「まだ小さい子どもが相続人になっている、どのように遺産分割協議をすればいい?」
「相続人になっている子どもが損をしないように、親が代理人になれる?」
「特別代理人が必要かも、誰が適役?」
相続は必ずしも成人だけが相続人となるわけではありません。時には未成年者が相続人になることがあります。未成年者にとっての親も相続人となるようなケースでは、親子間で利益相反(※1)となるため、未成年者側に代理人が必要です。本記事では、未成年者がいる場合の遺産相続について、特別代理人が必要とされるケースに注目します。特別代理人の概要と、選任方法などを詳しく解説しますので、ぜひご一読ください。
(※1)利益相反とは 当事者間で1つの利益について話し合う場合、一方が利益を得ると、もう一方は不利益になることを意味します。
目次
特別代理人の概要
未成年者が相続人となっており、その親にあたる立場の方も相続人となる場合は、「特別代理人」の選任が必要となるケースがあります。具体的には、夫が亡くなり、配偶者である妻と、未成年の子が相続人となるようなケースです。この場合、未成年とは「0歳~18歳未満(※2)」を意味します。では、特別代理人とは一体どのような方を指す言葉でしょうか。
(※2)未成年の年齢と法改正
2022年4月1日以降、民法改正により、未成年者の定義はこれまでの20歳未満から18歳未満へと変更されています。
特別代理人とは、未成年者に代わって法的な手続きに代理人として参加する人のことです。家庭裁判所に選任を求めることで、特別代理人が選ばれています。
特別代理人の役割
未成年者がいる相続で特別代理人が選任されると、主に以下の2つの業務を遂行します。
- 遺産分割協議に未成年の子の代理人として参加する
親子間で利益相反が発生する相続では、未成年の子の特別代理人が、遺産分割協議に参加します。未成年の子が相続で不利な立場にならないように、発言します。被相続人が遺した債務が高額の場合などでは、特別代理人が未成年者の子に代わって相続放棄も行います。(ただし、相続人である父・母が相続放棄する場合は、父・母が相続人ではなくなるため父母が法定代理人として手続きできる) - 相続財産の取得のサポート
遺産分割協議が成立し、未成年者が取得する相続財産が確定したら、その取得についてもサポートを行います。不動産の相続登記、分配される現金や預貯金を取得するサポートです。
特別代理人が必要となる相続とは
未成年の特別代理人が必要となるのは、一体どのような相続のケースでしょうか。
- 未成年の子と、その母や父が相続人になるケース
夫が亡くなり、配偶者の妻と子1名が相続人となるようなケースでは、1つの相続財産を2人の相続人で協議する必要がありますが、未成年である以上は法定代理人が必要です。このようなケースでは、母も相続人であるため法定代理人にはなれないため、特別代理人が必要です。 - 未成年の複数の子が相続人となるケース
離婚した夫が亡くなり、相続人には離婚した妻側にいる子2名が該当する場合、上記1に上げた条件とは異なり、現在は妻ではないため子の母は元夫の相続人ではありません。
そのため、子どもの法定代理人になれますが、未成年の子が2名以上いるようなケースでは、1名の法定代理人にしかなれません。子ども同士が利益相反となるため、母が法定代理人になれなかった子については、特別代理人が必要です。
特別代理人の選任方法とは
実際に特別代理人を選任する場合には、どのような流れになるでしょうか。この章では手続きについて詳しく解説します。
特別代理人の選任は、家庭裁判所にて行います。選任の申立てができる人は、未成年の子の親権者もしくは利害関係者です。未成年の子の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。
特別代理人選任の必要書類及び費用
- 特別代理人選任申立書
- 未成年者本人の戸籍謄本
- 親権者や未成年後見人の戸籍謄本
- 特別代理人候補者の住民票(戸籍の附票でも可)
- 遺産分割協議書案など、利益相反の事実が客観的に分かる資料
- その他、家庭裁判所が求める資料
費用については、収入印紙800円及び各家庭裁判所が求める郵券(切手)です。
参考URL 裁判所 特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合)
特別代理人申立て時の注意点
- 申立ては早く行う
申立て時の注意点には、「早期の申立てが必要」であることが挙げられます。特別代理人が必要なケースでは、まずは特別代理人を選任してからではないと、遺産分割協議を進めることができません。なお、選任は申立てされてから 1~3か月程度は要します。遺産分割協議が遅れると、相続財産の取得が遅れるだけではなく、相続税申告に関しても遅れてしまう可能性があります。 - 権限が無い行為はできない
未成年者の代理人として活躍できる特別代理人ですが、裁判所の審判に沿って活動を行うものであり、認められていない行為に従事はできません。
特別代理人になれる人とは
未成年者の特別代理人になれる人とは、一体どのような人でしょうか。この章では特別代理人に慣れる人や、候補者が見つからない場合について解説します。
特別代理人に資格は不要
特別代理人には資格は不要のため、事実上相続に利害が無い方であれば誰でもなることができます。ただし、未成年の子の代理人として遺産分割協議に参加する以上、適している方はじっくりと検討するべきです。
ただし、欠格要件がありますので、以下の方は特別代理人になれません。
- 未成年者
- 破産者
- 行方不明者
候補者は申立人側が裁判所に提出する「特別代理人選任申立書」の候補者欄に書いておくことができます。(その方が選ばれるとは限りません)
親族の候補者
一般的には未成年者のことを知っている、親族が候補者として選ばれることが多くなっています。未成年者から見ると、叔父や叔母にあたる方などです。身内の候補者について、予めアドバイスが欲しい場合は、家庭裁判所に相談できます。
候補者が見つからない場合
候補者が見つからない場合は、専門家に依頼することもできます。弁護士や司法書士などです。申立て時には候補者を無理に挙げる必要はなく、家庭裁判所が適任とする専門家を選びます。
未成年がいる相続が開始されたら誰に相談する?
未成年者がいる相続が開始されたら、特別代理人が必要なケースかどうか、適切に判断する必要があります。そのため、申立ての前に相続の全体を把握するためにも、法律の専門家に相談することがおすすめです。
相続人調査や相続財産の把握に困ったら
未成年者のいる相続の場合も、通常の相続と同様に相続人調査や相続財産の把握を行う必要があります。特に特別代理人が必要なケースでは、家庭裁判所への申立て時には「遺産分割協議書案」を作っておくことが一般的であり、行政書士などの専門家への相談がおすすめです。
相続に不安がある、遺産分割協議書を作ってほしい、などのご要望は、いつでもお気軽に行政書士にご相談ください。
遺産分割協議書の作成や、遺言書はお気軽にご相談を
この記事では、未成年が居る場合の遺産相続について、「特別代理人」の概要を中心に詳しく解説しました。相続開始後に、利益相反が発覚したら、相続手続きをなるべくスムーズに進めるためにも、早期に特別代理人を申し立てることが大切です。遺産分割協議書案の作成にお困りでしたら、まずはお気軽に長岡行政書士事務所にご相談ください。
なお、遺言書がある相続では、遺産分割協議が不要となるため煩雑な特別代理人の申立てを回避できます。長岡行政書士事務所では、「遺言書の作成」についてもおまかせいただけます。