葬祭費は誰の負担?遺言書に書くべき葬儀費用について行政書士が解説

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遺言書に書いた方が良い「葬祭費」について解説!

 

「葬祭費にはどのようなものがあるのだろう。」
「葬儀の費用は誰が払うのだろうか。」
「遺言に葬祭費について書けるのだろうか。」

 

ご自身亡き後の葬儀について、「こうしたい」という具体的な内容が決まっている方や、そこまではっきりとしていなくても、「こんな感じにしたい」という希望のイメージをお持ちの方は多いかと思います。

しかし、葬祭費の支払いをどうするのか、誰がするのかについて、明確に決めている方は少ないのではないでしょうか。

 

葬儀は突然のことであるにもかかわらず、その費用は高額である場合がほとんどです。今回はその葬儀に関して、費用は誰が払うべきなのか、遺言に書くべきなのかについて、考えていきたいと思います。

 

長岡:「こんにちは!長岡行政書士事務所・長岡です。」

 

Aさん:「こんにちは!今回もよろしくお願いいたします。今回は、葬儀と遺言についてお聞きしたいことがあります。」

今まで先生と遺言について勉強してきたなかで、葬儀内容について、『こうしてほしい』という希望を遺言に記すことができると知りました。」

 

長岡:「いわゆる『付言事項』と言われる項目で書くことができますね。これは遺された人へのメッセージのようなものでしたね。」

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Aさん:「そしてその葬儀についてなのですが、葬儀を含む葬祭は、そのように希望を取り入れたとしてもそうでなかったとしても、費用がかかりますよね。葬祭費は結構な金額になるのが一般的ですが、その費用の支払いはどうすれば良いのでしょうか。」

 

長岡:「葬祭費を誰が支払うのか、ということですね。確かに、葬儀内容を遺言で指定することについては以前説明しましたが、葬祭費の支払いについてはまだ触れていませんでしたね。」

 

Aさん:「はい。実際は家族や親族などの相続人が葬儀を執り行うことが多いと思うのですが、費用の支払いは誰がすべきなのか分かりません。遺言でどうにかできますか?」

 

長岡:「わかりました。では今回は、葬祭費と遺言の関係について考えてみましょう。」

 

Aさん:「はい!よろしくお願いします。」

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葬儀費用とは

Aさん:「ところで先生、葬祭費といっても、具体的にどのようなものがあるのか、私にはまだ先のことで内容や金額のイメージがつきません。」

 

長岡:「そうですね。ではまず先に、葬祭費にはどのようなものがあるのか、またおおよそどのくらいかかるものなのか、みていきましょう。」

どんな支出が葬儀費用となり、どのくらいの金額になるのか、気になる方も多いでしょう。

内容や地域などにより差はありますが、葬儀にかかる合計費用は、おおむね200万円前後と言われています。
日常生活を営むなかで発生する支払いとしては、かなり高額です。

まずは葬儀費用に含まれるもの・含まれないものについて紹介します。

葬儀費用に含まれるもの

葬儀費用については、「これが葬儀費」というものが法律で明確に定められてはいませんが、大きく以下の3つに分類でき、以下の内容が葬儀費用と考えられています。

①葬儀そのものにかかる費用

葬儀屋に支払う葬儀一式費(飲食代含む)・お通夜の諸費用(飲食代含む)

②飲食や接待の費用

葬儀・お通夜の出席者へのお礼の品代

③寺院などへの謝礼費用

住職へのお布施・戒名代・お車代など

葬儀費用に含まれないもの

一方、次のような費用は、葬儀費用としては扱われないことが一般的です。

  • 墓地や墓碑の購入代金
  • 仏壇や仏具の購入代金
  • 法要の費用
  • 解剖費用

葬祭費は相続人が被相続人から相続した負債ではない!

Aさん:「想像はしていましたが、やはり葬儀費用には結構な額がかかるのですね。」

長岡:「そうですね。少ない額ではありませんので、支払う人にはかなり負担となります。」

Aさん:「そのような大きな金額を誰が支払うべきなのか、気になります。」

長岡:「では葬祭費の支払いについて、誰が支払うのかも含めてくわしく見ていきましょう。」

 

まずはじめに注意したいのは、葬祭費は、相続人が被相続人から相続した負債ではない、ということです。

亡くなった故人に関する支出であることから、一見、遺産の中から支出すべきであるようにも思えます。

 

しかし、相続は債務も含めて、被相続人が「生前に」有していた財産に限られます。

葬祭費はあくまで被相続人が亡くなった「後」に発生するものであるため、生前の相続財産には含まれないと言えるのです。

したがって、各相続人が相続して分担して支払わなければならない性質のものではないのです。

 

そこで、いったい誰が葬祭費を支払う義務があるのか問題になりますが、この点、実は法律に定めはなく、決まっていないのです。

したがって、誰が喪主になっても良いし、誰が葬祭費を支払っても良いということになります。

 

このように、葬祭費は「被相続人の相続財産ではない」こと、「誰が支払うのか法律で決まりがない」ことから、相続人の間で争いが起こる原因となってしまうことがあるのです。

 

現在の日本では、仏式・神式の葬儀の際には、香典(神式の場合は玉串料など)として金銭に霊前を供えることが一般的です。

 

香典は死者の霊前に供えるものですが、実際の解釈としては、葬儀を主宰する喪主への贈与と考えられ、「葬儀費用の負担を助け合う」という目的として贈られる場合が多く、葬儀費にあてられることが多いです。

 

しかし香典は喪主への贈与とみなされているため、相続財産には含まれない独立した金品として扱われますので、トラブルにつながることもあります。

 

例えば葬儀費用を支払ったあとに香典が残ったとしても、その使い道を決められるのは喪主ということになり、他の相続人が持ち分を請求する権利はありません。

 

また、葬儀代を相続人の一人が立て替えたときに、葬儀費用より香典の方が多いのに受け取った喪主から何の連絡もない等、相続人の間でトラブルの原因となることが多々あります。

 

香典ひとつとっても、葬儀費の支払いとの関係では問題となることがあるのです。

葬儀費用は誰が負担するべき?

Aさん:「香典も含め、葬儀費の支払いについては、なんだか問題が多い印象です。」

長岡:「そうですね。葬祭は広く一般的に執り行われているにもかかわらず、その費用は誰の債務となるのか明確な規定がないために、混乱が生じてしまいますね。

次に、判例はどのように判断しているのかみてから、遺言と葬祭費について考えて終わりたいと思います。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。」

Aさん:「わかりました!遺言で対策ができるといいですね。」

 

では、葬儀費を誰が支払うべきなのかと争いとなった場合、裁判所はどのような判断をするのでしょうか。実は裁判所の扱いも一律ではなく、以下の通り見解が分かれています。

 

  1. 喪主負担
  2. 相続人または相続財産が負担
  3. 慣習・条理により決める

1については名古屋高等裁判所平成24年3月29日判決などでとられています。
2については東京地方裁判所平成17年7月20日判決などでとられています。
3については、近年ではあまりとられない見解といえます。

このように、判例も見解が一致していません。

葬儀費は誰が支払うか、ということについては、確定的な見解はなく、葬儀の主宰者は誰だったのか、主宰者が単独で葬儀内容を手配したのか、他の相続人はどの程度関与したのか、など、個別の事情を考慮して誰が負担するのか判断すべきことがうかがえます。

喪主負担

原則として喪主、つまり実質的に葬式を主宰した者が負担する見解です。

どのような規模でどれだけの費用をかけて葬儀を行うのかを決めるのは喪主なので、費用は喪主が負担するべきと考えます。

この場合、遺産からの支出は認められないことになります。

相続人または相続財産が負担

葬儀費用は全相続人の共同負担とする見解です。

法定相続人は、他の相続債務と同様に、法定相続分に従って当然に分割される葬儀費用を負担することになります。

すでに葬祭業者に支払いが済んでいる場合は、支払いをした相続人は、各相続人に対してその負担割合に応じて請求をすることができます。

慣習・条理により決める

その地方または死者の属する親族団体内における慣習もしくは条理に従うべきとする見解です。

葬祭費について遺言に記載する必要性

今まで見てきた通り、葬祭費は金額が大きく、また誰がどこから負担するのか法律で明確に定められていないため、結局のところ誰が払うべきなのかはっきりせず、遺言者の亡きあと、相続人の間で混乱や争いを招いてしまう恐れが残ってしまいます。

 

葬儀費用はそもそも故人債務ではないため遺言事項ではないのですが、トラブルを防ぐためにも、遺言書のなかに葬祭費の支払いについて記載しておくことは有効です。

 

葬儀の内容について「付言事項」とよばれる項目で書くことができるのと同様に、葬祭費の支払いについても付言事項に書いておくことができます。

付言事項は法的効力をもたないメッセージのようなものですが、被相続人の想いを記しておくことができますので、遺された相続人にとって、どうすればよいかの道しるべとなります。

例えば遺言で「葬儀費用を遺産から支出する」旨記載されていた場合、それを見た相続人は、故人の遺志だからと汲み取って、合意をもって遺産から支出してくれることが想定され、不要な争いを防ぐ効果が期待できます。

ただし、葬儀は被相続人が亡くなったのちすぐに執り行われますから、せっかく遺言に記した葬儀費用について、確認が間に合わなくなることが考えられます。

葬祭費についての遺言を確実に実現するためには、生前のうちに葬祭費について遺言を記した旨を、相続人に伝えておくことが必要といえます。

遺言では葬儀費用の負担を明確にすることが大事

葬儀は、相続手続きよりもまず先に執り行われるものです。

遺された家族や親族は、突然のことに、慌ただしく混乱の中で葬儀に関するさまざまなことを決定しなければなりませんし、その葬儀には多くの費用がかかり、支払いも済ませなければなりません。

葬儀費の支払いについて遺言者の意思が明確になっていれば、遺された人たちは迷ったり混乱したりすることなく葬儀の準備にとりかかれる可能性が高くなります。

遺言の作成を検討されている方は、葬儀費の支払いについても遺言に記すことを検討してみてはいかがでしょうか。

 
行政書士 長岡 真也
この記事の執筆・監修者:長岡 真也(行政書士)
神奈川県行政書士会所属(第12091446号)
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