようぜ。じいさんが心置きなくモンスターにやられてもいいようにな!」
魔法使い「……ブツブツ」
僧侶「おじいちゃん、ダメよ、最強火炎魔法ぶっぱなしちゃ…!」