「相続財産の調査って、なに?」
「財産目録ってなに?」
「相続財産の調査が必要な理由も詳しく知りたい!」
上記のような疑問や悩みを抱えている方がいるのではないでしょうか。
遺言書作成時や遺産分割・遺言執行の際には、被相続人の遺産を記載した書面である「遺産目録」を作る必要があります。
今回のコラムでは、遺言書作成時の財産の調査方法や、負債の調査まで必要な理由について詳しくご説明します。とくに遺言書作成に伴う財産目録の作成を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
遺言書作成や相続では被相続人の財産の調査が必要
遺言書作成や相続における調査とは、遺言者や被相続人(亡くなった方)の財産を把握するために行う調査のことです。
このとき調査する財産はプラスの財産(資産)だけではなく、マイナスの財産(負債)も含まれます。
例えば、被相続人に預貯金がある場合、通帳やカードを基に金融機関を特定し、残高証明書を発行してもらいます。また、不動産や債券などもプラスの財産として調査しなければなりません。マイナスの財産としては、借金や住宅ローンなどが挙げられます。
相続財産の調査をする人は、被相続人の全ての財産を調べましょう。調査後、財産目録を作成すると、全ての財産を把握しやすくなります。
遺言書作成時の財産目録に記載される事項
遺言書作成時の財産目録に記載されるプラスの財産とマイナスの財産、それぞれについて詳しく解説します。
遺言書作成における主なプラスの財産一覧
- 預貯金
- 不動産
- 現金
- 有価証券(債券、小切手、手形など)
- 自動車
- ゴルフ場の会員権等
- 貴金属
- その他
プラスの財産の項目である預貯金や不動産などは、複数存在する可能性があります。同じ金融機関であっても支店が異なることもあり得るでしょう。各金融機関の預貯金や不動産などを全て調査してください。
遺言書作成における主なマイナスの財産一覧
- 各種ローン
- 借金
- 債務(※1)
- 家賃
- その他
マイナスの財産として挙げられる借金は、借用書がない個人間のやり取りも該当します。
また、債務とは相手方に特定の行動をする義務のことです。金銭を支払う義務や不動産を引き渡す義務などの行為が挙げられます。
詳しく財産を調査した場合、プラスの財産よりもマイナスの財産が多くなるケースがあります。
遺言書作成時にマイナスの財産の方が多くなりそうなことが分かった場合には、相続人によっては相続開始時に相続放棄を選択することもあるでしょう。
相続財産の放棄は、相続の開始を知った日から3ヵ月と定められています。
民法915条(相続の承認又は放棄をすべき期間)
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。
出典:e-Govポータル
URL:https://www.e-gov.go.jp
遺言書があっても、相続人が相続放棄することは可能です。
遺言書を残すとき、負債の方が大きくなりそうであれば、相続人を含めてその後の対応を考えた方がいいでしょう。
遺言書作成時に財産調査をする3つの理由
相続財産の調査は、相続の手続きをする上で欠かせません。相続財産の調査をしなければ、適切な相続を進められないからです。
しかし生前に遺言書を作るときにも、財産調査をする作業は非常に重要です。
- 遺言書で遺産分割を漏れなく指定するため
- 相続税の目安を把握しておくため
- 遺言書に記載のないマイナス資産が見つかるとトラブルになりやすいため
ここでは、遺言書を作るときに財産調査をする理由を項目ごとにご紹介します。
遺言書で遺産分割を漏れなく指定するため
1つ目の理由は、遺言書で遺産分割を漏れなく指定するためです。
たとえ遺言者本人の財産だとしても、調査しなければ把握できないこともあります。
遺言書を作成するために財産を列挙していたら、それまで忘れていた財産が見つかることもあり得ます。
例えば遺言者本人すら把握していない財産があり、その財産は遺言書に記載されていないとします。
遺言書に記載されていない財産については、遺言書の効力がありませんから、法定相続か遺産分割協議によって相続方法を決めなければなりません。
遺言書があれば遺産分割協議は不要ですが、記載漏れの財産があると遺産分割協議が必要になってしまう場合もあるのです。
遺産分割協議には、時間や労力がかかってしまいますし、複数人の相続人がいる場合は何度も話し合いを行う機会は作りにくいでしょう。
相続財産の調査では全ての遺産を調べ、漏れがないようにしてください。
合わせて読みたい>>遺言書に記載のない財産はどうなる?記載漏れ財産の相続方法を行政書士が解説!
相続税の目安を把握しておくため
2つ目の理由は、相続税の目安を把握しておくためです。
相続税は全ての遺産を調査しなければ、正確な金額を出すことができません。また、正しい金額で相続税の申告ができないでしょう。
相続人が相続税を過少に申告したり、必要な申告をしなかったりすると追徴課税を支払わなけれならないケースもあります。
そして相続税は「金銭」で支払わなければならないため、急に納税額が分かってもお金を用意できないこともあります。
遺言書作成時に財産を洗い出しておけば、相続税の目安を把握し、相続税の納税に備えやすくなります。
相続人等は正確な相続財産の調査をし、相続税の申告を正しく行いましょう。(相続税の申告は相続財産の額によって、申告の必要がないこともあり得ます)
遺言書に記載のないマイナス資産が見つかるとトラブルになりやすいため
遺言書に記載のないマイナス資産が見つかるとトラブルになりやすいことも覚えておきましょう。
先述したとおり相続財産はプラスの財産とマイナスの財産が存在し、負債の額が多くなることもあります。負債が多い場合、相続人は相続放棄をすることが可能です。
相続放棄の期間は、3ヵ月以内(※相続が開始したことを知った日から計算する)です。
しかし、遺言書に記載のないマイナス資産が見つかると、すでに相続放棄できない状態になっていることもあります。
遺言書に記載のないマイナス資産が見つかった時の対応としては、まず債権者は遺言書の内容にかかわらず法定相続人に対して、債務の履行を請求できます。
そして相続人の間ではマイナス財産は遺産分割の対象とはならないため、法定相続分に従い各相続人に消極財産(=マイナス財産)として引き継がれることになります。
ただし、相続人間で法定相続とは異なった割合での負担を合意することも可能です。
しかしこの場合でも、債権者に相続人同士で合意した負担分割方法を主張することはできません。
このように遺言書に記載のないマイナス資産が見つかると複雑な権利関係が発生し、トラブルになるケースも珍しくありません。遺言書作成に伴う財産目録作成時には、十分注意してください。
合わせて読みたい>>遺言書に記載のないマイナス資産が見つかった時の対応|遺言書に記載のない財産はどうなる?記載漏れ財産の相続方法を行政書士が解説!
遺言書作成時に注意すべきポイント
遺言書作成時に注意すべきポイントとしては、次の3点が挙げられます。
- 財産を漏れなく把握する
- 不動産の評価額や権利状況・利用状況を確認する
- 生命保険金の受取人も考慮する
それぞれのポイントについて解説します。
財産を漏れなく把握する
まずは繰り返し述べているように、財産を漏れなく把握しましょう。
遺言書に記載しなかった財産があると、相続手続きをスムーズに進められません。
「銀行口座」「不動産」は、多くの方が保有する財産の代表例です。
他にも株式などの金融資産をお持ちの方もいるでしょう。
どのような財産を確認するべきか迷っている方は、ぜひ行政書士などの専門家にご相談ください。横浜市の長岡行政書士事務所でも、相談を受け付けています。
不動産の評価額や権利状況・利用状況を確認する
不動産については、評価額や権利状況・利用状況も確認しておきましょう。
たとえば抵当権や借地権がついている不動産は、相続人にとっては扱いづらい資産です。また、農地や生産緑地なども売却しづらく、相続したくない相続人がいるかもしれません。
もし子どもと同居しているのであれば、一緒に暮らしている子どもに該当不動産を相続させた方が都合がいいでしょうし、だれも住む人がいないのであれば「清算型遺贈」を指定する方法も考えられます。
合わせて読みたい>>清算型遺贈は遺言書にどう書く?遺言書執行者を指定しておくと安心!
誰にどの不動産を相続させるか決めるために、それぞれの不動産の「評価額」「権利状況」「利用状況」の3つも把握しておきましょう。
生命保険金の受取人も考慮する
生命保険に加入している方が亡くなると、死亡保険金が支払われます。
この死亡保険金については民法上の相続財産ではないものの、相続税法上は相続財産とみなされており、相続税の課税対象となるケースもあります。
また、民法上の相続財産ではないものの、相続人の感情としては亡くなった方のおかげで受け取れた金銭と思いますから、可能であれば生命保険金の受取人も考慮して財産分割を考えてみてもいいでしょう。
横浜市の遺言書作成は長岡行政書士事務所にご相談ください
ここまでご紹介した通り、お一人ですべての財産を調査するとなるとかなり大変かと思われます。
そして「遺言書に付随する財産目録の作成方法もよくわからない」という方がほとんどです。
財産目録を含めた遺言書作成にお困りの方は、行政書士等の専門家に相談しましょう。専門家は遺言や相続に関する知識や経験を持っており、的確なアドバイスをすることができます。また、ご依頼者様に代わり、各種手続きをすることも可能です。
ご依頼者様は相続の手続きにかかる時間や労力を減らしながら、効率的に進められます。
早急に遺言や相続に関する事案を解決したい方は、一度横浜市の長岡行政書士事務所へお問い合わせください。初回相談は無料で対応しています。