相続で受け継いだ不動産。
元は親の名義だったところ、名義変更しないまま住んでいる方もいることでしょう。
でも、今後も名義変更しないで住み続けて大丈夫なのでしょうか?
2024年3月までは、相続した不動産の相続登記に厳密な期限はありません。
しかし2024年4月より、法改正により相続登記に期限が設けられるのです。
ニュースや新聞で相続不動産の相続登記が義務付けられると知って、そういう相談は、よく行政書士事務所にもたらされているのです。
ということで、「そもそも相続登記って何?」というところから、クイズ形式で学んでいきましょう。
本記事は、通常の法律の文章は難しいことから、楽しくわかりやすくお伝えするためにクイズ形式にしています。
そのため、法律的な表現が少し変、厳密に言うとこうだ!等あるかと思いますが、そこは温かい心で読んでいただきつつ、ぜひ相続登記のご参考にして頂ければと思います。
本記事は執筆現在に分かる情報でお伝えしています。今後法改正や具体的な手続き方法の発表により変動することがあることをご承知おきください。
目次
相続登記が義務化される理由は所有者不明の土地問題
では、クイズ形式で出題しますので、家族やご友人とチャレンジしてください。さあ、あなたのまわりで、相続登記クイズ王になるのは誰だ⁉
今回も、司会の私と、解説の行政書士長岡さんでお届けしいたします! 長岡さん、よろしくお願いします!
では、第1問です!
Q:なぜ2024年からこの相続登記が義務化されるようになるのでしょうか?
A:所有者不明土地の問題があるから
B:所有者不明家屋の問題があるから
C:所有者不明遺言の問題があるから
正解は、Aです!
所有者不明土地の問題があるから、相続登記は義務化されるということです。つまり土地の問題なのですね! ということで、長岡さん、ご解説をお願いします。
長岡「まずは相続登記そのものの説明からしていきましょう。相続登記は、亡くなった方(被相続人)の不動産の名義を、相続人に変更する名義変更登記の手続きのことです」
つまり、親が他界して不動産を相続した場合、子が自分の名義に登記するというわけですね。ところで、クイズの問題に出てきた、2024年からこの相続登記が義務化される理由はどんなものなんでしょう?
長岡「回答に出てきた所有者不明土地というのは、国土交通省の定義によれば「不動産登記簿等の所有者台帳により、所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地」ということになります。実はこれが今増えていましてね。合算すると、なんと九州一個分の土地より大きくなるんです」
そんなに!
相続登記をしない理由は遺産分割がまとまらないこと
でもどうして所有者不明土地が増えているんでしょう?
長岡「相続登記は義務ではなかったので、手間や費用を考えると、つい後回しにしてしまうケースが多いんです。そうするうちに相続登記のことを忘れてしまったりしてしまうのです。また、法定相続人間の話し合いがまとまらず、相続登記ができなかったりという事態が発生しているんですね」
なるほど…その状態のまま不動産の相続人が死亡したりして、長い年月を経て代替わりが続いてしまうと、誰に所有権があるのか分からなくなってしまうということか…。
長岡「そしてこれは国や自治体だけの問題ではなく、民間へも良くない影響が出ているんです」
国や自治体から見た所有者不明土地の問題
- 公共用地として土地を取得したいが、交渉相手が判明せず、国土として利用できない
- 災害対策の工事が必要だが、対象土地の権利者が不明で話を進められない
などが挙げられます。
民間から見た所有者不明土地の問題
- 空き家となっている不動産を売却したが話を進められない
- 街の賑わい創出のために土地を利用したいが、土地を使えない
などが挙げられます。
長岡「所有者のうち一人でも所在不明という状態が発生すると、こうした問題が出てきて、土地の有効活用ができないわけなのです」
相続登記義務化|相続の開始及び所有権を取得したことを知った日から3年以内が期限
ではここで第2問にまいりましょう!
Q:2024年4月1日から施行される相続登記義務化。相続により不動産の所有権を取得した相続人は、いつまでに不動産の名義変更登記をしなければならない?
A:土地の購入から50年以内
B:相続の開始及び所有権を取得したことを知った日から3年以内
C:4月1日に義務化されるまで
正解は、Bです!相続の開始及び所有権を取得したことを知った日から3年以内が期限とされました。
というか、見出しにすでに答えが出ていますね!
長岡「はい(笑) 正当な理由がなく3年以内に登記申請をしないでいると、10万円以下の過料の対象になるのです。法定相続だけでなく、遺言などでの相続人に対する遺贈により所有権を取得した場合も同様ですので、で、注意が必要ですね」
なんと10万円…なかなかにキビしいですね…。
正当な理由があれば相続登記を免除される
相続登記を免除される正当な理由というのが気になります。
長岡「法務省の発表では、次のようなケースが例示されています。ただしあくまでも例ですので、今後の法務省からの通達を待つ必要があります」
《相続登記を免除される正当な理由例》
- 数次相続が発生して相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケース
- 遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース
- 申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース
なるほど、ありがとうございます。
期限内の相続登記が難しい時は相続人であることを法務局に申告
もし事情によって相続登記が難しい場合などもあると思うのですが、その場合の対策はどうしたらいいんでしょうか?
遺産分割協議で相続人間の合意がまとまらなかったときは、相続人であることを法務局に申告しましょう。相続登記をする義務が一時的にストップする相続人申告登記(仮称)ができます。
◆相続人申告登記で気を付けることは?
相続人申告登記とは法務局の登記官に対し「該当の登記名義人に相続が発生したこと」又は「相続人が判明していること」を申告すること。
登記官の職権で申告をした者の氏名や住所などを登記簿に記録できますが、あくまでも予備的な制度です。遺産分割協議が成立し、不動産の相続人が決まった場合には、遺産分割の日から33年以内に相続登記を行う必要があります。
◆遺贈を受けた場合の名義変更手続きは?
改正後は受遺者単独で不動産の相続登記が可能になります。ただし、受遺者による単独申請は、受遺者が相続人に該当する場合のみ。
相続人以外の第三者に対する遺贈は、法定相続人全員(遺言執行者がいるときは遺言執行者)の協力が必要です。
合わせて読みたい>>遺言執行者とは?実行する内容・権限の書き方を行政書士が分かりやすく解説
迅速に相続登記をするには遺言書の作成が有効
相続人間の紛争は財産の額に関係なく起こります。ですので、最初から遺産分割協議をするよりも、遺言書を作成し遺言執行をした方が手続き期間も早く、相続人の負担も軽くなります。
なるほど…なんだかクイズを出している側の、私の不動産が気になってきました。「相続による不動産取得を知った日から3年以内に登記」、しっかり覚えておき、必要があれば準備します。
長岡「はい。ご自身の不動産に関し相続によって得たものか、相続登記は済んでいるのかを改めてに見直し、もしまだ相続登記が済んでない場合は速やかに専門家に相談することをお勧めします」
上述したように、遺産相続の話し合いがまとまらない場合に備えて、遺言書を作成し、不動産を相続する人をあらかじめ指定することも重要かと思います。
遺言書作成にお悩みでしたら、ぜひ横浜市の長岡行政書士事務所へご相談くださいね」