遺留分の計算事例をわかりやすく解説!行政書士がクイズ形式で教えます

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みんなで学ぶ遺言クイズ 相続人が持っている最低限の権利「遺留分」って何?
今回は相続の際にぜひ知っておきたいとても大事な仕組みである「遺留分」という制度についてお話ししていきます。

 

親が亡くなって相続が現実のものとなったとき、遺言書の有無によっても、状況が変わります。

中には「思ったより自分の受け取れる財産が少なかった」というケースも少なくありません。

そのときに登場するのが「遺留分」という制度です。

 

遺留分とは、一定範囲の法定相続人に対して法律が保障した、遺産を最低限受け取ることのできる割合のこと。

 

故人(被相続人)は、自分が亡くなった後の財産処分について、生前自由に決めることができます。

ですが、決め方によっては遺産を相続できたはずの子供や親族(相続人)が、まったく財産を受け取ることができないというケースもでてきます。

そこで、法律によってきちんと遺留分を保障し、相続人の生活が困らないようにしているのですね。

 

本記事は、通常の法律の文章は難しいため、遺留分の計算事例を「楽しく」「わかりやすく」お伝えするためにクイズ形式にしています。

そのため、法律的な表現が少し変、厳密に言うとこうだ!等あるかと思いますが、そこは温かい心で読んでいただければと思います。

 

では、クイズ形式で出題しますので、家族やご友人とチャレンジしてください。さあ、あなたのまわりで、遺留分クイズ王になるのは誰だ⁉

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遺留分の割合はどのくらい?

さあお待ちかねのクイズタイムです! 今回も、司会の私と、解説の行政書士長岡さんでお届けしいたします! 長岡さん、よろしくお願いします!

長岡「よろしくお願いします。遺留分は問題になりやすいテーマですからね。しっかりと学んでいきましょう!」

では早速始めちゃいましょう、第1問です!

第1問:遺留分については、誰がどの程度その権利有しているのか、法律で定められていますが、それを定めている民法は第何条?

  1. 1042条
  2. 2億8499条
  3. あしたの条

長岡「どう考えても1ですね(笑)」

あらっ、答え言われちゃった! まあ最初の問題ですからね、サービス問題です。その通り、正解は1です!

遺留分の帰属及びその割合は民法で定められています。

民法第1042条

 

兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
1.直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
2.前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
3.相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第九百条及び第九百一条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。

 

おや? この条文の中に「兄弟姉妹以外の相続人」とありますが、法定相続人は兄弟以外でもなれるということなんですか?

長岡「なれるんです。被相続人(故人)の配偶者は常に相続人になれますが、配偶者の次の順位から法定相続人の条件を満たすのは、こちらの方々ですから、両親も含まれるんですよ」

法定相続人の条件を満たす人

第1順位:被相続人の子ども(子どもが亡くなっている場合は孫)
第2順位:被相続人の両親
第3順位:被相続人の兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっているときは兄弟姉妹の子どもや孫)

 

ということは、配偶者と子どもがいる場合、法定相続人は配偶者と子どもになりますよね。となると、第2順位である被相続人の両親は相続人にはなれないわけですか。

長岡「そうなりますね。もし第1順位である子どもがいない場合、配偶者と第2順位の両親が相続人となるわけです」

法定相続人ごとの遺留分割合

ちなみに、遺留分で受け取れる相続は、どの程度なんでしょう? 配偶者と子どもひとりだったら、単純に1/2ということですか?

長岡「その条件であれば、1/2ですね。こちらの遺留分の割合は法律で決められているので、表にまとめてみました」

 

法定相続人法定相続分遺留分説明
配偶者のみ全部1/2
子のみ全部1/2子どもが複数の場合、左記割合を子どもの人数で按分
父母のみ全部1/3父母それぞれの割合は、左記割合を1/2で按分
兄弟姉妹のみ全部なし兄弟姉妹が複数の場合、左記割合を1/2で按分。遺留分はなし
配偶者+子配偶者1/2,子1/2配偶者1/4,子1/4子どもが複数の場合、左記割合を子どもの人数で按分
配偶者+父母配偶者2/3,父母1/3配偶者1/3,父母1/6父母それぞれの割合は、左記割合を1/2で按分
配偶者+兄弟姉妹配偶者1/2,兄弟姉妹1/4配偶者1/2,兄弟姉妹なし兄弟姉妹が複数の場合、左記割合を人数で按分。兄弟姉妹の遺留分はなし

 

なるほど、これだけきっちり決まっていればわかりやすいですよね。さて、ではこれまでの基礎知識を踏まえて第2問にいってみましょう!

「法定相続人が子のみ」の場合の遺留分計算事例

第2問:ある父親のもとに、相続人として長男・長女・次男の3人がいました。父親名義の不動産3000万円、預貯金600万円という財産があり、父親はこれを「長男に不動産、長女と次男に預貯金を半分ずつ」という遺言を残しましたが、長女と次男が「ちょっと待てーい!」と遺留分を請求。さて、このとき長女と次男は、長男にそれぞれいくらの遺留分を請求できるでしょうか?

  1. 1800万円
  2. 300万円
  3. 600万円

ヒントは、上の表の「法定相続人が子のみの割合」をご覧ください。さて長岡さん、正解を発表してください!

長岡「一気に難しくなりましたね! 正解は、2になります!」

ではまず状況を整理しましょう。問題では、遺言として長女・次男の相続内容が預貯金の半分、つまりそれぞれ300万円となっていますが、そこに加えて300万円を請求できるということですね?

 

長岡「そうなのです。遺留分の計算をすると、次のようになります」

遺留分の具体的な計算式

相続財産=3000万円+600万円=3600万円
相続人は子のみ(遺留分は1/2)なので、3600万円×1/2=1800万円となり、子1人当たりの遺留分:1800万円×1/3という計算になる。
つまり、1人頭600万円が遺留分となる。

なるほど、長女と次男は遺言書により300万円を相続していますから、長男が残り300万円をそれぞれに支払えば、法律で決められたとおりの遺留分になるのですね。

長岡「はい。その通りです」

遺留分侵害額請求の方法と流れ

長岡「遺留分が侵害されている相続人は、遺留分を受遺者や受贈者に請求できるのですね。これを遺留分侵害額請求といいます」

遺留分侵害額請求には、3つの流れがあると聞きましたが?

 

長岡「その通り。まずは話し合い、まとまらなければ家庭裁判所で調停となり、それでも難しい場合は…」

ストップ! そこは問題として出させてくださいよ、長岡さん! ということで、第3問です。

第3問:遺留分侵害額請求をする場合、最初に遺留分を侵害した相手と話し合いを行い、まとまらない場合は、家庭裁判所に調停を申立てます。調停でも協議がまとまらない場合、最後の解決法はどんなものでしょうか?

  1. 仁義不徹底不届者訴訟を起こす
  2. 調停無視罪訴訟を起こす
  3. 遺留分侵害額請求訴訟を起こす

ヒントは、「今回何を請求しているのか?」です。では長岡さん、正解をお願いします!

長岡「はい、正解は3になります! 1、2のような訴訟はありませんね(笑) 遺留分侵害額請求の流れをまとめていますので、詳しくはこちらを見てみてください」

 

《遺留分侵害額請求の流れ》

  • ①遺留分を侵害した相手と話し合い
  • ②遺留分侵害額請求の調停
  • ③遺留分侵害額請求訴訟

①遺留分を侵害した相手と話し合い

遺留分侵害者やそのほかの相続人とも話し合いを行い、当事者間で解決を図る。
話し合いでまとまらない場合は、家庭裁判所に調停を申立てる。

②遺留分侵害額請求の調停

直接の話し合いではなく、調停委員が間に入って双方の言い分を聞き、調整を行う。調整がまとまれば調停調書が作成される。まとまらなければ、遺留分侵害額請求訴訟へ。調停調書の内容を相手が守らない場合、強制執行もできる。

③遺留分侵害額請求訴訟

最終的な手段として、裁判によって解決を図る。侵害額が140万円以内であれば簡易裁判所、140万円以上の場合は地方裁判所で訴訟を提起する。

 

遺留分の放棄方法

お金の問題ですから、たとえ家族間であっても主張はあるでしょうね。

長岡「そうなんです。話し合いや調停でうまくまとまるに越したことはないのですが、それぞれに事情はあるでしょうから、一概には言えませんね」

でも、たとえば今回の長男・長女・次男の例で、もし次男が事業に成功するなどして、「俺、大丈夫だから、兄さんと姉さんで分けてよ」という家族愛に満ちた発言をするとどうなるんですか?

 

長岡「遺留分の放棄ですね。確かに、遺留分の権利を相続人自ら放棄することはできるんです。ただし、遺留分の放棄は、『遺留分侵害額請求をする権利』を放棄するわけですから、相続人の地位まで放棄できるわけではないんです」

 

ということは、遺留分の放棄をしたとしても、例えば遺言書で遺産の分割を指定されていたとしたら、その遺産を受け取る権利は残るわけですか。

 

長岡「そうなりますね。そして、遺留分の放棄をしても、他の相続人の遺留分が増えるわけではないんです」

なるほど。それでも遺留分の放棄をしたいという場合、どうしたらいいんですか?

長岡「遺留分の放棄は、被相続人の生前でも死後でもすることができますが、いつするのかで手続きが異なります」

被相続人の生前に遺留分を放棄する方法

被相続人の生前に遺留分放棄を行う場合、必ず家庭裁判所の許可を得なければならない。許可が認められるためには以下の要件も必要とされる。

  • 遺留分の放棄が本人の自由意思に基づくものであること
  • 遺留分放棄に合理的な理由と必要性があること
  • 遺留分放棄の十分な見返りがあること

被相続人の死後に遺留分を放棄する場合

被相続人の死後に遺留分を放棄する場合は、生前に遺留分を放棄する場合のような決まった手続きは必要ありません。

 

そうか…生前に放棄する場合、被相続人や他の相続人が「当然、遺留分の放棄するよな? だってお前のものは俺のもの、俺のものは俺のものだよな、のび太!」みたいな強要があるかもしれませんしね。

 

長岡「それジャイアンじゃないですか。のび太って言っちゃってますし。まあでも確かに、生前に遺留分を放棄する場合は不当な干渉が行われる可能性がないとは言えませんから、裁判所の許可という厳しい手続きを必要としているんですね」

 遺留分は1年以内に請求しなければならない

ちなみに、遺留分侵害額請求ていつでもできるものなんですか? 例えば、やるの忘れてて、しばらくして思い出してから手続きしたい、とか?

 

長岡「遺留分侵害額請求には期限があるんです。それを超えると、実質的に遺留分を放棄したのと同じ結果になるんですね。期限は相続開始と遺留分侵害の双方を知ってから…(ピーッ)以内ですね」

 

おっと、長岡さん! そんなオイシイ情報をクイズにしないわけにはいきませんから、ピー音を入れさせてもらいましたよ! ではここでラストクエスチョンです!

第4問:遺留分侵害額請求の期限は、相続開始と遺留分侵害の双方を知ってからいつまでに請求しなければいけないでしょうか? 

  1. 1年以内
  2. 1日以内
  3. 1秒以内

もうヒントなしでもいけますよね! さあ長岡さん、正解をどうぞ!

 

長岡「1の1年以内ですね。全問正解された方はおめでとうございます!」

いやあ、白熱したクイズでしたね。ところで、私、ひとつだけ気になることがあるんです。

 

長岡「なんでしょう?」

遺留分の放棄・相続放棄・相続廃除の違い

先ほど、遺留分の放棄はできても、相続人の地位まで放棄できるわけではないことがわかりましたが、相続人自体を放棄したいという場合はどうすればいいんですか?

 

長岡「いい質問ですね! 被相続人の負債も含めたすべての財産を相続しない『相続放棄』もできます。相続人の地位を失いますので、初めから相続人ではなかったことになるわけですね」

ということは、被相続人の負債も含めたすべての財産を相続しないで済むわけですね。

 

長岡「もうひとつ、『相続廃除』という制度があります。たとえば、子供が年老いた親に対して、虐待や非行などの行為を行っていて、この子に相続させたくないと親が考えたとします」

昨今、たまにそういう悲しいニュースも流れますよね。

 

長岡「その場合に、被相続人である親が家庭裁判所に請求して、相続権を有する人(虐待や非行などを行う子供)を相続から外すことができるんです。相続廃除をされた相続人は、相続権だけではなく遺留分も失うことになります」

 

そういう制度もあるなら、被相続人も安心ですね。でも遺留分の放棄、相続放棄、相続廃除の内容を勘違いしないよう気を付けなければなりませんね。」

長岡「そうです。遺留分の放棄、相続放棄、相続廃除の違いはとても大きなものですので、困る前に行政書士に相談したほうがいいですね」

遺留分で問題が起きないよう事前に遺言内容を確認

遺留分の請求は、相続人にとって正当な権利ではありますが、そうならないよう、事前に遺言内容をチェックしておくほうがよさそうですね。

大切な家族に争いの目を残さないよう、しっかりとした遺言書を書いておくことが大切です。

それではまた次回をお楽しみに! 解説の長岡さん、ありがとうございました。

長岡「ありがとうございました!」

この記事を詳しく読みたい方はこちら:相続人には最低限の権利があると聞いたけど本当?意外と知らない!遺留分とは何か?

 
行政書士 長岡 真也
この記事の執筆・監修者:長岡 真也(行政書士)
神奈川県行政書士会所属(第12091446号)
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